Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

EBMの歴史

2014年01月31日 | EBM関連
先週のJAMAとBMJに同じ記事が出ていた。
もういろいろなところで話題になっているからご存知の方も多いでしょうが。

Smith R, Rennie D.
Evidence based medicine--an oral history.
BMJ. 2014 Jan21;348:g371. PMID: 24448603.


この文章は、言ってみればこのホームページの紹介。

http://ebm.jamanetwork.com

どのようにしてEBMという概念が生まれ、どんな障害があって、これからどうなっていくか、について、実際にEBMの発展に関わってきた人達にインタビューしている動画が見れる。

"Critical appraisal"という言葉を作った人とか、"Evidence-based medicine"という言葉を作った人とか、コクランを作った人とかが出てくるよ。

英語のリスニングは苦手なので分からない部分も多いのだけど、理解できた部分だけでも、すごいなーと思ったし、いろいろ考えた。

全部聞くと2時間くらいかかるけど、この週末にでも是非。
お勧めです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PMX特集の続きの続き

2014年01月30日 | 感染
JSEPTICのメーリングリスト松江の橋本先生にご紹介いただいた記事。

エンドトキシン除去向け吸着型血液浄化用浄化器トレミキシン®新工場建設について

さすがJAMA、EUPHASの発表の効果が大きかったという事なのかな。

このプレスリリース、一昨年の発表なので、その時にはすでにEUPHRATESとABDO-MIXは始まっていたはず。その結果を待たずに工場建設とは、すごい自信だ。

ABDO-MIXの結果は分からないけど、ポジティブだったとどこかで小耳に挟んだ。
とは言え、実際の文献を読んでみない事には分からないけどね。最近もそんな例があったし。
とは言え、結果を見るのが楽しみであることには変わりない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PMX特集の続き

2014年01月28日 | 感染
読み返してみると、なんで驚いたか分からないかもな、と思って。

一番驚いたのは、それなりの国際雑誌が、PMXについての特集を、しかもこの時期(複数の研究結果が待たれている)に組んだこと。
PMXが有望な治療だと考えているからか、逆に今しかないと思ったからか。
そうそう、EUPHASの発表以来、イタリアではPMXの使用頻度が急速に増えているらしいね。つまり前者という事なんだろうな。

あともう一つ、EUPHRATESって、単なるEUPHASの拡大版かと思っていたのだけど、いろいろ今後の敗血症研究において重要な意味を持っているらしい。
・昨日も書いたけど、ブラインドの方法が面白いというか厳密な点
・Inclusionにバイオマーカーを使用している点
・腎臓内科医と集中治療医の両方が研究に関わるなど、研究の進行には複雑な点が多く、それをどうマネージしていくか、を工夫している点

特にバイオマーカーについては、確かに期待されてよいのかも。
敗血症にしてもARDSにしても、その診断基準は臨床的に容易に使用できる事を重要視しているがために、その精度は驚くほど低い。それがこれまでの研究のほとんどにおいてネガティブな結果しか出ていない理由かもしれないので、より客観的なマーカーを用いて対象患者を選べば、有効な治療が見つかりやすくなるかもしれないし、重症例を選べるので必要な症例数を少なくすることができるかもしれない。
実際、EUPHRATESではエンドトキシンを測定してそれが高値の人だけを対象としているのだけど、だいたい半分くらいは除外されて、その死亡率は研究に含まれた群よりも低いんだってさ(25% vs. 33%)。まあ、研究途中の数字だけど。

治療の好き嫌いで文献を読むのではなく、根拠に冷静になろっと思わせてくれた感じがした。
おとなしく、結果を待ちたいと思います。

ただし、first do no harmの原則は守りながらね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PMX特集

2014年01月27日 | 感染
紹介したい文献はたくさんあるんだけどね。先週は時間的な問題で1つしかできなかった。残念だわ。
今週はどうなるかな。

先週の文献の中では、これが一番の驚きかなー。

Polymyxin B-Based Hemoperfusion for the Treatment of Endotoxic Shock.
Blood Purification. Vol. 37, Suppl. 1, 2014


文献というか、雑誌の増刊号ね。
Blood Purificationというのは、その名の通り、血液浄化に特化した雑誌で、Impact factorは2点くらいある、まあそこそこの雑誌。Dr Claudio RoncoがEditor-in-Chiefをつとめていて、その関係でこの特集が組まれたのではと想像。
あ、ご存じない方のために、EUPHAS studyはDr Roncoがやったのよ。

EUPAHS study以降で、有名なPMXについての研究と言えば、
1. EUPHRATES(多施設RCT)
2. ABDO-MIX(多施設RCT)
3. EUPHAS 2(多施設レジストリ)
があるよね。
そのうち、EUPHRATESEUPHAS 2について、ちょっと詳しく記載されている。興味の有る方は、どうぞ。

EUPHRATESって、double-blindなんだよね。どうやっているのかと思っていたけど、詳細な記載があった。
Placebo群では、カーテンを閉めて、鼠径にカテーテルを入れたふりをして、先っちょを切り取ったカテーテルを皮膚にくっつけて、血液浄化の機械につなげて、ポンプを回すんだってさ。へー。

ABDO-MIXについては、ほぼ何も記載されていない。
調べてみたけど、手に入る情報はClnicalTrials.govだけだ。
もう終了しているんだよね、これ。
早く結果が知りたいものだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

無視されてたFEASTが反論

2014年01月20日 | 循環
先週のおもしろ文献大賞は、ダントツでこれ。

Kiguli S, Akech SO, Mtove G, et al.
WHO guidelines on fluid resuscitation in children: missing the FEAST data.
BMJ. 2014 Jan 14;348:f7003. PMID: 24423891.


まず、FEASTってのは、これね。
発熱している重症の子供に、生食を補液するか、アルブミンを補液するか、それとも維持輸液以外はしないか、でRCTしたら、補液した群の死亡率が高かった、というもの。
で、去年の5月にWHOが小児疾患についてのガイドラインを出していて、その中で、敗血症性ショックに対する急速補液を推奨しているんだって。
で、FEAST studyの著者たちが、そりゃおかしいだろ、と抗議しているのがこの文献。

たしかにこの研究、無視されてるよねー。
重症感染症に対して補液をするかしないかを多施設でRCTしている唯一の研究なのに。
・アフリカで、
・子供で、
・マラリアとかいて、
・常識とは真逆の結果になった、
のが理由かね。

WHOがこのガイドラインを作り始めたときにちょうどFEASTの結果が発表されて、ガイドライン作成者から未公開のデータを頼まれて、提供したんだって。にも関わらず無視されたので、コノヤロ、ていうのが内容。
FEAST studyへの批判に対する反論とか、サブグループ解析でも結果は変わらないとか、いろいろ面白い。

大人の敗血症性ショックを見たら、そりゃ補液しますけどね。
でも、それが患者さんにとって有益かどうかは分からない、というのはいつも心に留めておかないと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JIPAD

2014年01月17日 | データベース・JIPAD
宣伝し忘れてた。
JIPADのホームページができましたよ。

え?
JIPADを知らないの?
遅れってるー。
仕方がないから教えてあげよう。
Japanese Intensive care PAtient Databaseの略で、
日本集中治療医学会による多施設ICUデータベースのこと。
ボチボチ、症例登録が始まりますよ。

2-3年後には、数万例の巨大データベースになっている、はず。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

CVPとAKI

2014年01月16日 | 腎臓
Legrand M, Dupuis C, Simon C, et al.
Association between systemic hemodynamics and septic acute kidney injury in critically ill patients: a retrospective observational study.
Crit Care. 2013 Nov29;17(6):R278. PMID: 24289206.


パリの1つのsurgical ICUで行われた後ろ向き観察研究。137例の敗血症症例のうち69例にAKIが新たに発生したか、入室時よりも悪化。この群では、AKIが起こらなかったか改善した群に比べ、入室後24時間のCO/MAP/ScvO2に差はなかったが、拡張期血圧は少し低く、CVPは有意に高かった(11 vs. 8.5 mmHg, p=0.00031)。CVPとAKIの発生/悪化には直線的な関係があった。

CVPが高いとAKIが起こる。
ここ数年、ひそかなブーム。敗血症以外でも心不全などで示されている関係。
理屈は簡単で、腎臓の灌流圧に影響するのは入り口のMAPと出口のCVPだから。

今時、CVPを補液の指標として使っている人はいないだろうけど。
AKIの発生の指標にはなるのかも。

あるといろいろ便利だからモニタには表示しているけど、補液の指標にはならないから完全に無視していたCVP。ちょっと気にしてみるかな。
ただし、CVPのある値を目標に補液しよー、ではなく、ある値以上になったら腎臓に悪いよー、という意味でね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人工呼吸関連事象の定義

2014年01月15日 | 感染
Ventilator-Associated Eventsを和訳してみたんだけど。

Raoof S, Baumann MH.
An official multi-society statement: ventilator-associated events: the new definition.
Chest. 2014 Jan 1;145(1):10-2. PMID: 24394814.


Developing a New, National Approach to Surveillance for Ventilator-associated Events.

というタイトルでいろいろな雑誌に同じ文章が出ていたから、見かけた人も多いのでは。
VAPの診断基準は精度が低いのでサーベイランスには向かない、ということで、CDCが中心となって新しくVAEという概念を提唱したんだよね。
それに関連した文章。
同じものがCCMにも出ているので、この文章もいろいろな雑誌に載るのかな。

内容は、VAEの簡単な紹介と、実際にサーベイランスをやってみてのフィードバックに基づき定義をちょっと改訂したよ/しよう、というもの。
具体的には、ホームページをご覧くださいってさ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の呼吸集中治療の確立

2014年01月14日 | ICU・システム
Pulmonary and Critical Care Medicineを和訳してみたんだけど。

Qiao R, Rosen MJ, Chen R, et al.
Establishing pulmonary and critical care medicine as a subspecialty in china: joint statement of the chinese thoracic society and the american college of chest physicians.
Chest. 2014 Jan 1;145(1):27-9. PMID: 24030390.


Chinese Thoracic Society(中国の呼吸器学会的なもの)とAmerican College of Chest Physicians(アメリカの呼吸器学会的なもの)の共同声明。ACCPと協力して、中国で呼吸集中治療のサブスペシャリティーのための教育プログラムを進めよう、という話。

2012年の段階で、アメリカの集中治療フェローの77%は呼吸器内科医だそうで、この文章のfirst authorはアメリカに留学経験があって、その人がCTSの学会雑誌や学術集会でアメリカのシステムを紹介したのがスタートらしい。
呼吸器内科医が集中治療を行うことの優位性についても書いてある。

それが良いか悪いかじゃなくて。
最近、こういうのをチョコチョコ見るなあと思って。
これとか、これとか。

システムとして集中治療が確立していない国(アメリカとか中国とか)で、いろいろな人が集中治療の重要性を認識してきた、ということか。他にも理由がありそうだけど、そういう面はあるんでしょう。

改めて、日本の集中治療はどうなるんだろーなー、と思った。
日本中で専門医制度が変わるのは2015年度だっけ?
どうなるのかな。少し不安。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

PICU患者の血糖管理

2014年01月13日 | その他
三連休だけど三日勤。
労働できる喜びを味わってます。

Macrae D, Grieve R, Allen E, et al.; CHiP Investigators.
A randomized trial of hyperglycemic control in pediatric intensive care.
N Engl J Med. 2014 Jan 9;370(2):107-18. PMID: 24401049.


イギリスの13のPICUに入室した1369例を、厳密な血糖管理(IIT群、72-126mg/dl)をするか、しないか(コントロール群、216mg/dl以下)でRCT。Primary outcomeは30日での人工呼吸free days。結果は0.36日の差で有意差なし、低血糖はIIT群で5倍発生。

知らなかったのだけど、PICUの世界ではまだIITの可能性は追求されているんだね。
Editorialを見ても、これが4つ目のRCTで、それぞれ対象も結果も異なるのでメタアナリシスが必要だと書いてあるし、さらにはこの研究よりも大きなRCTが行われているらしい。

なんか、びっくりした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする