Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

まとめて処理

2015年09月30日 | その他
他にもメジャー雑誌があったので、今週はそれで終わるかなと思ったのだけど、そっちも面白くなかったので、さらっと紹介してお終い。

Fendler TJ, Spertus JA, Kennedy KF, et al.; American Heart Association’s Get With the Guidelines–Resuscitation Investigators.
Alignment of Do-Not-Resuscitate Status With Patients' Likelihood of Favorable Neurological Survival After In-Hospital Cardiac Arrest.
JAMA. 2015 Sep 22-29;314(12):1264-71. PMID: 26393849.


院内心停止蘇生後の患者さんの予後予測とDNRの取得率が合っていない(予後がとても悪そうなのにDNRにならなかったり、予後が良さそうなのにDNRになっていたり)。大きなデータベースの解析なので、どうしてDNRになったか(ならなかったか)が分からないし、DNRの取得の有無の信憑性も微妙。

LANCET Volume 386, No. 10000, p1243–1253, 26 September 2015
Methylprednisolone in patients undergoing cardiopulmonary bypass (SIRS): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Richard P Whitlock, PJ Devereaux, Kevin H Teoh, et al. for the SIRS Investigators


開心術中にステロイドを投与すると予後が改善するかについてのRCT、Primary outcomeに差を認めず。この話題、ちょいちょい見るけど、もうご馳走さまです。
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肺炎はICUで管理すると予後が良くなるか

2015年09月29日 | ICU・システム
タイトルにintensive care unitと書いてあったから読んだのだけど。
あまり面白くなかった。

Valley TS, Sjoding MW, Ryan AM, et al.
Association of Intensive Care Unit Admission With Mortality Among Older Patients With Pneumonia.
JAMA. 2015 Sep 22-29;314(12):1272-9. PMID: 26393850.


アメリカのメディケアのデータベースを使用、2010-2012年に肺炎で2988の病院に入院した65歳以上の患者さんが対象。約110万例のうち、約33万例(30%)がICUに入室。ICU症例の死亡率は病棟入院症例に比べ死亡率が有意に高かった(35.9% vs. 11.7%, p<0.001)。多変量解析で補正しても有意差は残存した(21.5% vs. 17.8%, p<0.001)。操作変数法という統計手法、具体的には、自宅から一番近い病院までの距離と、自宅から肺炎をICUで管理する頻度の高い病院までの距離を用い、ICU入室か病棟管理かの選択が病態とは関係無しに行われたと推測される症例のみをピックアップして比較すると、死亡率はICU入室群で有意に低下した(14.8% vs. 20.5%, p=0.02)。

何が面白くないって、まず、アメリカ特有の集中治療事情が話題だから。
アメリカは他の国と比べてICU入室の閾値が低く、かつコストが非常にかかっている。だから軽症患者の入室は減らしたらどうかという動きがあり、それに対して、ICUに入るか入らないか微妙な感じの重症度の肺炎はICUに来た方がいい、というデータを示して対抗している、ように思われる。
主に21世紀になって、集中治療医やICUの利用についての研究がメジャー雑誌に載るようになったけど、それはほぼアメリカで行われていて、掲載される雑誌もアメリカの雑誌。今回も、アメリカのデータベースを使った研究がアメリカの地方雑誌(という一面もある雑誌、名前がJAMAだし)に掲載された。もちろん世界的に評価されている雑誌で、重要な研究もたくさん掲載されるけれども、こういうのは何だかなー、と思う。

もう一つは、統計の話。
全くの素人なので、完全に間違っているのかもしれないけど、AとBを観察して、ある統計手法ではAの方がいいけど、より望ましい手法を使ったらBの方がよかった、だからBにしましょう、と言われても、ねー。どんな偉い人がどんなすごい解析をしても、観察研究である限りはhypothesis generating activityに過ぎないと思うし、もしこの研究の解析者が肺炎は病棟でもOKと言いたかったのなら、普通の多変量解析だけ文献に書くかもしれないし。

アメリカの事情も統計も素人の、個人的な感想です。
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CV挿入の場所と合併症

2015年09月28日 | 感染
今週はメジャー雑誌の紹介だけで終わるかも。

Parienti JJ, Mongardon N, Megarbane B, et al.; 3SITES Study Group.
Intravascular Complications of Central Venous Catheterization by Insertion Site.
N Engl J Med. 2015 Sep 24;373(13):1220-9. PMID: 26398070.


フランスの10箇所のICU。ICUでのCV挿入が必要と判断された3027例、挿入場所を内頸、鎖骨下、鼠径でRCT。Primary outcomeはカテーテル関連血流感染(CRBSI)と症候性のDVTの発生率。その結果、1000カテーテル日に対するprimary outcomeの発生率は、鎖骨下が1.5、内頸が3.6、鼠径が4.6で、鎖骨下とそれ以外の部位では有意差あり、内頸と鼠径では無し(p=0.30)。胸腔ドレーンの挿入を必要とする気胸の発生頻度は鎖骨下で1.5%、内頸で0.5%だった。

ついに、内頸のCV挿入がきっちりと評価された。今までは鎖骨下と鼠径だけだったからね。とは言っても、複数の観察研究で内頸は鼠径に比べてそれほど綺麗ではないことは示唆されていて、それがRCTで示された感じ。

消毒の半分以上がポピドンヨードで行われていたり、鼠径と鎖骨下のほとんどでエコーを使用せずに挿入されていたり、挿入失敗の頻度やCRBSI・症候性DVTの発生頻度が高い気がしたり、いろいろ疑問はあるけれども、それ以上に、ああやっぱりか、というのが感想。

さて、これでみんなの臨床は変わるかな?
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テンプレート変更。

2015年09月27日 | ひとりごと
涼しくなったから。
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慈恵ICU勉強会 2015.9.15

2015年09月26日 | ICU勉強会
ホームページに先週の勉強会(9月15日)のスライドがアップされたのでご紹介。

潜在的に不適切な治療の要求(JC-AJRCCM)
脳卒中後超急性期のリハビリ(JC-Lancet)

(JC: Journal Club)

両方とも、ICUのナースが作成して発表。
良い感じにできてると思います。よかったら読んでね。
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集中治療医に必要な資質は何か

2015年09月25日 | ひとりごと
間違いに気がついた。

「集中治療999の謎」の中で、こんなことを書いた。
ーーーーーーーーーー
12. 集中治療医に必要な資質は何か
 勤勉さ、コミュニケーション能力、決断力、手技のうまさ、診断能力、患者中心に考えられる、などたくさんの資質が必要だが、これら全てを備えた人はほとんどいないのではないだろうか。筆者が集中治療医にもっとも必要な資質だと思うは、繊細さだ。
・あらゆる情報を収集するよう努める(細かい情報も漏らさない)
・それら一つ一つの情報に気を配り、検討する
・何となくルーチンで処理せず、些細な変化に対しても疑問を持って考える
Franklinによる100 thoughtsの39番目にも、”the best critical care doctors are those who pay attention to detail. Some smart critical care doctors have never learned that.”との記載がある。まったく同感である。

Franklin C. 100 thoughts for the critical care practitioner in the new millennium. Crit Care Med 2000; 28: 3050-2. PMID: 10966294.
ーーーーーーーーーー
読み返してみても、全体の内容は間違っていないと思うのだけど、資質って、「生まれつきの性質や才能、資性、天性」っていう意味なんだよね。ということは、繊細さという生まれ持っての才能がないと集中治療医にはなってはいけない、ということになっちゃう。そんなことはない。

どんな能力も、訓練すればある程度は身につけることができる。
僕は小学校どころか保育園の頃から、運動は何をやってもクラスでビリだった。でも大学で水泳部に入ったおかげで、今でも泳ぐことだけは人並み以上にできると思う。
繊細さも同様。不注意でついやらないといけないことを忘れてしまう人は、忘れなくなるように訓練すればいい。そうすれば、クラスでトップにはなれなくても、職業として必要な程度には身につけられる。

ミスを犯したら反省する。言い訳しない。同じミスを繰り返さないように、いつも自分に言い聞かせる。ある特定のことを忘れる場合は、それを思い出せるような方法を考える。
大変だけど、仕方ない。だってプロだもの。
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外科医と集中治療医のコミュニケーション

2015年09月24日 | ICU・システム
平行宇宙って。。。そこまで難しい話じゃないと思いたいが。

Haas B, Gotlib Conn L, et al.
"It's Parallel Universes": An Analysis of Communication Between Surgeons and Intensivists.
Crit Care Med. 2015 Oct;43(10):2147-54. PMID: 26181222.


カナダのトロント大学の関連病院4つの中にある合計7つのICU。すべてのICUが20年以上前から集中治療医により管理されている。そこで働く25名の参加者(8人の外科医、7人の集中治療医、5人の看護師、5人のレジデント/フェロー)に、インタビューを行った。質問内容はあらかじめ決められていて(APPENDIX 1)、参加者を外科側と集中治療側に分け、相手側とのコミュニケーションの状況についてどう思っているか、実例を挙げなから答えてもらった。

Editorialにも書いてあるけど、文献の内容は表面的で、ここから具体的にどうするべきかについて考えるのは難しい。
でも、そもそもこんなインタビューをやろうと思うのも凄いし、それを文献にしようと思うのも凄いし、実際の回答例も書いてあるのだけど、知っている人が読んだら誰のことか分かっちゃうんじゃないか、みたいなものある。例えば、外科医が感じる疎外感の例として、
Surgeon: [name of intensivist] often says “We don’t need you to talk about the ventilator, the inotropes. We just wanna know what to do with the NG tube.” I don’t think we do want to just think about the NG tube. I think we wanna think about all aspects of patient care.
なんてのがあったり。

世界共通の話題なんでしょーねー。まあ、みんな患者さんに対して一生懸命で、でも視点や知識や習慣が違うから、どうしてもぶつかってしまう。

ちなみに、たしかカナダは70%くらいがclosed ICUだとどこかで読んだ気がするのだけど、
Critical care nurse: So we have what we like to term an “openly closed” unit [laughs].
Surgeon: I think that, number one, is that our closed unit actually operates a lot like an open unit, not in name but actually in function...
というのがあって、実は同じような話を別の文献でも読んだ。内容が伴っていなくても、"うちはclosed unitですよ”と言うことに何か意味があるのかも。カナダはカナダで、いろいろシステム的に問題があるらしい。

英語でも(笑)って書くんだね。
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ICUのプロトコルと予後の関係

2015年09月23日 | ICU・システム
Sevransky JE, Checkley W, Herrera P, et al. ; United States Critical Illness and Injury Trials Group-Critical Illness Outcomes Study Investigators.
Protocols and Hospital Mortality in Critically Ill Patients: The United States Critical Illness and Injury Trials Group Critical Illness Outcomes Study.
Crit Care Med. 2015 Oct;43(10):2076-84. PMID: 26110488.


アメリカの59のICU、6179例。各ICUで使用しているプロトコルの数と予後の関係について調査。プロトコルの数の中央値は19(!)。単変量解析でも多変量解析でも、プロトコルの数と予後には関係性が認められなかった。

中央値が19というのがまず凄い。さすがアメリカという感じ。

そして、プロトコルがあっても予後改善には必ずしも繋がらないというのもよく分かる。研究の中ではプロトコルの有効性は示されるし、中には生命予後の改善まで認められているものもあるけど、実際の臨床においては、そうは行かない。それはプロトコルというものが実は無効だということではなく、継続してちゃんと使うことが難しいから。

慈恵ICUにもいくつかあります。
・経管栄養
・持続インスリン
・VTE予防
・経皮的気管切開の施行と管理
・ECMOの導入
・大動脈瘤術後の脳脊髄液ドレナージ
・クエン酸CRRT
・CEによる人工呼吸器の初期設定
細かいものも含めればもっとあるかもしれないけど、文書化されているのはこんなところかな。8個ね。思いの外、あった。でもこの文献のFigure 2と比べると、一番少ない部類。
ECMOみたいに滅多に使わないものを除き、どれも比較的ちゃんと使用されている。理由やきっかけがあって作成されたから、というのもあるけど、習慣になるまで誰か(作成者とか)が周囲にremindし続けたからだと思う。

ちなみに、Discussionの中で、多施設RCTにおいて有効性が示されているプロトコルとしてSATとSBTが例として記載されているけど、両方とも慈恵ではそもそも行ってません。その理由はまたいつか。
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敗血症性ショックにおける血管収縮薬の選択と予後

2015年09月22日 | 循環
Fawzy A, Evans SR, Walkey AJ.
Practice Patterns and Outcomes Associated With Choice of Initial Vasopressor Therapy for Septic Shock.
Crit Care Med. 2015 Oct;43(10):2141-6. PMID: 26079345.


アメリカの502の病院に2010-2013年に入院した敗血症性ショック患者で、入院後2日以内に血管収縮薬の第一選択としてノルアドもしくはドーパミンが投与された61,112名。ノルアドは77.6%に選択されていた。ドーパミンは、循環器内科医(内科医、呼吸器内科・集中治療医、外科医と比べ)、アメリカ南部、非教育病院で多く使われ、年とともに減少(2013年は2010年の1.99倍ノルアドが選択)。Propensity matchingにて、ドーパミンが選択された患者の死亡率のオッズ比は1.08だった。

研究の中だけでなく、実際の臨床でもドーパミンの選択は死亡率に悪影響したというデータ。不整脈を増やすだけでなく、脳・免疫・内分泌などいろいろドーパミンは作用するから、というのが考察。でも個人的には、ドーパミンを選んじゃう医者だから、じゃないかと思ってシマウマ。

そういえば、アメリカは四分の三でノルアドを使っているけど、日本ではこんなデータもあった。むむむ。
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CV挿入時の針の選択

2015年09月21日 | その他
連休、連休、うれしーなー。でも文献は読みますよ。趣味だから。
先週はICMばかり紹介したけど、今週は全部CCMの予定。それじゃ普通じゃん、どれも知ってるよと言われそうな気もするけど、面白いのがCCMばっかりだったんだから仕方ない。

Lee YH, Kim TK, Jung YS, et al.
Comparison of Needle Insertion and Guidewire Placement Techniques During Internal Jugular Vein Catheterization: The Thin-Wall Introducer Needle Technique Versus
the Cannula-Over-Needle Technique.
Crit Care Med. 2015 Oct;43(10):2112-6. PMID: 26121076.


韓国の二人の麻酔科医が、手術前にエコー下で右内頸静脈にCVを挿入する時に、どの針を使うかでRCT。具体的には、
Thin-wall introducer needle (TWN):静脈に刺した針にダイレクトにガイドワイアを通す、18ゲージ針
Cannula-over-needle (CON) :外套付きの針を静脈に刺して、外套を血管内に進めてからガイドワイアを通す、外套が18ゲージ、針は20ゲージ
のどちらかを使用。二人とも両方の手技に慣れている(50例以上ずつ)。合計266例が対象、患者背景に差は無し。その結果、一発でガイドワイアを通せたのはTWNが87.3%、CONが77.3%でTWNの成功率が高かった(p=0.037)。皮膚を刺す回数もTWNで少ない(1.1 vs. 1.3, P=0.026)。最終的にほぼ全例で両群共にCV挿入は成功(99.3% vs. 97.7%, P=0.37)。ダイレーター挿入時に皮膚をメスで切開する必要があったのは、TWNで2例、CONで59例(p<0.0001)。

僕もTWN派だったので、単純に嬉しい結果。だって、外套がうまく進まないことって少なくないんだもん。
知らなかったのは、ダイレーターをメスなしで挿入できる頻度がTWNとCONで違ったこと。ふーん、そーなんだ。

やるな、韓国。
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