プロメテウスの政治経済コラム

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グアム新基地建設 グアム「移転」協定のインチキ 金を盗られるだけで何も変わらない危険

2009-08-06 19:47:46 | 政治経済
在沖縄米海兵隊の何千人かのグアム「移転」が沖縄の負担軽減となるという名目で、グアム新基地建設費約103億ドル(約1兆円)のうち約6割の61億ドル(約6000億円)を日本側が負担するという合意で始まったグアム新基地建設。グアム「移転」には、名護市辺野古沿岸域の新基地建設が前提条件となっていることも問題だが、グアム「移転」に伴う道路、水、電力などのインフラ整備に必要な米側の予算化の見通しが立たないという問題がでてきた。倒産前に巨額の前払い金を振り込ませておいて倒産した住宅メーカーではないが、日本側から、金をむしり取るだけ、むしり取ってこのままでは、沖縄の負担軽減は何も変わらないという危険がある(変えたければ、もっと金を出せ、という危険もある)。グアム新基地建設予算約103億ドルの前提となっているインフラ整備費7・4億ドルではまったく足りないという問題が早くも出始めているのだ。

 ODA案件を担当した経験の持ち主なら、ローカルカレンシー(現地通貨)部分の予算がつかないために工事が頓挫したり、大幅に遅延することがしばしばあることをよく理解できると思う。いま、米領グアムでの米軍新基地建設がそのケースになりつつある。米連邦予算の支出を監査する政府監査院(GAO)は、今年4月、議会の軍事委員会などに送った報告書で基地建設には、それを支える道路、水、電力など巨額のインフラ整備が必要だが、米側の支出の見通しが立っていないと指摘している。同報告は公称、沖縄から8千人以上の海兵隊員、推定9千人の家族がグアムに移転することに伴う基地強化で、現在17万1千人のグアムの人口は米兵関連だけで14・6%(2万5千人)増え、作業に従事する労働者の移住で人口はさらに増大するが、道路、電力供給、上下水、ゴミ処理施設などのインフラの現状は、いずれも新たな需要に対処する余裕がまったくない。

 最近、私はグアムの米軍基地を視察し、現地住民とも交流してきた人の話を聞く機会があったかが、日本人観光客らが集まるTumon Bay一体を除いて、いまでも道路、上下水、電力供給、ゴミ処理施設などのインフラ不足が深刻らしい。グアム知事のカマチョさんは、昨年5月に米議会で、基地強化支援に必要なインフラ整備には2010会計年度に約61億ドル(約6千億円)が必要だと陳述している。グアムはもちろんアメリカ50州ではない。インフラ整備が十分でないことは、容易に想像できる。米政府監査院(GAO)報告は、グアムでの米軍再編全体には「130億ドル(一兆三千億円)以上」が必要だという。このうち海兵隊関連経費として103億ドルの拠出が日米間で合意され、うち日本側負担は61億ドルとされているということになる。グアム知事が示したインフラ整備のための61億ドルは、もちろんこれらの経費には含まれていない
GAO報告によれば、国防総省や内務省など関連政府機関の調整がとれておらず、「グアムでの軍再編が2014会計年度の終了日までに終わるよう保障する(連邦)省庁間予算」確保の見通しは立っていないという。

 米政府監査院(GAO)は7月30日、またまた日本側にとって大変な報告書を公表した。日米両政府が2006年5月、グアム新基地建設費約103億ドルのうち日本側が約61億ドルを負担することで合意したとき、電力、上下水道、廃棄物処理といったインフラ整備費は7億4000万ドルを想定していた。ところが今回のGAO報告書が引用した米国防総省の試算によると、グアムの米軍増強に伴う急激な人口増のため、2009年から20年までの間に(1)電力31%(2)飲料水89%(3)下水処理50%(4)廃棄物処理230%―と、それぞれ需要が急増。これに見合ったインフラ整備費として、同省は13億5000万ドル~17億9000万ドルが必要だとしているという。
実は、今年2月、クリントン国務長官が訪日して調印したグアム「移転」協定は、日本政府の28億ドルの直接の資金提供のみを明記し、「融資」が前提のインフラ整備費などの金額の明示を避けた。インフラ整備費の財源は金融機関からの「融資」とされ、米軍が支払う使用料金などで回収するとしているが(1)融資が焦げつく可能性がある(2)その場合は税金による穴埋めがありうるということだ。政府保証なしで、金融機関が融資するわけがないので、これも国民の税金の負担ということになる

 グアム新基地建設費は、日本政府が米財務省の「小勘定」(グアム用の指定口座)に年度ごとに基地建設費を送金し、米連邦予算に組み込まれることになっている。米2010会計年度(今年10月―来年9月)の軍事予算に間に合わせなければならないので、日本政府は第一回振り込み約346億円を遅くとも9月までに振り込む予定である(もう振り込んだかも知れない)。米側では軍の現場からもグアム「移転」計画の見直し論義が強まっている。海兵隊のコンウェイ総司令官は5月6日、米下院で移転計画が「再検討」されるとの見通しを表明。移転計画が今後、大きく変更される可能性もあるという米国内の議論もよく見極めないうちに、「とにかく支払う」と第一回振り込みをおこなう日本政府の姿勢は極めて異様なものである。倒産した住宅メーカーに騙されて巨額の前渡金を払い込んだ憐れな顧客のようだ。

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