Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

JSEPTICのホームページ

2013年06月27日 | ひとりごと
が、バージョンアップしましたよ。
なんか、ちょっとかっこよくなった。
ついに、画面が動くようになったし。

ところで、
見た目だけでなく中身ももっと良くしよう、をコンセプトに、
現在、ホームページについてのアンケートを実施しております。

JSEPTICのホームページは時々見に行くぜ、という方。
是非、ご意見をくださいませませ。
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M&Mカンファレンスの意義

2013年06月25日 | ICU・システム
体調も仕事内容もほぼ通常状態に戻り(まだ軽い時差ボケは続いているけど)、そしてダウンロードしたPDFの数も通常に戻った。
と思ったら、貯まった雑務のせいで月曜日に更新できなかった。
うーん、来月の夏休みまでに借金は返せるだろうか。。。

Kirkpatrick AW, Roberts DJ, De Waele J, et al.;
Intra-abdominal hypertension and the abdominal compartment syndrome: updated consensus definitions and clinical practice guidelines from the World Society of the Abdominal Compartment Syndrome.
Intensive Care Med. 2013 Jul;39(7):1190-206. PMID: 23673399.


2006年から7年ぶりのAbdominal Compartment Syndrome(ACS)についてのガイドラインのアップデート。多くのガイドラインが使用しているGRADE systemを採用している点は評価していいかも。ただ、結論にも書いてあるけど、過去7年でACSの研究がすごく進んだとは言えず、エビデンスの質は高くない。
何はともあれ、久しぶりのアップデートなので、ジャーナルクラブ候補。

Karkouti K, Callum J, Crowther MA, et al.
The Relationship Between Fibrinogen Levels After Cardiopulmonary Bypass and Large Volume Red Cell Transfusion in Cardiac Surgery: An Observational Study.
Anesth Analg. 2013 Jul;117(1):14-22. PMID: 23687229.


カナダの1施設で過去7年間に行われた心臓外科手術4606例。術後のフィブリノーゲンと手術翌日までの赤血球輸血量との関連について検討。5単位以上の輸血を必要とする頻度はフィブリノーゲンが2g/L(日本流で言うと200 mg/dl)以下になると上昇。一般的にはフィブリノーゲンが80-100 mg/dlにならないと補充(FFPとか)の適応にはならないと言われているが、出血を防ぐ閾値はもっと高いかも。
フィブリノーゲンが200を切ると輸血のリスクがぐぐっと上がるのがよく分かる図が綺麗。そこが好き。

Zager RA, Johnson AC, Becker K.
Post-ischemic azotemia as a partial 'brake', slowing progressive kidney disease.
Nephrol Dial Transplant. 2013 Jun;28(6):1455-62. PMID: 23543590.


ネズミを使った動物実験。左腎を30分間虚血状態にする(虚血後2-3週間で腎臓の体積が約半分になることが過去の研究で示されているモデル)。同時に、右腎を一定時間虚血状態にする(0, 15, 18, 20分)。その結果、24時間後のBUNは右腎の虚血時間が長いほど高くなり(当たり前)、2週間後の左腎の重さは虚血時間が長いほど重くなった(びっくり)。BUNと左腎の重さにはr=0.77の直線関係が認められた。
つまり、詳細な機序は不明だけど、尿毒症の状態は腎臓に対して保護効果があるかも、ということ。
面白いねー。
随分前に"acute renal success"というタイトルのレビューがICMにあった。主旨は違うけど、腎臓は自分の身を守るために悪くなっているんだ、という点では似たような話。
もしこれが本当なら、RRTのドーズを増やしても予後が改善しないという話はうなずける。今流行りのRRTの早期導入は、腎臓に悪いことだったりして??

で、本日のメイン。
いつも読んでいる文献ではあまり見かけない単語が多く、完全に理解しているとは言えないのだけど。

Pelieu I, Djadi-Prat J, Consoli SM, et al.
Impact of organizational culture on preventability assessment of selected adverse events in the ICU: evaluation of morbidity and mortality conferences.
Intensive Care Med. 2013 Jul;39(7):1214-20. PMID: 23580135.


フランスのあるICUで過去5年間にM&Mを行った95症例。そのレポートを二組の部外者(それぞれ集中治療医と心理学者がペア)が評価。チェックリストを用い、レポートから読み取れるICUの習慣を(訳すのが難しいが、自分なりに解釈して意訳)、
1:チーム全体を満足させることを重要視
2:自分の身を守ることを重要視
3:仕事をちゃんとやることを重要視
の3つに分けた。

その結果、
・習慣についての分類は二組の部外者ペアの間でよく似ていた
・時間が経つとともに(2006年に比べ2010年では)、習慣2が減少し、習慣3が増えた。
・M&Mカンファレンスで合併症が予防可能であったと判断された頻度は、そのレポートが部外者により習慣3がメインと判断された時の方が、習慣1や2と判断された時よりも高かった。

うーん。
やっぱり英語が難しく、うまく説明できないし、ちゃんと理解したかどうか自信が無いので、本文を読んでください。
つまりは、M&Mカンファをやっていると、だんだん仕事にも同僚にも厳しくなっていき、そうなると起こった事故に対して”予防可能だった”と判定することが多くなる、という話なんだと思う。
さらには、カンファでみんなで話し合って、予防可能かどうか結論を出しても、それはそのICUの習慣/文化/雰囲気で変わってしまうよね、ということみたいだ。
なんとなく納得が行く話。

でも、この文献をメインに選んだ理由は、全然違う。
読んでいて、はたと気がついた。
M&Mはやった方がいいと言われて、じゃあやろーと思って、今も定期的にやっているけど、あれ、その有用性に関しての根拠を何も知らないじゃんか。
いつも、根拠に基づいて判断しなさい、何かをやろうとするときには必ず自分がその根拠を知っているかどうか考えなさい、なんて人に言っているくせに。まあ、ビックリ。
この文献には30近い参照文献が載っている。ボチボチあるんだね、M&Mの有効性についての評価やその根拠となる情報って。ほっ。

M&Mをやっていると、ICUの診療レベルがどんどん高くなって、患者さんにとって良いですよー、とはなかなか言い切れないけど。証明なんて、永久にされないんじゃないかと思うけど。
とりあえず、患者さんが命を落としたり大きな合併症が起こったりした時には、仕方が無かったとして終わりにせず、みんなで振り返りたい。そうしないと、なんか申し訳ない気がする。

いやー、それにしても、やっぱり英語は苦手。
外国に行って痛感、文献読んで痛感。
そうそう、外国に行ってもう一つ痛感したことは、やっぱり日本が一番だってこと。
パスポートを投げて返す税関職員は日本には絶対にいない。
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WBCとCRPについて思うこと

2013年06月19日 | ひとりごと
あれ、月曜日になってもブログが更新されないな、と思ってくださった一部の方々へ。
実は、一週間ほど、こんなところに行っていて、月曜日に帰国。
そして火曜日は当直。
時間的および体力的にきびしく、書く時間がなかった。
どちらにしろ、先週は先々週に負けずとも劣らない不作だったので、パスさせていただきました。
このブログを初めて2年ちょっと。こんな本気のパスはほぼ初めてかも。

で、表題の件。

例1:他の病院から研修(?)に来ている若者が、ある患者さんのWBCだけメモしてCRPは書いていなかったので何故か聞くと、「だってCRPって、、、」
例2:他の病院から移ってきた若者が言った。「ここは毎日CRP測っているから、最初はどうしようかと思った。」
例3:外科医がよく言う言葉。「まだCRPが高いので、抗菌薬の予防投与は継続したい。」

例1と例2の若者が言いたいことは明白で、CRPを臨床に使うのは間違っている、もしくはダサイ。(この若者という表現、某S井先生の表現が移ったのだけど、一度使い始めると、他の言い方ができなくなった。)
理由は例3みたいなのがいるからでしょう、きっと。
僕はオーストラリアに3年留学していたのだけど、CRPは全く測定されていなかった。それで一度も困ったと思ったことはなかったし、CRPがあればいいなーと感じたこともなかったので、言わんとしていることは分かる。

でもね。
ちょっと、極端じゃないだろうか。
極端という点では、例1も2も3も、同じ気がする。

肝細胞障害を見たいとき、GOTとGPTの両方を測定するのは多くの人が行っているはず。障害のパターンによって上昇の仕方が違うって言うしね。
胆道系の異常を見たいとき、ALPとGGTPの両方を測定する人は少なくないはず。実際、どちらか一方が著明高値なのにもう一方が正常上限をちょっと超えるだけというのは珍しくない。
腎機能を見たいとき、尿素とクレアチニンの両方を測定するのは、きっと万国共通ではないだろうか。クレアチニンの方が腎機能をより良く表現するとは言っても、筋肉が少ない人では尿素の動きの方が明確に異常を呈するので分かりやすい。

WBCとCRPは異常値を呈する機序もタイミングも異なる。
ただ、CRPは蛋白なので、合成されるのにも代謝されるのにも時間がかかり、現在の患者さんの状態を鋭敏に表現しない。例えば、侵襲の強い手術を受けた患者さんは術後数日はCRPが上昇し続けることも多いので、臨床的な意義に乏しい。

でもだからといって、CRPがダサイということになるんだろうか。
あ。CRPをダサイと言っている人には会ったことが無い。でも、そういうニュアンスで話す人や書いてある文章はよく見かける。
ので、ダサイと言っていることにする方が話は簡単。

患者さんの状態が悪化していると感じているとき、WBCもCRPも異常値を呈したり、上昇(WBCの場合は減少することもあるけど)したりする。
患者さんの状態が良くなっていると感じているときは逆のことが起こる。
こういうときは、WBCもCRPも測定する意味は乏しい。せいぜい、自分の感覚が正しそうだと確認するくらい。

それよりも、WBCやCRPの測定が有意義だと感じるのは、それ以外の情報で状態の評価をするのが困難、もしくは自信を持てないとき。例えば、
・ショックから離脱しない。治療はちゃんとしていると思っている。でも良くもならないし悪くもならない。
・特に悪いところはないはず。でもなんか患者さんに元気が無い。
こんなとき、WBCやCRPが改善していると安心するし、悪化していると次の一手を考える。

問題は、そういうときにWBCとCRPのどちらの精度が高いか。
どちらについても、根拠/研究を知らない。
経験的には、WBCが動かずにCRPだけ動く場合、その逆の場合、両方あると思う。一番多いのは、両方が動くパターンだけどね。
これって、GOT/GPTやALP/GGTPやBUN/Crと同じじゃない?
似たような検査項目を2つ測定すると、それによって感度が上がることもあるだろうし、判断を迷わせることもあるだろう。
それを踏まえた上で、それぞれの特徴を理解した上で、2つの項目を測定することが有益であると思うのであれば、WBCとCRPを測定することも同じじゃないだろうか。

きっとGPTとGGTPとCrしか測定しなくても困らない。
それと同じ理由で、WBCだけ測定していても困らない。
でも、困らないことと正しくないこと(ダサイこと)は同じじゃない。
繰り返すが、WBCだけ測る環境にいたこともあるし、それに疑問は感じない。
でも、2つの情報が得られる環境で、わざわざ情報量を減らそうとは思わない。

ないないなーい。

うふふ。
たまには、何の根拠も提示せずに自分の思っていることだけ書くのも、楽だから良い。
時差ボケ+当直明けの戯れ言なので、お気になさらず。
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乳酸を指標とした蘇生

2013年06月10日 | 循環
少なっ!
先週ダウンロードした文献は3つだけ。
いろいろ仕事が溜まってるんだから、ちょっと楽しなさいって神様が言ってくれているのかしら。
きっとそうだ。
そう思うことにする。

でも、何もないのは寂しいので、こんなやつを。

Puskarich MA, Trzeciak S, Shapiro NI, et al.
Whole blood lactate kinetics in patients undergoing quantitative resuscitation for severe sepsis and septic shock.
Chest. 2013 Jun 1;143(6):1548-53. PMID: 23740148.


セプシスの初期蘇生の指標として乳酸とSvO2を比較した研究のpost-hoc解析。300例中、最初の乳酸が2mmol/L以上だった187例を対象。救急室での6時間での乳酸の変化を複数の方法で評価し、そのどれがもっとも予後と関連しているか、蘇生の指標として優れているかについて検討。
その結果、死亡率についてのAUROCは、
・乳酸の最初の値:0.64
・乳酸の相対的変化率:0.67
・乳酸の絶対値の変化:0.56
・乳酸クリアランス:0.58
死亡率に対する多変量解析において、乳酸の正常化はオッズ比5.2、50%以上の相対的低下が4.0で共に有意差があったが、10%以上の低下のオッズ比は1.6で有意差は無かった。

さて。
もともとの研究は、ScvO2 70%をターゲットとするのと、乳酸のクリアランス速度を10%以上にすることとを比較して、どちらも同等だった、が結論で、もしかしたら乳酸の他の指標の方が良かったかも、というのが今回の研究。

ふーん。
でも他の指標もAUROCが0.7より低いし。どーなんだろ?

そもそも乳酸ってそんなに有益なんだろうか。
組織の低酸素/低灌流の指標と思っている人もいるだろうけど、そうでもないし。
手元に資料も無いし、時間もないので、箇条書き。

・敗血症で高乳酸血症になっている時(だったか?)、肺動脈の乳酸値よりも動脈血の乳酸値の方が高い。つまり、低酸素になるとは考えにくい肺において乳酸が産生されている。
・動物の筋肉を電気刺激すると、その筋肉の静脈血の乳酸値が高くなる。つまり筋肉が乳酸を産生するわけだけど、筋肉の組織の酸素分圧を測定すると、低くない(高い?)。乳酸の産生が組織の低酸素によるわけではない、ということ。
・ショック状態の動物(人だったか?)に外から乳酸を投与すると、心収縮力が増加する。心筋が乳酸をエネルギー源として利用するということか。とすると、筋肉が乳酸を産生するのは、心筋にエネルギーを送ることを目的としているのかも。
・ベータ受容体を刺激すると、Na-K-ATPase(だったか?)が活性化され、乳酸が産生される。喘息の患者さんで吸入をたくさんすると乳酸が高くなるのはこれが原因。

乳酸が組織の低灌流とは関係がない(もしくは他の機序もいろいろある)とすると、それを指標として蘇生しようとしても意味があるのか。AUROCが低かったのはそれが原因ではないのか。乳酸と同程度と評価されたScvO2も指標としては役に立たないのではないか。
なーんて、いろいろ推測が進みますが。
あくまで推測なので、お気になさらず。

現状として、高乳酸血症が予後と関連していることは分かっているので、乳酸が高い人を見たら、ああ具合が悪いんだなと思うくらいで、それ以上はねー。。。
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いつまでも若く見られるためには

2013年06月07日 | ひとりごと
時々登場、集中治療と関係ないぞシリーズ。
今週のアナルズ。

Hughes MC, Williams GM, Baker P, Green AC.
Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial.
Ann Intern Med. 2013 Jun 4;158(11):781-90. PMID: 23732711.

55歳以下の903名を、日焼け止め(+15)を毎日塗るか、塗りたい時に塗るか、ベータカロテンを毎日飲むか、プラセボを飲むか、で2×2のRCTをやった。効果判定は、研究開始時と4.5年後で、見た目の皮膚の老化を数値化(6段階)し、皮膚の老化が進行したかどうかで行った。
その結果、日焼け止めを毎日塗ると皮膚の老化が24%抑えられたけど、ベータカロチンは効果がなかった。

この研究はオーストラリアのNambourというところで行われた。南緯26度なので、だいたい沖縄と同じくらい。それと、対象は白人に限定。だから、東京に住んでいる黄色人種にはあてはまらないかも。

でも、オーストラリアはそもそも白人が住むところではないので、昔から皮膚癌が多くて、日焼け止めを塗るのが子供の頃からの常識になっている。だから、塗りたい時に塗っている人も、それなりに塗っていたのではないか。それでこの差は大きいかも。

プラスマイナスで、それなりに効果はありそう?
塗るか、毎日?
最近、白髪が増えて、一気に老けたと言われるし、塗っちゃおーかなー。。。
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第二弾はいろいろ

2013年06月04日 | その他
Liu V, Read JL, Scruth E, Cheng E.
Visitation policies and practices in US ICUs.
Crit Care. 2013 Apr 16;17(2):R71. PMID: 23591058.


アメリカの606の病院に電話でアンケート。病院とICUの面会にどんな制限があるか。ICUに面会制限があるのは、
・面会時間:80.4%
・面会の継続時間:39.4%
・面会する人数:67.3%
・近親者のみ:24.3%
・年齢制限:63.9%
ただし、ほとんどのICU(94.8%)は例外を認めている。何も制限がないICUは10.4%。
個人的には面会制限はあまり好きじゃない。でも、他の施設ではどうかと聞かれても答えられなかった。具体的な頻度は初めて見たかも。

Roberts BW, Kilgannon JH, Chansky ME, et al.
Association between postresuscitation partial pressure of arterial carbon dioxide and neurological outcome in patients with post-cardiac arrest syndrome.
Circulation. 2013 May 28;127(21):2107-13. PMID: 23613256.


アメリカのある病院。18歳以上で非外傷性の心停止で蘇生後も意識が無い193例が対象。蘇生後24時間以内のPCO2の異常(PaCO2が30mmHg以下か50mmHg以上)が神経学的予後に影響するかどうか(CPC3かそれより悪いか)について多変量解析を用いて検討。27%が低PCO2、33%が高PCO2、9%が両方、31%は両方ともなし。多変量解析において、低PCO2(オッズ比2.43)、高PCO2(2.20)ともに予後の悪化と関連があった。
ふーん。PO2の次はPCO2ですか。理屈は分かるけどね。一施設の観察研究だし。それよりも、この程度でCirculationに載っちゃうのがビックリ。
まあ、今後の研究に期待しましょう。とはいえ、PCO2を正常に保つ努力はしてますけどね。

Gunst J, Vanhorebeek I, Casaer MP, et al.
Impact of Early Parenteral Nutrition on Metabolism and Kidney Injury.
J Am Soc Nephrol. 2013 Mar 28. [Epub ahead of print] PMID: 23539756.


早期の経静脈栄養はあまり良くないよ、という結果になったEPaNIC studyのpost-hoc解析。ICUの滞在期間や人工呼吸器の使用期間だけでなく、腎代替療法(RRT)の期間も延びたけど、RRTの使用頻度は同じだったので、もっとよく調べてみた。その結果、AKIの発生頻度、AKIの期間、クレアチニンの推移に違いはなく、尿素は高くなった。
ということは、アミノ酸がたくさん投与されたので、尿素(BUN)が上がって、そのせいでRRTを止めるのが遅くなったということ?ちょっと面白い話。

Horvath KA, Acker MA, Chang H, et al.
Blood transfusion and infection after cardiac surgery.
Ann Thorac Surg. 2013 Jun;95(6):2194-201. PMID: 23647857.


5158例の心臓外科手術患者。術後に行われた輸血と、60日以内の感染症の発生との関連について調査。赤血球輸血が48%、血小板輸血は31%に行われた。赤血球輸血1単位あたり、感染の発生が29%増えた。多変量解析でも赤血球輸血は感染の増加と関連があったが、逆に血小板輸血は感染の減少と関連があった。
なんじゃそりゃ。よく読んでみないと分からないぞ。観察研究の限界か?血小板製剤の中の免疫グロブリンのせいかとか書いてあるけど、ちょっと無茶でしょう。
まあとりあえず、輸血(とくに赤血球)は毒、ということで。

来週はいつものスタイルに戻りたいものだ。
文献って、紹介しだすとキリがないね。
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NEJMが面白すぎ

2013年06月03日 | その他
だったわ。先週は。
さらっと紹介するだけでは気が済まないくらい。
でも、”読んで当たり前”の文献だけ紹介してもしかたないし。
ということで、今週は二部構成にします。
第一弾は、NEJM。

Huang SS, Septimus E, Kleinman K, et al.; the CDC Prevention Epicenters Program; the AHRQ DECIDE Network and Healthcare-Associated Infections Program.
Targeted versus Universal Decolonization to Prevent ICU Infection.
N Engl J Med. 2013 May 29. [Epub ahead of print] PMID: 23718152.


アメリカの43の病院のICUを、グループ1(入室時に鼻腔でMRSAのスクリーニングをして、必要な患者さんに対して接触感染対策を行う)、グループ2(それに加えて、MRSAが検出された患者さんに鼻腔ムピロシンとクロルヘキシジンによる清拭を5日間行う)、グループ3(スクリーニングは行わず、入室患者全例に対して鼻腔ムピロシンとクロルヘキシジンによる清拭を5日間行う)に分けた(患者数74,256例)。その結果、臨床的にMRSAが検出された頻度および血流感染の発生頻度がグループ1>グループ2>グループ3の順に低くなった。
この研究でちょっと気に入らないのは、MRSAによる血流感染の減少は有意差が無いこと。介入として二つのことをしている(ムピロシンとクロルヘキシジン)けど、クロルヘキシジンを全員にやったことが良かったのではないか?それって、すでに示されていることでしょう。
この研究のエディトリアルのタイトルは、
Edmond MB, Wenzel RP.
Screening Inpatients for MRSA - Case Closed.
N Engl J Med. 2013 May 29. [Epub ahead of print] PMID: 23718155.

つまり、もうMRSAのスクリーニングなんかやめようよ、ということ。
それって、ちょっと言い過ぎじゃないかなー。
慈恵では、何年も前から鼻腔培養を24時間以上滞在する患者さん全例に対してやっているけど、その目的はMRSAを早期に発見することよりも、後日培養で検出されたときに、それが入室前からの持ち込みだったのか、それともICU内で感染したのかを判断することを重要視しているので、この研究結果を元にスクリーニングを止めようとは思わないな。
それよりも、改めて、クロルヘキシジンの清拭が有意義であるということを示した研究だと考えます。

Anderson CS, Heeley E, Huang Y, et al.; the INTERACT2 Investigators.
Rapid Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Intracerebral Hemorrhage.
N Engl J Med. 2013 May 29. [Epub ahead of print] PMID: 23713578.


発症後6時間以内の脳出血症例2839例を、SBP<140mmHgでコントロール(入院後1時間以内にターゲットに達し、7日間継続)するか、SBP<180mmHgでコントロールするか(AHA/ASAのガイドライン)でRCT。症例の2/3は中国。修正Rankinスコア
が3点以上の頻度はSBP140群が52.0%、SBP180群が55.6%でギリギリ有意差なし(p=0.06)。Rankinスコア全体を比較するとp=0.04。死亡率は11.9%と12.0%で同じ。
いやー、ついに出ましたよ、INTERACT 2。個人的に待ちに待っていた研究の一つ。そしてその結果はちょっとだけポジティブ。なるほどー。
これまで、脳出血に対する治療として、手術も止血剤もみんな否定されてきた。なので、これだけのレベルの症例数で、有効性が示されたのは初めてでしょう。
血圧を下げると出血が大きくならずに済むかもしれない。でも脳血流が減るので虚血部分がさらに悪くなるかもしれない。で、その足し算として、血圧を下げることはちょっとだけ良かった。
一つ驚きなのは、出血の増大が1.4mlしか減少しなかったこと。その程度の差で臨床的な意義は出ないかも。SBP180の方が脳血流が増えて脳圧が上がったかもとか、推測はされているけど。
同じような研究がアメリカでも行われていて(ATACH II)、結果は2016年に出るらしい。そちらも楽しみ。

Birnie DH, Healey JS, Wells GA, et al.; BRUISE CONTROL Investigators.
Pacemaker or defibrillator surgery without interruption of anticoagulation.
N Engl J Med. 2013 May 30;368(22):2084-93. PMID: 23659733.


ワーファリン内服中の患者さんにペースメーカー(もしくはICD)を植え込む手術のときに、ワーファリンをそのまま続けるか、5日前から中止してヘパリンに変更(手術前に中止、24時間後に再開)するかでRCT。ワーファリン群では343例中12例(3.5%)、ヘパリン群では338例中54例(16.0%)に臨床的に意義のある出血がポケットに発生。塞栓の合併症はほとんど起こらなかった。
へー。こういうのを"抗凝固剤ストレステスト”って呼ぶんだって。抗凝固剤が継続されていれば、出血しそうな部分からは手術中に出血するので止血できるけど、抗凝固剤を後で再開すると術中の止血があまくなるから。
ポリペクとか手の手術とか泌尿器科的手技とか、ワーファリンを継続するのっていろいろ検討され始めているらしい。でもRCTはこれが初めてかも。

ああ、面白かった。
では、また明日。
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