Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

麻酔中の酸素濃度とSSI

2013年10月31日 | 感染
目新しい話題ではありませんが。
感染症系のメジャー雑誌に、良さげなレビューが載っていたので。

Munoz-Price LS, Sands L, Lubarsky DA.
Effect of high perioperative oxygen supplementation on surgical site infections.
Clin Infect Dis. 2013 Nov;57(10):1465-72. PMID: 23899687.


定まっていない話題だし、いろいろな意見はあるでしょうが。
この人達は、有効な可能性はあるし、有害性は乏しそうだし、SSIは患者さんにとって迷惑だし、やっちゃえばいいんじゃねーの、という感じ。

それにしても、術中の酸素濃度ですら、この程度。
ほんと世の中、分からないことだらけ、リサーチのネタだらけだね。
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脳卒中ケアユニットの有効性

2013年10月30日 | 神経
についての文献がStrokeに2つ載っていたので。
ICUも無関係じゃないし。一つは日本からだし。

Inoue T, Fushimi K.
Stroke care units versus general medical wards for acute management of stroke in Japan.
Stroke. 2013 Nov;44(11):3142-7. PMID: 23988645.


日本の脳卒中のガイドラインにもSCUの有効性についての記載はあるけど、まだまだ数は少ないし、日本で有効かどうかもよく分からない。そこで、DPCのデータを使って、52病院に入院した脳卒中患者(脳梗塞か脳出血)6977例について後ろ向きに検討。4527例がSCU、2450例は一般病棟で管理。死亡率は脳出血が14.8% vs. 24.1%(p=0.0004)、脳梗塞が3.6% vs. 5.7%(p=0.003)。多変量解析でもSCUの死亡に対するオッズは脳出血で0.36、脳梗塞で0.60。ただし、修正Rankinスケールが2以下の頻度は有意差無し。

Langhorne P, Fearon P, Ronning OM, et al.
Stroke Unit Care Benefits Patients With Intracerebral Hemorrhage: Systematic Review and Meta-analysis.
Stroke. 2013 Nov;44(11):3044-9. PMID: 24065713.


SCUの有効性についての研究は多いけど、脳梗塞と脳出血で有効性が同じか違うかは分からない。そこで、SCUと一般病棟を比較した研究のうち、脳梗塞と脳出血のアウトカムを分けられる研究を対象にメタ解析を行った。13の研究(3570例)が対象。SCUは死亡もしくはdependency(日常生活に介助を要する)になる頻度が一般病棟の0.79倍(脳出血)と0.82倍(脳梗塞)で、両方とも同じ程度に低下させた。

細かいことはさておき、
やっぱり、新薬とか特別な治療法とかじゃなくて、システムなんだよな、と思います。
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敗血症性ショックとベータブロッカー

2013年10月29日 | 感染
で、二つ目。

Morelli A, Ertmer C, Westphal M, et al.
Effect of heart rate control with esmolol on hemodynamic and clinical outcomes in patients with septic shock: a randomized clinical trial.
JAMA. 2013 Oct 23;310(16):1683-91. PMID: 24108526.


イタリアのある一つのICU。敗血症性ショックで、血圧の維持にノルアドを必要として、かつ脈拍数が95/min以上の154例。エスモロール(短時間作用型のベータブロッカー)を投与して脈拍を80-94/minにコントロールするかしないかでRCT(オープンラベル)。Primary outcomeは96時間後の脈拍のコントロールで、循環やノルアドの必要量や臓器不全なんかをsecondary outcomeとして評価。その結果、エスモロール群で脈拍のコントロールが良好であっただけでなく、心機能の改善、乳酸値の低下、ノルアドレナリンの必要量減少、さらには28日死亡率が49.4%と80.5%(p<0.001)。

コントロール群の死亡率が異常だし、そもそもSingle centerのphase IIなんだからどう判断するべきかは昨日勉強したばかりなので、それは置いておいて。
何で、これがJAMAか。

どうも、JAMAは、少なくともJAMAのcritical care sectionは、おおっと思われる研究が好きらしい。
典型例はこれ

今回の研究も、
・メジャーで流行りの疾患に対して(敗血症性ショック)、
・どこにでもある治療薬で(ベータブロッカー)、
・有効性を説明する理屈がちゃんとあって、
・ビックリするほど有効だった(死亡率の低下)
から載ったんだろうと推測される。

さあ、これでJAMAに自分の名前を載せる方法は分かったね?
あとは実行あるのみ!

Be ambitious! 我が友よ 冒険者よ~
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VAPとスタチン

2013年10月28日 | 感染
今週も、JAMAが二つ。
まずは一つ目。

Papazian L, Roch A, Charles PE, et al.; STATIN-VAP Study Group.
Effect of statin therapy on mortality in patients with ventilator-associated pneumonia: a randomized clinical trial.
JAMA. 2013 Oct 23;310(16):1692-700. PMID: 24108510.


フランスの26のICU。2日以上の人工呼吸管理を受け、VAPが疑われた患者さんに対し、スタチン(シンバスタチン60mg)かプラセボを投与。Primary outcomeは28日死亡率。絶対値で8%の死亡率の減少があると仮定して目標症例数を1002例に設定。しかしその結果、300例が研究対象となった時点で、死亡率がスタチン群21.2%、プラセボ群15.2%(p=0.10)となり、研究はストップ。

きたきた。
観察研究やphase IIやメタアナリシスでは有効性が示唆されて、大きなRCTをやったら死亡率が高くなるパターン。
集中治療の世界でも時々あるけど、臨床には関係なくなるのでつい忘れてしまう。でも覚えておくと、”有効かもしれない”治療方法をしたいと言っている人に対しての反論が容易になります。

First do no harm。
Phase IIでは動くなの原則。忘れずに。
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アルブミン透析、その名をMARS

2013年10月26日 | 消化器・血液
MARSとは、 Molecular Adsorbent Recirculating Systemの略で、Gambroが発売している商品の名前で、肝不全に対する血液浄化療法の一つ。透析膜の外側に、透析液の代わりにアルブミンを流し、それによって血液から除去された肝不全物質(ビリルビンとか)を吸着膜を通して除去する、というシステム。話を耳にするようになったのは10年以上前だけど、急性肝不全に対する初めて(だと思う)の多施設RCTが発表されました。

Saliba F, Camus C, Durand F, et al.
Albumin dialysis with a noncell artificial liver support device in patients with acute liver failure: a randomized, controlled trial.
Ann Intern Med. 2013 Oct 15;159(8):522-31. PMID: 24126646.


フランスの16の移植施設。102例の急性肝不全患者に対し、通常の治療(N=49)を行うか、それに加えてMARS(N=53)を行うかでRCT。Primary outcomeは6ヶ月生存率。その結果、通常治療群の6ヶ月生存率は75.5%、MARS群は84.9%で有意差無し(p=0.28)。ただし、102例中66例は肝移植を無作為化後平均16.2時間で受けている。

さて。
うる覚えの知識ですけど。
肝不全物質の多くは蛋白結合しているので、普通の腎代替療法では除去できない。でも、透析膜の外にアルブミンがあると、そこで物質が受け渡される。これを利用したのがMARS。賢いことを考える人がいたもんだ、と当時は思った。
だけど、これではやっぱり除去量が急性肝不全のような肝機能がほぼゼロの状態では不十分ではないか、という話もあり、豚(?)の肝細胞をフィルターにくっつけた装置が開発された。しかしRCTで急性肝不全に対する効果は否定的となった。
今回の研究は、ちょっと今更感もあるのだが、急性肝不全に対するMARSの効果を評価。アナルズにこんな研究が出るとは、ちょっと驚き。

結果はどうあれ、急性肝不全なんていう症例数が多くはない疾患に対して、多施設RCTで治療方法を探っていこうという姿勢は素晴らしい。
さらに、移植がたくさん行われて、生存率が約8割なんていうのも凄い。

いまだに血漿交換だステロイドだCHDFだと言っている国は、蚊帳の外。
寂しい。
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脳損傷患者の抜管

2013年10月25日 | 呼吸
Roquilly A, Cinotti R, Jaber S, et al.
Implementation of an Evidence-based Extubation Readiness Bundle in 499 Brain-injured Patients. A Before-After Evaluation of a Quality Improvement Project.
Am J Respir Crit Care Med. 2013 Oct 15;188(8):958-66. PMID: 23927561.


フランスのある1つの病院の2つのICUで、GCSが12以下の脳損傷(頭部外傷、SAH、脳卒中など)で人工呼吸管理を24時間以上受けた患者さんを対象に、抜管バンドル(低換気、早期経管栄養、院内肺炎に対する抗菌薬使用の標準化、抜管可能性の評価)を導入した前後を比較。前期299名(3年間)、後期200名(22ヶ月)が対象。その結果、人工呼吸期間が14.9日から11.7日に短縮、ICU free daysも短縮、90日死亡率も低下した(28.4% vs. 23.5%)。

ICU患者の抜管の判断というのは、悩ましいことが珍しくない。
困るのは、大抵は弱々しい患者さんか、意識障害の患者さん。
今回の文献は、抜管の判断についての検討だけではないのだけど、ディスカッションにはそのことについての参照文献がいくつか載っている。
今度、Clinical Q&Aで、意識障害の患者さんの抜管についてまとめてみようかな。
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重症患者における骨格筋の消耗

2013年10月22日 | その他
ということで、JAMAの二つ目。

Puthucheary ZA, Rawal J, McPhail M, et al.
Acute Skeletal Muscle Wasting in Critical Illness.
JAMA. 2013 Oct 9. [Epub ahead of print] PMID: 24108501.


イギリスのあるICU。18歳以上、挿管期間が48時間以上、ICU滞在が1週間以上の63例。Day 1, 3, 7, 10に、大腿直筋の断面積、蛋白/DNA比、組織学的検討、蛋白合成と異化の速度、およびその伝達経路について評価。
筋肉量の減少は急速に起こり、それは年齢や栄養投与とは関係なく、臓器不全の重症度と関係し、、、とかが結果らしい。

じっくり読まないと難しそうなので、さっさとジャーナルクラブにしてしまいます。
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手袋とガウンを全ICU患者に使用したら

2013年10月21日 | 感染
Harris AD, Pineles L, Belton B, et al.
Universal Glove and Gown Use and Acquisition of Antibiotic-Resistant Bacteria in the ICU: A Randomized Trial.
JAMA. 2013 Oct 4. [Epub ahead of print] PMID: 24097234.


アメリカの20のICUを2つに分けて、介入群では全ICU患者への接触時にガウンと手袋を着用することにした。ICU入室時と退室時に鼻腔(MRSA用)と肛門周囲(VRE用)の培養を採り、ICU内でのMRSA/VREの新規獲得があったかどうかを判断。その結果、
・対象患者は26180例
・MRSAもしくはVREの獲得は、介入群で21.35/1000 patient daysだったものが16.91に減少、コントロール群では19.02が16.29
・その差は1.71で有意差無し(P=0.57)
・MRSAについてのみ有意差が出た(-2.98、P=0.046)
・患者さんの部屋から出るときの手指衛生の施行頻度が介入群で多かった(78.3% vs. 62.9%)
・介入群では患者さんの部屋に入る回数が減った(4.28 vs. 5.24回/hr)

もっとサンプル数が多かったらMRSAだけでなく全体として有意差が出たかもしれないが、すでに2万例以上だし、MRSAの方がアルファエラーかもね。どちらにしろ、すごく有効、ということは無さそうだ。
必ず部屋から出るときに手袋を脱ぐから、手指衛生の施行頻度が増えるのも分かるし、面倒くさいから部屋に入る回数が減るのも分かる。
全体として、納得がいく結果か。

それにしても、アメリカではVREの方がMRSAよりも多いんだね。しかもそれがどんどん他の患者さんにうつっていく。
もし年間収容数が300例で、平均滞在期間が3日だったら、だいたい月に1人はVREがICUで新たに発生しているということ。
まあ。。。
日本はまだ少なくてよかったね。

この研究はネガティブだし、JAMA=ジャーナルクラブというのはやめようかと。
もう一つJAMAがあるんだよね。
そっちは明日で。
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ガイドラインの不確実性

2013年10月19日 | EBM関連
先日、若い同僚が、ガイドラインの記載通りにこういう治療を行った、と言った。
概念的には容易に理解できるが、それがガイドラインに記載されるほどの根拠があるとは知らなかったので、ビックリした。
で、実際にそのガイドラインを見てみると、まずlevel IIIの推奨度(つまりこのガイドラインはGRADEで作られていないことを意味する)で、根拠として提示された文献がレビューで(いよいよ怪しい)、そのレビューを見てみると、ケースシリーズがいくつかあるだけだけど、どの研究も似たような治療方法を選択しているので、このやり方で良いんじゃないかな、程度の内容だった(ほれ見ろ)。

ああよかった、自分が不勉強というわけではなかった、と安心しつつ。
改めて、ガイドラインというものを金科玉条のように考えている人が身近にもまだいるということに気がついた。

と思っていたら、ちょうどこんなエディトリアルがBJAに出ていたので、ご紹介。

Imberger G.
Clinical guidelines and the question of uncertainty.
Br J Anaesth. 2013 Nov;111(5):700-2. PMID: 24108728.


ガイドラインの不確実性についての論説、かな。
もしくは、ガイドラインは不確実なものなので、それをどう使ったらいいかについて。
グッドタイミングだったし、面白かったし。読んでみそ。

Karl Popper once described science as ‘the art of systematic over-simplification’.
で始まり、
If we apply guidelines as rules by which to practise medicine, they may well fall victim to Sir Karl’s cheeky definition of science.
で終わる(だいたいね)。

この文章も好き。
The question of uncertainty should never be about whether it is present.
Rather, the question should always be: how much is there?

確実なガイドラインなんか無い。
”ガイドラインにこう書いてあるから”、というのは自分の行為の正当性を裏付けない。
このフレーズは、よく分かっていない人をだます時にだけ使いましょう。
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HESは完全に禁止されるべきか?

2013年10月18日 | 循環
Vincent JL, Kellum JA, Shaw A, Mythen MG.
Should hydroxyethyl starch solutions be totally banned?
Crit Care. 2013 Oct 1;17(5):193. PMID: 24083341.


というタイトルのコメント。泣く子も黙るビンセント先生から。
現状のエビデンスではそこまでは言えないでしょう、患者さん毎に有用性と有害性を天秤にかけて注意深く使いましょう、というのが結論。
こんなことも言ってます。

Indeed, one can consider that even oral fluids have their risks: beer, wine, and non- alcoholic beverages, such as coffee and sugar-containing beverages, should all be taken only in moderation, and even water can be harmful if taken in excess.

はは。まあ、そりゃそうだ。

と思ったら、今月のICMにこんな研究が載っていた。

Muller RG, Haase N, Wetterslev J, et al.
Effects of hydroxyethyl starch in subgroups of patients with severe sepsis: exploratory post-hoc analyses of a randomised trial.
Intensive Care Med. 2013 Nov;39(11):1963-71. PMID: 24037226.


Scandinavian Starch for Severe Sepsis/Septic Shock(6S)のpost-hoc解析。軽症が含まれているとか、タイミングを早くすればとか、外科患者には有効だとか、いろいろケチをつけてくるから、それならサブグループ解析してやるよ、という研究。その結果、
・ICU入室後4時間以内に割り付けられたかどうか
・術後かどうか
・割り付け前に2L以上の晶質液が投与されていたかどうか
・乳酸値が4mmol/L以上かどうか
・低血圧かどうか
・昇圧剤を使っていたかどうか
で比べてみたけど、どれもHESが有害であることには変わりがなかったよ、と。

議論は続く。
そして、日本のHESは蚊帳の外。
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