Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

重症度スコアを継時的に測定する

2018年03月30日 | ICU・システム
Badawi O, Liu X, Hassan E, et al.
Evaluation of ICU Risk Models Adapted for Use as Continuous Markers of Severity of Illness Throughout the ICU Stay.
Crit Care Med. 2018 Mar;46(3):361-367. PMID: 29474321.


eICUで収集された50万例以上のデータを使って、APACHE IVやSOFAを毎時間計算したらどうなるか、という研究。
でこの研究のeditorialがこれ。

Maslove DM.
With Severity Scores Updated on the Hour, Data Science Inches Closer to the Bedside.
Crit Care Med. 2018 Mar;46(3):480-481. PMID: 29474330.


基本的に、big data万歳、という内容。

そりゃ確かに、データが全部電子化されているんだから、重症度スコアを自動的にどんどん計算していくことは可能だ。
お金さえあれば、今すぐ誰でも自分のICUに導入できる。

でも、話はそんなに簡単じゃない。
・GCSは観察された値ではなく、薬の影響を除いて推測しないといけない。これは機械にはできない(少なくとも今は)。
・バイタルのデータは嘘が多い。A-lineがなまったり、呼吸数がちゃんと測定されていなかったり。それを人が直したり確定したりすることになっているけど、ちゃんとできていることろはほとんどない。
・酸素化を評価するには血液ガスは動脈のデータしか使えない。でも検体種別を入力していないところは多いし、していても間違えたりする(デフォルトで動脈になっていて、それを静脈に直し忘れたりとか)。おかしな値だったので再検したら古いデータは消さないといけないが、消し忘れる。
つまり、例えばAPACHE IIを算出する時に必要なデータのうち、自動化しても信じられるのは一部のラボデータのみ。

さらに、
・APACHEは入室24時間の最悪値から予測死亡率を計算するので、24時間以前、もしくは24時間以降に算出されたスコアからは計算できない。
・循環作動薬の情報が含まれていない。薬なしで低血圧な人より、すっごい量の昇圧剤を使って血圧を維持している人の方がきっと予後は悪い。
・状態の変化を考慮に入れることが難しい。経時的に測定されているスコアが20から22になった人と、24が22になった人とでは、多分予後は違う。

人が入力したり修正したりしないとデータの質が維持されず、かつ人が関与するがためにデータの質が悪化するのが現状。
この問題をクリアして、かつ既存のスコアのことは一旦全部忘れて、経時的に予後を予測するまったく新しいツールを作らないと、少なくとも臨床利用は無理でしょう。研究にはなるけどね。

とか言っている間に、すっごいAIがこんな指摘なんか全部クリアしてしまうんだろうか。
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慈恵ICU勉強会 180306

2018年03月29日 | ICU勉強会
3月6日 クエン酸の合併症(JC-CC)
3月6日 MEWSとNEWS


一つ目はCE、二つ目はNSが担当。

ちなみに慈恵では、自作透析液を使ってクエン酸でCRRTをしています。
国内ではマイナーではないかと思いますが、国際的にはクエン酸でCRRTするのはすっごく普通です。

次のステップは、日本流と国際流の比較ですが、これがなかなか進まない。。。
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CVPを測定するべき?

2018年03月28日 | 循環
De Backer D, Vincent JL.
Should we measure the central venous pressure to guide fluid management? Ten answers to 10 questions.
Crit Care. 2018 Feb 23;22(1):43. PMID: 29471884.


えらい二人が書いた短い文章。
でも、読んでも、
CVP values provide important information about the cardiocirculatory status of the patient and should not be abandoned.
という気持ちにはならないのだけど。。。
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qSOFAについてのsystematic review

2018年03月27日 | 感染
Fernando SM, Tran A, Taljaard M, et al.
Prognostic Accuracy of the Quick Sequential Organ Failure Assessment for Mortality in Patients With Suspected Infection: A Systematic Review and Meta-analysis.
Ann Intern Med. 2018 Feb 20;168(4):266-275. PMID: 29404582.


Song JU, Sin CK, Park HK, et al.
Performance of the quick Sequential (sepsis-related) Organ Failure Assessment score as a prognostic tool in infected patients outside the intensive care unit: a systematic review and meta-analysis.
Crit Care. 2018 Feb 6;22(1):28. PMID: 29409518


敗血症の話題が続く。
qSOFAについてのメタ解析2つ。
どちらも、qSOFAは死亡の予測についての特異度は悪くないが感度が悪い、という結論。

スクリーニングツールの感度が悪いって、ダメじゃね?
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東南アジアの敗血症管理

2018年03月26日 | 感染
Lie KC, Lau CY, Van Vinh Chau N, et al.; for Southeast Asia Infectious Disease Clinical Research Network.
Utility of SOFA score, management and outcomes of sepsis in Southeast Asia: a multinational multicenter prospective observational study.
J Intensive Care. 2018 Feb 14;6:9. PMID: 29468069.


インドネシアとタイとベトナムの3つずつ9つの病院からのデータ。
低血圧だけど4人に1人は補液をされず、3割は昇圧剤が投与されず、8割がICU以外で管理された。

To reduce mortality caused by sepsis in LMICs(低中所得国), the fundamental elements of sepsis care need to be tailored to and evaluated in these settings.

さて、我が国はこれより良いと自信を持って言えるか?
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敗血症の介入の強制

2018年03月25日 | 感染
Pepper DJ, Jaswal D, Sun J, et al.
Evidence Underpinning the U.S. Government-Mandated Hemodynamic Interventions for Sepsis: A Systematic Review.
Ann Intern Med. 2018 Feb 20. [Epub ahead of print] PMID: 29459977.


目新しい話ではない。
敗血症のバンドルの根拠は乏しい、というsystematic review。
ただそれを、アメリカで医療の質の評価に使われてしまったのが問題、という話。

The Centers for Medicare & Medicaid Services should examine its performance measure approval process to determine how it adopted interventions lacking evidence meeting the agency's own criteria and how it can improve this process in the future.

ほんとにね。

日本でも、この4月から国がICUに対して、まだ根拠が十分とは言えない治療を行う仕組みを作ったらお金をあげますよ、と言っている。
そっくりじゃん?
日本中で、チームを作ってプロトコルを作って、なんてしているのだろうけど、そのエネルギーと支払われるお金を他の目的に使った方がよかったかもね、なんて後で言われないといいけど。
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わんわん!

2018年03月24日 | ICU・システム
Hosey MM, Jaskulski J, Wegener ST, et al.
Animal-assisted intervention in the ICU: a tool for humanization.
Crit Care. 2018 Feb 12;22(1):22. PMID: 29429412.


こういうアプローチ、好き。



Open accessだから、写真を貼っても怒られないことを期待。
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PMXのFDA承認プロセスに動きあり

2018年03月22日 | 勝手に紹介
PMXの北アメリカでの現状
PMXの北アメリカでの現状、続報
の、続報。

US Food and Drug Administration (FDA) provides communication to Spectral.

はて、どういう意味なのか。肯定的なのか否定的なのかもイマイチ分かりにくい。
とりあえず、現状のデータ(EUPHRATESのサブグループで生命予後が改善した)だけではダメと言われた、ということは確かなのか。でも、追加で要求された情報が、single arm studyとか、海外でのデータとか、ちょっと意味不明。
何はともあれ、これから追加で研究をしないといけなくなったようだ。てっきりそろそろ承認かと思っていたけど、まだ先らしい。

少しホッとした。
どうせ承認されるのだろうけど。
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重症呼吸不全のECMOセンターへの転送

2018年03月17日 | 呼吸
Gillon SA, Rowland K, Shankar-Hari M, et al.
Acceptance and transfer to a regional severe respiratory failure and veno-venous extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) service: predictors and outcomes.
Anaesthesia. 2018 Feb;73(2):177-186. PMID: 29168568.


イギリスから、ECMOセンターへの転送と受け入れの判断が正しかったか、についての検討。

数年前にニュージーランドのICUに行ったとき、H1N1の時は大変だったねーなんて会話から、日本のECMO事情の話になり、ECMOは経験が大事だからそんなシステムじゃダメだって怒られた。

随分、違う。
さすが、極東の島国。
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Ventilator-Free Days

2018年03月16日 | 呼吸
Bodet-Contentin L, Frasca D, Tavernier E, et al.
Ventilator-Free Day Outcomes Can Be Misleading.
Crit Care Med. 2018 Mar;46(3):425-429. PMID: 29227369.


あれ、てっきり2002年がこの概念の最初かと思っていたら、違ってた。もっと前からあるんだね。

研究に使おっかなと思っている方、勉強するにはちょうどいいのでは。
問題あるからあまり使わない方がいい、的な内容だけど、別にphase IIIでなければ使っていいと思うけどな。どうせサロゲートマーカーなんだから。
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