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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUに入院した患者における生命維持補助と転帰

2025年04月24日 | ICU・システム
Moin EE, Seewald NJ, Halpern SD.
Use of Life Support and Outcomes Among Patients Admitted to Intensive Care Units.
JAMA. 2025 Apr 14: Epub ahead of print. PMID: 40227733.


アメリカの54の医療システムのデータベースを利用。2014-2023年の345万例。

主にはパンデミック前後の変化について書いてあるのだけど、昇圧剤の使用頻度が2018年途中から突然上昇始め、3年で3倍になっている。それってすごい医療の変化だと思うのだけど、Discussionにも、
"This finding may reflect changes in clinician decision-making around initiating vasopressors, the safety of peripherally delivered vasopressors, or efforts to reduce crystalloid use in vasodilatory shock and the acute respiratory distress syndrome."
「この所見は、血管拡張性ショックや急性呼吸窮迫症候群における晶質液の使用を減らすための努力や、血管拡張薬の投与開始に関する臨床医の意思決定の変化、末梢から投与される血管拡張薬の安全性を反映しているのかもしれない。」
程度の記載でさらっと終わっている。

どんな理由があっても、昇圧剤投与というICUで行われる通常の医療行為が3年で3倍になるとは。アメリカ人的には変化を実感しているので常識の範囲なのかもしれないが、普通に考えてCOVIDの影響がなくなった話よりもよっぽどビックリ。

日本でもこういう変化は起こっているのだろうか。意識していないか、常識すぎて気にならないか。
今思い出したのは、AMIに酸素投与をしなくなったこと。20世紀では低酸素の有無関係なしに溶解酸素を増やして心筋を守ろうという考えがあって全例に投与されていた。それはある時から急激に減った(というかやらなくなった)。

あ、あった。SAHの管理。
気分が悪くなったので、これでおしまい。
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集中治療専門医を失わないらしい。

2025年04月20日 | ICU・システム
集中治療専門医を失うらしい、とずっと思っていたのだけど。

つい先日、学会から「集中治療科専門医更新申請のお知らせ」というメールが来て、おお、ついにあと1年になったなとちょっとしんみりしていた。でも、何か基本領域のことがメールに全然書いてなくてあっさりしているし、念のため調べてみるかと考え直して、まず試しにChat先生に聞いてみた。そしたら、

「以前の制度で日本集中治療医学会の集中治療専門医資格を取得された方で、他の基本領域(例:内科、救急科など)の専門医資格をお持ちでない場合でも、引き続き更新申請は可能です。2024年12月版の学会認定【専門医更新】申請に関するFAQによると、学会認定制度の場合、基本領域の専門医資格がなくても、更新申請の要件を満たせば更新することが可能です 。」

へっ?
そなの?
リンクを辿ってみると、このページに小さくFAQがあり、確かにそう書いてあるではないですか!

さーて、どうしよう?
もう5年もICUの臨床していないから資格があるとは言いにくいし、そもそも持っていて得したことないし、ここは潔く辞退するか?
なんて1分くらい考えたが、まあICUにはまだ関与しているし、福岡にも行って話したし(ランチョンだけど)、まあ今回は更新しようかな、と考え直した。

ということで、2031年まではreal intensivist(Chat先生によるとそんな言葉は存在しないらしいが)であり続けることとなりました。


"real intensivist"というタイトルでかっこいい絵を描いて、とお願いしたら。
僕にそっくりじゃないですか!
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SCCMは包括的かつ継続的な集中治療データレジストリを作成し維持する時期に来ている!

2025年04月07日 | ICU・システム
Halpern NA.
The Time Has Come for the Society of Critical Care Medicine to Create and Maintain a Comprehensive and Ongoing Critical Care Medicine Data Registry!
Crit Care Med. 2025 Apr 1. Epub ahead of print. PMID: 40167361.


この文献のeditorial。その中に、
"Thus, it would be nice to have a nationally accepted, comprehensive, easily used, and continuously maintained critical care data registry that would be available for a variety of critical care practitioners, clinicians, administrators, Quality Improvement professionals, and researchers!"
「したがって、全国的に認められた包括的で使いやすく、継続的に維持管理される集中治療データレジストリが、さまざまな集中治療の実践者、臨床医、管理者、医療の質改善の専門家、研究者たちに利用可能であれば理想的だ!」
と書いてあって、ちょっと笑ってしまった。

日本では10年前から実践できている。
SCCM君、分からないことがあったら何でも聞いてくれたまえ。はっはっは。
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アフリカ22カ国における重症患者の有病率調査

2025年03月08日 | ICU・システム
African Critical Illness Outcomes Study (ACIOS) Investigators.
The African Critical Illness Outcomes Study (ACIOS): a point prevalence study of critical illness in 22 nations in Africa.
Lancet. 2025 Mar 1;405(10480):715-724. PMID: 40023650.


1つ以上のバイタルに異常のある重症患者のうち、基本的な治療(酸素、補液、昇圧剤など)をすべて受けていた頻度は44.4%。
こういうのを読むと、AIがどうこう言っている自分は何をしているんだ、という気持ちになってしまって、困る。

少し話がズレるのだけど、ここ1-2週間、このブログの訪問者数がいつもより100人以上多くなっている。連続投稿しているからかな?と思ったらそうではなく、この記事が読まれているからだった。少しでも正しい情報が広がって、無駄なお金が使われなくなることを祈りたい。
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集中治療医の定義

2025年03月05日 | ICU・システム
Wu D, Dzierba AL, Ablordeppey EA, et al.
The Definition of the Intensivist in the Era of Global Healthcare: 2024 Consensus Statement From the Society of Critical Care Medicine Defining Intensivist Task Force.
Crit Care Med. 2025 Feb 21. Epub ahead of print. PMID: 39982148.


アメリカの定義だけど、バシッとダイレクトに書いてあるから紹介。
集中治療医の定義:
"A physician who has successfully completed an accredited program or equivalent critical care/intensive care medicine training and maintains advanced certification (if available); and shows dedication to the area of critical/intensive care medicine in the way of professional work."
「認定されたプログラムまたは同等の集中治療医学の研修を修了し、(可能であれば)上級資格を維持している医師であり、専門的な業務を通じて集中治療医学の分野に対する献身を示している者。」

集中治療医の役目も書いてある。
たくさんリストがあるのでコピペしないけど、その中でいつも気になるやつ。
"Support pallative and end-of-life care to patients and their families"
これを明示している専門分野って少ないはず。
なので、「終末期医療が役割として明記されている専門分野」であることを、みんな意識してほしいなー、と思っています。
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ICUのある病院とない病院における中間治療室入院患者の死亡率

2025年02月03日 | ICU・システム
これまた世界のOhbe等による研究。

Ohbe H, Kudo D, Kimura Y, et al.
In-hospital mortality of patients admitted to the intermediate care unit in hospitals with and without an intensive care unit: a nationwide inpatient database study.
Crit Care. 2025 Jan 20;29(1):34. PMID: 39833886.


Intermediate care units (IMCUs)に2016年から2022年の間に入室した約300万症例のうち、25%は院内にICUのない病院のIMCUに入室した。交絡因子を除外すると、ICUのない病院のIMCU入室患者の死亡率のオッズ比は1.15だった。

ICUの定義の問題で、院内にICUを作れない代わりにHCU(など)を作る。そうすると、院内にICUが必要な重症患者が発生しても、ICUのある他院に転院したりせずに自分のHCUで診療を継続する。これは十分にあり得るし、実際に日本中で起こっているに違いない。そういう環境での死亡率が高いことは、医療者の専門性や看護患者比から容易に想像できる。
ちなみに、ICUのあるHCUだとICUのスッテプダウンがメインだったり術後患者が多かったりするのかと思ったら、Table 1を見る限り、非術後患者がメインで、入院当日にHCU入室する患者の数はICUのあるHCUの方が多かった。
さらにちなみに、ドーパミンがICUのないHCUで倍以上の頻度で使われていて、ちょっと笑える

結論の"IMCUs should be placed in hospitals with ICU"には全面的に賛成。
重症患者はどんどん転院したらいいのでは。そうする仕組みというか習慣を作ることが大事だと思います。
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日本の高齢ICU患者における生命維持介入の利用と転帰

2025年01月09日 | ICU・システム
ついにJIPADデータを使った研究がICMに掲載された。

Shiotsuka J, Masuyama T, Uchino S, et al.
Utilization and outcomes of life-supporting interventions in older ICU patients in Japan: a nationwide registry study.
Intensive Care Med. 2025 Jan 7. Epub ahead of print. PMID: 39774864.


これで、自治さいたまからICMが1本、CCが2本、JIPADを使った研究を出せた。
さらには、Editorialに、
"...should be lauded for undertaking the endeavour to maintain a national registry in a large healthcare system to monitor the state of the art in intensive care."
「集中治療の最先端をモニターするために、大規模な医療システムにおいて全国的な登録を維持する努力を行ったことは賞賛されるべきである。」
って書かれて、二重の意味でルンルン。
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集中治療研修施設の認定が重症呼吸不全の補助療法の選択と予後に及ぼす影響

2024年12月29日 | ICU・システム
以前の同僚がfirst authorの研究。良い研究なので紹介します。

Yoshida T, Shimizu S, Fushimi K, et al.
Impact of board-certified intensive care training facilities on choice of adjunctive therapies and prognosis of severe respiratory failure: a nationwide cohort study.
J Intensive Care. 2024 Dec 19;12(1):52. PMID: 39696527.


DPC研究。2016~2019年に4日間以上の人工呼吸を必要とした患者さんを、病院が集中治療医学会認定研修施設かどうかで分けて比較。非認定施設の方がICU/HCUでの管理が少なく、鎮静・鎮痛剤の使用が少なく、シベレスタット・ドーパミンの使用が多く、死亡率が高い。

死亡率については、認定研修施設で軽症患者を長期人工呼吸していたかもしれないし、早期に死亡していたかもしれないので何とも言えない。でも治療内容の違いは明確と言っていいでしょう。いろいろなところで、集中治療の専門性についてアピールする時に使えるのでは。

他にも、認定研修施設のICUがある病院でICU/HCUの使用率が72%しかないのはどうなのかとか、Lancetの研究から20年近く経っているのにドーパミンを使う人ってどうなんだとか、いろいろ思うところがあり、面白いです。
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回診チェックリストがICU入院患者の転帰に及ぼす影響

2024年12月09日 | ICU・システム
MacKinnon KM, Seshadri S, Mailman JF, Sy E.
Impact of Rounding Checklists on the Outcomes of Patients Admitted to ICUs: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Explor. 2024 Aug 20;6(8):e1140. PMID: 39162653.


ICUチェックリストのメタ解析。30研究が対象。病院死亡に対するチェックリスト使用のrisk比は0.8(CI: 0.70−0.92)。

栄養投与や不要なカーテルの抜去など、すべてのICUの患者さんに対して毎日検討するべき項目はある。でも人間は忘れる生き物なので、チェックリストの価値は当然ある。ただ、それが病院死亡率を20%減少させるか?と言うと、ちょっと疑問。

RRS、TeleICU、そしてチェックリストは共通点が多い。
・重症患者に対するシステムの変更
・多施設の観察研究で有効性が示されている
・多施設RCTはほぼ1つずつ、全てネガティブ
・実際に仕組みを導入して、「ああ良かった」と思っている(改善を実感できる)施設はたくさんある
・しかし仕組みを導入した全ての施設が「ああ良かった」とは思っていない

後半の2つは根拠の提示が難しいけど、まあ事実でしょう。
つまり、導入して悪いことはないのだけど、良いことが必ず起こるとは言えない。理由は簡単、薬と違って、環境や人間関係に大きく影響を受けるから。

重症患者さんの予後を改善する方法は明らかに存在するのに、それは漠然としたもので、知識やエビデンスとは違うところにある。
じゃあ、どうする?
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診断推論における大規模言語モデルの影響

2024年11月15日 | ICU・システム
AI関連のRCTはそこそこじっくり読むようにしています。

Goh E, Gallo R, Hom J, et al.
Large Language Model Influence on Diagnostic Reasoning: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Netw Open. 2024 Oct 1;7(10):e2440969. PMID: 39466245.


50名の家庭医、内科医、救急医を2群に分け、実際の症例をベースにした診断問題に答えてもらった。介入群ではLLM(本文には書いてないがサプリでChatGPTであることを確認)の使用が許された。その結果、介入群で診断精度は向上せず、LLMだけの診断精度は医師に比べて有意に高かった。

診断問題について。
”adapted from a landmark study"と書いてあって、へーと思った。これが元文献。ほお、僕が医者二年目の時(週5で病院に泊まっていた頃、もちろんNEJMを定期的に読むなんてしていない)にすでにこんな研究があったとは、と驚いた。でも、この文章をLLMが知ってたら精度が高いのは当然だと思ったのだけど、Methodsの最初の方に、”The cases have never been publicly released to protect the validity of the test materials for future use, and therefore are excluded from training data of the LLM."としっかり書いてあった。

介入群に改善がなかったことについて。
「LLMなんかより俺の方が正しいぜ」と考える人が多かったからかと思ったのだけど、discussionでは、プロンプトの書き方に問題があったのでは、と推測している。確かに、普段LLMを使っているかどうかでサブグループ解析が行われていて、有意ではないけど、よく使う人の方が診断精度が高く、診断までに要する時間が短い。
でも、全文コピペして”診断は?”と聞くだけでも、ちゃんと答えてくれそうだけどね。少し不思議。

LLMの診断精度が人間よりも高かったことについて。
NEJMのimage challengeを毎週LLMに解かせて遊んでいる身としては、当然の結果と思える。でも残念ながら、臨床では使えないんだよね、まだ。理由は、ここに書いたことが一つ。そして、診断問題は知識が十分にあれば正しい診断に至れるように書いてあるけど、カルテなどの実際の臨床情報はそうではないから。

例えば。
ある日の朝、ICUに行ったら夜間に新患が入っていた。当直医のプレゼンを聞くと、
救急外来に〇〇の症状のある患者さんが来た。救急医は〇〇系の疾患を疑い〇〇科医を呼んだ。〇〇科医は〇〇病の可能性が高いと考えた。バイタルが不安定なためICU入室を依頼した。ICU医は申し送りを受け、〇〇科医の診断に基づいて対応した。
とのこと。カンファで誰かが「診断が違うんじゃないか?」と言い、日中の〇〇科専門医とディスカッションし、検査の結果も踏まえ、当初の診断は間違っていたことが後日確定した。

何度も見たことがあるパターン。でも、少なくとも入室時のカルテを読んで誤診を指摘することは難しい。なぜならその診断に至れるような記載の仕方をしているから。これをLLMが読んでも同じ診断になるはず。家族の発言、ナースの記録、ICU入室後の経過、画像などの検査所見、これらを統合して診断し、かつリアルタイムに更新する仕組みが作られない限り、実際の臨床では役立つ場面は少なそう。

とか言っても、数年でそのレベルに達しちゃうだろうけど。まだそうじゃないだけで。
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