Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

アルブミン透析、その名をMARS

2013年10月26日 | 消化器・血液
MARSとは、 Molecular Adsorbent Recirculating Systemの略で、Gambroが発売している商品の名前で、肝不全に対する血液浄化療法の一つ。透析膜の外側に、透析液の代わりにアルブミンを流し、それによって血液から除去された肝不全物質(ビリルビンとか)を吸着膜を通して除去する、というシステム。話を耳にするようになったのは10年以上前だけど、急性肝不全に対する初めて(だと思う)の多施設RCTが発表されました。

Saliba F, Camus C, Durand F, et al.
Albumin dialysis with a noncell artificial liver support device in patients with acute liver failure: a randomized, controlled trial.
Ann Intern Med. 2013 Oct 15;159(8):522-31. PMID: 24126646.


フランスの16の移植施設。102例の急性肝不全患者に対し、通常の治療(N=49)を行うか、それに加えてMARS(N=53)を行うかでRCT。Primary outcomeは6ヶ月生存率。その結果、通常治療群の6ヶ月生存率は75.5%、MARS群は84.9%で有意差無し(p=0.28)。ただし、102例中66例は肝移植を無作為化後平均16.2時間で受けている。

さて。
うる覚えの知識ですけど。
肝不全物質の多くは蛋白結合しているので、普通の腎代替療法では除去できない。でも、透析膜の外にアルブミンがあると、そこで物質が受け渡される。これを利用したのがMARS。賢いことを考える人がいたもんだ、と当時は思った。
だけど、これではやっぱり除去量が急性肝不全のような肝機能がほぼゼロの状態では不十分ではないか、という話もあり、豚(?)の肝細胞をフィルターにくっつけた装置が開発された。しかしRCTで急性肝不全に対する効果は否定的となった。
今回の研究は、ちょっと今更感もあるのだが、急性肝不全に対するMARSの効果を評価。アナルズにこんな研究が出るとは、ちょっと驚き。

結果はどうあれ、急性肝不全なんていう症例数が多くはない疾患に対して、多施設RCTで治療方法を探っていこうという姿勢は素晴らしい。
さらに、移植がたくさん行われて、生存率が約8割なんていうのも凄い。

いまだに血漿交換だステロイドだCHDFだと言っている国は、蚊帳の外。
寂しい。
コメント (1)
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