Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

勝手にブログ紹介

2014年05月31日 | 勝手に紹介
基本的に学会の学術集会とか好きではないのだけど(理由はここに)。


JSEPTIC看護部会のブログ。
こういう学術集会なら良いかも。
あと、最後の文章が素敵。
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補液による造影剤腎症の予防

2014年05月27日 | 腎臓
Brar SS, Aharonian V, Mansukhani P, et al.
Haemodynamic-guided fluid administration for the prevention of contrast-induced acute kidney injury: the POSEIDON randomised controlled trial.
Lancet. 2014 May 24;383(9931):1814-23. PMID: 24856027.


アメリカの1施設RCT。成人でeGFRが60以下で一つ以上の危険因子(DM、心不全、高血圧、75歳以上)のある396例。心カテ時に左室拡張末期圧に基づいて補液するかどうかでRCT。Primary outcomeはよくある造影剤腎症の定義(クレアチニンが25%以上もしくは0.5mg/dl以上に上昇)を満たす頻度。具体的には、まず両群ともにカテ前に生食3ml/kgを1時間で投与。そして介入群では心カテ時に左室内にカテーテルを挿入し、その値が13mmHg以下, 13-18mmHg, 18mmHg以上で分類し、それぞれ補液量を5, 3, 1.5ml/kg/hrと設定し、その量でカテ中およびその後4時間投与する。コントロール群では全例で1.5ml/kg/hr。その結果、介入群の方が合計の補液量が多く(1727 vs. 812ml、p<0.0001)、造影剤腎症の発生頻度が少なかった(6.7% vs. 16.3%、p=0.005)。呼吸苦のため補液が中断されたのは両群ともに3例ずつだった。

ふーん。
感想は明日。

それにしても、造影剤腎症の研究はここ10年くらいずーっと人気が続いている。メジャー雑誌もよく載せる。
少し珍しい。
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ARDSにスタチン

2014年05月26日 | 呼吸
さ、今週も始めますか。
今週はメジャー雑誌だけで終わりそう。

The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network.
Rosuvastatin for Sepsis-Associated Acute Respiratory Distress Syndrome.
N Engl J Med. 2014 May 18. [Epub ahead of print] PMID: 24835849.


泣く子も黙るARDSnetの新しい研究。ARDSだけはアメリカの十八番。
セプシスに関連したARDS症例745例。ロスバスタチンかプラセボに無作為に割り付け。Primary outcomeは退院もしくは60日までの死亡率。1000例までやるつもりだったけど、無駄だろうということで途中で終了。死亡率はスタチン群が28.5%、プラセボ群が24.9%(p=0.21)。人工呼吸フリー日数は差が無かったけど、腎不全/肝不全フリー日数は有意にスタチン群の方が短かった(つまり臓器不全が多かった)。

観察研究では良さそうで、RCTで悪い結果になった典型例。
そういうことも少なくないんだよ、という意味を込めて、ジャーナルクラブ行きとしましょうか。
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治療制限の判断のシミュレーション

2014年05月23日 | 終末期医療
面白い、という意味では、先週ダウンロードした文献ではこれが一番だった。

Turnbull AE, Krall JR, Ruhl AP, et al.
A Scenario-Based, Randomized Trial of Patient Values and Functional Prognosis on Intensivist Intent to Discuss Withdrawing Life Support.
Crit Care Med. 2014 Feb 26. [Epub ahead of print] PMID: 24584065.


630人の集中治療医が対象(ほとんどはアメリカ人)。無作為に3群に分けて、10通りの異なった状況を提示し、家族と治療制限について話をするかどうかについて検討。
具体的には、76歳女性、重症市中肺炎にてICUに入室、人工呼吸管理。入室後72時間後の患者さんの状態(バイタルとかラボデータとか人工呼吸器の設定とか)を10通り提示して、その都度、72時間後の家族との話し合いの場で治療制限の話題を出すかどうか質問し、絶対する/多分する/するかも/多分しない/絶対しない、の中から選んでもらう。
どうやって3群に分けるかというと、
・入室時に家族が、”老人ホームで完全介護を受ける状況がもっとも期待できる結果だとしたら、母は治療継続を望まないだろう”と話した(Control群)
・入室時に家族が、”母は戦う人だったので、老人ホームで完全介護を受ける状況がもっとも期待できる結果だとしても治療を望むだろう”と話した(Value群)
・入室時に家族が、”老人ホームで完全介護を受ける状況がもっとも期待できる結果だとしたら、母は治療継続を望まないだろう”と話していて、かつ治療制限について話をするかどうかの質問の前に、3ヶ月後のこの患者さんの予後はどうなっているだろうと思うかと質問し、介助無しに暮らせる/介助は不要だけど少し運動能もしくは認知能が低下する/日常生活にある程度の介助が必要/完全介助/入院中に死亡、のどれかを選択してもらう(Prognosis群)
その結果、Control群とValue群で治療制限についての話をする頻度に差はなく、Prognosis群において有意に上昇した。

説明が下手でごめんなさい。
CCMだし、興味を持ったら原文を読んでね。
つまり、少なくともこのシミュレーションでは、本人の意思についての家族の推測が治療制限の判断(正確には家族と相談するかどうか)に影響を与えず、予後を推測させると治療制限する方向に判断が変化する、という結果だった。

なんか、説明するのが難しいから、これで終了。
シミュレーションの話で、現実に起こるのかどうかは分からないけど、とりあえず、面白い。
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夜のICUを暗くて静かにすると

2014年05月22日 | 神経
これと似た話。

Patel J, Baldwin J, Bunting P, et al.
The effect of a multicomponent multidisciplinary bundle of interventions on sleep and delirium in medical and surgical intensive care patients.
Anaesthesia. 2014 Jun;69(6):540-9. PMID: 24813132.


これも1施設のbefore-after研究、それぞれ167例と171例。夜のICUの音と光を減らして患者さんの睡眠の質とせん妄の発生頻度への影響について評価。具体的には、例えば、
・ドアを全部閉める
・電話のベルの音を下げる
・ベッドサイドで余計な話をしない、するときは小さな声で
・明かりを暗くする
とかいろいろ。その結果、睡眠の質が改善し、覚醒する回数が減少し、せん妄の発生頻度が有意に減少した(33% から14%、p<0.001)。

ICUシンドロームって言葉が昔はあった。
ICUにいるとせん妄になる、という意味。
でもそうじゃなくて、せん妄というのは重症病態に付随した精神症状なので正しくない用語だ、ということで、この言葉は無くなった。
不眠もそう。眠れないとせん妄になるのではなく、せん妄の症状の一つとして不眠があるのだ、と言われていた。

でも、どうもICUの環境も不眠もやっぱりせん妄の発生に影響があるみたい。
眠剤や鎮静剤がせん妄を減らすとは思えないし示されてもいないけど、夜は暗くて静かなICUの方が良さそうだ。

医療者も寝ちゃいそうだけど。
みんな寝ているICU。それも平和でいいかも。
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人工呼吸患者のSpO2を低めに管理したら

2014年05月21日 | 呼吸
Suzuki S, Eastwood GM, Glassford NJ, et al.
Conservative Oxygen Therapy in Mechanically Ventilated Patients: A Pilot Before-and-After Trial.
Crit Care Med. 2014 Feb 20. [Epub ahead of print] PMID: 24561566.


オーストラリアの1施設のBefore-after研究。人工呼吸患者の酸素濃度を、ある時期からSpO2を90-92%を目標に管理するようにしたらどうなったかについて検討。普通の管理の時期が51例、SpO2を低めにした時期が55例。その結果、SpO2は98.4%と95.5%、PaO2は107と83Torr、FiO2は0.4と0.27(すべて中央値)。SpO2を低くした時期の方が、乳酸値が低く(p=0.08)、肺以外の臓器不全が少なく(p=0.019)、28日死亡率が低かった(p=0.062)。

研究の目的は、あくまでSpO2をターゲットとしたRCTが可能かどうかを評価するパイロット研究。不必要な酸素投与は有害かもという根拠はいろいろあるので、人工呼吸を要するICU患者を対象としたRCTを将来的に考えているみたい。

1移設のbefore-after。
臓器不全の有意差などは偶然の産物であった可能性も十分にあるけど、少なくともSpO2を低くしたことによって有害だったという結果は見つかっていない。

さて、今後の研究待ちです。
ただ、潜在的には相当デカイ話。
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心停止症例の低体温療法後の予後予測

2014年05月20日 | 神経
Oddo M, Rossetti AO.
Early Multimodal Outcome Prediction After Cardiac Arrest in Patients Treated With Hypothermia.
Crit Care Med. 2014 Jan 22. [Epub ahead of print] PMID: 24463859.


スイスの大学病院のICU。低体温療法を受けた134名の心停止症例。脳幹反射、脳波、SSEP、血清NSE値はそれぞれ予後と関係があると言われているけど、それらを複合的に使用したら予後予測はどうなるか、について検討。多変量解析すると、脳波の活動無し、脳幹反射の不十分な回復、NSE値が33以上の3つは独立因子として残ったけど、SSEPは残らなかった。3つを使った予測精度(CPC3以上)は、AUROCで0.88。陽性予測値は100%だけど、陰性予測値は0.62。

ある検査法が心停止後症候群の予後を予測するかどうかについての研究はいろいろあるけど、じゃあそれを複数やってみたらどうなるか、というのはこれが初めてかも。SSEPは抜けるんだ、ふーん。
あくまで一施設研究なので、多施設での検討が必要だけど、脳幹反射と脳波とNSEならやりやすい。

ただ、これは本文にもeditorialにも書いてあるのだけど、
例えば脳波が平らだから予後は悪いでしょう、だから治療を止めましょうとか臨床的に判断して、後で平坦脳波と予後の関連を見ていたりするので、本当に精度が高いかどうかは分からない。実際、陽性予測値と陰性予測値の差が明らかに出ているというのがそのバイアスを示唆している。
こういう結果だから予後は良いと正確に予測できる検査方法があれば、信憑性はずっと高くなるのだけど。
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ICON audit

2014年05月19日 | ICU・システム
Vincent JL, Marshall JC, Namendys-Silva SA, et al.; ICON investigators.
Assessment of the worldwide burden of critical illness: the Intensive Care Over Nations (ICON) audit.
Lancet Respir Med. 2014 May;2(5):380-6. PMID: 24740011.


World Federation of Societies of Intensive and Critical Care Medicineが主催し、世界84カ国730のICUが参加した、成人ICU患者の横断研究。2012年5月8日から10日間にICUに入室した患者の調査。ただし24時間以内に退室した予定手術患者は除く。10069名が対象となり、そのうちアジアは1928名。APACHE II 17.9点、救急外来からの入室が37.9%、年齢60歳、敗血症29.5%、人工呼吸器の使用が53.7%、ICU死亡率16.2%、病院死亡率が22.4%だった。

中東やアフリカも参加している。
簡単に言ってしまえば、これが世界の平均値。

慈恵iCUも参加しました。
ときどきこういう国際研究に参加するけど、文献になるとなんか嬉しいね。
それにしても、何でLancet Respiratory Medicineなんだろう。Lancetにrejectされちゃったのかなー。
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ガス抜き

2014年05月17日 | ひとりごと
つい先日、面白いことが二つあった。

一つは、
どうしてそうするのか、ずっと前からある科に聞いていたことの返事が来て、それが、根拠は無いのだけど日本のガイドラインにそう書いてあって、以前からやっているから、だったこと。

もう一つは、
集中治療を専門としていない人が集中治療をやろうとして、本を読んだりいろいろな人に聞いたりしながらやって、周囲がこれは無理だと判断したのに、当事者がそれを認めなかったこと。

根拠に基づいた集中治療を実践しようと努力し、その普及が進む事を希望している者としては、なかなか面白い出来事だった。
自分の所属する団体でこういうことがまだ起こるという事に改めて驚いたし、日本の医療の変化速度の遅さにも改めて驚いた。

“驚く”の部分を”ガッカリ”とか”残念”とか”悲しい”とかに置き換えるよりも、”驚く”の方が好きだ。
少し、前向き感がするからかな。

前向きでいたいならこんなこと書くなと言われそうだけど。
グチですよ、グチ。
いわゆる、ガス抜き。ぷー。
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予期しない死亡のシミュレーション

2014年05月16日 | その他
タイトルが悪いが、他に良いアイデアが無く。

Fraser K, Huffman J, Ma I, et al.
The emotional and cognitive impact of unexpected simulated patient death: a randomized controlled trial.
Chest. 2014 May 1;145(5):958-63. PMID: 24158305.


116名の医学部の最終学年の学生が対象の、シミュレーションを利用したRCT。
SimMan(シミュレーション用のロボットみたいなやつ)を使って、70歳女性のアミノサリチル酸中毒による意識障害という設定で初期診療の実習をする。ずっと同じ内容だけど、最後の3分だけシナリオが2種類あり(ICUへの搬送が決まった時点で終了するか、忙しいからと断られている最中に心停止してそのまま永眠するか)、学生を無作為に2群に分ける。その3ヶ月後に、似たような設定のシミュレーションによるテスト(60歳男性のエチレングリコール中毒による意識障害)を受け、診断およびマネージメントの能力を評価した。その結果、最初の実習で患者さんの死亡を経験した学生の方が有意にテストの合格率が低かった(70.9% vs. 86.9%)。

患者さんの死亡は、家族だけでなく医療スタッフにも影響がある。例えばICUでのバーンアウトの危険因子として知られている。特に若い人は、家族や友人の死に出くわしたことが無い場合が多いので、影響が強い。

そこまでは分かるのだが、シミュレーションですらこんな結果が出てしまうのは、単純に驚きだ。
それとも、よっぽど僕の感覚が鈍くなってしまっているのか。。。

ICUに長くいると、患者さんも生も死もベルトコンベアのように流れていってしまう感じがある。
良くない。良くないな。

慈恵ICUでは、今月から”グリーフカンファレンス”という名前の、先月の死亡例をみんなで振り返る会を毎月やることになった。
今日がその初日。
ベルトコンベアにならないようにしたいと思います。
ICUの最大の仕事は、人の命を助けることだもの。
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