Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

手袋とガウンを全ICU患者に使用したら

2013年10月21日 | 感染
Harris AD, Pineles L, Belton B, et al.
Universal Glove and Gown Use and Acquisition of Antibiotic-Resistant Bacteria in the ICU: A Randomized Trial.
JAMA. 2013 Oct 4. [Epub ahead of print] PMID: 24097234.


アメリカの20のICUを2つに分けて、介入群では全ICU患者への接触時にガウンと手袋を着用することにした。ICU入室時と退室時に鼻腔(MRSA用)と肛門周囲(VRE用)の培養を採り、ICU内でのMRSA/VREの新規獲得があったかどうかを判断。その結果、
・対象患者は26180例
・MRSAもしくはVREの獲得は、介入群で21.35/1000 patient daysだったものが16.91に減少、コントロール群では19.02が16.29
・その差は1.71で有意差無し(P=0.57)
・MRSAについてのみ有意差が出た(-2.98、P=0.046)
・患者さんの部屋から出るときの手指衛生の施行頻度が介入群で多かった(78.3% vs. 62.9%)
・介入群では患者さんの部屋に入る回数が減った(4.28 vs. 5.24回/hr)

もっとサンプル数が多かったらMRSAだけでなく全体として有意差が出たかもしれないが、すでに2万例以上だし、MRSAの方がアルファエラーかもね。どちらにしろ、すごく有効、ということは無さそうだ。
必ず部屋から出るときに手袋を脱ぐから、手指衛生の施行頻度が増えるのも分かるし、面倒くさいから部屋に入る回数が減るのも分かる。
全体として、納得がいく結果か。

それにしても、アメリカではVREの方がMRSAよりも多いんだね。しかもそれがどんどん他の患者さんにうつっていく。
もし年間収容数が300例で、平均滞在期間が3日だったら、だいたい月に1人はVREがICUで新たに発生しているということ。
まあ。。。
日本はまだ少なくてよかったね。

この研究はネガティブだし、JAMA=ジャーナルクラブというのはやめようかと。
もう一つJAMAがあるんだよね。
そっちは明日で。
コメント
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