今週もたくさん。
Goldberger ZD, Chan PS, Berg RA, et al.; for the American Heart Association Get With The Guidelines―Resuscitation (formerly the National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation) Investigators. Duration of resuscitation efforts and survival after in-hospital cardiac arrest: an observational study.
Lancet. 2012 Sep 4. [Epub ahead of print] PMID: 22958912.
アメリカの435の病院で院内心停止した64339例を対象(心拍再開率は48.5%)。蘇生を中止するまでの時間が短い病院(中央値16分)では長い病院(25分)よりも心拍再開率・生存退院率が低かった。
CPRをどれくらい継続するべきか、判断が難しいことは良くある。詳細はジャーナルクラブで。
Serpa Neto A, Cardoso SO, Manetta JA, et al.
Association between use of lung-protective ventilation with lower tidal volumes and clinical outcomes among patients without acute respiratory distress syndrome: a meta-analysis.
JAMA. 2012 Oct 24;308(16):1651-9. PMID: 23093163.
ARDSのない症例に低換気量は有効か、についてのメタアナリシス。28研究、2822例が対象。肺傷害の発生頻度が三分の一になり、死亡率が三分の二に減少。
メタアナリシスです。はい。これまた詳細はジャーナルクラブで。
Zhou X, Chen J, Li Q, et al.
Minimally invasive surgery for spontaneous supratentorial intracerebral hemorrhage: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Stroke. 2012 Nov;43(11):2923-30. PMID: 22989500.
脳出血に対する低侵襲手術(内視鏡とか)の有効性についてのメタアナリシス。世の中には313のRCTがあるらしく、そのうち質の高い12研究(1955例)が対象。通常の治療(開頭血腫除去もしくは内科的治療)に比べ、死亡率が約半分になった。
これまたメタアナリシスです。はい。でも、予後を改善する治療法がない脳出血において、この数字は期待が持てる。デカい研究が出たら、結果はどうあれNEJMレベルかな。
Marsteller JA, Sexton JB, Hsu YJ, et al.
A multicenter, phased, cluster-randomized controlled trial to reduce central line-associated bloodstream infections in intensive care units.
Crit Care Med. 2012 Nov;40(11):2933-9. PMID: 22890251.
CVによる感染を予防する方法としてbefore-after研究で有効性が示されたバンドル:
・挿入前の手指衛生
・full barrier precautions(帽子、マスク、ガウン、手袋、大きなドレープ)
・クロルヘキシジンによる皮膚消毒
・不要なカテはさっさと抜去
が本当にカテ感染を減らすかについて、RCTで検討。35の病院にある45のICUを二群に分け、バンドルの導入時期をずらして評価。カテ感染は明らかに減少、しかも効果は1年以上継続。
偶然、JAMAにも同じ話題でニュース記事あり。
Kuehn BM.
Hospitals slash central line infections with program that empowers nurses.
JAMA. 2012 Oct 24;308(16):1617-8. PMID: 23093147.
キーワードは、”医者に任せるな”。同感。
で、メジャー雑誌の紹介はこれくらいにして、今日の本題。
とは言え、CCMなのでメジャーだけど。
Ludikhuize J, Dongelmans DA, Smorenburg SM, et al.
How nurses and physicians judge their own quality of care for deteriorating patients on medical wards: Self-assessment of quality of care is suboptimal.
Crit Care Med. 2012 Nov;40(11):2982-6. PMID: 22890255.
オランダの教育病院で、3ヶ月間に病棟で心停止したか、ICUに緊急入室した患者を診療した医師/看護師にインタビュー。急変の12時間前に診療したスタッフに対し、自分たちの診療内容について評価してもらった。それとは別に、”エキスパート”(同じ病院の集中治療医/内科医/ICUナース)が後ろ向きに患者の情報を見て、診療内容の評価をした。
その結果、
・3ヶ月で心停止が9例、ICU緊急入室が38例、ほぼ全例が内科患者
・アンケートには診療に関わったスタッフの85%が答えた
・その内訳は、ナース49名、研修医36名、専門医32名
・診療に遅れがあったと答えたのは、ナース31%、研修医19%、専門医15%
・エキスパートは60%に遅れがあったと判断
さて。
患者急変前、もしくはICU緊急入室前の診療レベルが不十分であるという報告は以前からある。
もっとも引用される研究は、これでしょう。
McQuillan P, Pilkington S, Allan A, et al.
Confidential inquiry into quality of care before admission to intensive care.
BMJ. 1998 Jun 20;316(7148):1853-8. PMID: 9632403
今回の研究の強みは、実際に患者に関わった医療従事者に、自分たちの評価をしてもらったこと。結構大変だったろうね。よくみんな答えてくれたもんだ。はっきり断ったのは研修医が一人だけらしい。
この手の研究は、rapid response system(RRS)を導入するべき、という意見の根拠になる。
実際、ICUで働いていると、何でこうなっちゃったの、と思うことは珍しくない。
でも、本当に医療レベルが低いのか、単に”後医は名医”なのか。
軽度の異常が発生した時点でRRSが介入すれば急変しないのか。
それは分からない。
それに、やっぱり病院によって診療レベルって違うと思うんだよね。
医療従事者によっても違うけど、科によって、病院によって、違うんじゃないのかな。
急変の発生頻度も病院によって違うだろうし。
RRSの能力値も病院によって違うだろうし。
なので、
RRSは有効だからどんどん導入しよー、という意見も、
病棟でちゃんと見れるからRRSなんか不要だー、という意見も、
どっちもちょっと乱暴な気がするんだよね。
尻切れだけど、このまま書いていると長くなる予感がするので、今日はこれでオシマイ。
Goldberger ZD, Chan PS, Berg RA, et al.; for the American Heart Association Get With The Guidelines―Resuscitation (formerly the National Registry of Cardiopulmonary Resuscitation) Investigators. Duration of resuscitation efforts and survival after in-hospital cardiac arrest: an observational study.
Lancet. 2012 Sep 4. [Epub ahead of print] PMID: 22958912.
アメリカの435の病院で院内心停止した64339例を対象(心拍再開率は48.5%)。蘇生を中止するまでの時間が短い病院(中央値16分)では長い病院(25分)よりも心拍再開率・生存退院率が低かった。
CPRをどれくらい継続するべきか、判断が難しいことは良くある。詳細はジャーナルクラブで。
Serpa Neto A, Cardoso SO, Manetta JA, et al.
Association between use of lung-protective ventilation with lower tidal volumes and clinical outcomes among patients without acute respiratory distress syndrome: a meta-analysis.
JAMA. 2012 Oct 24;308(16):1651-9. PMID: 23093163.
ARDSのない症例に低換気量は有効か、についてのメタアナリシス。28研究、2822例が対象。肺傷害の発生頻度が三分の一になり、死亡率が三分の二に減少。
メタアナリシスです。はい。これまた詳細はジャーナルクラブで。
Zhou X, Chen J, Li Q, et al.
Minimally invasive surgery for spontaneous supratentorial intracerebral hemorrhage: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Stroke. 2012 Nov;43(11):2923-30. PMID: 22989500.
脳出血に対する低侵襲手術(内視鏡とか)の有効性についてのメタアナリシス。世の中には313のRCTがあるらしく、そのうち質の高い12研究(1955例)が対象。通常の治療(開頭血腫除去もしくは内科的治療)に比べ、死亡率が約半分になった。
これまたメタアナリシスです。はい。でも、予後を改善する治療法がない脳出血において、この数字は期待が持てる。デカい研究が出たら、結果はどうあれNEJMレベルかな。
Marsteller JA, Sexton JB, Hsu YJ, et al.
A multicenter, phased, cluster-randomized controlled trial to reduce central line-associated bloodstream infections in intensive care units.
Crit Care Med. 2012 Nov;40(11):2933-9. PMID: 22890251.
CVによる感染を予防する方法としてbefore-after研究で有効性が示されたバンドル:
・挿入前の手指衛生
・full barrier precautions(帽子、マスク、ガウン、手袋、大きなドレープ)
・クロルヘキシジンによる皮膚消毒
・不要なカテはさっさと抜去
が本当にカテ感染を減らすかについて、RCTで検討。35の病院にある45のICUを二群に分け、バンドルの導入時期をずらして評価。カテ感染は明らかに減少、しかも効果は1年以上継続。
偶然、JAMAにも同じ話題でニュース記事あり。
Kuehn BM.
Hospitals slash central line infections with program that empowers nurses.
JAMA. 2012 Oct 24;308(16):1617-8. PMID: 23093147.
キーワードは、”医者に任せるな”。同感。
で、メジャー雑誌の紹介はこれくらいにして、今日の本題。
とは言え、CCMなのでメジャーだけど。
Ludikhuize J, Dongelmans DA, Smorenburg SM, et al.
How nurses and physicians judge their own quality of care for deteriorating patients on medical wards: Self-assessment of quality of care is suboptimal.
Crit Care Med. 2012 Nov;40(11):2982-6. PMID: 22890255.
オランダの教育病院で、3ヶ月間に病棟で心停止したか、ICUに緊急入室した患者を診療した医師/看護師にインタビュー。急変の12時間前に診療したスタッフに対し、自分たちの診療内容について評価してもらった。それとは別に、”エキスパート”(同じ病院の集中治療医/内科医/ICUナース)が後ろ向きに患者の情報を見て、診療内容の評価をした。
その結果、
・3ヶ月で心停止が9例、ICU緊急入室が38例、ほぼ全例が内科患者
・アンケートには診療に関わったスタッフの85%が答えた
・その内訳は、ナース49名、研修医36名、専門医32名
・診療に遅れがあったと答えたのは、ナース31%、研修医19%、専門医15%
・エキスパートは60%に遅れがあったと判断
さて。
患者急変前、もしくはICU緊急入室前の診療レベルが不十分であるという報告は以前からある。
もっとも引用される研究は、これでしょう。
McQuillan P, Pilkington S, Allan A, et al.
Confidential inquiry into quality of care before admission to intensive care.
BMJ. 1998 Jun 20;316(7148):1853-8. PMID: 9632403
今回の研究の強みは、実際に患者に関わった医療従事者に、自分たちの評価をしてもらったこと。結構大変だったろうね。よくみんな答えてくれたもんだ。はっきり断ったのは研修医が一人だけらしい。
この手の研究は、rapid response system(RRS)を導入するべき、という意見の根拠になる。
実際、ICUで働いていると、何でこうなっちゃったの、と思うことは珍しくない。
でも、本当に医療レベルが低いのか、単に”後医は名医”なのか。
軽度の異常が発生した時点でRRSが介入すれば急変しないのか。
それは分からない。
それに、やっぱり病院によって診療レベルって違うと思うんだよね。
医療従事者によっても違うけど、科によって、病院によって、違うんじゃないのかな。
急変の発生頻度も病院によって違うだろうし。
RRSの能力値も病院によって違うだろうし。
なので、
RRSは有効だからどんどん導入しよー、という意見も、
病棟でちゃんと見れるからRRSなんか不要だー、という意見も、
どっちもちょっと乱暴な気がするんだよね。
尻切れだけど、このまま書いていると長くなる予感がするので、今日はこれでオシマイ。