Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

引く手数多

2016年08月31日 | ひとりごと
大きめの総合病院を最近定年退職したベテラン内科医との会話。

ベ「君、専門は何なの?」
う「集中治療をやっています」
べ「ああ、そうなの、それじゃあ引く手数多でしょう?」
う「ええ!そんなこと初めて言われましたよ」
べ「僕がいた病院には集中治療医がいなくてさ、大学にお願いに行っても人手が足りないって何度も断られてさ。この辺の病院はみんなそうだよ。君、もし大学で芽が出ないようだったら来ないかい?」

そっか。そんな時代になったんだ。

で、ふと思い立ち、”集中治療医募集”でググってみた。
おお!
結構あるじゃん!

13年前、オーストラリアから日本に帰国しようと思った時、集中治療医としての職場が見つからず、とても困ったんだよね。もちろんネットで募集なんかしていないし。あっせん業者にお願いしてもそんな募集をしているところなんか見つからないし。

集中治療を専門にしてしまうとツブシがきかなくなる、なんて話を今もたまに聞くけれど。
もうそんな心配はしなくていい時代になったのかもね。
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CV挿入時の針の選択、その2

2016年08月29日 | その他
この研究の鎖骨下版。

Kim E, Kim BG, Lim YJ, et al.
A prospective randomised trial comparing insertion success rate and incidence of catheterisation-related complications for subclavian venous catheterisation using a thin-walled introducer needle or a catheter-over-needle technique.
Anaesthesia. 2016 Sep;71(9):1030-6. PMID: 27396474.


鎖骨下CVが必要な414例。
Thin-walled introducer needle (needle群, n = 208)
Catheter-over-needle technique (catheter群, n = 206)
の比較。合併症の発生頻度(動脈穿刺、血胸、気胸、血腫、カテ先の位置異常)はneedle群で少なく(5.8% vs. 15.5%; p = 0.001)、一発で成功する確率が高かった(62.0% vs. 35.4%; p < 0.001)。

よしよし。
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正当な同意

2016年08月28日 | 感染
Collee GG.
Valid consent - A pathway to improved care.
Br J Anaesth. 2016 Sep;117(3):274-5. PMID: 27543519.


2ページ弱の短いeditorial。
麻酔科医から麻酔科医へのメッセージ。
最後の文章を全文コピペ。

It is an enormous task, and our involvement may not always be welcomed, but if our ambition is to be perioperative medicine specialists we need to demonstrate our commitment to properly informing patients of how the risks that they face throughout the whole of the patient pathway might best be modified.

"perioperative medicine specialists"
素敵な言葉。
こういう意識をすべての麻酔科医が持ってくれますように。
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RRTの治療強度と尿量

2016年08月27日 | 腎臓
Mc Causland FR, Asafu-Adjei J, Betensky RA, et al.
Comparison of Urine Output among Patients Treated with More Intensive Versus Less Intensive RRT: Results from the Acute Renal Failure Trial Network Study.
Clin J Am Soc Nephrol. 2016 Aug 8;11(8):1335-42. PMID: 27449661.


RRTの治療強度についての大きな多施設RCTの一つ、ATN studyのpost hoc解析。
N=1124。治療強度の高い群(35ml/kg/hr)は通常群(20ml/kg/hr)に比べ、尿量が32ml/day少なく、乏尿の発生頻度が29%高かった。

そんなに大きな差では無いけれど。
過ぎたるは及ばざるが如しの例がまた一つ増えたな、と思って。
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研究の不正行為

2016年08月26日 | EBM関連
Sade RM; Cardiothoracic Ethics Forum.
Sanctions for research misconduct in cardiothoracic surgery journals.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2016 Sep;152(3):661-3. PMID: 27530635.


不正行為のため撤回された文献の割合は指数関数的に増えていて、2005年ごろで0.01%くらいあったそうだ。今はもっと多いに違いない。
図が印象的なので紹介。
とは言っても、この文献が元データらしいけど。
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手のかかる患者さん

2016年08月25日 | ひとりごと
集中治療を始めて2、3年目の頃に感じた事。
ある閾値を超えて手のかかる患者さんは必ず助からない。
全然良くならず、どんどん治療強度が上がっていって、いろいろなデータ異常や合併症が発生して、それらに一つ一つ対処して、さらに治療強度が上がって、でもやっぱり良くならない。どんどん悪くなるわけでもなく、低め横ばいの状態がしばらく続き、最終的に亡くなる。
重症患者管理というのはそういう一面があるものだと思っていた。医学の限界だと。

でも最近、昔そう感じていた事を忘れている自分に気がついた。
それが当たり前になったからではなく、その逆で、亡くなる患者さん=とても手のかかる患者さんではなくなったから。
同僚の若者数人に、「ある閾値を超えて手のかかる患者さんは必ず助からない」という印象はあるかと聞いたら、全然そんな気はしないと。

日本語が下手なので、うまく伝わっていないかもしれないな。

何が言いたいかというと。
Futileということを考えるようになったんだと思う。

何で思い出したかというと。
Futileという概念が存在する事を知らない人たちが、患者さんの命が燃え尽きるまで延々治療強度を上げていくのを何度か見る機会が最近あったから。

もしかしたらそれで助かる命があるかもしれない、というのは否定しないけれど。
患者さんが平和に最後を迎えられるようにしてあげるのも、集中治療の仕事の一つではないかと思う。
患者さんにとっても、家族にとっても、医療者にとっても、大事なことなんじゃないかな。
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慈恵ICU勉強会 160802 160809

2016年08月19日 | ICU勉強会
今回も二週間分をまとめてドン。
本当は毎週更新したいのだけど、勉強会開催後に手直ししたファイルをすぐ送ってきてくれないからさ、ブツブツ。

2日 AKIに対するRRTの適応と開始基準
9日 クエン酸CRRTアップデート
9日 NPPVでのマスク vs. ヘルメット(JC-JAMA)


RRTについての検討の歴史をざっとまとめると、
・1990年〜2005年くらい:CRRTでサイトカインなどの炎症物質が除去されて予後を改善するか。結論、ほとんど除去されないし、予後も改善しない。
・2005年〜2010年くらい:持続は間欠よりも予後に良い影響を与えるか。結論、どちらも予後に影響しない。
・2010年〜2015年くらい:CRRTの治療強度(IntensityとかDoseとかと表現)を上げると予後を改善するか。結論、少なくとも20ml/kg/hr以上では同じ。
・2015年くらい〜現在:CRRTを早期に開始すると予後に良い影響を与えるか。

最後の結論はまだ出てないけれど、多施設RCTがNEJMに出るようになってきた。
他にも現在進行中の研究はあるけれど、多分、今回も”予後に影響しない”という結論に終わりそう。
残念な話ではあるけれど、そうやって可能性をどんどん追求していかないと進歩が無いものね。

そうそう、つい最近のCritical Careに、我々の勉強会と同じように二つのRCTについて批評したコメントが載っていたね。

Bagshaw SM, Lamontagne F, Joannidis M, et al.
When to start renal replacement therapy in critically ill patients with acute kidney injury: comment on AKIKI and ELAIN.
Crit Care. 2016 Aug 6;20(1):245. PMID: 27495159


今後の研究を待ちましょう、という話。
そりゃそうだ。
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慈恵ICU勉強会 160719 160726

2016年08月08日 | ICU勉強会
19日 院外心停止とアミオとリドカイン(JC-NEJM)
26日 心外術後のAFコントロール(JC-NEJM)


偶然、NEJMの不整脈関連が続いた。

心外術後の方だけど、文献の結論はリズムコントロールとレートコントロールは同等、Editorialはレートコントロールの方がいいんじゃないか、と記載されているのだけど、勉強会に参加した僕の結論はリズムコントロールの方が良さそう、だった。
同じデータを見ても、解釈は人それぞれ。でもそれでいいんだと思う。

それよりも、文献を読まずに、”どちらも同じという研究がNEJMにあった”、”レートコントロールで良いとNEJMに書いてあったらしい”という情報だけをどこかで聞きかじって、それのみで行動してしまう方が問題。噂で聞いたとか、INTENSIVISTにそう書いてあったとか、ブログで読んだとか、どれも同じレベル。
あ、ガイドラインに書いてあったも同じです。

そうそう、心外術後のAFについては最近こんなのを見かけた。
Zhang W, Liu W, Chew ST, et al.
A Clinical Prediction Model for Postcardiac Surgery Atrial Fibrillation in an Asian Population.
Anesth Analg. 2016 Jun 1. [Epub ahead of print] PMID: 27258075.

シンガポールの研究で、インド系は中国系やマレー系と比べてAF発生のオッズ比が0.5以下。
ほお。そんなに人種で違うかね。じゃあ日本人は?
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