Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

何故、文献を読むのか

2012年04月30日 | EBM関連
先週も、面白い文献がいくつかあった。

Hakim SM, Othman AI, Naoum DO.
Early Treatment with Risperidone for Subsyndromal Delirium after On-pump Cardiac Surgery in the Elderly: A Randomized Trial. Anesthesiology. 2012 May;116(5):987-97. PubMed PMID: 22436797.
CABG術後でせん妄になりそうな高齢者にリスペリドンを投与すると、せん妄の発生率が減った、というRCT。せん妄についての研究はたくさんあるが、RCTは多くない。

Cao GQ, Kang J, Wang F, et al.
Intrapleural Instillation of Autologous Blood for Persistent Air Leak in Spontaneous Pneumothorax in Patients With Advanced Chronic Obstructive Pulmonary Disease.
Ann Thorac Surg. 2012 Mar 27. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22459543.
COPDの自然気胸で、トロッカーを入れても治らなかった患者さんに、自分の血液を胸腔内に入れると気胸が治る、というRCT。これまた、ケースシリーズはちょっとあったけど、RCTは初めて?

Meltzer EC, Gallagher JJ, Suppes A, Fins JJ.
Lip-reading and the ventilated patient.
Crit Care Med. 2012 May;40(5):1529-31. PubMed PMID: 22430239.
広範囲熱傷で気切されて、上肢も拘縮してしまって、コミュニケーションがとれない患者さんに、読唇術が出来る人を呼んでコミュニケーションがとれた、というケースリポート。ICUではコミュニケーションが困難な患者さんが多いから、読唇術ができたらいいなー、と思うことは多い。でもちょっと悲しいお話。

Casserly B, Gerlach H, Phillips GS, et al.
Evaluating the use of recombinant human activated protein C in adult severe sepsis: Results of the Surviving Sepsis Campaign.
Crit Care Med. 2012 May;40(5):1417-1426. PubMed PMID: 22430247.
SSCGのデータベースを用い、活性化プロテインC(APC)が投与されたかどうかで予後にどのような影響が出たかを検討。APCは登録された15000名のうち8%に投与された。予後に関連する因子を調節すると、APCの投与は有意に死亡率を減少させた(OR 0.76)。

ご存知の通り、昨年10月に発表されたPROWESS-SHOCKの結果を踏まえ、APCはマーケットから消えた。
この文献は、PROWESS-SHOCKの結果が出る前にCCMにアクセプトされたようで、にもかかわらず何故今頃掲載されたかというと、どうも書き直しが行われたらしい。だからDisucssionにはPROWESS-SHOCKについての記載がある。

さらに、この文献についてのeditorialでは、これまでの研究との比較や、ガイドラインとはどのように作られるべきか/使用されるべきかについて議論している。

Zilberberg MD, Shorr AF.
Surviving sepsis: A time for "don't just do something, stand there" philosophy?
Crit Care Med. 2012 May;40(5):1468-9. PubMed PMID: 22511129.

いやー、難しい話。
難しいので、ゴールデンウィークには向かなそうなので、この話はおしまい。

ちなみに、日本集中治療医学会が敗血症診療についてのガイドラインを作成し、
このブログの執筆時点で、パブリックコメントを募集中。

http://www.jsicm.org/guide120426.html

さて。
これで今週はおしまいにしようかと思ったのだけど、ちょっと短い。
以前にも書いたのだけど、
一応、文献を読むことを趣味としていて、そこそこの数を毎年読んでいる(つもり、もしくはフリをしている)。

http://blog.goo.ne.jp/druchino/e/32682204dd1f6f6e3cce7c6130472804

こんな生活をもう10年以上続けていて、ふと、何故続くんだろうと考えてみた。
・患者さんを救うには知識が必要だと思い込んでいるから
・ブログの執筆や勉強会の主催を継続するために必要だから
・自分の専門性(AKI、RRT)を維持するために情報をアップデートする必要があるから
・研究のアイデアや参照文献が得られるから
・他人が知らないことを知ると優越感を感じるから
・単純に、面白いから

ちょっと自虐的な気もするが、全部ですかね、やっぱ。
患者さんを救うには知識が必要だから、ではない。だって、証明されてないでしょう?
文献を読んだ数と患者予後との関係とか、聞いたことないし。
一番の理由は、最後から2番目だったりして???

でも、読もっと。
みんなも読めよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

学会の初日は雨が降る

2012年04月23日 | EBM関連
先週はCCMの新しい号が出たけど、それは保険として来週に取っておこうと思う。何故なら、Anesthesia and Analgesia (AA)がチョー面白かったから。

そんなAAから、まずサラッと二つ。

da Silva PS, Fonseca MC.
Unplanned Endotracheal Extubations in the Intensive Care Unit: Systematic Review, Critical Appraisal, and Evidence-Based Recommendations.
Anesth Analg. 2012 Feb 24. [Epub ahead of print] PMID: 22366845.
ICUにおける予期しない抜管(自己/事故抜管)について検討した研究をsystematic review。文献が50見つかり、予期しない抜管の頻度は0.1-3.6 / 100 intubation days、つまり10人が10日挿管されていたら、0.1-3.6回起こるということ。危険因子などについても検討あり。

Mankes RF.
Propofol Wastage in Anesthesia.
Anesth Analg. 2012 Mar 13. [Epub ahead of print] PMID: 22415537.
ある病院の手術室8部屋で捨てられた注射薬を拾い集め、何が多かったか検討。単純にml数で表すと、Propofolが全体の45%を占めた。50mlと100mlのバイアルを廃止し、全部20mlアンプルだけにしたら、捨てられる量がなんと十分の一になった。

ついでにNEJMも。
Lamy A, Devereaux PJ, Prabhakaran D, et al.; CORONARY Investigators.
Off-pump or on-pump coronary-artery bypass grafting at 30 days.
N Engl J Med. 2012 Apr 19;366(16):1489-97. PMID: 22449296.
19カ国79施設4752名を対象としたRCT、Off-pumpとOn-pumpを比較。Primary outcomeは死亡/脳卒中/心筋梗塞/透析のどれかが30日以内に起こるかどうか。その結果、primary outcomeの発生頻度に差はなかったが、off-pumpの方が、輸血が少なく、出血のための再手術が少なく、AKIが少なく、呼吸器系合併症も少なかったけど、revascularizationは多かった。
この文献は7月にJSEPTICのジャーナルクラブにアップ予定。

で、本題はこれ。
Greenberg RS, Bembea M, Heitmiller E.
Rainy Days for the Society for Pediatric Anesthesia.
Anesth Analg. 2012 Feb 24. [Epub ahead of print] PMID: 22366849.

The Society of Pediatric Anesthesia(SPA、アメリカ小児麻酔科学会?)の総会の初日に雨が多いかどうかについて検討。1987年以降のデータを集め、月日や開催場所を考慮して検討した結果、学会初日に雨が降る確率はそれ以外の日に比べ2.63倍多かった(p=0.006)。P値が非常に低いため、単なる偶然とは考えにくく、学会に何らかのパワーがあると思われると著者等は結論。学会の開催地を干ばつで困っている地域で行うことを勧めている。

さて。
そんなわけあるかい!
と、皆さん、お思いでしょう。
そりゃそうだ。
で、ちゃんとこの文献についてeditorialがある。

Steven L. Shafer and Franklin Dexter
Publication Bias, Retrospective Bias, and Reproducibility of Significant Results in Observational Studies
Anesth Analg May 2012 114:931-932

つまりはバイアスがかかっているのが原因。
一つはpublication bias。
学会の開催と天気が関係ない、という文献を誰かが書いたら、速攻でリジェクトされ、精神科へのカウンセリングを勧められるだろう。
もう一つはretrospective bias。
人間はランダムなものの中からパターンを見いだす能力に長けている。例えば、円周率の72桁目から偶数が10連続で続く。その確率は2の10乗なので1024分の1。それが72桁目で起こるなんてすごい、とか。
今回のも、きっと誰かが気がついたんでしょう。あれ、この学会って雨が多いよねって。で、実際に調べてみたらそうだったと。でもこれは、気がついてから調べているので、当然のこと。

観察研究、特に後ろ向き研究は、あくまで仮説を立てるだけ。確信を得るには前向き研究、できれば二重盲検のRCTが必要、と。

噂を信じちゃいけないよ~
私の心はウブなのさ~
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PCRによる侵襲性カンジダ症の診断

2012年04月16日 | 感染
驚くべきというか、残念な出来事がありました。
日本の研究者が、臨床データの捏造により168もの文献を発表した可能性を示唆するデータがAnaesthesiaに掲載されました。

Carlisle JB.
The analysis of 168 randomised controlled trials to test data integrity.
Anaesthesia. 2012 May;67(5):521-37. PubMed PMID: 22404311.

また、Anaesthesiaにはこの事件に関連して4つのeditorialが掲載されています。
更には、この研究者の文献を掲載した雑誌の編集者たちが連名で日本の施設に送ったレターなど、この事件にどのように対応したかも分かります。

http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1111/(ISSN)1365-2044

つい1年前にドイツの研究者が発表した90の文献が麻酔集中治療系の雑誌から掲載中止になったということがありましたが、今回は日本人、かつ文献の数も多い。
非常に残念です。
データを捏造するとバレる。やめましょう。

さて、気を取り直して。
先週も面白そうな文献が目白押し。

Needham DM, Colantuoni E, Mendez-Tellez PA, et al.
Lung protective mechanical ventilation and two year survival in patients with acute lung injury: prospective cohort study.
BMJ. 2012 Apr 5; PubMed PMID: 22491953
Low tidal volumeの有効性を、実際の臨床で前向きに調査。ちゃんと換気量を少なくすると長期予後が7.8%改善。

Christensen MC, Morris S, Vallejo-Torres L,
Neurological Impairment Among Survivors of Intracerebral Hemorrhage: The FAST Trial.
Neurocrit Care. 2011 Oct 6. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 21976257.
脳出血に対するFactor VIIaの有効性について検討したFAST studyのpost hoc解析。脳出血患者の神経予後に関連した因子について検討。最初の24時間で収縮期血圧の低下が10%以下だと予後が良い。脳出血=血圧を下げる、ではないことを示した研究がまた増えた。

Kramer AH.
Early ketamine to treat refractory status epilepticus.
Neurocrit Care. 2012 Apr;16(2):299-305. PubMed PMID: 22237581.
痙攣重積の治療はGABAレセプターの抑制(ミダゾラム、プロポフォール、バルビツレート)だけど、重積の期間が長くなるとGABAレセプターが少なくなり、治療が困難になる。そのときにNMDAレセプターであるケタミンが有効、という話。

で、本題はこれ。
Clinical Infectious Diseasesから。

Nguyen MH, Wissel MC, Shields RK, et al.
Performance of Candida Real-time Polymerase Chain Reaction, β-D-Glucan Assay, and Blood Cultures in the Diagnosis of Invasive Candidiasis.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1240-8. Epub 2012 Mar 19. PubMed PMID: 22431804.

侵襲性カンジダ症(血液もしくは無菌の部位からカンジダが検出された)の症例55例と、コントロール73例に対し、血液培養、PCR、ベータグルカン(BG)を測定し、その精度を評価。その結果、
・感度はPCRが80%、BGが56%、特異度は両方とも70%くらい
・血液培養陽性例ではBGの方が感度が高く(59% vs. 68%)、深部感染ではPCRが高い(89% vs. 53%)
・深部感染例のうち血液培養が陽性だったのは17%だけ
・血液培養とPCR、血液培養とBGを組み合わせると、侵襲性カンジダ症の診断感度が98%、79%に改善
・PCRとBGを組み合わせると感度は95%になるけど特異度は50%位に下がる

さて。
先週のCIDには、この文献に関連したレビューが載っている。

Kourkoumpetis TK, Fuchs BB, Coleman JJ, et al.
Polymerase chain reaction-based assays for the diagnosis of invasive fungal infections.
Clin Infect Dis. 2012 May;54(9):1322-31. Epub 2012 Feb 23. PubMed PMID: 22362884.

これにも書いてあるけど、PCRはどうも感度は良さそう。でも結局、この検査を行うことにより、つまりこの検査の結果に基づいて臨床判断をすることにより、患者予後が改善するかどうかが問題で、そういう検討を行っている研究はほとんどない。
培養オンリーの時代では診断の感度が問題だったけど、今はそこはクリアーしたので、今後は検査に基づく判断が予後改善に結びつくかの検討が必要なんでしょうね。

もう一つ、BGの感度/特異度はせいぜい60-70%だというのが改めて示されている。
BGの結果だけで判断すると、その正解率は70点だということは、肝に命じましょう。

P.S. 原宿キッスって知らないって言われた。トシちゃんですよ、トシちゃん。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ICU専門医がずっとICUにいるとどうなるか?

2012年04月10日 | ICU・システム
春はお別れの季節です~
みんな旅立っていくんです~

皆さんの職場はどうですか?
慈恵でも、別れと、そして出会いがたくさんありました。
メンバーが変わり、体制も変えていこうと、いろいろ模索の最中。
教育担当のS井先生なんか、休みの日も出勤してがんばっている。よっ、大統領!

そしたら、先週のAJRCCMとCHESTに、関連した文献が偶然にも出ていたので、両方ともご紹介。

その前に、異国のICUでよくあるシステムを知らないといけない。
一つの病院に数人の専門医がいる場合、例えば10床程度のICUならそのうちの一人が一週間責任者になる。他の人達は研究したりバイトしたり自分のもう一つの専門(内科とか麻酔科とか外科とか)の仕事をしている。責任者は夜はオンコールとなり、若い医者(フェローか研修医)が夜にICUにいて、何かあったら電話で相談する。一週間が終わると、次の人に申し送る。

まず、ブルージャーナルから。
Garland A, Roberts D, Graff L.
Twenty-four-Hour Intensivist Presence: A Pilot Study of Effects on Intensive Care Unit Patients, Families, Doctors, and Nurses.
Am J Respir Crit Care Med. 2012 Apr 1;185(7):738-43. Epub 2012 Jan 12. PMID: 22246176.

カナダの2つのICU。
その週の担当のICU専門医が夜にオンコール(パターンA)をするのと、別の専門医が夜にICUにいる(パターンB)のとどちらがいいか、について検討。8週間ずつでAとBを2回繰り返し(合計32週間)、専門医、家族、ナース、フェローにアンケートをとった。患者予後についても検討。なおパターンBでは、夜勤の専門医は日中の担当医が決めたことには原則従うというルールの元に診療を行った。
その結果、パターンAよりもパターンBで、
・専門医の”燃え尽き感”(疲労感としますか)が減少し、仕事と家庭のアンバランスが減少し、自分の役目の不明確さが増えた。
・患者予後には差はなかった。
・家族の満足度にも差はなかった。
・ナースは、医者との協力やコミュニケーションや相互理解には差を感じなかったが、医者同士の衝突はより多いと感じた。
・フェローは、夜勤帯で働いているときに、より監視され、自分の自律性が損なわれると感じた。
そして、パターンAよりもBの方が良い、と答えた専門医は、実際にパターンBを経験する前は40%だったけど、経験したら60%に増えた、と。

次は、CHESTから。
Diaz-Guzman E, Colbert CY, Mannino DM, et al.
24/7 In-house Intensivist Coverage and Fellowship Education: A Cross-sectional Survey of Academic Medical Centers in the United States.
Chest. 2012 Apr;141(4):959-66. Epub 2011 Dec 29. PubMed PMID: 22207677.

アメリカの大学病院のICUに働くICU部長とフェローにアンケート。
・あなたのICUでは、専門医が24時間いますかの質問に、部長の33%が"yes"
・24時間いることにより、患者予後は改善し、フェローの仕事量は減少し、フェローの教育にはポジティブに作用すると思うけど、自律性には悪影響を与えると思う。

さて。
まず、どちらの研究も、驚く結果は出ていないというか、想像通りというか。
でも、それをちゃんと研究するというのは、特にカナダの研究のように実際にやってみて比較するというのは、偉いと思う。

まとめると、
ICU専門医は、夜に電話で起こされるよりも、代わりの人がICUにいてくれる方が楽で良いが、自分が夜勤をすると、日勤の指示に従わないといけないので不愉快だし、ナースにもそれはバレる。
若者は、専門医が夜もいてくれると安心だし、勉強にもなるけど、自分が決めなくなるのでつまらない。
家族や患者さんには影響しない。

うーん。
これ以上の考察は難しいので、終了。

ちなみに慈恵では、スタッフ数の増加に伴い、どんどん24/7の方向に移行していっている。
それが、患者予後にどう影響しているのか、他の医療従事者(特に夜勤のナース)はどう思っているのか、若者の教育という意味ではどうなのか、分からない。

AH- どっちがいい?
なんでもいいから、一度お願いしたい~
恋し 恥かし 原宿キッス~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Medical conferenceは必要か?

2012年04月02日 | その他
まず、FACE studyから。
Fever and Antipyretic in Critically ill patients Evaluation (FACE) Study Group
Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis: multi-centered prospective observational study.
Crit Care. 2012 Feb 28;16(1):R33. PubMed PMID: 22373120.
言わずと知れた、集中治療医学会主催の臨床研究第一弾。発熱と解熱療法は予後に影響を与えるか、についての多施設観察研究。基礎疾患が敗血症だと、発熱自体は予後に影響しないが、解熱剤の投与は予後を悪くする。敗血症でない場合は、発熱は予後に悪い。現在、この関連性を実証するために、FACE II studyが進行中とか。
日本からの多施設研究、いいですねー。

次はお知り合いの方の研究。
Imamura T, Nakagawa S, Goldman RD, et al.
Validation of pediatric index of mortality 2 (PIM2) in a single pediatric intensive care unit in Japan.
Intensive Care Med. 2012 Apr;38(4):649-54. Epub 2012 Jan 20. PubMed PMID: 22270470.
成育医療センターの中川先生等が行った研究。日本最大のPICUで、PIM2(小児の重症度スコア)の正当性評価。3年間で2500名(!)を観察し、PIM2の精度の高さを証明。

次は、動物実験だけど面白い結果。
Zanella A, Cressoni M, Epp M, et al.
Effects of tracheal orientation on development of ventilator-associated pneumonia: an experimental study.
Intensive Care Med. 2012 Apr;38(4):677-85. Epub 2012 Feb 18. PubMed PMID: 22349422.
咽頭からのたれ込みがVAPの原因なら、頭を低くしてればVAPにならないのか?という疑問を検証するため、ブタを使って、頭を45度上げて人工呼吸するのと、10度下げて人工呼吸するのとを比較。その結果、頭を上げていると3日で全例がVAPになったけど、下げていると1週間たっても経管栄養していても肺はほぼ無菌のまま、だったと。
現実的に可能かどうかは別として、ちょっと考えさせられちゃう感じ。

で、本題。
文献ではなく、JAMAのviewpointから。
Ioannidis JP.
Are medical conferences useful? And for whom?
JAMA. 2012 Mar 28;307(12):1257-8. PubMed PMID: 22453564.
Medical conference、つまり学会の総会(年に一度とかある、たくさんの人が一カ所に集まるやつ)って、意味あるの?という話。
以下、要約。
(日本語では学会という言葉には意味が二つあって、medical conferenceのことを学会と呼ぶことも多いけど、混乱するので、ここではmedical conferenceのままで)

・理論的には、medical conferenceの目的はリサーチの普及と進歩、教育、根拠に基づいた方針の設定。しかし、medical conferenceがそれらの目的のために有用であるという根拠はなく、逆に有害であるという根拠が出てきている。
・たくさんの研究結果およびその抄録が発表されるが、その多くはpeer reviewされておらず、されたとしても施設名や研究者名などが重要視される。
・発表された研究のほとんどは原著論文として雑誌に載ることはない。発表されたとしても、peer reviewが行われた後では異なる結果が発表されることもある。
・雑誌に掲載される前の研究結果が最新情報として発表されるセッションはmedical conferenceの魅力の一つとされるが、結果が出ているなら雑誌に発表できない理由はないし、わざわざ遠くから人を集めなくてもその情報を発信する方法はある。
・学会で発表すると有名になるし、有名人の発言は強い影響力を持つ。しかし、その発言に価値があるとする保証は無い。若い研究者達は、研究の有用性や仕事量や独創性よりも、学会内での地位を得ることに一所懸命になりうる。
・業者は何千人もの医師に会える機会をフル活用する。
・最近のmedical conferenceでは、業者から何らかの支援を受けている場合は公表する必要があるが、多くの発表者が支援を受けている場合にどんな客観的な情報が得られるかは不明確である。
・情報が電子的にすぐに世界中でシェアできる時代に、大きなmedical conferenceが科学の普及や進歩に貢献するかどうかは不明確である。教育やトレーニングも他に方法があり、medical conferenceの開催にかかる費用をより効果的な教育方法に使用することも可能かもしれない。
・今後、medical conferenceはなくなるだろうか。人々の興味がなくなれば消滅するだろうが、諸々の理由により、そういうことは自然には起こらないだろう。
・ソーシャルネットワーキングなどの方法に比べ、現在のmedical conferenceのやり方が有益であるとする根拠が必要である。

さて。
基本的に、この著者とまったく同意見。
10年くらい前から、medical conferenceって何の意味があるのだろうと思っていた。
でもそれだと一方的なので、medical conferenceのメリットを考えてみる。
ただし、勉強になる、自分の業績になる、新しい研究結果をはやく知ることができる、研究のアイデアが得られる、などは上記に議論されているので、それ以外のメリットは何か。
・自分の病院の外に出ると、違った刺激を受ける。特に、初めてmedical conferenceに参加した若者にとって。
・新しい知り合い/友人ができる。メールでしかコミュニケーションをとったことのなかった人と実際に会える。
・遠方から人が集まるので、会議/会合を期間中に行いやすい。
こんなところぐらいしか思いつかないが、全面的に無意味、とはならないかな。
問題は、medical conferenceによる弊害(コスト、正しいとは言えない情報の普及など)とどちらが大きいか。

時代とともにmedical conferenceのあり方が変わっていっても、不思議ではないな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする