Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

私事ですが、ご報告です。

2020年06月30日 | ひとりごと
10年くらい前から、50歳で引退と周囲には公言してきました。
あと少しで52になるので、ちょっと予定より遅くなりましたが、本日で慈恵の常勤を退職することにしました。
引退なので、次の職場があるわけではなく、いわゆるアーリーリタイア、いや、セミリタイアです。

医者になったのが1993年、専門を内科から集中治療に変更したのが1997年7月。それからずっとICUで働いてきました。オーストラリアへの留学が3年あったので、気がついてみれば日本でのICUの臨床はちょうど20年です。キリがいいし、コロナもとりあえず落ち着いたし、ボーナスはもらったし、6月でちょうどよかったかなと思っています。

とは言っても、まだしばらく人生は続きそうで、これから何をするかが問題です。
もう何年も考えてきたのですが決まらず、決まらないから引退が遅くなったのですが、このままだとズルズル行ってしまいそうなので、まず行動に移す、つまり先に仕事を辞めてしまって、それから考えることにしました。

さて、何をしよう?
何をするにしても、完全にゼロから始めて世の中の役に立てるかというと、ちょっと難しい気がします。
じゃあ僕ができることは何かと考えると、やっぱり集中治療しかありません。
なのでこれからは、臨床以外で日本の集中治療に関わっていければいいな、と思っています。
そのためにはある程度はICUに触れていないといけないので、職場の皆さんにはご迷惑かとは思うのですが、非常勤として席を残させてもらうことになりました。

あ、もちろんJIPADにはこれからも関わっていきたいと思っています。
来年早々には症例数が20万に到達するし、施設数はゆっくりだけど順調に増え続けているし、データの一般利用も始まったし(すでに10施設から提供依頼あり)。
未来は明るいぞー。

週1バイト+JIPADの仕事+慈恵ICUに顔を出す。
決まっているのはこれだけで、これだけだと暇そうです。
ずっとAmazon Prime見ててもいいんですが、
それだったらこんなことしたらどうだ?
俺の手伝いをしろ!
などなど、ご連絡をいただければ全面的に前向きに検討しますので、お声掛けいただければ非常に幸いです。

そうそう、このブログをどうするかについては、まだ不明です。
集中治療に何らかの形で関わっていくなら趣味の文献読みも継続する必要があるので、楽しい文献があったら紹介はしたいかな、とは思っています、今のところ。
ただ、臨床から離れるので感覚がずれてきてしまうかもしれません。もしそのことに自分で気がつかなかったら、その時は肩をポンポンと叩いてください。

その時が来るまで、もうしばらくお付き合いくださいな。
コメント (4)
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昨日の研究を追試してみた。

2020年06月28日 | ICU・システム
昨日紹介した文献の図があまりに綺麗だったので、慈恵ICUのデータでリピートしてみた。

N=6600。これだと小さいので95%CIが大きくなりすぎて表示できず、1年死亡率の情報もないので退院時死亡で代用。
でも、基本的に同じ結果。
入室後24時間の最悪値で算出したAPACHE IIによる予測能は、ICU在室が1週間を過ぎると、年齢+性別+慢性疾患だけによる予測能より悪くなる。



それにしても。
データベースがあれば、こんな追試もチョチョっとコンピューターをいじればできちゃう。
すごいね、データベース。
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重症度スコア vs. 患者背景

2020年06月27日 | ICU・システム
The performance of acute versus antecedent patient characteristics for 1-year mortality prediction during intensive care unit admission: a national cohort study
Monika C. Kerckhoffs, Sylvia Brinkman, et al.
Critical Care volume 24, Article number: 330 (2020)


オランダのNICEのデータベースを使って、APACHE III、そのacute physiology point、患者背景(年齢、性別、慢性疾患)、そしてICU滞在期間の4つの指標が、ICU滞在期間によって予後予測能(退院時死亡と1年後死亡)をどう変化させるか検討。

うまく説明できてないかもしれないけど、Figure 2を見れば一発でわかる。
つまり、ICUに入室して数日は急性期の指標(バイタルとかラボデータとか)の方が予後をよく予測するけど、ICU滞在期間が延びるとその予測能はどんどん下がっていき、患者背景だけで予測した方が精度が良くなる。そして滞在期間が1週間以上になったら、何日ICUにいようが、それは予後予測に影響しない(1週間で病棟に退室した人より1ヶ月在室した人の方が予後が悪い、ということはない)。

以前にも読んだことある話題な気もするが、この図が綺麗で、ちょっと感動。
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DeepL翻訳、試してみた。

2020年06月26日 | 勝手に紹介
相当スゴイらしい、という噂は聞いていたので、ちょっと試してみた。
昨日紹介したICU勉強会元文献のアブストラクトをPubMedからコピペした。
結果を全部載せます。まあ、読んでみてケロ。
ーーーーーーーーーー
重要性。集中治療室(ICU)では感染症が頻発している。感染症の種類、原因となる病原体、および転帰に関する最新の情報は、予防、診断、治療、および資源配分に関する方針の策定に役立ち、介入研究の設計に役立つ可能性がある。

目的。世界中のICUにおける感染症の有病率と転帰、および利用可能な資源についての情報を提供する。

デザイン、設定、参加者。88カ国の1150施設で縦断的に追跡調査を行った24時間ポイント有病率観察研究。2017年9月13日08:00に開始した24時間の間に参加ICUで治療を受けたすべての成人患者(年齢≧18歳)を対象とした。最終フォローアップ日は2017年11月13日であった。

エクスポージャー。感染症診断および抗生物質のレセプト。

主な転帰および測定。感染症および抗生物質曝露の有病率(横断的デザイン)および全原因による院内死亡率(縦断的デザイン)。

結果。対象患者15 202人(平均年齢61.1歳[SD、17.3歳];9181人は男性[60.4%])のうち、15 165人(99.8%)の感染データが得られた;8135人(54%)は感染が疑われたか証明されたが、そのうち1760人(22%)はICU院内感染であった。合計 10 640 例(70%)の患者が少なくとも 1 種類の抗生物質を投与されていた。感染が疑われた患者または感染が証明された患者の割合は、オーストラレーシアで43%(141/328人)、アジアおよび中東で60%(1892/3150人)であった。感染が疑われた患者または感染が証明された患者8135人のうち、5259人(65%)が少なくとも1つの微生物学的培養が陽性であった;これらの患者の67%(n = 3540)でグラム陰性微生物、37%(n = 1946)でグラム陽性微生物、16%(n = 864)で真菌が確認された。感染が疑われる患者または感染が証明された患者の院内死亡率は 30%(2404/7936)であった。マルチレベル解析では,ICU 院内感染は市中感染と比較して,死亡リスクの高さと独立して関連していた(オッズ比[OR],1.32[95%CI,1.10~1.60];P = 0.003).抗生物質耐性微生物のうち、バンコマイシン耐性腸球菌への感染(OR、2.41[95%CI、1.43~4.06];P = 0.001)、第三世代セファロスポリンやカルバペネムを含むβ-ラクタム系抗生物質に耐性のあるクレブシエラ(OR、1. 29 [95% CI, 1.02-1.63]; P = 0.03)、またはカルバペネム耐性アシネトバクター種(OR, 1.40 [95% CI, 1.08-1.81]; P = 0.01)は、死亡リスクと他の微生物への感染リスクが高いことと独立して関連していた。

結論および関連性。2017 年 9 月に ICU に入院した患者の世界的なサンプルでは、感染が疑われるまたは証明された感染の有病率が高く、院内死亡の実質的なリスクを有していた。
ーーーーーーーーーー
”レセプト”はご愛嬌として、ぬあんだ、このナチュラルな日本語は!
同じ文章でGoogle翻訳もやってみたけど、レベルが全然違う。

もう英語の勉強するの、やめよかな。。。
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慈恵ICU勉強会 200623

2020年06月25日 | ICU勉強会
6月23日 感染症の有病率と予後:EPIC-III(JC-JAMA)

ICUにおける感染症の疫学研究では最も有名な(違うかな?)EPICのパートIII。慈恵も参加しました。
疫学研究、地味だけど大事です。

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東京都の発症年齢の分布②

2020年06月24日 | COVID-19
ちょっときな臭くなってきたので、久しぶりにグラフを作ってみた。
若い人が増えていると聞くが、具体的にはどんな感じかな、と思って。




うーむ。20代で半分か。検査が重点的に行われているからかな?

さて、どうなることやら。
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慈恵ICU勉強会 200616

2020年06月18日 | ICU勉強会
6月16日 COVID-19による肺以外の臓器障害

勉強会でも質問したのだけど。
ICU患者やウイルス肺炎患者では血栓症を含む種々の臓器障害が起こるので、それがCOVIDに特徴的であるかは疾患と重症度を合わせて比較しないと分からない。でも多くの研究はCOVID症例のみなので、実際はどうなんだろうか、という疑問。
この資料で紹介されている文献のうち、そこまでちゃんと比較した研究は1つだけ。
そこから言えそうなことは、静脈系の血栓症はどうも多いようだ、ということくらいで、それ以外は分からない。

そうすると次の疑問は、重症COVIDに抗凝固したらどうなるか。現在RCTが複数行われているので、結果待ち。
でも、ルーチンで抗凝固すると予後が改善する感染性疾患があったら、ちょっとビックリする。
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慈恵ICU勉強会 200609

2020年06月15日 | ICU勉強会
6月9日 勉強会卒業記念講演:ICUにおける睡眠薬

勉強会卒業記念講演って何じゃ?と思われた方へ。
ローテーターではなく、新しくICUスタッフとなった人は、数ヶ月に1回、ある話題について調べて、たくさん文献を読んで、1時間弱のプレゼンテーションにまとめる、という作業をします。
これにはどうも段階があるようで、
・こんなにたくさん文献読んだことない、読むのが大変
・ある程度読めるようになる、プレゼンテーションもできるようになる
・自分の能力向上を実感し、自分の勉強になるから続けたいと思う
・慣れてくると、1-2ヶ月の時間を費やすのがもったいない、大変だ、という気持ちに変わる
という感じ。
今回の担当者も、これで7回目のプレゼンで、話を持ちかけたら「準備が大変だ」という発言をしたので、卒業のタイミングだと判断。

英語の文献を苦痛なく読めるようになり、ある話題について深く調べられるようになり、人前で論理立てて説明できるようになる。
悪くないコースなのではないかと思っている。
火曜朝の勉強会が始まって十数年。さて、今後も続くかどうか。
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PPEをちゃんとすれば医療者は感染しない。

2020年06月12日 | COVID-19
ちょー久しぶりの文献紹介。
とっても大事な話だと思うので、紹介せずにはいられない。

Liu M, Cheng SZ, Xu KW, et al.
Use of personal protective equipment against coronavirus disease 2019 by healthcare professionals in Wuhan, China: cross sectional study.
BMJ. 2020;369:m2195. Published 2020 Jun 10. doi:10.1136/bmj.m2195


武漢の2つの病院の420名の医療従事者。エアロゾルが産生されうる手技に少なくとも1度は関わり、平均で週に16時間ICUで勤務。もちろん全員PPE着用。
COVIDを疑う症状を呈した人はゼロ。
PCRが陽性となった人もゼロ。
IgM・IgGが陽性となった人もゼロ。

PPEをちゃんと使えば、感染しません。
これは実際にICUで働いている人であれば実感しているのでは。

COVID用のICUが作られていた病院も、だんだん正常化してきているはず。
これまでも、疑いを含め、インフルエンザや結核や麻疹など、感染性疾患の重症患者の診療をしてきた。でもICUで感染したという話はほぼ聞いたことがない。
日本人全員がワクチンを接種するまでは、このリストにCOVIDが含まれて、他の患者さんの診療と同様に行われるようになる。いわゆるニューノーマル。
これまで同様、ちゃんと対策すれば、これからも誰も感染しない。

僕の日常生活はまだ完全には普通に戻らない。なので文献をルーチンで読む習慣もなくなったまま。
現在、ニューノーマルの模索中。
さて、普通に文献紹介できるようになるのはいつの日か。
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慈恵ICU勉強会 200602

2020年06月11日 | ICU勉強会
6月2日 国際共同RCTのマネジメント:豪州での経験

オーストラリア留学中にJAMAのfirst authorとなった藤井さんが、自分の経験をまとめてくれました。
集中治療界隈では多分一番レベルの高い臨床研究をしている集団がどんな仕組みで動いているのか、興味のある方は是非どうぞ。
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