Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

日本の多施設ICUにおける肺動脈カテーテル使用の特徴と死亡率との関連

2023年10月29日 | データベース・JIPAD
JIPADのデータを利用した自治さいたまICUの研究がまたCritcal Careにアクセプトされましたー!
いえーい!

Open access
Published: 28 October 2023
Characteristics of pulmonary artery catheter use in multicenter ICUs in Japan and the association with mortality: a multicenter cohort study using the Japanese Intensive care PAtient Database
Kentaro Fukano, Yusuke Iizuka, Seiya Nishiyama, Koichi Yoshinaga, Shigehiko Uchino, Yusuke Sasabuchi & Masamitsu Sanui


PAカテって、20年以上前は敗血症性ショックとかARDSにビシバシ使ってたんだよね。
いつのまにか、随分変わった。

ちなみに英文校正はChatGPTにやっていただきました。もう英文校正は業者に頼まなくてもOK(な雑誌はある、少なくとも)。
After the manuscript was written by the lead author and reviewed and revised by the coauthors, English language proofreading was conducted using ChatGPT®.

みんなも、JIPADのデータを使ってメジャー雑誌にどんどんアクセプトされちゃおーぜー。
おっとその前に、そもそもJIPADに参加しないといけないけどね。
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西暦2050年、ある集中治療専門医の回想

2023年10月28日 | ICU・システム
ここ数年、未来の集中治療はどうなるのか、ほぼ毎日考えている。
そしたらドンピシャリの文章がCCに出ていたので、ちょっとビックリ。

Cecconi M.
Reflections of an intensivist in 2050: three decades of clinical practice, research, and human connection.
Crit Care. 2023 Oct 9;27(1):391. PMID: 37814338.


西暦2050年に引退を考えている集中治療医が、この30年間を振り返った文章。
モニターは大きくてインターラクティブなものとなり、専門医へのコンサルテーションはネット内のアバターに行うようになり、治療はadaptive RCTの結果とAIの判断に基づいたpersonalizeされたものとなった。Fluid challengeも自動化されている。そして何よりも、患者や家族のために使う時間が長くなった。

集中治療医になったばかりの若者への言葉(DeepLで和訳したものを補正)。
・好奇心を持ち続けろ:テクノロジーは進化し続けるが、人間の生理学とケアの基本は不変である。
・テクノロジーを受けいれろ、でも頼るな:技術は専門知識を助けるために利用するものであって、取って代わるものではない。
・つながれ:患者やその家族とつながる時間を増やそう。人とのふれあいはかけがえのないものである。
・忘れるな:機械は予測、分析、計算はできても、悲嘆にくれる母親を慰めたり、患者の心を軽くするジョークを披露したり、家族の目が恐怖で曇っているときに安心の手を差し伸べたりすることはできない。

僕が医者になったのは1993年なのでちょうど30年前(集中治療を専門として選んだのはその4年後)。その頃と比べて一番変わったことと言えば、やはり知識・情報へのアクセスが容易になったこと。当時は調べものや雑誌の閲覧をするには図書館に行く必要があったし、勉強しようと思ったら本屋に行く必要があった。医者は夜中も土日も働くのが当たり前(今もそういう人はいるだろうけど)の時代、知識を得るための時間を作ることがそもそも大変だった。

これからの30年。
どうなるだろう。楽しみだわー。
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IPF急性増悪に対するPMX

2023年10月27日 | 呼吸
Awano N, Jo T, Izumo T, Inomata M, et al.
Polymyxin B-immobilised fibre column treatment for acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis patients with mechanical ventilation: a nationwide observational study.
J Intensive Care. 2023 Oct 11;11(1):45. PMID: 37821999.


この話を初めて聞いた時、ヤバイ、流行したらどうしようとドキドキしたのだけど、DPCのデータですら、2016-18年で52例のみ。嫌な予感が外れていて良かった。
そしてこの研究ではIPTWで補正した病院死亡のオッズ比が1.56(P=0.19)。

現状でこれを上回る根拠ってあるのだろうか。
もしないなら、呼吸器内科医に無理言われてももう大丈夫だね。
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ESICM2023

2023年10月26日 | EBM関連
今年はミラノ
昨日終わったらしい。いつもは複数の雑誌から五月雨式にon-line pubされていたのに、今年はJAMAとNEJMから昨晩まとめて送られてきた。
なのでemail alertを受け取っている人も多いだろうからまとめる意味はない気もするけども。

Inhaled Amikacin to Prevent Ventilator-Associated Pneumonia

Simvastatin in Critically Ill Patients with Covid-19

Convalescent Plasma for Covid-19–Induced ARDS in Mechanically Ventilated Patients

Landiolol and Organ Failure in Patients With Septic Shock
The STRESS-L Randomized Clinical Trial


Intravenous Vitamin C for Patients Hospitalized With COVID-19
Two Harmonized Randomized Clinical Trials


Sigh Ventilation in Patients With Trauma
The SiVent Randomized Clinical Trial


おや。NEJMにpositiveな結果が2つもあるぞ。珍しい。
どちらもネタ的にしばらくザワツキそう。臨床導入、する?
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VA-ECMO患者における年齢と予後の関連

2023年10月23日 | 循環
Fernando SM, MacLaren G, Barbaro RP, et al.
Age and associated outcomes among patients receiving venoarterial extracorporeal membrane oxygenation-analysis of the Extracorporeal Life Support Organization registry.
Intensive Care Med. 2023 Oct 4. Epub ahead of print. PMID: 37792052.


Figure 2が綺麗。
35歳くらいから80歳まで、死亡率が直線的に上がっていく。

あ、それだけでした。

無理やりコメントするなら、
やっぱ綺麗な図って文献を高く売るには重要だよな、と思う。
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ICU患者が経験した自己申告による症状

2023年10月22日 | ICU・システム
Saltnes-Lillegård C, Rustøen T, Beitland S, et al.
Self-reported symptoms experienced by intensive care unit patients: a prospective observational multicenter study.
Intensive Care Med. 2023 Oct 9. Epub ahead of print. PMID: 37812229.


ICU患者の症状でもっとも訴えが多かったのは口渇(66%)。

ちょっと懐かしい。ICU患者の口渇についてはナースと勉強会もやったし、研究もした(抄録1抄録2)。本当はもっとちゃんとした介入研究まで予定したのだけど、諸々あって頓挫した。

痛みの対応は大事だけど、それによって別の苦痛を産んでいる可能性についてはもっと考慮されてもいいかもね。
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急性感染症で入院した成人患者におけるセフェピムとピペタゾの比較

2023年10月21日 | 感染
Qian ET, Casey JD, Wright A, et al.; Vanderbilt Center for Learning Healthcare and the Pragmatic Critical Care Research Group.
Cefepime vs Piperacillin-Tazobactam in Adults Hospitalized With Acute Infection: The ACORN Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2023 Oct 14 Epub ahead of print. PMID: 37837651.


バンコとの併用ではないけれどPIPC/TAZの面目が保たれてよかったな、というのとは別に、「ほぉ」と思ったこと。
5-level ordinal scale ranging from no acute kidney injury to death
というのが使用されている。
AKIの3ステージに、0としてAKIなし、4として死亡を加え、AKIを5段階で評価している。
初めて見た。Methodsを見ても参照先は書いてない。GOSとかに似ているし、簡単に思いつきそうだけど、思いつかなかった。コロンブスの卵的じゃない?

AKIをアウトカムとした研究で使えそう。流行るかも?
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大規模言語モデルは研究論文に有用なフィードバックを提供できるか?

2023年10月13日 | AI・機械学習
集中治療関連ではないですが。

Can large language models provide useful feedback on research papers? A large-scale empirical analysis
Weixin Liang, Yuhui Zhang, Hancheng Cao, et al.


「全体として、半数以上(57.4%)のユーザーがGPT-4が生成したフィードバックを役に立った/非常に役に立ったと回答し、82.4%のユーザーが少なくとも何人かの人間のレビュアーからのフィードバックよりも有益であると回答した。」

おお。。。

「人間の専門家による査読は厳密な科学的プロセスの基礎であり、今後もそうあるべきだが、LLMのフィードバックはタイムリーな専門家のフィードバックが得られない場合や査読前の原稿作成の初期段階において、研究者に利益をもたらす可能性がある。」

控えめな表現かもね。
数年で人間を追い越しそうだし。

編集長もAI、査読もAI。
翻訳もAI。読んで情報のまとめを作るのもAI。
ついでに執筆もAI(動画)
なんか、すごい世界だ。。。
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ノルアドの投与量は文献によって数字の意味が違う!

2023年10月12日 | 循環
いやー、ビビった。文献読んでて声出して驚いてしまったよ。
この文献、しばらくフォルダに入れっぱなしになっていて、かつePubが5月なので、SNSとかでとっくに話題になってて僕だけ世間から置いていかれたのではないかと心配していたら、自治さいたまの人も誰も知らなかったようなので、ちょっとホッとした。

Kotani Y, Belletti A, D'Andria Ursoleo J, et al.
Norepinephrine Dose Should Be Reported as Base Equivalence in Clinical Research Manuscripts.
J Cardiothorac Vasc Anesth. 2023 Sep;37(9):1523-1524. PMID: 37291003.


日本のノルアドは塩酸塩で、ノルアドそのものに換算するには1.2で割らないといけない。ましてや欧米は酒石酸塩なので半分にしないといけない。
マジですか。。。
もう20年も前から、「フランスってノルアドの使い方がすごいなー」と思っていたら、これが一番の理由だったようだ(それでも多い気はするけど)。

これだけでも十分驚きなのだけど、
調べていくと、自分がもう何度も情報を見逃していることに気がついた。

まずこれに書いてあった。
Mongardon N, de Roux Q, Leone M, et al.
Norepinephrine formulation for equivalent vasopressive score.
Crit Care. 2023 Feb 16;27(1):62. PMID: 36797766.


ここにも。
Leone M, Goyer I, Levy B, et al.
Dose of norepinephrine: the devil is in the details. Intensive Care Med.
2022 May;48(5):638-640. PMID: 35290485.


そしてここにも。
Bitton E, Zimmerman S, Azevedo LCP, et al.
An international survey of adherence to Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2016 regarding fluid resuscitation and vasopressors in the initial management of septic shock.
J Crit Care. 2022 Apr;68:144-154. PMID: 34895959.

表2に、"In your unit, which type of norepinephrine do you use?"と書いてあって、50%が"I do not know"と答えている。逆に言えば半分は知っていたということか?
他の文献は全部correspondenceとかなので気が付かなくてもしょうがないと言い訳できるかもだけど、これはoriginal article。そしてこの文献、持ってた。。。

さて。驚きはまだ終わらない。
日本のノルアドは塩酸塩らしいのだけど、ノルアドのインタビューフォームを読んでも、そうは書いてない。分子量は169(つまりノルアドそのもの)となっていて、塩酸という言葉はどこにも出てこない。このことについて知り合いがメーカーに電話して聞いたところ、なんと返事が「よく分からない」だったそうだ。多分塩酸塩なんだけど、じゃあアンプルに表示されている"1mg"はノルアドそのものなのか塩酸塩なのかは不明(下記)。

もうビックリしまくりで大変。
文献に書いてあるノルアドの投与量って何?という驚きと、
CCとかJCCとかICMとかに書いてあることにずっと気がつかなかった自分への驚きと、
メーカーがちゃんと答えてくれなかった驚きと、
何より、こんな基本的なことで知らないことがまだあったのかという驚きと。

ちなみに、ほぼ全ての文献にLeoneという方が出てくるので、どうもこの人とその周辺が騒いでいるようだ。
ちょー大事な話だもんね、当然だ。もっと騒いだ方がいい。今後は全ての文献でノルアドそのものに換算してあることが明記されるべきだもん。

そしてJCVAの執筆者は日本人。あなたは偉い。
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追記:偉い人が、日本のノルアドはそのまま計算して良いだろうと教えてくれました
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集中治療における臨床判断支援のためにFDAが認可した機器

2023年10月11日 | AI・機械学習
Lee JT, Moffett AT, Maliha G, et al.
Analysis of Devices Authorized by the FDA for Clinical Decision Support in Critical Care.
JAMA Intern Med. 2023 Oct 9. Epub ahead of print. PMID: 37812404.


2022年12月までにFDAが認可した商品のリストが表1にまとめられている。
全部で10商品。心電図解析が一番多くて4つ、バイタル解析が3つ、病棟急変が3つ。
うち、根拠が文献化されているのが3つ、performance biasの評価をしているのはゼロ。
ちなみにEpicの敗血症予測はFDAの認可はないそうだ。

商品化されているという点では日本のはるか先だけど、その根拠は?となるとちょっとね、という状況らしい。
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