Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICU患者の退院後の予後

2013年04月29日 | ICU・システム
今年のGWは天気が良いらしい。
でも外出の予定はなく、文献読んでブログを書いている。
人だらけの観光地に行くのと、どっちがいいかなー。

London MJ, Hur K, Schwartz GG, et al.
Association of perioperative β-blockade with mortality and cardiovascular morbidity following major noncardiac surgery.
JAMA. 2013 Apr 24;309(16):1704-13. PMID: 23613075.

アメリカの104の病院で非心臓手術を受けた136745症例を対象に、周術期にβ遮断薬を投与されたかどうかでマッチングして比較。40.3%にβブロッカーが投与され、非投与群に比べ死亡率の相対危険度が0.73に減少。Revised Cardiac Risk Indexが高いほど、有効性も高かった。
うーん。周術期のβブロッカーの話題って、ずっと続くね。最近の考え方を知る上でも、これはジャーナルクラブ行きにしよっと。

Wacker C, Prkno A, Brunkhorst FM, et al.
Procalcitonin as a diagnostic marker for sepsis: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Infect Dis. 2013 May;13(5):426-35. PMID: 23375419.

ICU患者の敗血症の診断に対するプロカルシトニンの有効性についてのメタアナリシス。30文献(3244症例)が対象。まとめると、感度0.77で特異度0.79、AUROCは0.85だった。
鳴り物入りで登場したけど、まあ随分熱も冷めた感じ。とりあえず、診断に使うものではなさそうだ。

Nishijima DK, Haukoos JS, Newgard CD, et al.
Variability of ICU Use in Adult Patients With Minor Traumatic Intracranial Hemorrhage.
Ann Emerg Med. 2012 Sep 26. PMID: 23021347.

アメリカの8つのレベル1外傷センターに入院した、軽症頭部外傷(頭蓋内出血があるけどGCSは15点)症例1412例。そのうち888例がICUに入室。その頻度は施設によって大きく異なり、50%から97%だった。847例(95%)はICUで特別な治療(人工呼吸、手術、輸血、昇圧剤など)は行われなかった。多変量解析すると、施設によってICU入室のオッズ比は1から30と大きな幅があった。
ICUのシステムとかベッド数とかを考えると、軽症頭部外傷は日本とアメリカの一部のICU以外にはほとんどいないだろうと想像される。それは不要なんじゃないの、という話。

で、今回のメインは、何故これなんだ、と思われそうなやつ。

Brinkman S, de Jonge E, Abu-Hanna A, et al.
Mortality after hospital discharge in ICU patients.
Crit Care Med. 2013 May;41(5):1229-36. PMID: 23591209.


オランダの81のICUに約4年間に入室して生存退院した91203例が対象。オランダのICUデータベース(NICE)と保険データを組み合わせ、退院後の予後についてのデータを収集。その結果、
・退院後の死亡率は、1年後で12.5%、2年後で19.3%、3年後だと27.5%。
・年齢と性別で調整すると、オランダ人全体(3年で8.2%)に比べて明らかに死亡率が高い。
・カプランマイアーを描くと、疾患によって死亡率は大きく異なる。くも膜下出血、心臓外科手術、外傷、肺炎、腎不全、癌について検討。
 ・例えばくも膜下出血は退院後半年くらいは死亡率が高いが、その後は落ち着き、3年くらい経つとオランダ人全体とほぼ同じになる。
 ・心臓外科手術後はオランダ人全体よりも少し低い程度で安定して推移。
 ・肺炎は癌よりも最初は死亡率が高いが、1年くらいで追い抜かれる。
・ICU患者全体と比べても、心臓外科は極端に死亡率が低く(オッズ比0.28)、内科患者(1.41)、癌患者(1.94)は高い。

ほら、なんでこれなんだ、と思ったでしょう?
読んでてね、すごい時間がかかったのよ、この文献。内容が難しいからじゃなくて、気がつくと何か他の事を考えていて、文献を読むのが止まるから。
つまり、それだけいろいろなことを連想させたんだよね。

例えば単純なところでは、ICUの仕事とは何ぞや、ということ。
結局、ICUを退室するまでなんだよね。退院までは診てないし、というか診れないし、ましてや退院後なんて。
でも、きっとICUで行われた事が長期予後にも影響するはず。例えばICUでAKIになった人は、長期的に維持透析になる確率が高かったりする。
ま、ありがちな話題ですが。

次は、心臓外科と脳外科。ICU死亡率も病院死亡率も低いことは知っていたけど、退院後の死亡率も低いんだね、やっぱり。
よく聞く話だけど、日本のICUには心臓外科と脳外科が多数を占めるところが多いらしい。それって、国際的には死亡率が低い集団だけを集めてるってことだよね。すごい話だ。
ある消化器外科医が、手術室からICUに入室してくる心臓外科患者を見て、“やっぱすげーなー、心臓外科は。”と言っていたのを聞いたことがある。いやいや、消化器外科の方が死亡率が5-10培くらい高いから、君の方がよっぽど重症患者を相手にしているんだよと言ってあげた、心の中で。

もう一つは国レベルのデータベースについて。しかもそれを保険のデータベースとリンクさせる事によって、こういう大事なことがよく分かること。日本だと、国レベルのデータベースもないし、保険診療のデータベースを利用することもほとんどできない。羨ましい限り。

しかーし。
日本にももうすぐデータベースができますよ。
日本集中治療医学会が来年の1月から運用開始する、その名もJIPAD(Japanese ICU PAtient Database)。
DPCのデータとも結合予定で、もう悲しい思いはしないでよくなる(はず)。
楽しみ楽しみ。
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集中治療とは関係ありませんが、

2013年04月28日 | ひとりごと
たまには、こんなのも。

Kokubo Y, Iso H, Saito I, et al.
The impact of green tea and coffee consumption on the reduced risk of stroke incidence in Japanese population: the Japan public health center-based study cohort.
Stroke. 2013 May;44(5):1369-74. PMID: 23493733.


45歳から74歳の日本人82369名を平均で13年間フォローアップし、緑茶とコーヒーの接種頻度と、脳卒中や冠動脈疾患の発生頻度との関係を調査。その結果、緑茶を毎日2-3杯飲むか、コーヒーを毎日1杯飲むと、脳卒中の発生頻度が0.80に減少。冠動脈疾患には影響は無かった。

ま、観察研究ですからね。
それに、いまいちドーズリスポンスもないし。
両方を併用しても(ちょっと言葉が変か)、相乗効果は無いし。

日本人のデーターでこういう結果が出ると、毎日コーヒーを飲んでいる者としては、嬉しい話。
緑茶を何杯も飲むのはちょっと大変だけど、コーヒー1杯なら結構簡単。
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搬送用人工呼吸器による感染伝播

2013年04月24日 | 感染
ちょっと、これ見て。

Schulz-Stubner S, Schmidt-Warnecke A, Hwang JH.
VRE transmission via the reusable breathing circuit of a transport ventilator: outbreak analysis and experimental study of surface disinfection.
Intensive Care Med. 2013 May;39(5):975-6. PMID: 23404473.


あるICUで突然、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が2週間に5例発生した。VREを持ち込んだ患者はすぐに特定できたけど(症例1)、環境培養をしてもどこからも検出されず、何故、4人に広がったのか更に調べてみると、持ち込んだ患者がCTに行く時に使った搬送用人工呼吸器を、その後4例のうち3例は使用していて(症例2-4)、もう1例(症例5)は、症例4の搬送を手伝った医療従事者(多分ナース)が受け持ちだった、と。

この施設では、メーカーの指示通りに細菌フィルターを使用することにより、複数の症例で同じ回路を1週間使い回していた。
細菌フィルターが使われているので、回路の内部は問題がない。じゃあどこかというと、回路の外側。
ベッドとかに置かれるので、それによって広まったらしい。実際、培養で回路の外側からVREが検出された。

そっかー、そういうこともあるんだ。気をつけよっと。

じゃない。

VREが出ているかどうかに関係なく、患者さんに医療機器を使用したら、その後で綺麗にする(消毒剤入りのガーゼとかで拭く)のは標準予防策的に当たり前じゃないの?
ましてや接触感染対策を必要とする菌が検出されている患者さんに使ったら、そりゃ拭くでしょう??

でも、こんなのがICMにレターとして載るくらいだから、みんな、ちゃんとやってないということか。

例えば、エコーとか。内視鏡の光源とか。12誘導とか。除細動器とか。搬送用モニターとか。
いろいろあるね。
拭いてる?
拭きなさい。
拭けよ。
拭け!

きゅあー、人殺しー!
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アプロチニンと心臓手術

2013年04月23日 | 消化器・血液
うーん。
やっぱり、文献読むのは楽しいね。
そんな感じの1週間だった。

Heyland D, Muscedere J, Wischmeyer PE, et al.; Canadian Critical Care Trials Group.
A randomized trial of glutamine and antioxidants in critically ill patients.
N Engl J Med. 2013 Apr18;368(16):1489-97. PMID: 23594003.

重症患者にグルタミン/抗酸化物質の投与は有効か、について検討した、カナダのCTGが主催した多施設RCT。40のICUで人口呼吸管理された臓器不全症例1223例が対象。結果として、抗酸化物質は予後を改善せず、グルタミンは、”予想外に”予後を悪化させた。
グルタミンが入っている胃薬とか、食物繊維とグルタミンが入った商品とかを患者さんに投与したことのある人も少なくないのでは?
ネガティブだけど、ちょっと面白いのでジャーナルクラブ行きで。

Vaahersalo J, Hiltunen P, Tiainen M, et al.; FINNRESUSCI Study Group.
Therapeutic hypothermia after out-of-hospital cardiac arrest in Finnish intensive care units: the FINNRESUSCI study.
Intensive Care Med. 2013 May;39(5):826-37. PMID: 23417209.

フィンランドの21のICUで行われた、院外心停止548症例についての観察研究。57%がshockable(つまりはVfかVT)、43%がnon-shockable(つまりはPEAか心静止)だった。shockable症例の86%に低体温療法が行われ、神経学的予後は低体温群で良好であった。Non-shockable症例では、31%に低体温療法が行われたが、神経学的予後の改善は認められなかった。
現在のガイドラインでは、結構PEA/心停止でも低体温を勧めている感じもするけど、その根拠は乏しく、ちゃんとRCTをやらないとね、という話。

Vignon P, Dequin PF, Renault A, et al.; Clinical Research in Intensive Care and Sepsis Group (CRICS Group).
Intermittent pneumatic compression to prevent venous thromboembolism in patients with high risk of bleeding hospitalized in intensive care units: the CIREA1 randomized trial.
Intensive Care Med. 2013May;39(5):872-80. PMID: 23370827.

フランスの9つのICUで行われた、出血のリスクのある症例に対して、弾性ストッキングと、弾性ストッキングと間欠的空気圧迫(IPC)を併用するかを比較したRCT。407例が対象。その結果、何らかの静脈血栓症が弾性ストッキングのみでは9.2%、IPCを併用すると5.6%に発生した(p=0.19)。肺塞栓は全体で1例にしか発生せず、ほとんどはエコーで見つかった無症候性のDVT。症例数も少ないので有意差も無し。
そもそも、こういう研究がICUでほとんど行われていないことが問題なんだよねー。DVT予防って、ほんと、どうすればいいのか分からない。

Brown RJ, Kumar A, Dhar R, et al.
The Relationship Between Delayed Infarcts and Angiographic Vasospasm After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage.
Neurosurgery. 2013 May;72(5):702-708. PMID: 23313984.

一施設の後ろ向き研究。SAHで、7日目以降にフォローCTが行われ、かつ血管攣縮の評価のために血管造影が行われた、134例が対象。34%に血管攣縮が認められ、そのうち31%(17例)に後期の脳梗塞(delayed cerebral ischemia、DCI)が起こった。攣縮が起こらなかった症例では、DCIは4%にのみ認められた。合計して20症例に29のDCIが起こったが、そのうち28%は攣縮と関係のない部位であった。
この文献、血管攣縮についての歴史も書いてあって、面白い。数十年前にSAH後のDCIが問題になって、それが血管攣縮によるものだという話になって、それ以来ずっと攣縮の予防/治療についての研究が行われてきたけど、最近になって、どうもそれでは予後が改善しないぞ、ということが分かってきている。で、今回の研究は、DCIがそもそも血管攣縮によって起こるとは限らないことを示していて、面白い。
この辺をもっと勉強したい方は、こちらをご覧ください。

本当は他にも紹介したいものがあるのだけど、長くなったので本題に。
最近、メインが原著論文ではないパターンが多くなった気がするが、今回もeditorialで。

McMullan V, Alston RP.
Aprotinin and cardiac surgery: a sorry tale of evidence misused.
Br J Anaesth. 2013 May;110(5):675-678. PMID: 23599511.


心臓外科手術に対する止血剤としてずっと使われていたアプロチニンについての、”悲しい話”のまとめ。

・1987年に、アプロチニンが心臓外科手術の出血を減らすことが偶然に発見された。
・それ以降、(本邦を含め)多くの国で使用されてきた。
・しかし21世紀になり、4つの観察研究と1つのRCTにおいて、アプロチニンが死亡率を上げる可能性が示唆された。
・とどめを刺したのが唯一のRCTであるBART studyで、出血は減らすが、死亡率を上げる(relative risk 1.53)と発表された。
・この結果を元に、各国でアプロチニンが使用中止となった。
・メタアナリシスもいくつか行われているが、当然のことながらBART studyのウェイトが高く、結論は同じ。
・しかし、これらすべての研究で、明らかな問題点が指摘されている(詳細は本文)。
・2011年、Health Canada(カナダのFDAみたいなところ?)がBART studyおよびアプロチニンについてのレビューを改めて行い、アプロチニンのベネフィットはリスクを上回ると結論した。
・それを受けて、2012年2月に、European Medicines Agency(ヨーロッパのFDAみたいなところ?)が同様のステートメントを発表した。

本文には明確に書いていないのだけど、カナダとヨーロッパでは使用可能になっているのかも。
ただ、ここまで悪評が広まると、多くの国では復活しないのでは、というのが結論。

一つ一つの研究を自分で吟味していないので、コメントはできないのだけど。
エビデンスって、ほんとに振り子だよね。
あっちに振れすぎると、必ずこっちに振れる。
特に心外の止血剤については、トラネキサム酸の大量使用による痙攣っていう話題まで出てきたしね。
結構、重要な話。

勘違いなさらずに。
エビデンスなんて、こんな程度のものだから、気にしたって仕方ない、ということではないですよ。
ちゃんと、一つ一つ吟味しましょうね、ということですからね。

日本のアプロチニンはどうなるのかなー?
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治療の中止か継続か

2013年04月18日 | ひとりごと
当直明けの疲労度は、年齢とは関連が無い。
別に、昔に比べて疲れをより強く感じるようになった、とは思わない。

はずだったのだが、
一緒に当直をした、自分よりも仮眠時間の短い若者が元気なのを見ると、ちょっと、自信が揺らぐ。
いや、結構、揺らぐ。

そんな疲れた頭で、帰り道を歩きながらボーッと考えた。

あるラインを超えて重症な患者さんは、ある一定の頻度で存在する。
ICUはそういうところだ。
神経学的な予後が期待できなかったり、
原疾患による余命が限られている状況で急性の臓器不全を発症したり、
適切な治療を行っても改善が乏しかったり。
そんな患者さんに対して、ある人は治療の継続を選択し、ある人は治療の中止を選択する。
この選択は、患者さんの病態に応じて客観的に行われるというよりも、その人の考え方によって行われることが多いように思う。

治療を継続する人は、いつも治療の継続を選択するし、ずっと継続する。
先日の集中治療医学会で、ある医師がこう言っていた。
自分は救命センターがある大学病院の近くにある二次病院に勤務している。重症患者を救命センターに搬送することもあるが、”元”重症患者が救命センターから搬送されてくることもある。”こんなにしてしまうなら、初めからしなければいいのに”と同僚が嘆いているのを聞く事は稀ではない、と。
これに類する意見に対する反論は容易であり、いつも決まっている。
良くなるかどうかは急性期には分からない、それで救われる人も少なくない、だ。
一組の患者さんとその家族が幸運を得るために、何組の患者さんと家族が望ましくない結果を受け入れなければいけないのか。
その比率はどれくらいまで許容されるのか。10対1か、100対1か。
1対1なら、ほとんどの人は許容すると判断するだろう。1000対1ならほとんどの人は許容しないだろう。その間のどこが妥当なのだろうか。

治療を中止する人は、いつも治療の中止を選択するし、すぐに中止する。
こんな研究がある。
Azoulay E, Pochard F, Garrouste-Orgeas M, et al.; Outcomerea Study Group.
Decisions to forgo life-sustaining therapy in ICU patients independently predict hospital death.
Intensive Care Med. 2003 Nov;29(11):1895-901. PMID: 14530857.

フランスの6つのICUでの前向き観察研究。1698例のICU症例のうち、17.4%に治療の差し控えが行われた。死亡についての多変量解析を行ったところ、病前の健康状態、SAPS II、慢性肝疾患、LODスコア、そして治療の差し控えの決定(オッズ比1.887)が独立した因子として残った。
治療の差し控えの判断が患者の重症度に応じて客観的に行われるなら、決定そのものが独立因子とはならないのではないか。医療者の判断そのものが患者の予後に影響する可能性は、否定できない。

BEST kidney studyという重症AKIについての観察研究がある。
その中で、1260名に腎代替療法(RRT)が行われ、そのうち161名のRRTが治療撤退を理由に中止されたが、そのうち5名(3.1%)は病院を生存退院した。また、496名はBUNが著明高値であるなど、通常はRRTが行われる状態であったが、実際にはRRTは導入されず、そのうち168名は治療撤退が理由であった。そのうち12名(7.1%)は病院を生存退院した。
どのような状態で生存退院したかは不明だが、少なくとも何割かは、医療従事者の想像を超えて改善したのだろうと想像される。ということは、治療撤退が決断され、その結果として死亡した症例の中には、治療が継続されていれば回復した症例が含まれていると想像される。
(ちなみに、上記の数字は文献にはなっておらず、今、ざっと計算したものである。)

何が正しいのかは分からない。
一般論として、どうするべきかも分からない。
ただ、症例毎に判断しなければいけないのは当然だし、その判断の理由が、自分はこう思うから、よりも、こういう根拠があるから、の方が聞いていて納得はしやすい。

治療方法の選択をするときの根拠の重要性と、治療の継続/中止の選択をするときの根拠の重要性は、同等であるはずだ。
いつも根拠に基づいて治療方法の選択をすることはできないのと同じように、いつも根拠に基づいて治療の継続/中止の選択をすることもできないが、根拠を求める努力は同様に行われなければならない。
臨床においても、研究においても。

眠い。限界。。。
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脊髄損傷とステロイド

2013年04月16日 | 神経
Neurosurgeryに、脊髄損傷についてのガイドラインが出てる。

March 2013 - Volume 72 - supplement 2
Guidelines for the Management of Acute Cervical Spine and Spinal Cord Injuries


その中の薬物療法のところで、

Level I
* Administration of methylprednisolone (MP) for the treatment of acute spinal cord injury (SCI) is not recommended...There is no Class I or Class II medical evidence supporting the clinical benefit of MP in the treatment of acute SCI. Scattered reports of Class III evidence claim inconsistent effects likely related to random chance or selection bias. However, Class I, II, and III evidence exists that high-dose steroids are associated with harmful side effects including death.

だって。

ま、そりゃそうだ。
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KDIGOのAKI診断基準

2013年04月15日 | 腎臓
先週は、集中治療的には静かな週だった。
メジャー雑誌がないし。

Morrison LJ, Neumar RW, Zimmerman JL, et al.; American Heart Association Emergency Cardiovascular Care Committee, Council on Cardiopulmonary, Critical Care, Perioperative and Resuscitation, Council on Cardiovascular and Stroke Nursing, Council on Clinical Cardiology, and Council on Peripheral Vascular Disease.
Strategies for improving survival after in-hospital cardiac arrest in the United States: 2013 consensus recommendations: a consensus statement from the american heart association.
Circulation. 2013 Apr 9;127(14):1538-63. PMID: 23479672.

院内心停止についての、AHAのコンセンサスステートメント。
最近、NEJMを含め文献がたくさん出ているし。タイミングとしては良いのでしょう。
もしかしたら、ジャーナルクラブで取り上げるかも。

Zangrillo A, Biondi-Zoccai G, Landoni G, et al.
Extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) in patients with H1N1 influenza infection: a systematic review and meta-analysis including 8 studies and 266 patients receiving ECMO.
Crit Care. 2013 Feb 13;17(1):R30. PMID: 23406535.

H1N1インフルエンザに対するECMOについてのシステマティックレビュー。8研究、266名が対象。H1N1インフルエンザと診断された症例の20%がECMOによる治療を受け、人工呼吸開始後中央値で2日でECMOが導入され、10日間使用され、死亡率は28%だった。
ECMOと言えば、INTENSIVISTの最新号の特集がECMO。
絶賛、発売中でございます。

で、メインですが、やっぱこれかなー。
どれもフリーで読めるみたいなので、クリックするとダイレクトにPDFが表示されるはず。

Palevsky PM, Liu KD, Brophy PD, et al.
KDOQI US Commentary on the 2012 KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury.
Am J Kidney Dis. 2013 Mar 14. PMID: 23499048.

KDOQI、つまりはアメリカの腎臓内科医たちが、KDIGOのAKIのガイドラインについてコメント、つまりは”文句”。

James M, Bouchard J, Ho J, et al.
Canadian Society of Nephrology Commentary on the 2012 KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury.
Am J Kidney Dis. 2013 Mar 18. PMID: 23518195.

カナダの腎臓内科医たちが、KDIGOのAKIのガイドラインについてコメント、つまりは”文句”。

Andrew S. Levey, Adeera Levin, John A. Kellum
Definition and Classification of Kidney Diseases
Am J Kidney Dis. 2013 Mar 18

KDIGOのAKIガイドラインの作成者たちの”弁明”。
特に、両方の”文句”に記載されていた、AKI診断基準とAKDの概念について。

原文が読めるし、KDIGOのAKIガイドラインに興味のある方は、是非読んでいただいて。
内容の解説は、やーめたっと。

数ヶ月前のこのブログで、ヨーロッパの腎臓内科医たちのコメント、つまりは”文句”が載っていた話をした。

あまり、見ない気がする。
ある国際団体がガイドラインをその筋ではメジャーな雑誌に発表して、それについていろいろな団体がコメントをこれまたその筋ではメジャーな雑誌に発表する、というのは。

”弁明”にも書いてあるのだが、KDIGOの"G"はGlobalを意味し、ガイドラインの作成は国際団体によって行われたけど、それを導入するのはLocalな団体が行うので、自分たちの国/地域ではこう考えるというコメントが出るのは当然かもしれない。

でもねー。
それだけか?
”権力争い”的なものを感じるのは気のせいか?
十分な根拠だけで作られるガイドラインなんてあるわけないんだから、文句をつけようと思えばいくらでもつけれる。
それを、誰でも読める国際雑誌上でやられてもねー。
ふむふむ、そういう視点があるか、とも思うけど、なんかしっくりこない。

大人って。。。
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ティアニー先生とECMO

2013年04月09日 | ひとりごと
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02948_02

うーん、やっぱりティアニー先生はすごいわねー。
学生のときは自分が医者として危なっかしいと思ったので、研修医になってから1週間に100時間働いて、医者としての自信を持ったんだって。

ちなみに僕の場合は、
学生の頃は試験前日しか勉強せず(みんなそう?)、臨床実習ではある教授に”study hard!”と怒鳴られ、卒業試験と国家試験はギリギリ通過して医者になって、当時は医者になったとたんに主治医になったので、うわっ、このままだと患者さんが死んじゃうぞと思って、やっと勉強し始めた。

とは言っても、本屋さんで商業雑誌を買って読むくらい。
医者4年目で集中治療医の道を選んで、日本の商業雑誌とCritical Care Medicineを年間購読して、その内容の違い(治療の違い)に驚いて、本当に外人はこんなことしているんだろうかと疑問に思い、留学して、あっ、本当にしているんだ、と気がつき、文献って読まないといけないんだなーと思うようになった。

ということで、みなさん、文献読みましょう。

あれ?
数日前のブログの内容と矛盾してるぞ?

そっか。
良いサマリーがあれば、そっちを読めばいいのかも?
IntensivistとCritical Care Medicineを読んで、内容が違うとは思わないもんね。
いい時代になったものだ。

(ここから宣伝)
そんなIntensivistから、最新号が出ましたよ。
今回は、ECMO特集。
ECMOって、なかなか良い本がなくて、勉強するのが難しいと思っている方も多いのでは?
そんな方にはぴったり!

さらに、
JSEPTICのホームページでECMOについてのアンケートもやってます。
4月20日が締め切りなので、ご参加よろしく!
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読んじゃダメ

2013年04月08日 | その他
いつもは、一週間で貯めた文献をざっと見て、メインはどれにしよーかなーと考える。
すぐに決まるときもあるし、悩むときもある。
でも今回は、タイトルを読んだ時点で、つまりは他の文献と比較もしなければ中身を読みもしないうちから、メインが決定した。

メインの前に、文献紹介。心外の輸血シリーズから。

Jin R, Zelinka ES, McDonald J, et al.; Providence Health & Services Cardiovascular Disease Study Group.
Effect of hospital culture on blood transfusion in cardiac procedures.
Ann Thorac Surg. 2013 Apr;95(4):1269-74. PMID: 23040823.

アメリカの12の病院の43人の心臓外科医が3年間で手術した、5744名のCABG症例。輸血の頻度は施設によって大きく異なったけど、同じ施設の術者の間では似通っていた。術者の影響が30%、病院の影響が70%。
Effect of hospital culture、研究しようと思えば、いろいろな話題がありそうだ。

LaPar DJ, Crosby IK, Ailawadi G, et al.; Investigators for the Virginia Cardiac Surgery Quality Initiative.
Blood product conservation is associated with improved outcomes and reduced costs after cardiac surgery.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2013 Mar;145(3):796-803. PMID: 23414992.

これまたアメリカの病院17施設。5年間で14259例のCABGが行われたのだけど、途中から輸血を減らすためのガイドラインを作り、その前後でいろいろ比較。ガイドライン作成後、術中および術後の輸血が減り、肺炎/長期の人工呼吸/腎傷害が減少。多変量解析で、ガイドライン作成後の死亡のオッズ比は0.57。
輸血の施行と予後とは関連があるよ、という研究はいろいろあるけど、輸血を減らす努力をしたら予後が改善したよ、というのは珍しいのでは。Before-after研究なので、結果の評価は難しいけれど、17施設だからね。

Wu AS, Trinh VT, Suki D, et al.
A prospective randomized trial of perioperative seizure prophylaxis in patients with intraparenchymal brain tumors.
J Neurosurg. 2013 Apr;118(4):873-83. PMID: 23394340.

テント上の脳腫瘍(グリオーマかメタ)に対する開頭腫瘍摘出術後に、フェニトインを7日間予防投与するか、何もしないかでRCT。一施設研究。もともとは142例を対象とする予定だったけど、このままやっても有意差が出ない確率が99.7%あると判明した時点で途中終了(とは言っても123例)。術後30日以内に痙攣を起こしたのはフェニトイン群が10%、経過観察群が8%。臨床的に意義のある痙攣は2例と1例のみ。フェニトイン群で合併症が18%に発生。
そもそも臨床的に問題となるような痙攣は3%にしか発生せず、フェニトインに予防効果はなく、合併症だけ起こった、という結果。それ以前に、脳腫瘍の予防投与って世界中でやられてきたというのに、この程度の研究しかないことに驚き。

日本救急医学会DIC 委員会
第三次多施設共同前向き試験結果報告. 急性期DIC診断基準で診断された敗血症性DICに対するアンチトロンビンの効果
日救急医会誌. 2013; 24: 105-13
敗血症性DICに対するアンチトロンビン(ATIII)についてのRCTの結果が発表されました。
急性期DICスコアが4点以上で、ATIII値が50-80%の敗血症症例58例が対象(13施設、約4年間)。治療群では30IU/kgのATIIIを3日間投与。基本的にそれ以外のDIC治療は禁止(ただし3日間のみ)、ガベキセートは許可された。治療群でDICスコアが有意に改善し、day3でのDIC離脱率は対象群の2.5倍。28日死亡率は13.3%と10.7%(p=1.000)、病院死亡率は16.7%と21.4%(p=0.744)。28日死亡率が有意差を示すためには、4900例が研究対象となる必要があると試算された。
何はともあれ、日本の投与量でATIIIのRCTが行われたのはこれが初めて。素晴らしい。

で、即決されたメインです。

Chong CA.
Don'T read this article.
Ann Intern Med. 2013 Apr 2;158(7):566-7. PMID: 23546571.


1ページちょっとのエッセイ。参照文献もなし。
でもタイトルがいい。
見ちゃダメッと言われたら見たくなる。押すな押すなと言われたら押すのがルール。
内容は、読んでない文献について語るにはどうしたらいいか、について。

まず、この本が元になっています。
読んでいない本について堂々と語る方法
ピエール・バイヤール


で、このエッセイの著者は、この話を医学文献に当てはめた、と。
以下、その要旨(一部、意訳)。

Step 1:読んでないからと罪の意識を持つな。
・世の中には文献がたくさんある。
・いくつかの文献を深く読むよりも、全体を理解することにエネルギーを使うべき。
・EBM信奉者たちは原文を批判的に読めと言うが、そんな話は聞くな。
・深い知識よりも広い知識の方が博識に見られる。

Step 2:堂々と他の人のサマリーを読め。
・読んでない文献について何かを知らないと話せないので、JournalWatchとか、文献の総説を読む。
・他の人が書いたサマリーをしっかりと読めば、批判的吟味をした気分になれる。

Step 3:その文献が発表された雑誌の名前、どんな感じの研究か、レビューアーの感想について記憶しろ。
・”JAMAに死亡率が減るっていう後ろ向き研究が出てたけど、所詮は後ろ向きだもんね”とか言えれば十分。
・雑誌名を出すと、まるでいつもその雑誌を読んでいるかのように思われる。
・その文献を読んだ人ですら、おっ、こいつやるなと思ってくれる。その人たちも結局は文献の一部しか覚えていないから。
・”忘却の海に浮かぶ島のようだ”

Step 4:読んでいない文献について語るときは堂々としていろ。
・自分の上司がある研究の症例数と尤度比について引用しているのを聞いて、畏敬の念を感じたものだ。
・でも実際にそういう人が覚えていることは文献のだいたいの要旨だけ。
・”特定のサブグループには有効かもしれないからまだ分からないよねー”なんて言えば、バッチリ。

Step 5:不測の事態が起こってもパニックを起こすな。
・ごく稀に、その文献について本当に深く読んだ人に語ってしまって、自分に対して知的な挑戦をしてくることがある。
・そういう時は、相手に意見を聞くことによって、相手を褒める機会にしよう。
・”あの研究に致命的な欠陥があるって思った?”
・自分が賢くって意見を求められると思うと、誰でも嬉しい。
・もしくは、もっと危険だけど自分の優位性を維持できる方法として、その文献に関連した研究(ちらっと見ただけ)について質問してしまうという手もある。
・”最近のNEJMのあの研究についてはどう思った?”
・もしその文献すら読んでいたら、本物に立ちふさがるのはやめよう。

”さあ、文献をざっと眺めて、読んでいない文献について語って自分の同僚を感動させよう!”

さて。
以上が要旨。
いやー、ワロタ。
まさかアナルズ読んでて笑わされるとは。
JSEPTICのセミナーで泣かされた時と同じくらいの驚き。

どう考えるかは、あなた次第。
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メッセージは同じなのに、

2013年04月03日 | ひとりごと
なんなんだ、この格の違いは。

泌尿器科医は感染症に強いか
専門医って何だ?

この大きな差は、どうかしたら縮まるのだろうか?

時々、
”どうしたら英語の文献を早く読めるようになるの?”
と聞かれることがあるのだけど、そういうときは必ず、
”どうしたらマラソンを早く走れるようになる?”
と聞き返します。

それと同じか?

あっ、それじゃ差がどんどん開くじゃん!

ちなみに、
集中治療医として、感染症医とリハビリテーション医には親近感を感じます。

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