Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

PCI/CAGに関しての文献2つ、でも循環器系の話ではありません。

2022年09月24日 | EBM関連
JAMA系の雑誌に、PCI/CAGに関しての文献が2つ発表された。

Jolly SS, AlRashidi S, d'Entremont MA, et al.
Routine Ultrasonography Guidance for Femoral Vascular Access for Cardiac Procedures: The UNIVERSAL Randomized Clinical Trial.
JAMA Cardiol. 2022 Sep 18. PMID: 36116089.

鼠径の動脈穿刺時にエコーを使うかどうかでRCT、N=621。エコーを使うと誤穿刺が減って試行回数が減る。

James MT, Har BJ, Tyrrell BD, et al.
Effect of Clinical Decision Support With Audit and Feedback on Prevention of Acute Kidney Injury in Patients Undergoing Coronary Angiography: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2022 Sep 6;328(9):839-849. PMID: 36066520.

34人の循環器内科医に対するCAG/PCI後のAKI発生減少を目的とした教育、造影剤投与量計算、フィードバックの導入前後で比較。患者はAKIの発生リスクが高い約4000例。その結果、造影剤の過量投与が減り、補液の少ない患者の割合が減り、AKIの発生頻度が減った(オッズ比0.72)。

「当たり前のことをしたら当たり前の結果が出ただけ。循環器内科医さん、大丈夫?」
と言いたくなるのをグッと抑えて、一般化してみる。

当たり前のことを知らない人もいるし、
つい間違ったことをしてしまうこともあるし、
自分の能力はだれでも過信するし。
だからプロトコルとかルールとかが必要なんでしょう。教育だけでは防げない。

あ、「プロトコルとかルールを作っても守られない」と思った方は、こちらを。
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Critical care physiology in resuscitation: Rinaldo Bellomo

2022年09月23日 | 勝手に紹介
Critical care physiology in resuscitation: Rinaldo Bellomo
つい最近、知り合いに教えてもらった。
4年前の動画なんだけど、全然知らなかった。

クソ面白い。
たった15分なので是非ご覧あれ。
内容は、
"physiological gain is immensely seductive in ICU where we all practice a new art called numerology"
を、ぐうの音も出ないレベルで説明している。

ちなみに、
"how lucky are you to be such a doctor?"
でプレゼンが終わる。
さて、どんな医者だと言っているでしょう?
これまた、ぐうの音も出ないよ。
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集中治療の現場で命を救う機械

2022年09月17日 | ICU・システム
Jaber S, Citerio G, Combes A.
Machines that save lives in intensive care: why a special issue in ICM?
Intensive Care Med. 2022 Oct;48(10):1271-1273. PMID: 36066599.


今月のICMは医療機器の特集。
たくさんあるねー、機械。これでもまだ一部だもんね。
楽しそうなのを読んだらいいんじゃないかな。

ただし、ちょっと注意は必要。
試しに血漿交換の総説を読んでみたのだけど、絶対適応のリストの中にacute liver failureが入っていてビックリ。他の疾患には説明がないのに、これだけは小さい字で記載があって、"Not widely used yet and limited to a few specialized centers but strong evidence base in acute liver failure (especially hyperacute) in improving transplant free survival in patients who meet transplant criteria but are either ineligible for transplant or do not have access to timely transplant. TPE may also be used as a bridge to transplant in acute liver failure with multiple organ failure [75]"と書いてあって更にビックリ。
(DeepLによる和訳:まだ広く使われておらず、一部の専門施設に限られているが、急性肝不全(特に超急性期)において、移植基準を満たすが移植不適格であるか、適時に移植を受けられない患者の無移植生存率を改善するという強いエビデンスがある。TPEはまた、多臓器不全を伴う急性肝不全における移植への橋渡しとして使用されるかもしれない。)

参照文献75はこれ。6年前に発表されたRCTで、肝不全としてはNが大きめだけど、storng evidenceと言える代物じゃない。よく見ると、この研究のlast authorが総説の執筆者に含まれている。
ああ、そういうことか。
実際、Lancetの急性肝不全の総説には、同じRCTを引用して、”but further study is required"と書いてある。

総説は、自分が知らないことを手っ取り早く教えてくれるので便利。
でも、「〇〇が正しい」、「〇〇をするべきだ」と記載されていたら疑ってかかった方がいいし、それを自分の臨床に応用しようと思ったら必ず元文献を読むこと。

それさえ気をつければ、総説は便利。
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電子リラクゼーション機器による不快感の改善

2022年09月15日 | AI・機械学習
Merliot-Gailhoustet L, Raimbert C, Garnier O, et al.
Discomfort improvement for critically ill patients using electronic relaxation devices: results of the cross-over randomized controlled trial E-CHOISIR (Electronic-CHOIce of a System for Intensive care Relaxation).
Crit Care. 2022 Sep 3;26(1):263. PMID: 36057612.


おお。
この文献紹介した時に、「有効性が示されれればすぐにもICUに入ってきてもおかしくない」なんて言ったけど。
なんとcross-overのRCTが行われてた。
いよいよ、やってくるのか?

ちなみに、Fig 1-B2の「Japan」というタイトルの人工画像がちょっと笑える。絶対日本ちゃうやろ。
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情報の共有とルールの維持について

2022年09月14日 | ひとりごと
「ミーティングで決めたことなのに、知らない人が多い」
「ルールを決めたけど、しばらくすると守られなくなる」
ありがちな問題で、困っている人も少なくないのでは。

僕はこれについて一つの答えを持っています。
これは情報共有されるべき、このルールは継続されるべき、と思ったら、その成功率は結構高かったので、ちょっと自信あります。

やり方は簡単。
自分で、
繰り返し情報を提供し、
ルール違反を見たら繰り返し指摘する、
です。
ポイントは、「自分で」と「繰り返し」。

自分で決めたことなら、それが重要だと思っているのは自分だけ。
みんなで決めたことでも、その重要性の認識の仕方は人それぞれ。
なので、「これは情報共有されるべき」、「このルールは継続されるべき」だと自分で思ったら、その担当者は自分。偉いから、他の人も知っているから、部署が違うから、じゃない(ここ特に大事)。

人は忘れるし、人は代わる。
なので繰り返し同じことを指摘しないといけない。それは5回や10回じゃない。軽く100回は同じことを指摘する。だってICUにはそれくらいの人がいるんだもの。

「〇〇に書いてあるのに読まない」
「もう〇回も言ったのに守られない」
よく聞く愚痴だけど、聞くたびにアホかと思う。

ICUでは情報共有やルール維持の失敗は患者さんの命に直結する。
自分の手間と患者さんの命を天秤にかければ、何をすればいいかは自明だと思う。
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院内心停止に対するTTM

2022年09月13日 | 循環
Blanc A, Colin G, Cariou A, et al.
Targeted Temperature Management After In-Hospital Cardiac Arrest: An Ancillary Analysis of Targeted Temperature Management for Cardiac Arrest With Nonshockable Rhythm Trial Data.
Chest. 2022 Aug;162(2):356-366. PMID: 35318006.


この研究のsubgroup解析。Nonshockable rhythmの院内心停止では33度の方が37度よりも神経予後が有意に良かった(OR=2.40)。

そうか!
と思う前にこの文献のeditorialを読もう。

Skrifvars MB, Jakobsen JC.
We Must Keep Our Cool Regarding the Effect of Therapeutic Hypothermia After In-Hospital Cardiac Arrest.
Chest. 2022 Aug;162(2):281-282. PMID: 35940648.


Keep cool, be cool.
臨床でもそうありたいですね。
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敗血症性ショックの管理はICUとHCUのどちらがいいか。

2022年09月12日 | ICU・システム
Endo K, Mizuno K, Seki T, et al.
Intensive care unit versus high-dependency care unit admission on mortality in patients with septic shock: a retrospective cohort study using Japanese claims data.
J Intensive Care. 2022 Jul 22;10(1):35. PMID: 35869538.


DPCデータを使った研究。HCUに比べたICUの30日死亡率のハザート比は0.89(p=0.005)。

何故かはよく分からないが、ICUとHCUを比較した研究って少ない(ちなみにこんな研究あります)。
いくつか気になるところ(30日以降の退院はcensorされていて、転院がICUの方が多いとか)はあるけれど、既存研究が少ないジャンルについてしっかりしたNを使って研究した点は評価される。こういうDPCデータの使い方は好きです。

話はずれるけど、
・ノルアドにDOAが20%も併用されている(ちなみにこんな研究あります)。
・PMXの使用頻度は10%以下。昔に比べて随分減ったのでは。
・人工呼吸どころかCRRTもHCUでバンバンやっているというのは、外人が見たら驚くのでは。
という感想も持ちました。
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低酸素血症は健康なボランティアの血中乳酸濃度を上昇させない。

2022年09月11日 | 循環
Kiers HD, Pickkers P, Kox M.
Hypoxemia in the presence or absence of systemic inflammation does not increase blood lactate levels in healthy volunteers.
J Crit Care. 2022 Oct;71:154116. PMID: 35872501.


低濃度酸素吸入で健常人のSpO2を80%にしても乳酸は上がらない。

「乳酸が上がったので補液したら下がった」という申し送りをこれまで1000回は聞いた気がするが、その度に「ほんとか?」と思う。でも違うとは言い切れないので黙っている。
「乳酸上昇は低酸素が原因だと思われる」という申し送りは50回くらい聞いた気がするが、これからは「多分それは違うよ」と言うことにする。

文献のPDFをフォルダに分けて管理している。”乳酸"というタイトルのフォルダもあって、この文献を整理するときに数えてみたら、この文献は91個目だった。
で、それらを読んでの乳酸についての僕の今のところの結論。
・乳酸の高い患者さんを見たときに、「どうして上がったのか」は考えない。分かるわけないから。
・考えることは、「ああ、この患者さんは頑張っているんだな」。
・その頑張りが、医療者が対処するべき(対処可能な)ことが原因なのか、そうじゃないのか、を見極める努力をする。

結果的にやることはあまり変わらないのですけど、気持ち的には違うのではないかな。
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僕が思うデータ解析のやり方

2022年09月10日 | ひとりごと
涼しくなってきましたね。秋バージョンに変更。

JIPADのデータが研究目的に利用可能になって2年半が経った。現時点で40の研究が申請され、そのうち8本が文献として公表されている。他にもMIMIC-IIIなど複数のデータベースが利用可能なので、最近はそれらを使ったNの大きい研究が多く行われるようになった。
でも、あまり研究に慣れていない人がそんな大きいデータを受け取ると、結果を出す(図表を作る)までにいくつかの壁にぶつかり、なかなかスムーズに解析が進まなかったりするようだ。なので解析方法をここに簡単にまとめておけば、「これ読んで」と言えるなと思った。あくまで僕のやり方なので、成書とはきっと違うだろうけど。

・項目を眺め、その定義を把握する。
・それぞれの項目について、欠損値がどれくらいあるか、異常値はないかを調べる。
・欠損値の扱いを決める(これは統計家と相談が必要かも)。
・直せる異常値は直す(Kが45だったら4.5にする)。他の項目との関係で直せるものもある(0歳で体重が31kgだったら3.1kgとか)。直せないものは欠損にする。
・ヒストグラムでデータの分布を見る。見逃した異常値を見つけたり、異常値の補正に問題があったことに気がついたり(正規分布しているかを見るというのもあるが、医療データは正規分布しないことが多いので、僕は検定などはしないで中央値で表記するからあまり気にしない)。
・統計解析に進めるようにデータを変形する:テキストデータを数字にしたり、多ラベルをone-hotにしたり。
・群に分ける。この辺で、除外データが決まったり増えたりする(群に分けられない、重要なデータがないなど)。
・全項目について、簡単な解析をする:中央値(25th-75th)、頻度、群間比較。
・結果をじっと見る。そうすると色々思いつく。どんな図を作ると分かりやすいかとか、こんな解析をしようとか。
・ここまで来て、やっとメインの解析(多変量解析とか)を行う。
・統計家に依頼する場合は、多変量解析が行えるようなデータ形式にして、説明を追記する。

一番大事なのは、慌ててメインの解析をしないこと。データには癖があるので、それを理解しないといけないので。逆に、癖を理解すると、より良い解析方法を思いついたりするし、別の研究で同じデータが利用できるようになる。
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Rapid response teamによる病院死亡率への影響

2022年09月09日 | ICU・システム
Factora F, Maheshwari K, Khanna S, et al.
Effect of a Rapid Response Team on the Incidence of In-Hospital Mortality.
Anesth Analg. 2022 Sep 1;135(3):595-604. PMID: 35977369.


Cleaveland Clinicでは2009年にRRTが導入され、2012年から麻酔科主導になった。その効果を、2005年から2018年の病院死亡率の変化を使って評価した、という研究。結論は、RRTが効果を示すには何年もかかることがある、というもの。

評価が難しい研究。解釈がちょっと恣意的な印象もある。
とは言え、結論には賛成。
RRTの導入の仕方によって、すぐ効果を示すこともあれば、ずっと効果を示さない場合もあれば、いろいろだろうと思う。だって、単に薬を投与するのと違って、有効性を示すための条件がたくさんあるんだもん。

特に重要だと僕が思うのは、RRTを成功させようと真剣になって行動する人の存在。
あなたの施設にはRRTはありますか?指導者はいますか?もしいないなら、効果は出てますか?
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