Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUの忙しさと患者予後

2013年10月07日 | ICU・システム
同じデータベースを使って、同じ人達がやった、似たような研究が2つ、同じ週にメジャー雑誌に出ていた。

1: Gabler NB, Ratcliffe SJ, Wagner J, et al.
Mortality among Patients Admitted to Strained Intensive Care Units.
Am J Respir Crit Care Med. 2013 Oct 1;188(7):800-806. PMID: 23992449.


2: Wagner J, Gabler NB, Ratcliffe SJ, et al.
Outcomes Among Patients Discharged From Busy Intensive Care Units.
Ann Intern Med. 2013 Oct 1;159(7):447-455. PMID: 24081285.


どちらも、アメリカのICUデータベースであるIMPACTを使用した研究。2001年から2008年までに155のアメリカのICUに入室した約20万症例を対象として、患者さんがICUに入室したとき(研究1)と退室したとき(研究2)のICUの忙しさが予後と関連するかについて検討。ICUの忙しさは、それぞれの患者さんが入室/退室した日にICUにいた患者数、その日の新患者数、および在室症例の平均重症度で評価。
で、結果なんだけど、イマイチ分かりにくいのだが、

1:入室時
・ICUの忙しさはちょっとだけ病院死亡率を上げる
・その影響はclosed ICUの場合に大きい

2:退室時
・ICUの忙しさは生存退室症例の再入室率をちょっとだけ上げる
・しかし病院死亡率には影響しない

ということらしい。

解釈は、
・Closed ICUでは、忙しいと集中治療医の負担が増えるので、患者予後に悪影響を与えるが、open ICUでは関与する医者の数が増える(というかICUが忙しいことが主治医に影響しない)ので予後に影響が無い
・再入室しても予後の悪化は無いので、ベッドが混んできたらどんどん退室させても大丈夫(ちょっと意訳し過ぎかも)

ということらしい。

うーむ。なんか、よく分からない。多分、常識というか、過去の研究とちょっと結果が違うからそう感じるのかな。

一つ言えることは、このIMPACTに参加している施設の特徴。
・Closed ICUは7%だけ、70%は集中治療医が全く関与しない。
・夜間に集中治療医がいるのは4分の1のみ。
・70%以上が市中病院、ICUのベッド数も少なめ。
ICUの研究って、大学病院やclosed ICUからのものが多いので、結果がいつもと違うのはそれが理由かも。

でも、この頻度はアメリカ全体の平均に近いし、日本も似たようなものか。だから、逆にこっちの結果の方が意味があるかも。

とりあえず、ICUの忙しさが患者予後に与える影響は、あるとしてもそれほど大きくない、ということらしい。

集中治療医がいる方がICUの忙しさの影響が大きい、というのはちょっとドキッとするね。
コメント
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