Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

知識をアップデートし続けることの難しさ

2012年05月28日 | EBM関連
なんだったんだ、先週は。
Major journalからICU関連の文献が出まくった。
臨床系の四大雑誌と言えば、NEJM、LANCET、JAMA、BMJだけど、LANCET以外の3つからPDFを同じ週にダウンロードしたのは初めてじゃないだろうか。
あまりにも数が多いので、一気に行きますよ。

Wallace DJ, Angus DC, Barnato AE, et al.
Nighttime Intensivist Staffing and Mortality among Critically Ill Patients.
N Engl J Med. 2012 May 21. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22612639.
アメリカのAPACHE database(つまりICUの多施設データベース)を利用して、夜にICU専門医がいるかどうかで予後が変わるかについて検討。日中のシステムがlow intensity(ICUに医者はいるが、相談するかどうかは主治医の自由)だと夜にICU専門医がいると予後の改善が認められるが、high intensity(ICUの医者に相談しないといけないか、closed ICU)では関連が無い。詳細は、JSEPTICのジャーナルクラブで。

Ranieri VM, Thompson BT, Barie PS, et al.; the PROWESS-SHOCK Study Group.
Drotrecogin Alfa (Activated) in Adults with Septic Shock.
N Engl J Med. 2012 May 22. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22616830.
言わずと知れた、PROWESS-SHOCKがついに文献になった。活性化プロテインCの息の根を止めた研究。これも、詳細は、JSEPTICのジャーナルクラブで。

Special Communication | May 21, 2012
Acute Respiratory Distress Syndrome: The Berlin Definition
The ARDS Definition Task Force
http://jama.jamanetwork.com/onlineFirst.aspx
こちらもPROWESS-SHOCKと同じころ、去年の秋に話題になった、ARDSの新しい定義。
うまく、PubMedで見つけられなかったので、JAMAのホームページからコピペ。今のうちなら誰でもタダで読める。

Original Contribution | May 21, 2012
Effect of Empirical Treatment With Moxifloxacin and Meropenem vs Meropenem on Sepsis-Related Organ Dysfunction in Patients With Severe SepsisA Randomized TrialTreatment for Sepsis-Related Organ Dysfunction
Frank M. Brunkhorst, MD; Michael Oppert, MD; Gernot Marx, MD
http://jama.jamanetwork.com/onlineFirst.aspx
同じく、JAMAのon-lineで、うまくコピペできず。
セプシスに対し、メロペネム単剤か、ニューキノロン(モキシフロキサシン)を追加するかのRCT。予後に差はなし。
これも、詳細は、JSEPTICのジャーナルクラブで。

Ker K, Edwards P, Perel P, et al.
Effect of tranexamic acid on surgical bleeding: systematic review and cumulative meta-analysis.
BMJ. 2012 May 17;344:e3054. PubMed PMID: 22611164.
術後患者に対するトラネキサム酸の有効性について検討したRCTのメタアナリシス。129研究が対象となり、輸血の必要性が約三分の二になり、合併症の発生頻度は変わらなかった。
これも、詳細は、JSEPTICのジャーナルクラブで。
(って、やれるのか、そんなにたくさん?)

Herzig SJ, Rothberg MB.
Prophylaxis rates for venous thromboembolism and gastrointestinal bleeding in general medical patients: too low or too high?
BMJ. 2012 May 18;344:e3248. PubMed PMID: 22611168.
これは文献じゃなくて、オピニオン。
消化管出血と静脈血栓は両方とも入院患者に起こる合併症であり、その発生頻度、予後、予防の有効率、予防の実施率など、非常に似通っている。にも関わらず、最近の研究やガイドラインでは、消化管出血の予防はやり過ぎだからやめよう、静脈血栓の予防はもっとやろう、と真逆の内容になっている。それは何故か?どうすればいいか?
なるほど、という内容で、非常に面白い。

Macdonald RL, Higashida RT, Keller E, et al.
Randomized Trial of Clazosentan in Patients With Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage Undergoing Endovascular Coiling.
Stroke. 2012 May 7. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22403047.
以前紹介した(と思う)、clazosentanのSAHに対する効果を検討した3つ目のRCT(CONSCIOUS 1、2と来て、これが3)。CONSCIOUS 2がネガティブだったので、3は途中で終了。結果は基本的に同じで、スパズムは減らすけど、予後(死亡率、意識)は変わらない。

もう随分長くなったので、本題は最後にちょっとだけ。

Hoffmann T, Erueti C, Thorning S, et al.
The scatter of research: cross sectional comparison of randomised trials and systematic reviews across specialties.
BMJ. 2012 May 17;344:e3223. PubMed PMID:22597353

WHOが定める、世界中でもっとも重要な9疾患(10番目は外傷なので除かれた)について、その疾患についてのRCTやシステマティックレビューがどの雑誌に掲載されたかを調査。対象は2009年のみ。その結果、詳細は省くけど、例えば糖尿病について行われたRCTを少なくとも半分読むには、39の雑誌に目を通さなければならず、AMIのシステマティックレビューですら、少なくとも半分読むには23の雑誌に目を通さないといけない。

これって、実感があるね。
特に集中治療なんていう、ある意味で横断的な専門分野だと、
知識を全ての分野についてアップデートし続ける、正しい情報を手に入れ続けるには、一体いくつの雑誌に目を通さないといけないのか。気が遠くなる。

発表されるRCTの数は毎年11%増え、雑誌の数も3.5%ずつ増えてるんだって。
とてもじゃないが、ついていけない。

一つの解決策がコクランのようなシステマティックレビューをやりまくる団体なのだけど、全分野を網羅することはできていない。もう一つの解決策は、多くの雑誌をカバーして、そのうち自分に関係のある文献を教えてくれるサービス。でも、どれも十分なものではないし、それぞれバイアスがかかってしまっている。

現状では、
知識のアップデートに王道無し。
困った困った。
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敗血症性ショックに対する解熱

2012年05月21日 | 感染
まず、集中治療とは関係のないやつから。

Freedman ND, Park Y, Abnet CC, et al.
Association of coffee drinking with total and cause-specific mortality.
N Engl J Med. 2012 May 17;366(20):1891-904. PubMed PMID: 22591295.
特に病気のない健康人約40万人を追跡調査、コーヒーを飲んでいる人は(多変量解析すると)総死亡が減る。だいたい2-3杯/日以上飲むと10%くらい減るらしい。僕もS井先生もよくコーヒーを飲むので、嬉しい話。ま、観察研究ですけどね。
ちなみに、Figure 2はHazard ratioが増えても減っても"Coffee a risk"になっている。NEJMでも誤植はありますね。

Cely CM, Schein RM, Quartin AA.
Risk of contrast induced nephropathy in the critically ill: a prospective, case matched study.
Crit Care. 2012 Apr 25;16(2):R67. PubMed PMID: 22534554.
ICUで造影CTをするとAKIになるか、という研究。造影じゃないCTをICUで撮った人とマッチングしている点が新しい。結果は、GFRが低下する頻度に有意な差はなし。ICU患者にAKIを起こす原因はたくさんあるので、造影剤の影響は大きくない、という結論。

Robert R, Reignier J, Tournoux-Facon C, et al.
Refusal of Intensive Care Unit Admission Due to a Full Unit: Impact on Mortality.
Am J Respir Crit Care Med. 2012 May 15;185(10):1081-1087. PubMed PMID: 22345582.
ICUに入れてくれと要請があって、断られた患者の死亡率は高いと報告されているが、患者背景とか重症度などいろいろな理由がありそう。今回は、単にICUが満床だったために入れなかった患者さんのみを対象に検討したけど、やっぱり断られた(入れたくても入れられなかった)患者さんの死亡率は高かった。ICUのベッド数は十分な数があったほうが入院患者さんの死亡率を減らせるかも。以前紹介した文献とは逆の結論?

で、メインのペーパーはこれ。
Schortgen F, Clabault K, Katsahian S, et al.
Fever control using external cooling in septic shock: a randomized controlled trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2012 May 15;185(10):1088-95. PubMed PMID: 22366046.

発熱は血管拡張を起こして血圧を下げるし、酸素消費量も増やす。でも免疫機能は体温が高い方がいいかも。そこで、敗血症性ショックの患者さんに体表クーリングして体温を下げるとどうなるかを検討。
7つのICUで行われたRCT。敗血症で、昇圧剤(ノルアドかアドレナリン)を必要とし、人工呼吸されていて、鎮静剤が投与されていて、体温が38.3度を超えた患者さん200名を無作為に割り付け、一方はそのまま、もう一方は体表クーリングで体温を37度以下に下げた。(ちなみに研究の名前は"Sepsiscool"。そのままやんけ!)
Primary outcomeは48時間後に昇圧剤の投与量が半分以下になる頻度。
その結果、
・患者背景で、昇圧剤の投与量がクーリングをしない群で多かった
・クーリング群では2時間で体温が1度下がり、12時間で37度以下になった
・12時間後に昇圧剤の投与量が半分以下になる頻度は、クーリング群で55%、しない群で20%
・その差は48時間後では消失(73% vs. 61%)
・14日死亡率は19%と34%で有意差あり、病院死亡率は43%と48%
・昇圧剤の投与量などで補正したけど、結果は同じ

さて。
敗血症に限らず、熱が上がったときに解熱するべきかどうかについての情報はとても少ない。だからこそ、日本集中治療医学会は韓国と合同で観察研究を行い(FACE study)、現在は介入研究を実施中(FACE II)。
Fever and Antipyretic in Critically ill patients Evaluation (FACE) Study Group.
Association of body temperature and antipyretic treatments with mortality of critically ill patients with and without sepsis: multi-centered prospective observational study.
Crit Care. 2012 Feb 28;16(1):R33. PubMed PMID: 22373120.

敗血症では、これまでイブプロフェンについての研究がある。
Bernard GR, Wheeler AP, Russell JA, et al.
The effects of ibuprofen on the physiology and survival of patients with sepsis. The Ibuprofen in Sepsis Study Group.
N Engl J Med. 1997 Mar 27;336(13):912-8. PubMed PMID: 9070471.
ただし、この研究はプロスタグランディンの産生を減らすと予後が改善するかどうかについて検討していて、体温を直接のターゲットとはしていない。ちなみに、体温はもちろん下がって、死亡率は同等だった。

今回の研究は、体表クーリングで体温をコントロールしているところが違うし、体温を直接のターゲットとしている。とりあえず、昇圧剤は減らせるらしい。でも感染のコントロールがつくと体温は下がるし血圧は上がるので、48時間も効果は続かない。14日死亡率は低いけど、病院死亡率は同じだし。

でも死亡率が増えていないのも事実。イブプロフェンの研究でもそうだけど、高体温は免疫機能の維持に重要、という話は、どーもデマっぽくなってきた。

ちなみに、フランスの法律で、こういうRCT、つまり割り付けされる治療がどちらもスタンダードな場合(敗血症の患者さんの熱を下げることもあるし下げないこともある)は、文書化されたインフォームドコンセントは不要なんだって(説明はするし、患者さんに拒む権利もあるけど)。
誰かが、フランスは人体実験みたいな研究をすることもある、と言っていたけど、臨床研究に関する考え方がちょっと違うのかもね。
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腎臓発作(?)

2012年05月14日 | 腎臓
今日はバイト(内科外来)が忙しい。文献を読んでいるヒマがない。
何故、PCP疑いまで来るんだ?
ということで、ざっと紹介。

Connolly ES Jr, Rabinstein AA, Carhuapoma JR, et al.
Guidelines for the Management of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association.
Stroke. 2012 May 3. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22556195.
まだ、正式には出ていないが、AHA/ASAによるSAHのガイドライン。前回は2009年で、そのアップデート。今後は3年毎に新しいのを出すらしい。いろいろ内容が変わっていて、面白い。

Hempel S, Newberry SJ, Maher AR, et al.
Probiotics for the prevention and treatment of antibiotic-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis.
JAMA. 2012 May 9;307(18):1959-69. Review. PubMed PMID: 22570464.
抗菌薬関連の下痢に整腸剤が効くかどうかについてのメタアナリシス。82の研究が検討され、整腸剤の投与は下痢を約半分に減らす。でも、予防投与がほとんどで、下痢をしてから投与したら有効なのか、クロストリジウムはどうか、具体的にどの菌を含んだ整腸剤が良いのか、はよく分からない。

Klein Klouwenberg PM, Ong DS, Bonten MJ, et al.
Classification of sepsis, severe sepsis and septic shock: the impact of minor variations in data capture and definition of SIRS criteria.
Intensive Care Med. 2012 May;38(5):811-9. PubMed PMID: 22476449.
SIRSのクライテリアの実際の使い方(コンピュータで集めるか手で集めるか、頻脈などがどれくらい続いたら含めるか、同時に満たすか24時間以内ならOKとするか、など)によって、セプシスの頻度がどう変わるかを検討。ルールの決め方によって、セプシスの頻度は22%から31%、敗血症性ショックでは4%から9%の幅があった。細部まで決めないと、セプシスの研究をするときに困る。

Chacko J, Nikahat J, Gagan B, et al.
Real-time ultrasound-guided percutaneous dilatational tracheostomy.
Intensive Care Med. 2012 May;38(5):920-1. PubMed PMID: 22349428.
経皮的気管切開をするときに、ブロンコは使わずにエコーで出来るよ、というレター。

で、ちょっとだけ解説するのはこれ。

Kellum JA, Bellomo R, Ronco C.
Kidney Attack.
JAMA. 2012 May 9. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 22572776.
(今気がついたが、まだepubだった。でも、ということは誰でも全文が読めるよ。)

まず、著者。
この3人はAKIに興味のある人なら誰でも知っている有名人。
アメリカ人とオーストラリア人とイタリア人なんだけど、お友達(誰かが、悪ガキトリオと呼んでいた)。
その3人が、また変な文章をJAMAに書いていた。
内容は、
・Heart attackやbrain attackは一般人でも知っていて、緊急事態であることが直感的に分かる。
・一般に知られていると、その重要性が医学界でも認識されるので、多くの研究が行われる。
・それに比べ、AKIはAMIと同じくらいの頻度で発生していて、かつ予後に与える影響はAMIよりも大きいのに、一般には全然知られていないし、医療者もその重要性を認識していないし、研究も進まないし、治療法も見つからない。
・じゃあ、やることが全然ないか、無視してもいいか、というとそんなことはなく、予後を改善するための方法はたくさんある。例えば、AKIのリスクを認識するとか、腎毒性物質を避けるとか、体液過剰をさっさと防ぐとか、いろいろ。
・"Kidney attack"という言葉は、一般人の認識を高め、医療者の認識を高めるために有効かも?

単純計算すると、2012年にAKIで三百万人が死ぬらしい。にもかかわらず、透析によるサポートぐらいしか治療法がない、というのは問題だ、という話。

そろそろ午後の外来の時間。
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筋弛緩薬は筋力低下を引き起こすか

2012年05月07日 | 神経
日本はゴールデンウィークでも、そんなこと海外の雑誌は気にしてくれず、どんどん文献は出る。
困ったもんだ。

Imamura H, Kurokawa Y, Tsujinaka T, et al.
Intraoperative versus extended antimicrobial prophylaxis after gastric cancer surgery: a phase 3, open-label, randomised controlled, non-inferiority trial.
Lancet Infect Dis. 2012 May;12(5):381-7. Epub 2012 Jan 31. PubMed PMID: 22297080.
日本の外科医による、多施設RCT。胃部分切除後に抗菌薬を投与するか、術中のみか、を比較。術中のみの投与でも、術後SSIの発生頻度は変わらないということを検討したNon-inferiority studyだけど、実際には術中のみの方がSSIの頻度が約半分。素晴らしい。今時、こんな研究は日本でしかできないかも??

Brown SE, Ratcliffe SJ, Kahn JM, Halpern SD.
The epidemiology of intensive care unit readmissions in the United States.
Am J Respir Crit Care Med. 2012 May 1;185(9):955-64. Epub 2012 Jan 26. PubMed PMID: 22281829.
アメリカの多施設ICUデータベースである、IMPACTを使った研究。262施設、196000人のICU患者の再入室について検討。全ICU入室患者のうち、2%が48時間以内、4%が120時間以内に再入室する。高い?低い?

Churpek MM, Yuen TC, Huber MT, et al.
Predicting cardiac arrest on the wards: a nested case-control study.
Chest. 2012 May;141(5):1170-6. Epub 2011 Nov 3. PubMed PMID: 22052772.
Rapid response system(RRTとかMETとかのこと)では、患者の異常を定義して、その定義を満たしたらチームをコールする、というのがトリガー。この基準はどの研究でも似たようなものだけど、それが本当に院内心停止を予測した指標であるかは検討されたことがない。そこで、院内心停止した患者さんと、同時期に同じ病棟に入院した患者さんを比較して、指標が心停止を予測するかを検討。呼吸数や脈拍数は予測するが、体温は重要じゃないし、拡張期血圧は一般的には指標になっていないけど、心停止に関連があった。

で、今日のメインはこんなのにしてみた。

Puthucheary Z, Rawal J, Ratnayake G, et al.
Neuromuscular blockade and skeletal muscle weakness in critically ill patients: time to rethink the evidence?
Am J Respir Crit Care Med. 2012 May 1;185(9):911-7. PubMed PMID: 22550208.

研究論文ではなく、エッセイ(と分類されているが、一種のシステマチックレビュー)。
筋弛緩薬がICU患者の筋力低下(Intensive Care Acquired weakness、ここではICU-AWと省略)を起こすというのは本当か?という話。

・最初にその話が出たのは1970年代。喘息重責で筋弛緩とステロイドが投与された若い患者が、喘息改善後に著明な筋力低下を認めた。
・その後、1990年代までに44ものケースレポートが発表された。
・そのうち、筋弛緩薬との関連を検討したのは16文献。問題点がいっぱい。
・まず、重症患者は筋弛緩薬を投与されやすい(脳圧コントロール、重篤な呼吸不全など)。
・年齢が高い患者が多い。でも高齢は筋力低下と当然のことながら関連あり。
・多くの研究でステロイドが併用。ステロイドの筋力低下は有名。
・もう一つ、筋弛緩薬を投与するときは必ず鎮静剤も投与される。GABAは骨格筋にも影響あり。
・RCTはほとんどない。有名なのは、
Papazian L, Forel JM, Gacouin A, et al.; ACURASYS Study Investigators.
Neuromuscular blockers in early acute respiratory distress syndrome.
N Engl J Med. 2010 Sep 16;363(12):1107-16. PubMed PMID: 20843245.
ARDSにcisatracuriumを48時間投与すると死亡率が改善したという研究。筋力もチェックしていて、差は認めず。
・時代とともに筋弛緩薬はどんどん投与されなくなってきた。ICU-AWの発生率を追跡調査した研究もあるが、筋弛緩薬の使用は激減したけど、ICU-AWはあまり減っていない。
・ということで、21世紀の臨床において、筋弛緩薬がICU-AWの危険因子である、という根拠は無い。必要なときは気にせず使いましょう。

ふーん。
ちょっと思い込んでいたかなー。
とは言え、必要と思うことがそもそも少ないので、どんどん使おう、という気にもならないけど。
頭をかすめたら、あまり遠慮せずに使いますかね。

それにしても、エビデンスというのはグルグル回るというか、振り子のように揺れているというか。
面白いというか、不思議というか、どっちやねんというか。

まわる~まわる~よ 時代はまわる~
喜び~悲しみ繰り返~し
今日は~別れ~た恋人たち~も
生まれ変わって めぐりあ~うよ
コメント (1)
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