Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUにおける鎮静目標:プロトコルを超えて考える

2024年08月31日 | 神経
鎮静の話かと思ったら、なんかタイトルとは関係ないところでビビった。

Brandao Barreto B, Luz M, Gusmao-Flores D.
Sedation targets in the ICU: thinking beyond protocols.
Lancet Respir Med. 2024 Jul 19:S2213-2600(24)00221-2. Epub ahead of print. PMID: 39038474.


・ブラジルではICUの患者看護比は5対1(免許のない看護助手が2:1で配置)
・ほとんどがオープンICU
・看護師の給与は安い
・ラインの自己抜去などは看護師が罰せられる
これらの結果、どうしても患者さんは深鎮静になる、と。

おおお。
21世紀にそんなところがあるんだ。
いや、もっとひどいところも沢山あるのだろうけど、こうやって具体的に書かれたものを読むと、ビビる。

オーストラリアで働いていた経験から日本を見ると、
看護師は若いし資格を持っていない人が多い。それが20年経っても改善がごくわずかしか見られない。
と嘆きたくなるのだけど、それは贅沢な悩みなんだな、と思いました。
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出血性脳卒中研究の前進

2024年07月04日 | 神経
The Lancet Neurology.
Forging ahead in haemorrhagic stroke research.
Lancet Neurol. 2024 Jun;23(6):545. PMID: 38760082.


たった1ページの文章なのだけど、最近発表された研究、今後発表予定の研究がたくさんリストアップされている。脳梗塞に比べ脳出血は明らかに研究の数が少なくて、手術適応にしても血圧の管理にしても止血剤にしても抗凝固にしても、ずっと同じ疑問を感じていたのが、ここ数年で状況が変わってきて、確かに前進している印象がある。

最新研究のリストとして、利用価値のある文章だと思います。
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動脈瘤性SAHにおける早期脳損傷の臨床的転帰予測:SHELTER-Score

2024年05月16日 | 神経
Hofmann BB, Donaldson DM, Neyazi M, et al.
Clinical Outcome Prediction of Early Brain Injury in Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: the SHELTER-Score.
Neurocrit Care. 2024 Apr;40(2):438-447. PMID: 38030877.


研究自体はすごく普通。
面白いのはIntroductionの1段落目。日本人の常識を悉く覆している。
・SAH後の期間を”スパズム期"ではなく”delayed cerebral ischemia (DCI) phase”と呼んでいる。
・スパズムがなくてもDCIは起こる。
・clazosentanはスパズムを予防するが予後は改善しない。

Introductionの1段落目は、”これは常識ですよね”という内容を書くところ。
そこに多くの日本人が常識とは思っていないことが3つも書いてある。
なんか笑ってしまったよ。
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動脈瘤破裂によるSAHの管理:集中治療専門医のための最新情報

2024年04月23日 | 神経
Robba C, Busl KM, Claassen J, et al.
Contemporary management of aneurysmal subarachnoid haemorrhage. An update for the intensivist.
Intensive Care Med. 2024 Apr 10. Epub ahead of print. PMID: 38598130.


表1の一部をコピペ。

DCI prevention
Not recommended: Intravenous nicardipine, endothelin receptor antagonist, statins, magnesium sulphate, hypervolemia, prophylactic hemodynamic augmentation

Anti‐inflammatory strategies
No benefit: Clazosentan: REACT (phase 3 study of clazosentan for DCI) and CONSCIOUS 2/3

おお!
REACTって書いてある!
そしてもちろんNo benefitってなってる!

メジャーな国際雑誌で利益なしと書かれた薬に年間160億円使う日本。
そしてその薬を新たに販売しようとする韓国。
極東の笑止
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ピヴラッツのREACT trialの結果

2024年03月26日 | 神経
この件ですが、なんと、知らぬ間に発表されてました。
製造・販売会社( IDORSIAIDORSIA Japanそーせい)のウェブサイトにも書いてないし、ピヴラッツのサイトにもないし、Googleと旧twitterで日本語と英語で検索しても出てこない。
ほぼ誰も知らないのではないか??

発表されたのは文献ではなくClinical Trials.govの中。
PubMed検索していてリンクに飛んで気がついた。

NCT03585270

知らなかったのだけど、Clinical Trials.govって、こんなに詳細に結果が載っているんだね。現在進行中の研究を調べる時にしか訪問しないからかな。

Participants:
・Males and females aged 18 to 70 years
・Ruptured saccular aneurysm, successfully secured within 72 hours of rupture, by surgical clipping or endovascular coiling
Primary Outcome: Occurrence of Clinical Deterioration Due to Delayed Cerebral Ischemia (DCI) From Study Drug Initiation up to 14 Days

N=406(日本のRCTとほぼ同じ人数)。
Primary outcome: 32/202 vs. 35/204, p=0.7338

脳梗塞の発生頻度やmRSが有意差のないレベルで治療群の方が良かったりするけど、それを言ったら有意差のないレベルで治療群の方が合併症が多くて死亡率が高い。
批判的吟味をするほど熟読していないけど(結果を公表したのだから文献にもなることを期待したい)、これで十分。FDA通過を諦めた理由がよく分かった。

そうそう、この結果をIDORSIAがClinical Trialsに投稿したのが去年の11月(掲載されたのは今年の1月)、そして韓国でピヴラッツの販売が認可されたのが12月。
可哀想な韓国。。。
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急性期脳梗塞に対する血栓除去術後の血圧管理についてのメタ解析

2024年03月06日 | 神経
Ghozy S, Mortezaei A, Elfil M, et al.
Intensive vs Conventional Blood Pressure Control After Thrombectomy in Acute Ischemic Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA Netw Open. 2024 Feb 5;7(2):e240179. PMID: 38386320.


この話題、何度かやってますが、メタ解析も出ました。
RCT4つ、N=1571。血圧を下げると神経予後が悪化し、有意ではないが死亡率も上がり、脳出血は減らない。

コントロール群の血圧ターゲットはどれもだいたい140-180mmHg。
脳外科医や神経内科医に「ターゲットは140以下で」とか言われてニカルジピン使ってませんよね?
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レミフェンタニル

2024年02月23日 | 神経
最近、やけに耳にするようになったな、と思ったら。
ああ、そうなんですね。2022年8月に効能が追加されたんですね。
臨床やめると、こういう情報は疎くなるわ。
僕的には、「半減期が短いなどの理由で一時的に話題になり、OP室では使われているけど、ICUでは大した効果が示されず、忘れて良い薬」リストに10年以上前に入れていたので、はて?と思っていた。

手元の文献を改めて確認したけど、新しい文献が全然ない。どうして自分でこう結論づけたのかの根拠を忘れてしまった。文献を紙管理からPDF管理にしたのが2012年で、それ以前の文献は99%捨ててしまったし。

仕方ないのでPubMed。
remifentanil [ti] AND ("intensive care" OR "critical care")
で検索し、RCTでフィルタリングした結果がこれ。

思った通り、ブームは10年以上前に終了している。
さらに、ここ数年の文献のタイトルを眺めてみたけどICU関連のRCTは全然なくて、結局、ICUのremifentanilについて調べた人なら誰でも知っていそうなこのメタ解析を確認すればよい、という結論になってしまった。

Zhu Y, Wang Y, Du B, Xi X.
Could remifentanil reduce duration of mechanical ventilation in comparison with other opioids for mechanically ventilated patients? A systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2017 Aug 3;21(1):206. PMID: 28774327.


Remifentanilを使うと人工呼吸期間が1.5時間、ICU在室期間が2時間短くなる、と。
手元にこの文献がなかったのは、何年も前に”忘れて良い”リストに入れていた薬についての文献を久しぶりに見かけたけど、結論を見て残す価値なしと判断したんじゃないか、という気がしてきた。

大事な点は、メタ解析の対象が23研究、N=1905であること。つまり大きな研究がない。PropofolもDEXもNEJMやJAMAがあるのに。ICU界隈ではあまり興味が持たれなかった、ということを示唆するし、実際、PADIS2018にもNEJMの鎮静のレビューにも優位性については記載がない。

コストが数倍だったり、ボーラスしにくくかったり、ルートに気をつけないといけなかったり。
確認の結果、自分の中での評価は変化なし、です。
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動脈瘤性くも膜下出血の管理ガイドライン

2023年09月27日 | 神経
Neurocritical Careの最新号はSAHの管理ガイドライン。
細かく章に分かれているのだけど、まとめがこれ。

Treggiari MM, Rabinstein AA, et al.
Guidelines for the Neurocritical Care Management of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
Neurocrit Care. 2023 Aug;39(1):1-28. PMID: 37202712.


"We recommend against endothelin receptor antagonist administration because of lack of benefit on mortality and functional outcomes and an increased risk of adverse events (strong recommendation—high quality of evidence)."
これは当然として、

"We recommend against the administration of intravenous (IV) nicardipine for the prevention of DCI because of increased risk of adverse effects (strong recommendation, moderate quality of evidence)."
これは新しい。
「ニカルジピンはオフするな」的なことを外科医が言ったら、このガイドラインを投げつけて優しく手渡してあげてください。

残念ながら、文献サーチが2021年4月までなので、これが参照文献に含まれていない。なので、clazosentanについてはこれを投げつけて見せても説得力に乏しいので、ご注意を。
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脳梗塞における血管内血栓除去術後の降圧

2023年09月19日 | 神経
Nam HS, Kim YD, Heo J, et al.; OPTIMAL-BP Trial Investigators.
Intensive vs Conventional Blood Pressure Lowering After Endovascular Thrombectomy in Acute Ischemic Stroke: The OPTIMAL-BP Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2023 Sep 5;330(9):832-842. PMID: 37668619.


血管内治療後に血圧が高いと脳出血を起こすかもしれないけど、降圧すると虚血部位の灌流が悪くなるかもしれない。どっちがいい?という質問に対するRCT。結果は、治療後最初の24時間にSBP 140mmHg以下をターゲットとすると有意に神経予後が悪くなるということで、研究は途中でストップ。

Introdcutionによると、この問題に対する多施設RCTは3つ。1つめはこれで、差は無し。2つめはこれで、降圧は有害。

もういいんじゃないかな。
脳梗塞に対する血管内治療後の降圧は、もしまだやっているなら、やめよう。
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ピヴラッツのメタ解析

2023年07月27日 | 神経
Pontes JPM, Santos MDC, Gibram FC, et al.
Efficacy and Safety of Clazosentan After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: An Updated Meta-Analysis.
Neurosurgery. 2023 Jul 18. Epub ahead of print. PMID: 37462365.


6研究、2778例。Clazosentanはスパズムを減らし(RR 0.54)、DCIを減らすが(RR 0.56)、神経予後には影響を与えず(RR 0.99)、合併症が多い(RR 1.54)。

6つの研究というのは、日本が2つ、CONSCIOUS1から3、それと昔の小さいやつ。
Forrest plotがたくさん載っていて、high doseとlow doseについても分けてあるのでわかりやすい。だって、日本の研究がCONSCISOUSよりもNが小さくてphase IIbであるにも関わらず評価できるポイントと言えば、投与量が多いことだから。High doseにすると、low doseよりもDCIを減らす効果が明確になり、GOSEは変わらず、なんと死亡率はRRが1を超える(1.21)。
各研究のバイアスの評価もされていて、当然のことながら日本の研究はCONSCIOUSよりも低い評価。

こんな薬に毎年100億円を使う国に、我々は住んでいます。
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