Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

今週も二週分

2013年07月29日 | その他
まだ文献の山の処理が終わらない。
ということで、今週も二週分まとめて。
まだICMとCCMの7月号もチェックしてないし。もうすぐ8月だし。うーん。

Chopra V, Anand S, Hickner A, et al.
Risk of venous thromboembolism associated with peripherally inserted central catheters: a systematic review and meta-analysis.
Lancet. 2013 May 17. [Epub ahead of print] PMID: 23697825.


PICC(ピックカテーテル)による静脈血栓症についてのメタアナリシス。64研究が対象。そのうち12は中心静脈(CV)との比較、52はPICCについてのみの研究。DVTの発生頻度は病態によって異なり、ICU患者(13.91%)、癌患者(6.67%)で多い。CVと比べ、PICCはDVTの発生頻度が2.55倍多い。しかい肺塞栓は増やさない(というかゼロ)。
まあ、そりゃそうかな。カテが長いしね。細い血管から入れるし。留置期間も長いかもしれないし。結論ではリスクとベネフィットを天秤にかけましょうってなっているけど、肺塞栓がゼロで、カテによるDVTだけなら、別にいいかな?
ジャーナルクラブ行きとします。

Mentzelopoulos SD, Malachias S, Chamos C, et al.
Vasopressin, steroids, and epinephrine and neurologically favorable survival after in-hospital cardiac arrest: a randomized clinical trial.
JAMA. 2013 Jul 17;310(3):270-9. PMID: 23860985.


ギリシャの3つの病院で行われたRCT。院内心停止の蘇生中に、アドレナリンのみを投与するか、それに加えてバソプレシンとステロイドを投与するかで比較。バソプレシンとステロイドを投与すると、蘇生率が上がり(オッズ比2.98)、良好な神経予後で退院する確率が上がり(3.28)、循環も安定し、臓器障害も減少する。
むむむ。ちょっとすごい話だ。でも、これがNEJMではなくてJAMAだというところがミソか。
これもジャーナルクラブ行き。

Melsen WG, Rovers MM, Groenwold RH, et al.
Attributable mortality of ventilator-associated pneumonia: a meta-analysis of individual patient data from randomised prevention studies.
Lancet Infect Dis. 2013 Aug;13(8):665-71. PMID: 23622939.


VAPの予防についての24のRCTから患者データをもらって行われたメタアナリシス。合計6284例。VAPによる死亡率の増加は平均して13%で、外科患者と重症度スコアが中等度の患者に多かった。逆に、内科患者、外傷患者、重症度スコアが低い患者、高い患者ではほとんどゼロだった。
VAPを予防することによる死亡率の低下を検証するためには数千例が必要だろう、というのが結論。でもさあ、内科患者はゼロで外科患者は69%って、信じられないんだけど。やっぱりVAPって、何か怪しい。

Hickey M, Gatien M, Taljaard M, et al.
Outcomes of urgent warfarin reversal with frozen plasma versus prothrombin complex concentrate in the emergency department.
Circulation. 2013 Jul 23;128(4):360-4. PMID: 23770745.

カナダの2つの病院の救急部。ワーファリンを内服していて入院時にINRが1.5以上あって、それに対して2008年8月まではFFP、その後はPCCを投与した。つまりはbefore-after研究。前期149例、後期165例。FFPの時期の方が、重篤な合併症の発生頻度が高く、INRが正常化するまでの時間が長く、赤血球輸血の量が多かった。
ふーん。この話題で2施設のbefore-after研究でcirculationに載っちゃうんだ。誰か、ガツンとデカイRCTをやって、ケリをつけてくれないかなー。
日本なんて、PCC(商品名はファイバ)の禁忌のところに、”血液凝固因子インヒビターを有していない患者”って書いてあるくらいだし。

Suehiro K, Tanaka K, Funao T, et al.
Systemic vascular resistance has an impact on the reliability of the Vigileo-FloTrac system in measuring cardiac output and tracking cardiac output changes.
Br J Anaesth. 2013 Aug;111(2):170-7. PMID: 23479677.


日本からの多施設研究。心臓外科患者40例にフロートラックと肺動脈カテーテル(PAC)の両方を同時に使用して心拍出量を測定。かつ、フェニレフリンを投与して血管抵抗を変えてさらに比較。患者をフェニレフリン投与前の血管抵抗で三群に分類。その結果、血管抵抗が低い群ではフロートラックの方が心拍出量が高く、血管抵抗が高い群ではPACの方が低く、どの群でもバイアスは大きかった。フェニレフリン投与による心拍出量の変化の一致度も、特に血管抵抗が高い群で低かった。
っていうか、もう使うの止めない?
血圧が変化すると急激にフロートラックの心拍出量も変化する。そんなわけないじゃん。

今週もメインは無しで。
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二つのBefore-after研究

2013年07月27日 | ひとりごと
集中治療医学会に入会している方には、お手元に緑雑誌(学会雑誌)の7月号が届いているのでは。
そこに、こんなタイトルのレターを書きました。
読んでもらうと分かりますが、なんかつまらないでしょう?
理由は、編集側からの要請で一部を削除したから。
客観性をもとめる学会雑誌では当然のことなので、文句じゃありませんよ。
でも、せっかくグラフも作ったし、ここに転記しちゃおっと。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

図はインターネット上で利用可能な情報を用いて作成したもので、両薬剤の年度毎の売り上げを示している。シベレスタットの売り上げは50億円前後で横ばいとなり、ここ数年はゆっくりと減少傾向となっているのに対し、トロンボモジュリンは発売開始以降急激に売り上げを延ばしており、2012年度には100億円に達する勢いである。両薬剤の現段階でのエビデンスを考慮すると、それが正しいかどうかは別として、妥当な推移と思える。

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補液って面白い。

2013年07月26日 | ひとりごと
先生、患者さんの尿量が少ないです。
ふむ、脱水かもしれないね。補液しよう。

先生、患者さんが多尿で、バランスがマイナスになりました。
ふむ、脱水になっちゃうから、補液しよう。

こんな治療って、他にある?
血圧が下がったら昇圧剤。上がっても昇圧剤?いやいや。
PaO2が下がったら酸素投与。上がっても酸素投与?いやいや。

だから補液って面白い?
いやいや。
分からなすぎて、嫌いです。
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こんな医者には注意しよう5から7

2013年07月24日 | ひとりごと
5: 補液をしたら血圧が上がったから脱水だったんだと言う医者、

6: ある指標によって患者さんが脱水かどうかが分かると思っている医者、

7: CVPが低いとか脈が速いとかを理由に補液をしようと言う医者、

とは、補液の必要性について議論するのはやめよう。

脱水ではなくても、心室充満量の増加が心拍出量の増加に繋がる状態では、血圧は上がる。世の中にある補液の有用性についての研究は、補液をしたら心拍出量が増えるかどうかを、補液をする前に予測することができるか(fluid responsiveness prediction)についてであって、現在の状態が脱水かどうかを評価したものではない。そして、それらの研究のほとんどすべてにおいて、CVPやHRは役に立たないことが示されている。

ほっ。
集中治療的。
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二週分まとめて

2013年07月22日 | その他
今日から日常生活にカムバック。
二週分ということで、ちょっと多めに。

Agnelli G, Buller HR, Cohen A, et al.; the AMPLIFY Investigators.
Oral Apixaban for the Treatment of Acute Venous Thromboembolism.
N Engl J Med. 2013 Jul 1.[Epub ahead of print] PMID: 23808982.


静脈血栓症(うち約35%はPE)症例5395例に対し、通常の治療(急性期は低分子ヘパリン、その後ワーファリンに移行)と、Xa因子阻害剤であるアピキサバンを半年投与するかでRCT。静脈血栓症の再発もしくは死亡は通常群で2.7%、アピキサバン群で2.3%。メジャーな出血は1.8%と0.6%で有意に少なかった。
当然、製薬会社がスポンサーの研究。これが本当なら便利ですけどね。

Shen J, Pan JW, Fan ZX, et al.
Dissociation of vasospasm-related morbidity and outcomes in patients with aneurysmal subarachnoid hemorrhage treated with clazosentan: a meta-analysis of randomized controlled trials.
J Neurosurg. 2013 Jul;119(1):180-9. PMID: 23641823.


SAH後の血管攣縮予防についてクラゾセンタン(エンドセリン受容体阻害剤)の有効性を検討した4つのRCTのメタアナリシス。合計2181例が対象。遅発性脳虚血(DIND)および脳梗塞は有意に減少(オッズ比は0.76と0.79)。でもGCS(オッズ比1.12)と死亡率(オッズ比1.02)は改善無し。合併症(呼吸器系、貧血、低血圧)はクラゾセンタン群で高かった。
スパズムを予防してもSAHの長期予後はよくなりません、という話。

Spetzler RF, McDougall CG, Albuquerque FC, et al.
The Barrow Ruptured Aneurysm Trial: 3-year results.
J Neurosurg. 2013 Jul;119(1):146-57. PMID: 23621600.


SAHに対し、クリップとコイルを比較したRCT。ISATとは異なり、除外基準を軽くして、より臨床に近い状況を作ることを念頭において行われた研究の、3年後のフォローアップ。予後不良となった頻度はクリップで35.8%、コイルで30%で、1年後フォローのときとは異なり、有意差がなくなった(p=0.25)。動脈瘤の再発、再治療の必要性についてはクリップの方が良かった。
長期にフォローアップすると侵襲性の低い治療方法の有効性が低くなるというのは納得がいく結果。それよりも面白いのは、editorialがISATの筆者によって書かれていること。すべてBarrow studyの文句で、最後の文章は、"The present paper is scientifically flawed"。で、その後に今度はBarrow studyの筆者による反論。感想は各自で。

Saquib N, Saquib J, Ioannidis JP.
Practices and impact of primary outcome adjustment in randomized controlled trials: meta-epidemiologic study.
BMJ. 2013 Jul 12;347:f4313. PMID: 23851720.


インパクトファクターがトップ25の雑誌に2009年に発表された684のRCTから無作為に200を選択。そのうち、29%では修正した解析結果のみが発表されており、21%では修正前の結果と両方が発表されていた。修正前の結果と修正した結果の両方が発表された文献のうち、18%では修正するかどうかで有意差の有無が異なった。
この話で思い出すのは敗血症性ショックに対するステロイド。この研究、ステロイド投与群で予後が改善したとなっているけど、実際には患者背景で修正されていて、粗死亡率には有意差はない。つまり、もともと怪しかったんだよね。

Chen LM, Nallamothu BK, Spertus JA, et al.
Association Between a Hospital's Rate of Cardiac Arrest Incidence and Cardiac Arrest Survival.
JAMA Intern Med. 2013 Jul 8;173(13):1186-95. PMID: 23689900.


Get With the Guidelineのデータベースを用い、院内心停止の発生頻度と病院退院率について評価。年間の院内心停止が50例以上あった258の病院(102,153例)が対象。全体で、院内心停止の発生頻度は1000入院あたり4.02、退院時生存率は18.8%だった。院内心停止の発生頻度と退院時生存率には逆相関が認められた。
退院時生存率が高いのは、入院患者の管理が悪くて心停止が予防できていないために軽症例も心停止するからかも、という可能性を検証するための研究。実際は逆で、心停止が少ないと生存率も良い。

量が多い分、メインはなしで。
ご容赦。
うーん、まだ完全には日常に戻れない。眠いし。
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こんな医者には注意しよう4

2013年07月21日 | ひとりごと
4: 明らかに目上の患者さんが自分に対して敬語で話しているのにタメ口で対応する医者(ナース、その他)に、常識を求めるのはやめよう。

これ、気になるわ。
自分の半分以下の年令のやつにタメ口で話されて、患者さんはどう思うんだろう。自分がその年齢になって、若い医者(ナース、その他)にタメ口で対応されたら、それを許容できるんだろうか。
親しみを込めて使うっていうパターンはあるけど、それで患者さんが敬語で返したら、そのパターンは崩壊してるし。

うーん、また集中治療系じゃないぞ。
だって、しょーがないじゃん。思いついたんだもーん。
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こんな医者には注意しよう3

2013年07月19日 | ひとりごと
3: 自分が頻回に使用している薬剤の一般名が言えない医者とは、その薬剤について会話をするのはやめよう。

だって、まともに調べた/勉強したことがないということだもんね。

10年くらい前、ある病院で内科外来のバイトをしていたときに、隣のブース(その病院の内科常勤医)からこんな話し声が聞こえてきた。
「ガスターって、何に変わったの?え、ファモチジン?もー、どんどん変な名前になっちゃうから覚えられないよー。」
ロボコン、0点。

そして気がついた。
これは集中治療系の話ではない。
もう2回目にしてか!
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重症患者の治療についてのアンケート調査

2013年07月17日 | その他
こんなアンケート調査が現在行われているそうです。

重症患者に対し、少なくとも1つの多施設RCTでその有用性もしくは有害性が示されている合計19の治療方法について、
・そのエビデンスが日常診療に採用するのに十分かどうか
・そのエビデンスを実際に診療で使用しているか(その治療方法を使用しているかではないことに注意)
について、yes/noで答えるというものです。

名前や施設の記入欄がありますが、最低限要求されるのはEメールアドレスだけです(正確には集中治療医かどうかも)。
この調査に参加すると、調査結果が自分のメールアドレスに送られて来るようです。

この調査のもう一つのメリットは、アンケートの画面にPDFが貼付けてあって、エビデンスとして提示している多施設RCTの文献が簡単にダウンロード可能になっていることです。知らない治療方法や研究については勉強にもなってしまうという一石二鳥の調査です。

目標は”世界中から目指せ1000人”だそうですので、日本からもドシドシご参加いただければと思います。

よろしくお願いしまーす。
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お詫び

2013年07月15日 | ひとりごと
先月に学会的なものがあり、その前後で仕事が思いっきりたまり、そちらを優先した結果、先週は文献紹介のブログを更新できないという、ここ2年間で初めてではという出来事が起こっちゃいました。
そして、実は今週もいつもの文献紹介はできなかったりします。。。

でもそれでは寂しいので、先週ちょっと思ったことでも。
先週、看護学の大学院の学生さん(ナースとしてはベテランぞろい)に講義をする機会があって。
いただいたお題は”腎機能・水電解質の管理”。
こういうの、とっても困ってしまうのですよ。きっと望まれている内容は、このタイトルから想像できる教科書的なものでしょう。より専門的な看護学を学ぶにあたって、医学的なものもレベルを上げる必要があるので、医師からの講義が必要、的な。
でも、こういう講義はしたことがなく、ろくに教科書も読んだことがないので、仕方なく、”AKIっていう概念が出来たんですよ”とか、”CRRTとかって、日本ってちょっと違うんですよ”とかの話をして。まあ、そりゃずれてますわな。
改めて、座学/講義とは何ぞや、という疑問も感じたりするし。
このタイトルで、僕よりもちゃんと話をしてくれる人はたくさんいるでしょうし、来年からはお断りしようと思っております。

で、この話をしたときに受けた質問で、”どうして日本のお医者さんたちは他の国と違う治療をしているのか”というのがあって。
やろうと思えば、それこそこのタイトルで講義ができちゃうくらいの話題。疑問を感じてほしいというのが話の狙いの一つだったりしたので、シメシメとも思いつつ、気軽に答えられないとも思いつつ。
で、こう答えました。
少なくとも一つの理由として、英語を読まないからだと思います。世界には70億の人がいて、情報共有は英語で行っているのに、日本語で書いていることしか読まないでいると、情報が70分の1になり、どうしても偏ってしまう。。。

先月の学会で、ドイツの友人に数年ぶりに会って、最近のお互いの状況について話していたら、そのドイツ人が、
今の自分の職場では、誰も英語の文献を読まず、ドイツ語の学会雑誌くらいでしか勉強をしない。研究にもまったく興味を持たないし。
という話をした。ちょっとビックリ。今まで外人さんたちと話していて、こういう話題はほとんど聞いたことがなかったので。ドイツって、いろいろ日本と似てるんだなー。

で、実は今、そのドイツにいます。夏休みで。
これが文献紹介を今週も更新できない理由。
定期的にお読みいただいている方々、ごめんなさい。
仕事が滞っているためにご迷惑をおかけしている方々、ごめんなさい。

ドイツは緯度が高いから少し涼しいよ、と聞いていたけど、ちょっと違う。
朝は15度、午後は30度。
それとも、これも温暖化のせい?
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こんな医者には注意しよう1と2

2013年07月07日 | ひとりごと
というのが一部で流行っているらしいので。
ICU的なやつを。

1: ハムレットと言ってキョトンとする脳外科医に、重症脳梗塞の減圧開頭について相談するのはやめよう。

2: NCSEと言ってキョトンとする神経内科医(脳外科医や精神科医も含む)に、痙攣重責について相談するのはやめよう。

どんどん思いつきそうだ。
シリーズ化したりして。
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