プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

請負・派遣社員は自分の社員でない?! 大企業経営者意識の退廃の極み

2009-01-12 21:19:48 | 政治経済
請負・派遣社員の大量解雇を批判された日本経団連の御手洗冨士夫会長は、“請負・派遣元が解雇したものであり、自分たちには責任がない”と言い放った。請負・派遣社員が組合を結成して、キャノンに抗議に行っても“あなたたちは私どもの社員ではないので、交渉対象ではありません”と門前払いされる“よく人間らしい働き方”などと言われるけれども、請負・派遣労働者は、その前提となる労働者としても扱われていないのだ。「派遣村」に助けを求めた派遣や請負などの非正規の労働者が、「ここへ来てはじめて人間らしい温かみを知ることができた」と語った意味がやっと理解できたかれらは、請負・派遣先の労働現場では外部調達要員であって一人前の労働者=人間として扱われていなかったのだ

日本経団連が、“財界の春闘方針”と呼ばれる経営労働政策委員会報告(経労委報告)を発表した(12月16日)。「労使一丸で難局を乗り越え、さらなる飛躍に挑戦を」がことしの副題である。ところが、驚いたことに経労委報告には、いま全国で怒りが渦巻いている「非正規切り」による大規模な人減らしへのまともな説明も方針も一切ない。「派遣切り」といわれる非正規労働者の大量解雇について、労働法にも反する不当解雇をすすめながら、「大いに懸念される」と人ごとである。彼らにとって、請負・派遣労働者は外注費であって、労務費ではない。解雇は派遣元との関係であって、派遣元会社との契約は物品納入契約の契約解除と同じだから、我関せずというわけだ。労働現場から離れたところで暮らす、大企業経営者意識の退廃そのものだろう。まさか、現場で一緒に働く労働者仲間や下級管理者がそこまで精神が蝕まれていないことを祈るばかりだ。

「しんぶん赤旗」(2009年1月12日)によれば、キヤノングループ二社など、大分県から多額の誘致補助金を受けた企業が、大量解雇を強行しても県には、いっさい連絡をしていなかったという。大分県に進出したキヤノングループ2社は同県から57億7千万円、同様に進出した東芝は5億円の補助金を受けた。「雇用機会の拡大」を名目した補助金制度である。これを受けた大分キヤノン(同県国東市)と大分キヤノンマテリアル(同杵築市)で計約1200人、東芝大分工場が期間工380人を解雇した。ところが県から多額の補助金を受けながら、県に解雇について一切連絡していない。なぜか。補助金をもらう企業の大量解雇について県の企業立地担当者は「補助金は、新規の地元雇用や直接雇用に出しているもの。派遣や請負は対象になっていない」といい「補助金の制度は元々、企業から連絡をもらうことを義務付けた仕組みにはなっていない」という。派遣や請負労働者は、どんなに解雇されても、労働者=人間の解雇ではないのだ!
県への報告について大分キヤノンマテリアルは「連絡はしていない。当社は減産をしただけ。当社と(解雇された)派遣社員は関係がない」。キヤノン本社も「(協定上の)操業短縮ではない。減産については県に伝えた」といい、キヤノン側は大量解雇であることを一切認めようとしない。この記事を読んで、無性に腹が立つのは私だけではないだろう。

当社と関係ないとまで言われた派遣労働者は、キャノン資本の目的である剰余価値の生産において、他の正規労働者とどこに違いがあるのか経済学の基本をもち出すまでもなく、利潤の源泉は生きた労働者の価値生産労働だけである。企業と労働者の労働力購入契約が直製契約であろうが、派遣元を通じた間接契約であろうが、生きた人間の労働に違いはない。内部留保が、正規社員を派遣や期間工に置き換えて、彼らの血と涙と汗の上にため込んだお金だいうのは、このことを言っているのだ
労働者は、正規であろうが非正規であろうが、原材料でもなければ機械でもない。製造業にあっては、現場労働者を大事にしない企業は、いずれボディーブローのように、企業の競争力を蝕むだろう

新製品の開発や新技術の導入は、現場を基礎にして生まれるものだ。企業の競争力は、結局はいかにヤル気を起こさせる人間組織を創れるかである。どんな金力や権力をもってしてもヒトの心を支配できない。モノはお金で買えるが、ヒトはお金で買えないのだどんな有能な人間でもそれを現場で発揮するかどうかは、そのヒトの意思にかかっている。ヒトが頭脳のなかにこれまで蓄積してきた知識や能力をどのように使うか、ヒトが自分の頭脳の中に新たな知識や能力をどのように蓄積していくかを、外部から完全にコントロールすることは不可能である。
経営者意識の退廃は、やがて企業組織を蝕むことを知るべきだ。

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