Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

政府によるICU入室基準の変化と、臨床実践・転帰・ICU病床占有率との関連

2022年03月26日 | ICU・システム
Ohbe H, Goto T, Matsui H, Fushimi K, et al.
Associations of Government-issued ICU Admission Criteria with Clinical Practices, Outcomes, and ICU Bed Occupancy.
Ann Am Thorac Soc. 2021 Nov 23. Epub ahead of print. PMID: 34813412.


先日の集中治療医学会の学術集会で発表された研究。
2014年度のICU患者基準の変更前後で、
・モニタリングが増えた。特にA-lineの利用率はすごく増えた。
・病院死亡率はまったく変化なし、ICU滞在日数とコストは増えた。

素晴らしい研究。
DPCのデータを使った研究って、「いやーこれはちょっと。。。」と思うのがチョコチョコある。少なくともICUの研究で、「〇〇の病態における△△の有効性」的な研究は、単にNが大きいだけで、どれも無理がある。
それらに比べ、これはDPC研究はかくあるべしという感じで、とても好き。
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集中治療医学会の理事会における性別の分布

2022年03月25日 | ICU・システム
Ravioli S, Moser N, Ryser B, et al.
Gender distribution in boards of intensive care medicine societies.
J Crit Care. 2022 Apr;68:157-162. PMID: 34836749.


ESICMに関連のある各国の集中治療医学会の理事会における性別の分布を調査。女性が理事長だった割合は15%、理事会のメンバーのうち28%が女性だった。
理事会メンバーの女性の占める割合は、
南アメリカ:46%
北アメリカ:42%
ANZ:35%
ヨーロッパ:31%
アフリカ:21%
アジア:10%
だった。

アカンわ、アジア。

それ以前に、日本の集中治療医のうちの女性の占める割合、低くない?
JIPADのワーキンググループメンバーなんか、20人全員男性。2の20乗分の1って100万の1なんですけど。

関連のある過去ログ:
集中治療医の性差
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研究をはじめる前に知っておいてほしい7つのこと

2022年03月24日 | 勝手に紹介
慈恵時代、数十人の人と共同研究、というか研究の”指導”的なことをやった。
同じ話をしないといけないし、ずっとお尻を叩き続ける必要のある人も少なくないし、飽きたというか疲れた。
なので自治ではやる気はあまりなかったのだけど、自分が貢献できることは少ないので、結局、再開している。

1年以上前にアップされていて、SNSでも話題になっていたそうなので、ご存知の方も多いとは思いますが。
研究をはじめる前に知っておいてほしい7つのこと

僕が一番伝えたいことは、研究は楽しいよ、ということです。
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コンサルテーションについて「集中治療999の謎」に書いたこと。

2022年03月23日 | ひとりごと
あるところでコンサルテーションについて話題になっていて、そう言えば以前書いたことがあるなと思い出した。
宣伝するので著作権は許していただけることを期待しつつ、コピペします。



52. C:コンサルトされた時に気をつけるべき事は何か
 集中治療医の場合、患者を十分に把握して、必要であればICUに収容する。コンサルトを受けたときはこれが基本であるが、もう一つ、意識しておくべき事ことがある。
 それは、コンサルトしてきた人は困っているという点である。軽症だからICU適応ではない、ではさようならと言ってしまうと、手に負えないと思って連絡してきた人は困ってしまう。助言をする、場合によっては適応外と思いながらもICUに収容するなど、何らかの手助けをしてあげることがその医師だけでなく患者のためになる。さらには、今回親切に対応することによって、次にまた困った時に相談してくれる。逆に親切に対応しなければ、次は聞いてこない。次の患者はICU適応かもしれないのに、である。
ちょっと意味は違うが、情けは人の為ならず、だ。

53. C:コンサルトした時に気をつけるべき事は何か
 患者について適切な情報提供をする。何が知りたいかを明確にする。次もまたお世話になるので、感謝の意を述べる。これは基本であるが、もう一つ、意識しておくべき事がある。
 それは、相手が専門医としてまともかどうかを判断することだ。患者のためにコンサルトしているので、提供された情報が無意味(場合によっては有害)なものであっては困る。しかしその判断をするためにはある程度の知識が必要である。専門医だけに任さず、自分でも勉強しよう。
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アルブミンはルーチンの測定項目に入れた方がいいと思います。

2022年03月19日 | ひとりごと
昨日の投稿に関連して。
自治さいたまICUでは、1年くらい前までアルブミンの測定はされていなかった。測った方がいいと僕が提案し、今はルーチン項目に含まれている。
JIPADのデータを見ても、アルブミンを測定しない施設がチョコチョコある。
理由を想像するに、
・アルブミンが低いと「補充しよう」と言い出す人(外科医とか)がいる。
・低いからといって介入するわけではないので、測定の意義がない。
からではないかと思う。

でも、デメリットもいろいろある。
・低アルブミン血症は予後不良を予測する因子で、例えばAPACHE IIIにも含まれている。測定しないと患者予後の予測が不正確になる。
・APACHE III / IVを用いて予測死亡率を計算し、それに基づいてその施設のstandard mortality ratioを計算すると、欠損値は正常値として扱われるため、アルブミンを測定していない施設ではSMRが無駄に高くなる。JIPADではJRODを用いているが、APACHE IIIを使用しているので、施設比較を行うときにアルブミンを測定しない施設は不利になる。
・アルブミンは酸で、かつ体内にたくさんあるので、酸塩基に与える影響が大きい。例えば2.0g/dlだとBEやanion gapが5mEq/Lずれる。つまり正確な酸塩基の診断ができなくなる。

このデメリットを考えると、ルーチン測定はした方がいいと思うのです。
されていない施設の方、ご検討ください。
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「アルブミンにまつわる10の神話」は、記憶の整理に使えると思う。

2022年03月18日 | 循環
Joannidis M, Wiedermann CJ, Ostermann M.
Ten myths about albumin.
Intensive Care Med. 2022 Mar 5. Epub ahead of print. PMID: 35247060.


高Cl血症についてのこの文献
肺動脈カテーテルについてのこの文献
Early goal directed therapyについてのこの文献
Intensive insulin therapyについてのこの文献
これらの研究は全て、集中治療の世界をザワつかせ、その後の複数のRCTのきっかけになった。

それらと同様、BMJのこの文献はアルブミンについての議論を巻き起こした。そのおかげで良質な研究がたくさん行われた。でもアルブミンが他とちょっと違うのは、まだイマイチ決着がついていないこと。それもあって、今も研究の数が増えていて、ちょっと全部を覚えていられなくなってきた。

今回紹介している文献は、アルブミンについての短いエビデンスレビュー。ちょっとクイズっぽいので、自分の知識をチェックするつもりで答えてみてください。文献を見ちゃうと質問のすぐ下に答えが書いてあるので、質問と答えを分けてみたよ。
ニュアンスも含めて全問正解できたら相当すごい。

問題:
#1. アルブミンは血管内から間質区画に漏れ、浮腫の一因となる。
#2. アルブミンは人工コロイドに比べて血管内容量拡張の効果が低い。
#3. アルブミン投与で急性腎不全を予防する。
#4. アルブミンは敗血症の生存率を向上させる。
#5. アルブミンは利尿剤の効果を高める。
#6. アルブミン投与でRRT中の体液除去が改善される。
#7. アルブミンは肝硬変の死亡率を下げる。
#8. アルブミンは外傷性脳損傷の死亡率を高める。
#9. あらゆる原因による低アルブミン血症に対するアルブミン投与は死亡率を低下させる。
#10. アルブミン投与で塩化ナトリウムの負荷が増加する。
ーーーーーーーーーー
答え:
#1. いいえ、そんなことはありません。
#2. いいえ、より効果的です。
#3. はい、特定の環境では。
#4. かもしれないが、まだ不確実です。
#5. はい、しかし一時的なものです。
#6. はい、そうです。
#7. はい、しかし特定のサブグループにおいてのみです。
#8. かもしれませんが、定かではないです。
#9. いいえ、そんなことはありません。
#10. おそらくそうですが、関係ありません。
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心停止後の予後予測のレビューはいろいろあるけど、これはちょっと珍しい。

2022年03月17日 | 循環
Sandroni C, D'Arrigo S, Cacciola S, et al.
Prediction of good neurological outcome in comatose survivors of cardiac arrest: a systematic review.
Intensive Care Med. 2022 Mar 4. Epub ahead of print. PMID: 35244745.


Discussionの一番最初にも、"This is the first systematic review"と書いてある。
なにが最初かというと、心停止の場合、普通は予後不良の指標が重要視される。Withdraw / withholdの対象となるので。それ以外は観察を続けるから、予後良好の指標というのはあまり研究対象・システマティックレビューの対象とはならかなった。
でも、この患者さん、起きてくれるかなーというのは誰でも考えるし、家族への説明の仕方も変わるだろうし、意識の改善は一般に思われているよりも遅く起こりうるという話もあるし。

一番大事な結果がまとまっている、Discussionの最初の部分のDeepL和訳。
「ROSC直後または72-96時間後のGCS運動スコアが4または5、ROSC後24-72時間のNSE血液値が正常、ROSC後2-7日目のMRIで大脳皮質や深部灰白質に拡散制限がない場合、80%以上の特異度で良好な神経学的転帰が予測された。ほぼすべての研究で、ROSC後12~72時間の脳波の背景が良好(連続、正常電圧、またはその両方)で豊富な放電がない場合も同様の特異性が観察され、少なくとも片側のSSEP N20波振幅が4μV以上であればROSC後12-96時間において85%を超える特異度で良好な転帰を予測した。しかし、その閾値は研究によって異なっていた。」

数字がいろいろあるので前半を更にザックリまとめる。
「蘇生3日後に、GCSのMが4以上で血中NSEが正常でMRIに異常がないと意識の回復が望める。」
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「私の主治医への手紙」は1分で読める簡単な英語で書いてあるけど、とても大事な手紙。

2022年03月12日 | 終末期医療
Kanaris C.
A letter to my doctors.
Intensive Care Med. 2022 Jan;48(1):135. PMID: 34599388.


PICUのDrが書いたもの。
でも、小児だけに当てはまる話じゃない。

何が正しいかは分からない。

「助けられないってどうして言い切れるんだ?」
「患者さんにできる限りのことをしてあげるのが集中治療じゃないのか?」
「あんなに具合が悪かったのに助かった人もいたじゃないか。」
「ベストを尽くさないで悔いは残らないのか?”」

そうかも知れない。

でも、この詩の最後、
”Would You listen to me if I could talk? Or would You do it all again because I couldn’t?
って、
"because you could"
でやれることを全部やったけど亡くなった患者さんにもし言われたら、何て答えればいいんだろう。

この文献の右下に、小さい字でこう書いてある。
ちょっとイマイチな訳だけど、DeepLをそのままコピペ。
「(この手紙は)私たちが積極的な介入に失敗した子どもたちに捧げるものです。私たちが救うことのできなかった子どもたちに。救えるからと言って、必ずしも救わなければならないわけではないことを教えてくれた子どもたちに。この十字架は私たちが背負う最も重いものであり、申し訳なく思っています。」

重い。
重いね。
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体外式血液吸着法:ICUにおけるルーチン使用を支持するエビデンスはあるか?

2022年03月11日 | 腎臓
Supady A, Brodie D, Wengenmayer T.
Extracorporeal haemoadsorption: does the evidence support its routine use in critical care?
Lancet Respir Med. 2022 Mar;10(3):307-312. PMID: 34921755.


Impact factorが30もある雑誌のviewpointなのに、何を今更な話をしているんだい?
と思ったのだが。
理由があるに違いないと眺めると、答えは表にあった。昔は日本のPMXしかなかったはずだが、いつのまにか6つもあるんだって。Cytosorbはちょこちょこ文献を見るし、Oxirisは別の理由で知っているが、他にもあるとは知らなかった。

PMXは先日話題に出したので、久しぶりにセプザイリスの話をしようかと。
ちなみに過去ログはこちらから。

昔、疑問に思ったこと。何か変わったかなと思い、ググってみた。

これこれを見比べてもらえば分かるのだけど、まったく同じ膜。
でも、日本では敗血症に有効とされている”特別”な透析膜が、海外では普通の膜として販売されている。どこにも敗血症とかサイトカインとか書いてない。
その代わり同じ会社から、別の膜が敗血症用として販売されている。

このことに気がついたのが6年前
何も変わっていなかった。。。

このviewpointの結論。
"Considering the current lack of evidence for a benefit of haemoadsorption for the treatment of severe inflammation, sepsis, liver failure, and rhabdomyolysis, its routine use in everyday clinical practice cannot be justified. "
下記はDeepLによる和訳。
「PMXとセプザイリスは存在そのものを忘れてよい。」

わっ。
DeepLはすごいとは知っていたが、ここまで賢いとは!?
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呼吸不全はICUに来た方がいいが敗血症は来ない方がいいって言われたらどうします?

2022年03月10日 | ICU・システム
Anesi GL, Liu VX, Chowdhury M, et al.
Association of ICU Admission and Outcomes in Sepsis and Acute Respiratory Failure.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Mar 1; 205(5):520-528. PMID: 34818130.


救急外来にやって来た、ラボデータ的にそれなりに重症だけど、昇圧剤は不要な敗血症と挿管が不要な呼吸不全患者についての多施設研究。
ICUに来た患者と病棟に行った患者を比較。ICUの敗血症患者の死亡についてのオッズ比は1.48、呼吸不全は0.75。

さて、どう解釈しよう。もしくはどう裏を読もう。

ディスカッションでは、
・敗血症がICUに来ると、よけいな補液をしたり、動かさなかったりする。
・呼吸不全がICUに来ると、呼吸ケアのレベルが高かったり、NPPV / HFNCを適切に使ったりする。
からこういう結果になったのでは、と。

初めは、何か「裏」があるのでは、つまり研究手法や解析方法によって生まれた結果なのでは、と考えてみたのだけど、だんだんこのディスカッションの説明に賛成したくなってきた。特に、「有害な補液」と「レベルの高い呼吸ケア」をICUでは提供される可能性がある、というのはその通りじゃなかろうか。

いっっっつも思うのだけどさ、
その補液、本当に必要かい?
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