Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

補液をすることをfluid resuscitationと呼ぶならば

2017年02月27日 | 循環
Silversides JA, Major E, Ferguson AJ, et al.
Conservative fluid management or deresuscitation for patients with sepsis or acute respiratory distress syndrome following the resuscitation phase of critical illness: a systematic review and meta-analysis.
Intensive Care Med. 2017 Feb;43(2):155-170. PMID: 27734109.


ARDS、敗血症、もしくはSIRS症例を対象とし、水分バランスが群間で異なる補液方法を比較したRCTをまとめたメタ解析。見つかったRCTは11個(N=2051)。保存的もしくは水分を除去する方法と、自由にもしくは通常通りに補液をする方法とを比較して、死亡率に有意差は認められなかったが、ventilator-free daysおよびICU滞在期間は保存的もしくは水分を除去する方法で有意な改善が認められた。

面白いのは、ARDSと敗血症とSIRSを対象なんて、メチャクチャ範囲が広そうなのに、補液する量を比較したRCTがこれまで11個しか行われていないこと。

それよりも面白かったのは、fluid deresuscitationという言葉があって、それが水分バランスをマイナスにするような対応を意味していること。へー。
この文献を紹介する気になったのは主にこっちが理由。メタ解析そのものはね、あまり興味がない。だって、結果はFACTTに引っ張られるに決まっているのだから。
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血液型と出血

2017年02月26日 | 感染
ICMのレター。ICMはimpact factorがついに10を超え、とっても立派な雑誌になったせいか、レターもそれなりの研究が載っていたりする。これはちょっと方向性が違うけど。

Mazzeffi M, Gupta R, Lonergan T, et al.
ABO type and bleeding during adult ECMO. 45.
Intensive Care Med. 2017 Feb;43(2):275-276. PMID: 27681705.


アメリカのある病院で三年半の間に行われたECMO症例111例。そのうち血液型がO型だったのが51例(45.9%、アメリカってそうなの?)。多変量解析をしたところ、O型症例の方が有意に赤血球輸血を多く受けていた(補正比率1.47)。合計40単位以上の大量輸血を受けた頻度はO型が21.6%、それ以外の血液型が6.7%だった(p=0.02)。

O型の人はvon Willebrand factorと第8因子が少ないという研究や、ECMOをするとvon Willebrand factorが減るという研究があり、それが原因ではないかと。

ほお。
もっと一般的に、つまりECMO以外ではどうなんだろう?
ちょっと面白い。
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学会で発表された研究が文献になる率

2017年02月25日 | その他
ここから先週分。
これも集中治療とは関係ない。

Gerlach B, Shah AM, Lee MT, et al.
Publication Rate of Abstracts Presented at the Society for Obstetric Anesthesia and Perinatology Annual Meetings 2010-2014.
Anesth Analg. 2017 Mar;124(3):887-889. PMID: 28151821.


産科麻酔周産期学会(で和訳があっているかどうかは知らん)の総会(2010年から2014年)に発表された研究のうち、peer-reviewed journalに掲載された文献の数を調査。ケースレポートは除外。PubMedを使っていろいろな方法で検索したところ、26.8%が文献として発表されていた。この数字は過去の同様な研究(44%~66%)と比べて小さく、改善が必要だ。

もうすぐ札幌だし、ちょっとタイムリーでしょう?
日本でこれと同じ研究やったら、どんな数字になるんだろう、と思って、紹介してみた。
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医者のバーンアウトx3

2017年02月24日 | その他
少し時間ができたので先々週の分から紹介。

同じ週に、別の雑誌で、同じ話題を見かけることはあるが、3つの雑誌となると少し珍しい。
しかも、その話題が自分的にタイムリーだったり関心事だったりするのはもっと珍しい。
先々週がそうだった。文献はこの3つ。ちなみに集中治療系なのは1つだけ。さらにちなみに、どうして関心事なのかはヒ・ミ・ツ。

Shanafelt TD, Dyrbye LN, West CP.
Addressing Physician Burnout: The Way Forward.
JAMA. 2017 Feb 9. [Epub ahead of print] PMID: 28196201.


Vandevala T, Pavey L, Chelidoni O, et al.
Psychological rumination and recovery from work in intensive care professionals: associations with stress, burnout, depression and health.
J Intensive Care. 2017 Feb 2;5:16. PMID: 28174662.


Panagioti M, Panagopoulou E, Bower P, et al.
Controlled Interventions to Reduce Burnout in Physicians: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Intern Med. 2017 Feb 1;177(2):195-205. PMID: 27918798.


最後のだけちょっと内容紹介。
医者のバーンアウトに対する介入研究についてのメタ解析。RCTもしくはbefore-after研究、合計19研究(N=1550)が対象。介入は小さいが統計学的に有意なバーンアウトの減少と関連していた(standardized mean difference -0.29)。個人に対する介入(SMD -0.18)よりも、組織に対する介入(SMD -0.45)の方が明らかに効果が大きかった。

つまりは、バーンアウトは個人の問題よりも組織の問題の方が要素として大きいということか。なんとなく納得できる。それに、これって医者だけじゃなくて全ての医療者、もしかしたら全ての労働者に言えることかも。

具体的にどんな介入かは、原文読んでください。

同じ話題の過去ログはこちら
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JIPAD年次レポート2015

2017年02月22日 | データベース・JIPAD
JIPAD年次レポート、ついに発表にこぎつけた。
頑張ったんだよ。
みんな、読んでね!

最初だから、まだ症例数とか施設数とか少ないけれども。
千里の道も一歩からっす。

P.S. 目次をクリックするとそのページに飛んで、ページの下の方をクリックするとまた目次に戻るなんていう機能が付いてるよ。使いやすいでしょ!
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慈恵ICU勉強会 170207

2017年02月18日 | ICU勉強会
7日 HFNCについてのメタ解析

ICU-CEによる二週連続の勉強会の第一弾。
HFNC、ブームだからね、今。
ちょっと、乗っかってみた。
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ARDSには2パターンある?

2017年02月09日 | 呼吸
2日連続のARDS関連。僕的にはちょっと珍しい。

Famous KR, Delucchi K, Ware LB, et al.; ARDS Network
Acute Respiratory Distress Syndrome Subphenotypes Respond Differently to Randomized Fluid Management Strategy.
Am J Respir Crit Care Med. 2017 Feb 1;195(3):331-338. PMID: 27513822.


まず、前提となる研究がある。ARMA studyALVEOLI studyのデータを用いて解析したところ、ARDS症例を二つのphenotyeに分けることができた。具体的には、phenotype 2はphenotype 1に比べて、
・炎症バイオマーカー(サイトカインとか)が高値で、
・昇圧剤の使用頻度が高くて、
・重炭酸濃度が低くて、
・敗血症の頻度が高い
群だった。そしてその群は、
・病院死亡率が高くて、
・人工呼吸期間が長くて、
・そして何よりも、ALVEOLI studyでhigh peep群の死亡率が低かった。

そして今回の研究。上記の結果が、ARDSについての最大のRCTであるFACTT study(N=1000)でも成立するかについて検討。その結果、約4分の1の症例がphenotype 2で、ARMAやALVEOLIと同様の傾向が認められた。Phenotypeを分けるベストな方法は、IL-8、重炭酸、TNF受容体1の三つを使うことで、AUROCはFACTTで0.95、ARMAで0.94、ALVEOLIでも0.91と、再現性が強く認められた。かつ、consevativeとliberalなfluid managementによる死亡率が、phenotype 1では24% vs. 17%、phenotype 2では39% vs. 49%と逆転していた。

この結果の一般的な解釈(editorial)は、
・ARDSには炎症の強いものとそうでないものの2種類ある
・炎症が強い群では死亡率が高く、かつhigh PEEPや補液制限が有効である
・ARDSにもpersonalized medicineの時代がやって来た

確かにそうかもしれない。
否定はしません。

でも、なんか違う気がする。どうしてかな。結局はサブグループ解析だからかな。ある治療が、同じ疾患群の中で、このサブグループでは有効だけど残りのサブグループでは有害で、全体ではどちらでもない、というパターンはこれまでたくさん例があって、有効なサブグループだけを対象として研究し直して有効性が示された、という例は集中治療の世界では無いと思う。
これが初の例外となるか?
否定はしません。
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ARDSの画像診断は訓練で改善するか

2017年02月08日 | 呼吸
Peng JM, Qian CY, Yu XY, et al.; China Critical Care Clinical Trial Group (CCCCTG)
Does training improve diagnostic accuracy and inter-rater agreement in applying the Berlin radiographic definition of acute respiratory distress syndrome? A multicenter prospective study.
Crit Care. 2017 Jan 20;21(1):12. PMID: 28107822.


中国のCCCCTG(Cが一つ多いのがカナダとの違い)の研究。ICUで働く286人の医師(研修医が40%、年齢の中央値は32歳)が対象。Berlin definitionで作成された12枚のレントゲン(ARDSに合致、合致しない、微妙、が4枚ずつ)を見せて、3群に分けてもらった。次に、Berlin definitionにより作成された説明文を読み、かつ12枚のレントゲンがちゃんと分類できるようになるまで最低1.5時間の訓練を受けた。そしてその2ヶ月後に同じ12枚の分類を再度行った。その結果、最初の正解率は42%、2ヶ月後で55%だった。

いろいろ面白い。
そもそも正解率ってそんなに低いのかい、が一つ。
12枚のレントゲンの読影結果を2ヶ月覚えていられないのかい、が一つ、
そしてCCCCTGがこんな研究をやっている、しかも日本ではちょっと難しそうな参加者数で、というのが一つ。

若いからレントゲンを読めないのか、それともARDSの画像診断はそもそも無理なのか、その両方か。
さてね。

自分でやってみたい、という方はこちらをどうぞ。
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患者と集中治療医のベストな人数比は?

2017年02月07日 | ICU・システム
お久しぶり❤️

Gershengorn HB, Harrison DA, Garland A, et al.
Association of Intensive Care Unit Patient-to-Intensivist Ratios With Hospital Mortality.
JAMA Intern Med. 2017 Jan 24. [Epub ahead of print] PMID: 28118657.


ICNARC(イギリスのICUデータベース)を使った研究。平日の日中に集中治療専門医が一人だけいる94のICU、約5万例が対象。病院死亡率は25%(高い、さすがイギリス)、患者:集中治療専門医比(PIR)の中央値は8.5。PIRと病院死亡率の関係を図に書くと、7.5で最低値となるU-shapeになった。

患者数が少ないと経験値が少なくなる、多いと患者さんをちゃんと診られなくなる。まあ、それはそうかも。
いろいろな状況が施設によって全然違うから、7.5という数字に意味があるとは思えないけど、多施設データを使ってこの話題を検討した研究はほぼ見たことがないこと、ICU databaseをこういう目的に使ったこと、U-shapeにちゃんとなったこと、が面白いな、と思って。
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慈恵ICU勉強会 170117 170124

2017年02月05日 | ICU勉強会
17日 ICU入退室ガイドライン(JC-CCM)
24日 CABG術中のトラネキサム酸(JC-NEJM)

2月の予定表も更新。

トラネキサム酸の結果。
微妙だねー。明確にどっちがいい、という感じではなかった。
痙攣しますけど、再手術は減りますよ。
しかも投与量を減らしても痙攣は減らなかったみたいだし。
さてさて。

出血が多くなったら投与、もしくはICUで投与したらどうなるか、というのが我々的には知りたいが。
そういう研究、誰かやってくれないかな。
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