Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

VA-ECMOとHIT

2018年09月30日 | 消化器・血液
Kimmoun A, Oulehri W, Sonneville R, et al.
Prevalence and outcome of heparin-induced thrombocytopenia diagnosed under veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: a retrospective nationwide
study.
Intensive Care Med. 2018 Sep;44(9):1460-1469. PMID: 30136139.


なんかねー、HITって好きじゃない。
まあ好き嫌いで言うのも変なのだけど。
存在を否定はしないけど、重要性は低い(ことが多い)のに有名なやつ、というイメージかな。

フランスの20施設、約6000例の研究。
VA-ECMO患者(ヘパリン使いまくり)のうちHITは300人に1人発生、予後はHITを併発しなかった患者さんと同じ。

そうそう、そういう感じ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

慈恵ICU勉強会 180925

2018年09月29日 | ICU勉強会
9月25日 酸素投与と死亡率(JC-Lancet)

脳卒中とAMIの研究に引っ張られているから、結果はまあそりゃそうだ、という感じではある。

さーて、これからどうなるのか。
楽しみな分野の一つ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳死移植の提案と家族の悲嘆

2018年09月28日 | 終末期医療
Kentish-Barnes N, Chevret S, Cheisson G, et al.
Grief Symptoms in Relatives Who Experienced Organ Donation Requests in the ICU.
Am J Respir Crit Care Med. 2018 Sep 15;198(6):751-758. PMID: 29553799.


フランスの28のICU。移植に同意した家族よりも拒否した家族の方が、提案にショックを受け、コミュニケーションに不満を示したが、数ヶ月後の悲嘆の程度に差はなかった。脳死の理解と悲嘆の程度には関連が認められた。

先日、勉強会でもやったこの研究とちょっと関連のある話。
ICUでの経験と長期の精神的予後に関連がなかったというところは似ているけれども、脳死の理解との関連って、どういう意味なんだろう?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

術中の血圧変動と予後

2018年09月27日 | 循環
Jinadasa SP, Mueller A, Prasad V, et al.
Blood Pressure Coefficient of Variation and Its Association With Cardiac Surgical Outcomes.
Anesth Analg. 2018 Oct;127(4):832-839. PMID: 29624524.


心外術中に測定された血圧を15秒毎に記録、その変動(SD/Mean)が30日死亡および入院中のAKIの発生と関連があるかについて検討。収縮期血圧の変動は関連があったが(OR=2.5)、平均血圧にはなかった(OR=1.16)。

ほお。
基本的にSBPなんてこの世かなら無くなっても困らないと思っているのだけど、こんな結果もあるのね。
ちょっと面白い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「後医は名医」とM&M

2018年09月26日 | ひとりごと
「後医は名医」とは、時間が経つほど異常は明確になるので、後で診た医者ほど診断が正確になること。
M&Mは、目的はいろいろあるけど、その一つは大きなトラブル(例えば心停止)が発生したときに、それ以前に異常を発見して診断治療ができたかどうか、トラブルが避けられたかどうかを検討すること。

この二つ、一瞬ちょっと矛盾しそうな気がする。実際、「M&Mなんて後から見て理由付けをしているだけでしょう」と言っていた人もいる。

でも違うよ、この二つ。
M&Mに限らずトラブルを後ろ向きに振り返る時は、現在わかっている情報が無かったとして、トラブル発生以前に異常が指摘できたかどうかという視点で考える必要がある。
でもゴッチャになりやすいから、注意しないといけない。そうでないと、無駄なルールを作ったり検査を行ったりすることが結論になってしまう。

以前、ICUから他院に転院した患者さんが、転院後にガフキー陽性が判明し、当院の感染対策室から脳外科医とICU医がお目玉をもらう、という反省会が開かれた。経過は忘れてしまったが、非常に短期間の在室で、ポータブルで撮影された胸部レントゲンが1枚だけあり、よく見ると右上肺野に陰影があった。これを呼吸器内科に見せたらこの時点でTBは否定できなかっただろうという返事で、それをもって反省会が開かれたのだけど、全面的に反論した。今回のICU入室はTBとは全く関係がなく、TBを示唆する症状もなく、発熱は脳外患者だから当たり前だし、ポータブルのレントゲンの異常も非常に淡いものでTBを疑うレベルではないし、呼吸器内科医の読影も後でTBであることが判明したことを教えてのものであって、現場の見逃しとは言えないと。

先日、これとちょっと似たような話で、結構久しぶりに大きな誤診をした。というか、可能性は考えていたけど、それについてアクティブに行動しなかった結果、治療が1日遅れた。
自分なりに振り返ってみたのだけど、周囲からの指摘は「後医は名医」の範疇ではないかという結論になった。
果たしてこれが、自分に対する贔屓なのか、年寄りの頑固さなのか、それとも正しい判断なのか、ちょっと自信が持てない。でも、次に同じ状況になってもほぼ同じ判断をするだろうと思う。

振り返ってみて、現在わかっている情報が無かったとして、トラブル発生以前に異常が指摘できると考えられる時って、どんな時か。
一つは、知識があれば対応できたこと、もしくは合併症としてよく知られていることを知らなかった場合。
もう一つは、心停止などの明白なトラブルの前駆症状が非常に稀な出来事であった場合。稀な出来事なのに勝手に安直な理由を付けて見逃し、それが大きなトラブルにつながる。
今回の事例は、そのどちらでもない、と思う。

なんでこんな話を書いたのか。
自分の考えたことの備忘録かな。
でも、大事なことだと思うんだよね、「後医は名医」とM&M(というか振り返り)の区別って。

反省ゼロかよ、お前。

って言われそうだな。はは。
うーむ。やっぱりこれも老害の始まりだろか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

集中治療女子

2018年09月25日 | ICU・システム
Venkatesh B, Mehta S, Angus DC, et al.
Women in Intensive Care study: a preliminary assessment of international data on female representation in the ICU physician workforce, leadership and academic positions.
Crit Care. 2018 Sep 10;22(1):211. PMID: 30196796.


職場もそうだし、学会に行ってもそうだし、リサーチとかしててもそうだし、とにかくICUには女性医師が少ない。
H24年のデータしか見つけられなかったけど、アクティブに活動する20代-30代の医師の約3分の1が女性のはずなのに、感覚的には全然少ない。
女性の社会進出とかそういう話の以前に、直感的に不自然に感じる。

ICU、楽しーよー。
もっとおいでよー。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非心臓外科手術後のAKI

2018年09月24日 | 腎臓
についての研究が今月号のAnaesthesiaに二つ載っていたのでまとめて紹介。

STARSurg Collaborative.
Association between peri-operative angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin-2 receptor blockers and acute kidney injury in major elective non-cardiac surgery: a multicentre, prospective cohort study.
Anaesthesia. 2018 Oct;73(10):1214-1222. PMID: 29984818.


周術期にACEとかを中止してもAKIの発生頻度には差がなかった。(著者の名前がない。多施設研究の時に著者をどうするかというのは必ず問題になるところだけど、潔いというか何というか。)

Maheshwari K, Turan A, Mao G, et al.
The association of hypotension during non-cardiac surgery, before and after skin incision, with postoperative acute kidney injury: a retrospective cohort analysis.
Anaesthesia. 2018 Oct;73(10):1223-1228. PMID: 30144029.


術中の低血圧が術後のAKIの発生に関係していると言われているけど、皮切前の低血圧も、まさしく手術中の低血圧も、同じようにAKIの発生に関連している。ということは低血圧に気をつけながら麻酔すれば、AKIの発生は減らせるのではないか?

両方とも、ちょっと面白いでしょ?
ACEについてはこんな話もあるし。

今後、さらに研究が進みそうな気がする話題。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

慢性肝不全の急性増悪の予後

2018年09月23日 | 消化器・血液
CCMばっかり紹介していると、そんなの知ってるよって思われちゃうから、そろそろ違う雑誌へ。

Meersseman P, Langouche L, du Plessis J, et al.
The intensive care unit course and outcome in acute-on-chronic liver failure are comparable to other populations.
J Hepatol. 2018 May 4. [Epub ahead of print] PMID: 29730473.


EPaNICのデータを使用し(ほぉ)、慢性肝不全の急性増悪でICUに来た71例を、敗血症71例と内科疾患71例と比較。患者背景と重症度でマッチングすると、慢性肝不全の予後は他のICU疾患と同程度だった。つまり、肝硬変が悪くなったら諦めよう、じゃないよね、というのがメッセージ。

メッセージとしては悪くない。LCの患者さんが更に何か合併症を起こして肝不全になると、いやーちょっと、、、と思ってしまったりはするし。そう考えてそもそもICUに相談してこないなんてこともあるだろうし。

ただ、重症度で調整したら、そりゃ予後は同じでしょ?
だってそうやって使うために作られたものなんだから、重症度スコアって。

一瞬、騙されかけた。それが紹介の理由。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マイナスバランスになった、ではなくマイナスバランスにすると、

2018年09月22日 | 循環
Silversides JA, Fitzgerald E, Manickavasagam US, et al.
Role of Active Deresuscitation After Resuscitation (RADAR) Investigators. Deresuscitation of Patients With Iatrogenic Fluid Overload Is Associated With Reduced Mortality in Critical Illness.
Crit Care Med. 2018 Oct;46(10):1600-1607. PMID: 29985214.


ICU入室後の水分バランスがマイナスだと予後がいい、というのは何年も前から観察研究で示されている。なのに何で今更、と思ったら、マイナスバランスになった群を、更に勝手になった群と利尿剤などでマイナスにした群に分けているところが新しいからのようだ。
そして結果は、勝手になった群もマイナスにした群も同じ程度にオッズ比が低い。

ICUの患者さん全てに関連する大事な話題だし、複数の観察研究で有効性が示されているし、後はRCTなのだけど。
じゃあ自分でスタディーデザインしろと言われても、ちょっと難しいね。考えないといけない要素がたくさんありすぎ。

でも、多施設研究のネタとしては、アリなんじゃないだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

High cut-ffの膜のRCT

2018年09月21日 | 腎臓
先日、今更こんな研究していてビックリなんて書いたら、師匠がやってました。

Atan R, Peck L, Prowle J, et al.
A Double-Blind Randomized Controlled Trial of High Cutoff Versus Standard Hemofiltration in Critically Ill Patients With Acute Kidney Injury.
Crit Care Med. 2018 Oct;46(10):e988-e994. PMID: 30074491.


しかもCCMに載るとは。ネームバリューって大事。
一応の売りは二重盲検にしたというところらしいけど。

結果は同然のことながらネガティブ。
膜を使って何かをしようというのは、もう忘れましょう。

諦めきれない方は、こちらをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする