Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

慈恵ICU勉強会 191119

2019年11月23日 | ICU勉強会
11月19日 ショック非適応リズムとTTM(JC-NEJM)

弱い。
NEJMだけど、なんとfragility indexが1しかない。
この結果をもって、推奨は変わったりするのだろうか。
この道のプロの人たちがどう評価するのか、興味深い。

ここからは僕の勝手な推理。
・Primary outcomeで見られた差が、死亡率に反映されていない。低体温が神経予後を良くするなら、どうして死亡率も減らないのか不思議。
・結果を見ると、死亡者のほとんどはICUで死亡している。かつ死亡者のICU滞在日数の中央値が4日しかない。48時間以上体温管理しているのに。
・さすがフランス、CPC 4(つまりベジになった人)は1人しかいない。つまり、早期にwithdrawalが行われていることがわかる。
・蘇生後、意識の回復には時間がかかる人もいることは知られている。
・もしかして、「この人は通常体温群だったし、意識悪いし、治療やめよう」と判断されたけど、実は治療を継続していたら神経予後が良くなった人がいたのではないか??
・それが、この研究にギリギリ有意差を与えた理由ではないか?

ま、推測です。
追試を期待したい。

P.S.
しらばく、文献紹介ができていない。先日、心配してLINEくれた人もいた。
いや、体は元気なんですよ。
どういうわけか、文献を読む時間がない。このせいで忙しい、というほどの理由がないのに。
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慈恵ICU勉強会 191112

2019年11月16日 | ICU勉強会
11月12日 敗血症とビタミンC(JC-JAMA)

臨床で導入するかどうかで、ちょっと議論になった。
使用推進派は、副作用ないし安いし、それで有効かもしれないなら使おうぜ、という意見。
使用反対派は、phase IIで動かないがEBMの基本でしょ、phase IIIで実は有害という結果になるかもしれないし、という意見。

あなたはどっち?
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慈恵ICU勉強会 191105

2019年11月09日 | ICU勉強会
11月5日 TEEによる持続循環モニタリング(JC-ICM)

ジャーナルクラブとしては珍しく、ICMをやりました。

モニタリングって、当たり前にやっているものから特別な機械を必要とするものまでいろいろあるけど。
どれ一つとして、RCTで有用性が示されたものはない。それこそA-lineだって、患者さんに有害な根拠は存在する。

そんな中、この研究はもしかしたらTEEは有効かもよ、という結果。
もちろん、ツッコミどころは満載。
オープンラベルの単施設RCTで、やけに循環器疾患が多くてPAカテが頻繁に使用されていて、循環以外の臓器サポート期間は延長していて、などなど。

この研究結果を用いて臨床を考えるというよりは、RCTの難しさとかモニタリングというものの難しさについて考えるきっかけとして使うと良いのでは。
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慈恵ICU勉強会 191029

2019年11月05日 | ICU勉強会
10月29日 脳出血後の抗血小板療法(JC-Lancet)

この手の話題では初めてのRCTか?
再開時期をどうするか、抗血小板薬と抗凝固薬では対応は異なるか、複数飲んでいる場合はどうするかなど、一つのRCTではケリがつかない話題。
実際、現在進行中の研究が複数あるらしい。この資料の最後に簡単にまとめてあるよ。
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心外術後の血圧と出血の関係

2019年11月03日 | 循環
McIlroy D, Murphy D, Kasza J, et al.
Association of postoperative blood pressure and bleeding after cardiac surgery.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2019 Nov;158(5):1370-1379.e6. PMID: 30853233.


術後の血圧とドレーンからの出血量の関係を調べたが、収縮期血圧10mmHgの上昇で出血は2.2ml減少していた。

「術後は出血が心配だから血圧を上げたくない。収縮期血圧をXX以下にしてくれ。」
外科医がほんとによく言う言葉。

これ、根拠と言えるようなものをほぼ読んだことがない。
なので慈恵の外科医だけのローカルルールなんじゃないかと心配になるくらいなんだけど、先日もあるICUを見学している時に、そこのICUの医師と外科医がそういう話をしているのを耳にしたし、まあきっとそんなことはないんだろう。

で、この文献。
ちょー珍しい。
こういう研究がどんどん行われれば、この問題にケリがつくだろうに。

ただ、観察研究だとバイアスが明白すぎて、ちょっと無理だろう。だって出血したら血圧が下がるんだから、血圧と出血量の関係なんて観察研究で分かるはずがないと思うのさ。

でも介入研究に進むには観察も重要だし。
うーん、困ったもんだ。
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重症患者の診断間違い

2019年11月02日 | ICU・システム
Bergl PA, Taneja A, El-Kareh R, et al.
Frequency, Risk Factors, Causes, and Consequences of Diagnostic Errors in Critically Ill Medical Patients: A Retrospective Cohort Study.
Crit Care Med. 2019 Nov;47(11):e902-e910. PMID: 31524644.


256の緊急ICU入室症例のうち、7%に診断間違いがあり、その全てで患者さんに害があった、と。

ICUって、ずっと診断している気がする。
病棟で何だかわからないけど具合が悪くてICUに来た患者さんの診療から、朝のラボデータで肝障害があったけど何でだろう、まで。

そりゃ確かに、人工呼吸器の設定はどうするべきとか、経管栄養の組成はどうするべきとか、敗血症では早期の重症度判定と抗菌薬投与が重要だとか、いかにも集中治療っぽいけれど。こういうのって、根拠もある程度までしかなくって、目の前の患者さんにどう当てはめるかが不明確なので、ある程度の知識があれば大外れはないし、その判断が予後に影響するかどうかわからないことが少なくない。

でも診断って、答えが一つしかなくって、それを当てるか外すかが予後に直結する。
なので集中治療でもっとも重要なものは何かと言ったら、診断だと思うのですよ。
でも、診断って研究対象になりにくいし、知識として教えることもできないので、情報の量も増えにくいし、個人の能力も向上しにくい気がする。

なのでこういう研究は重要だな、というのが紹介理由。
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気切患者の1年後の予後

2019年11月01日 | 呼吸
Mehta AB, Walkey AJ, Curran-Everett D, et al.
One-Year Outcomes Following Tracheostomy for Acute Respiratory Failure.
Crit Care Med. 2019 Nov;47(11):1572-1581. PMID: 31397716.


呼吸不全で気管切開を要した患者さんの長期予後の検討。
65歳以上だと生存日数の中央値は気切してから175日。

1年死亡率とか、そういうデータはよく見るけど、生存日数というのは初めてな気がして、ちょっとビックリした。
そっかー、中央値って半年弱なんだ。
適応の判断には影響しないけど、患者さんの見方は少し変わるかもしれない、と思った。
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