プロメテウスの政治経済コラム

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核放棄なくして対話なし  北朝鮮が疲れるのを待つ持久戦で本当にいいのか

2009-09-08 21:03:56 | 政治経済
 北朝鮮核問題への対応を協議するため、アジア歴訪中のスティーブン・ボズワース米政府特別代表(北朝鮮担当)は6日、ソウルで「北朝鮮の態度に根本的変化はない。まだ北朝鮮との対話を始めるべき時点ではない」と語り、北朝鮮が核兵器を放棄する姿勢を明確にしないかぎり対話に応じない方針を確認した。ここのところ、米中韓の3国は、米国人女性記者2人の解放交渉、金大中元大統領の葬儀などさまざまな機会を捉えて、北朝鮮と接触してきた。8月に入り、北朝鮮の側もそれまでの強硬姿勢から一転して、対話姿勢に出ている。国連決議による制裁がジワジワ効いているのかも知れない。しかし、ウラン濃縮実験が完了段階に入ったとの書簡を国連安全保障理事会に送りつけるなど北朝鮮には、核兵器開発をやめる気配はない。6カ国協議のメンバーは、自ら核兵器を保有しない日本、韓国も米国の核の傘に入っており、5カ国とも「核抑止論」を前提に行動している。つまり、他国は核抑止力論に立ったまま、北朝鮮には、その立場を放棄せよと言っているわけだから、余程の見返りがなければ、北朝鮮は核開発をやめないだろう。北朝鮮が、核兵器を放棄する姿勢を明確にしないかぎり対話に応じないといっている間は、ただ北朝鮮が疲れるのを待つほかない

 北朝鮮の国連代表部は3日、国連安全保障理事会の議長に書簡を送り、5月の核実験強行後に安保理が決議した制裁措置などへの反発を改めて伝えた。「ウラン濃縮試験は成功裏に行われ、完了段階に入った」ほか、核施設の再稼働で抽出したプルトニウムを兵器化しつつあり、対抗措置を進めていると強調。制裁措置が続くようなら「自衛的な強硬措置を講じざるを得なくなる」と、さらなる核関連活動の加速を示唆した。 その一方で、「朝鮮半島の非核化自体を否定したことはない」「対話にも制裁にも準備ができている」などとのべ、米朝の直接対話を求める姿勢を打ち出している(「日経」2009年9月4日)。
ソウルでのボズワース氏の言明は、核兵器の放棄という根本問題で態度を変えないまま対話を求める北朝鮮に対する「返答」ともいえる。 ボズワース氏は、「完全で検証可能な朝鮮半島の非核化が、問題の核心だ」と指摘。日本、韓国にたいしては、北朝鮮が、核放棄を明文化した2005年の6カ国協議の共同声明の義務履行の姿勢を明確にしない限り、米朝対話を行わないことを確認している。

 北朝鮮は、なぜ核開発に拘るのか。いうまでもなくそれは、「被包囲意識」から生じた「体制の安全保障」への執着である。どの国家にとっても国家の自主権と国民の尊厳を守ることは、政府の主要な任務である(日本政府はこれまで対米従属で自主権と尊厳を放棄してきたが)。周辺大国は核保有国であり、非保有国の韓国、日本も米国の「核の傘」のもとで実質的に核保有国である。だから、核とミサイルで 「国家の自主権」 と 「民族の尊厳」 を守るということを北朝鮮は選択した。アメリカもロシア、中国も、自国の核兵器を問題としないまま、一方的に北朝鮮に核の放棄を迫っている。韓国も日本もその尻馬にのっている。日本政府などは、戦後64年もたつというのに、日本が戦時下に朝鮮半島から強制連行し強制労働させるなかで犠牲になった韓国・朝鮮民間人の遺骨返還要求に一体も応えていない。そのクセ拉致問題だけは騒ぎ立てる。
私は、北朝鮮のやっていることを正当化する気は毛頭ない。しかし、朝鮮半島の分断、戦争、冷戦と対立、冷戦の崩壊にもかかわらず、対立と敵対関係が終わらない、終わらせようとしない関係各国の政府と国民もみな似たり寄ったりだと思う

 6カ国協議というのは、核抑止力論を肯定する枠組みである。抑止戦略というのは、強大な兵器で脅しておけば、相手がひるむということを前提にしており、米国もロシア、中国も自国の核保有が当然の前提である。核保有を前提としながら、どのようにして、北朝鮮だけに核を放棄させるのか。
いま6カ国協議でやっていることは、貧乏国北朝鮮の足許を見て、核放棄してくれ、放棄してくれたら、経済援助をするから、ということだ。国家間交渉といってもやっているのは、人間である。カネは大事だが、およそ道義や道徳に無縁の連中にそんなことを言われたら、どう思うか
私は、核放棄なくして対話なしと言っている限り、いまの膠着状態を前に進めることは、なかなか難しいと思う。ただ北朝鮮が疲れて経済援助が欲しいといってくるのを待つほかない。

 朝鮮半島の南北が依然として停戦(休戦)状態におかれ、北朝鮮と日本、そして北朝鮮と米国が対立と敵対という不正常な関係を続けているのは、北朝鮮だけの責任ではない。北朝鮮の核問題を解決しようと思ったら、東アジアの冷戦構造の解体、新しい秩序の構築と一体でなければならない。同時に核保有国が「核抑止」「拡大抑止」を続けるかぎり、核拡散を止めることはできない。核不拡散条約(NPT)6条は、「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を規定している。世界核軍縮協議に北朝鮮やイランを呼ぶのでなければ、誰も北朝鮮を責めることはできない。

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