プロメテウスの政治経済コラム

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「かんぽの宿」問題  麻生政権の狙いは選挙対策?

2009-01-13 20:25:18 | 政治経済
日本郵政が「かんぽの宿」70施設を入札によりオリックスグループに対し総額109億円で売却を決定したことについて、鳩山邦夫総務大臣が「待った」をかけ物議を醸している。日本郵政は、運営赤字タレ流しを防ぐための損切りというが、相手が“現代の政商”宮内義彦のオリックスと聞けば、誰もがハゲタカ・ビジネスの再現かと疑って当然だろう。鳩山氏のクレームは、麻生首相との十分な連絡の上でのことと思われるので、小泉郵政民営化とは逆方向を演出することで、少しでも総選挙の足しにしたいという小細工の臭いが強い。

「かんぽの宿」70施設のオリックスへの一括譲渡について、鳩山総務相は9日の閣議後会見で、入札の経緯などについて週明けから詳しい調査を始める方針を明らかにした。鳩山氏は(1)なぜオリックスなのか(2)なぜ一括譲渡なのか(3)なぜ不動産価格が急落しているこの時期なのか-の3点について日本郵政に問い合わせたが、納得のいく説明はなかったという。
オリックスグループの最高経営責任者(CEO)、宮内義彦氏は小泉内閣で総合規制改革会議議長などを務め、規制緩和でビジネスチャンスを創っては、自らのグループの懐を肥やすという現代の政商としてつとに有名である。宮内氏は1991年(平成3年)から2006年(平成18年)年まで、政府の審議会の場を利用して一貫して行政改革や規制緩和の中心に座り、規制緩和の最大の受益者である財界と自己の傘下グループ企業の利益のために働いてきた。官僚の既得権益を打破するという名目で規制緩和論を正当化しながら、実際の攻撃の標的になったのは、中小業者、労働者であり、立場の弱い国民であった。医療やタクシー、金融の規制緩和など、自分のつくった仕掛けで傘下グループの懐を肥やしてきたので現代の政商と呼ばれているのだ

今回の「かんぽの宿」一括払い下げは、公募入札による適正な手続きで行われたという。しかし、不動産価格の鑑定がいかにいい加減なものであるかは最近の事例からも明らかだ。大阪府が市の「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC)への移転を検討するために府市双方が不動産鑑定したが府鑑定が95億円、大阪市は153億円、なんと60億円もの差が出た。要は高くしたいか、低くしたいかでどうにでもなるのが不動産鑑定価格なのだ。官営入札が「出来レース」であることも広く知られたことだ。宮内氏の過去の“実績”から、そして、日本郵政の社長がこれまた悪名高い元住友銀行の西川善文氏なのだから、ふつうに考えれば、「公明正大」な経営判断というには無理があると考えてもおかしくない。

それにしても鳩山総務相は、小泉―竹中の最大の「成果」である郵政民営化になぜケチをつけたのだろうか。
国際戦略情報研究所(IISIA)の原田武夫氏は次のように指摘する。「こうした展開になっている背景には、当然のことながら仕掛けた側である鳩山邦夫総務大臣、そして同大臣に対して最終的に指示を下す立場にいる麻生太郎総理大臣による大所高所からの政治的判断が働いていると考えるべきだろう」(IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢2009-01-09)。
「麻生太郎総理はここにきて、衆院解散・総選挙は早くても今春だと示唆する発言をするようになっている。・・・他方、今春といえば3月に『郵政民営化見直し』についての政府報告書が提示される予定だ。つまりその内容の如何にかかわらず、ただでさえ批判の高まっている構造改革の象徴ともいえる郵政民営化問題について、『あれは一体何だったのか』といった論争が政界再編もにらみつつ再燃することは必至の状況だったのである。そこで、野党の機制を制する形で政府・与党サイドから文字通りの“政治的判断”が下ったとみる向きが多い」(原田武夫 同上)。

竹中平蔵は、アメリカの回し者とよく言われるように日本における一連の構造改革は、米系企業のハゲタカ・ビジネスのために投資対象を続々と創り出す過程でもあった。米国政府は、「対日年次改革要望書」を突きつけて規制緩和、構造改革を強制した。
IISIAの原田武夫氏は新自由主義構造改革の「潮目」が世界的に変わったので、麻生首相は構造改革という名の「破壊ビジネス」の権化である郵政民営化について、従来の路線を放置することにより野党に攻撃材料を与えるのではなく、むしろ自らその芽を潰してしまえと考えたのだというしかし私には、漢字もろくに読めない麻生首相が“潮目”をよく理解しているとも思えない。ただ、小泉郵政民営化とは逆方向を演出することで、少しでも総選挙の足しにしたいという気持ちをもったのは確かだろう。


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