Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

慈恵ICU勉強会 160510と160517と160524

2016年05月31日 | ICU勉強会
10日 ICUにおける接触感染対策の効果と弊害
17日 Sepsis-3
24日 重症くも膜下出血の管理


まとめて3つアップ。
この中でオススメは10日の接触感染対策の話かな。どんな根拠があるのかちょっと調べてみた、という内容。
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RRTの開始のタイミング

2016年05月30日 | 腎臓
NEJMに出たと思ったら、今度はJAMA。
以前は専門分野ということになっていたので、ちょっとはコメントしないといけないかなと、勝手に思いました。

Gaudry S, Hajage D, Schortgen F, et al.; AKIKI Study Group.
Initiation Strategies for Renal-Replacement Therapy in the Intensive Care Unit.
N Engl J Med. 2016 May 15. [Epub ahead of print] PMID: 27181456.

は簡単に紹介済み
それにしてもAKIKI studyって、なんて読むんだろう。あっきっき?

Zarbock A, Kellum JA, Schmidt C, et al.
Effect of Early vs Delayed Initiation of Renal Replacement Therapy on Mortality in Critically Ill Patients With Acute Kidney Injury: The ELAIN Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016 May 24;315(20):2190-2199. PMID: 27209269.

一施設RCT。KDIGO stage 2で血中NGALが150ng/ml以上のAKI患者231例。すぐにRRTを開始するか、KDIGO stage 3になったら開始するかで比較。Primary outcomeは90日死亡率。Early群の100%、Late群の91%にRRTが行われ、ランダマイズされてからRRTが始まるまでの時間はEarly群で6時間、Late群で25時間。90日死亡率は39.3% vs. 54.7%でp=0.03。

ほっほっほ。
こんなに発表が近いのに、結果は真逆ですよ。面白いねー。

簡単なコメントとしては、JAMAの研究は、
・一施設研究であるあり、エビデンスレベルがNEJMより低い。
・Late群のRRTの施行頻度が高い。RRTの早期導入のデメリットはそもそもRRTを導入する必要のない人にもRRTをしてしまうことなのに。
・Early群と導入時間が20時間程度しかない。それで死亡率がこんなに違うわけがない。
なので、さすがにNEJMの結果に分があると考えるのが普通でしょう。

それだけだとつまらないので。
・NGALを用いるとRRTの必要性が予測できる(なんと90%の精度)。ただしStage 3だけで始めちゃうんだけど。
・Stage 2で開始すると予後が改善するのかも。Earlyだもの、それくらい早くないと。
くらいの追加コメントをしておこうかなと。

ちなみに、どちらの研究も、RRTの終了基準のところに、尿量400-500ml(利尿剤なし)、尿量2000-2100ml(利尿剤あり)と記載されているけど、その根拠は書いてない。
それはこれです。

その通り、単なる根拠のない自慢。


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心不全と腎機能低下

2016年05月29日 | 腎臓
ちょっと前のJACC。

Hanberg JS, Sury K, Wilson FP, et al.
Reduced Cardiac Index Is Not the Dominant Driver of Renal Dysfunction in Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 2016 May 17;67(19):2199-208. PMID: 27173030.


PACのレジストリとRCTのデータを利用。心不全で入院し、PACが挿入された575例の、心拍出量と腎機能の関連について検討。クレアチニン、BUN、eGFR、クレアチニン/BUN比のどれも心拍出量との関連は乏しく、少しだけ逆相関関係(心拍出量が多いほど腎機能が悪い)が見られた。

低血圧とか、高CVPとか、ホルモンとか、腎機能に与える因子はたくさんある。
敗血症性のAKIはショックが原因、心不全の腎機能低下は低心拍出量が原因、と以前はなんとなく思われていたけれども、実際は違うんだよね。

そういうのって、他にもたくさんある気がするな。乳酸とかね。異常を見つけた時の対応が変わりうるし、臨床研究の介入の仕方も変わる。乳酸を下げるように補液とかで介入するって、ちょっと変だもんね。
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今月の緑雑誌

2016年05月28日 | ICU・システム
ICUのシステムに関連した文献が多かった。

藤原 直樹, 制野 勇介, 八坂 有起, et al.
小児集中治療専従医配置が患者予後に与えたインパクト
日集中医誌 Vol. 23 (2016) No. 3 p. 301-305


武田 親宗, 美馬 裕之, 川上 大裕, et al.
ICU再入室に関する危険因子の検討
日集中医誌 Vol. 23 (2016) No. 3 p. 306-311


委員会報告
心臓疾患集中治療室(CCU)の現状に関するアンケート調査報告
日集中医誌 Vol. 23 (2016) No. 3 p. 365-369


本邦における集中治療への関心や参加者が日々増えている、と好意的に考える。

最後の報告の最後の結果はとくに興味深い。
”CCUの患者管理における集中治療専門医の役割について尋ねたところ,「集中治療専門医との連携が望ましい」が最も多く 49%,次いで「循環器専門医のみで管理可能である」が 41%,「循環器専門医が集中治療専門医の資格を取得するのが望ましい」が 8%であった。”

綺麗に五分五分。
10年前に同じ質問をしたらどうだったのか。
10年後に同じ質問をしたらどうなるのか。

ね?
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ICU患者の家族についての研究

2016年05月27日 | 終末期医療
最近、すごく多い。
ここ2週間でダウンロードした分だけでもこんなにある。

Cameron JI, Chu LM, Matte A, et al.; RECOVER Program Investigators (Phase 1: towards RECOVER); Canadian Critical Care Trials Group.
One-Year Outcomes in Caregivers of Critically Ill Patients.
N Engl J Med. 2016 May 12;374(19):1831-41. PMID: 27168433
.

White DB, Ernecoff N, Buddadhumaruk P, et al.
Prevalence of and Factors Related to Discordance About Prognosis Between Physicians and Surrogate Decision Makers of Critically Ill Patients.
JAMA. 2016 May 17;315(19):2086-94. PMID: 27187301.


Garrouste-Orgeas M, Max A, Lerin T, et al.
Impact of Proactive Nurse Participation in ICU Family Conferences: A Mixed-Method Study.
Crit Care Med. 2016 Jun;44(6):1116-28. PMID: 26937860.


Chiarchiaro J, White DB, Ernecoff NC, et al.
Conflict Management Strategies in the ICU Differ Between Palliative Care Specialists and Intensivists.
Crit Care Med. 2016 May;44(5):934-42. PMID: 26765500.


Liput SA, Kane-Gill SL, Seybert AL, et al.
A Review of the Perceptions of Healthcare Providers and Family Members Toward Family Involvement in Active Adult Patient Care in the ICU.
Crit Care Med. 2016 Jun;44(6):1191-7. PMID: 26958747.


下河邊 美香, 星 拓男, 柏 旦美, et al.
ICUにおける家族看護の満足度:看護師と家族に対するアンケート調査から
日集中医誌 Vol. 23 (2016) No. 3 p. 359-363


コピペするだけで大変だ。
大事な話題だということはもちろんわかるのだけど。
あまのじゃくの性格が、最近の流行りを認識すると拒絶したくさせる。
困ったもんだ。

そうだ、ジャーナルクラブしよう。
代わりに読んでもらえるもんね。
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知識を臨床に導入するのは有害かもしれない

2016年05月26日 | EBM関連
McGuigan PJ.
Reliable critical care: how knowledge translation can result in patient harm.
Br J Anaesth. 2016 Jun;116(6):888-9. PMID: 27199328.


Tidal volumeを減らす方法について検討したoriginal article、についてのeditorial、に対する短いレター。
全部追っかけるわけにもいかないので、このレターの内容だけ紹介。

知識、つまり新しいエビデンスを臨床に応用するのが遅いと言うけれど、NEJMに出るような研究だって、後で違うっていう話になるじゃないか。IITやAPCがいい例だね。IITを早期に導入していたら、年間1200例の人工呼吸患者を管理している施設では96例の死亡増加が起こる計算になる。同じ期間にtidal volumeを下げるpracticeを導入していたら60例の死亡減少が起こる計算になる。とても単純な試算だけど、知識を早期に臨床に導入しないほうが合計の死亡率は低くなる、という可能性もあるんじゃないか?

"Clinicians may make the conscious decision to delay implementation of evidence so that they do not repeat the mistakes of the past."

以前誰かが言っていた。
Phase IからIVまでのどのレベルで、phase IIIのRCTがいくつでた時点で、その知識を臨床に導入するか。そのタイミングについての知識は存在しない。

そんなこと言ってたら何もできないじゃんか?
そうでもないよ。一つ一つの知識について真剣に考えればいいんだよ。

真剣に考えると有益であるという根拠はあるのか?
さよなら。
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今年もATSの時期

2016年05月18日 | その他
なんですね。
行ったことないから実感がないけど、そういや去年も5月に研究がいっぱい出てたな。
今年は集中治療関連のデカイ研究は3つみたいだ。

Effect of Aspirin on Development of ARDS in At-Risk Patients Presenting to the Emergency Department
救急外来でARDSになりそうな400例にアスピリンを投与するとARDSを予防できるかについて検討した多施設RCT。7日後のARDSの発症率はアスピリン群が10.3%、コントロールが8.7%
だった。

Effect of Noninvasive Ventilation Delivered by Helmet vs Face Mask on the Rate of Endotracheal Intubation in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome
NPPVを必要とするARDSに対し、NPPVをマスクでするかヘルメットでするかで比較した一施設RCT。当初は206例の予定だったけど、挿管を必要とする率がヘルメット群であまりにも低かった(18% vs. 61%)ため82例で中止になった。

Initiation Strategies for Renal-Replacement Therapy in the Intensive Care Unit
人工呼吸もしくは昇圧剤の投与を必要とし、KDIGO分類でstage 3になった患者さんに対し、すぐにRRTを始めるか、明らな適応(著明な高K血症、代謝性アシドーシス、BUN>112など)が起こるまで待つか、で比較した多施設RCT、N=620。60日死亡率は48.5% vs. 49.7%で同じ。Late群の約半分はRRTを必要とせず、カテ感染も少なかった。

詳細はジャーナルクラブにて。

最後のやつは、AKIの世界ではドーズの次に来た話題。
まあやっぱりかという結果だけど、まだまだ多施設RCTがいくつも発表される予定らしいので、結論は急がない。

真ん中のやつなんか、もっと結論は急がない。
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低マグネシウム血症の補正

2016年05月14日 | その他
Barbosa EB, Tomasi CD, de Castro Damasio D, et al.
Effects of magnesium supplementation on the incidence of acute kidney injury in critically ill patients presenting with hypomagnesemia.
Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1084-5. PMID: 26928037.


ICMのレター。
無症候性の低Mg血症142例に対し、48mEq/日のMgを3日間投与するかしないかでRCT。Primary outcomeは(多分)AKIの発生頻度。昇圧剤の使用頻度とAPACHE IIに二群間で差が認められたが、その差を補正してもAKIの発生頻度がMg投与群で低かった。しかも死亡率もMg投与群で低かった。

なぜ興味を持ったかというと。
低Mg血症を補正すると良いことが起こるかもしれないことを示した、からではなく。

143例のRCTでレターかい!

というところ。
きっと、二群間に明らかな差異があったので、original articleでは難しいけどレターなら載せてあげるよと編集者から言われて、それに従ったんだと思う。
すごいなー、ICM。自信がみなぎっている感じがする。さすがImpact factorでCCMを抜いただけのことはある。
いよいよICMの投稿は難しくなった。
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新しい敗血症の診断基準

2016年05月13日 | 感染
Chestのeditorial(になっているけど、別にoriginal articleに付随しているわけではないので、レター的な感じ)。

Simpson SQ.
New Sepsis Criteria: A Change We Should Not Make.
Chest. 2016 May;149(5):1117-8. PMID: 26927525.


タイトル通り。
新しい敗血症の診断基準に変えちゃダメだ、という意見。

・多くの臨床医がこの新しい基準は患者予後に悪影響を与える可能性があると懸念を表明している(ただしこのコメントに対する参照文献はなし)。
・現在の診断基準で多くの命が救われたのに、それを変えるなんて賢くない。
・敗血症の8人に1人がSIRSの基準を満たさないと言うが、裏を返せば87.5%の感度があるということだ。
・SOFAスコアは広く使われていると言うが、少なくともアメリカでは大学病院とかだけでしか使われていない。
・もっと広い範囲の専門家、敗血症診療の最前線で働く医師を含めて会議をやり直したほうがいい。

個人的にはSIRSよりSOFAの方がマシだろ、と思うので、賛同はできないのだけど、自分の反対意見をちゃんと文章にして発表する人、そしてそういう意見を掲載する雑誌は好きだなと思うので、紹介。
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アナルズのUpdate

2016年05月06日 | ICU・システム
Annals of Internal Medicineの今週号に、内科系のいろいろな専門分野についての2015年のエビデンスレビューが載っている。こんな感じ。

Update in Critical Care Medicine: Evidence Published in 2015
Update in Gastroenterology and Hepatology: Evidence Published in 2015
Update in Geriatric Medicine: Evidence Published in 2015
Update in Hematology and Oncology: Evidence Published in 2015
Update in Hospital Medicine: Evidence Published in 2015
Update in Nephrology and Hypertension: Evidence Published in 2015
Update on Novel Drugs for Primary Care Practice
Update in Pulmonary Medicine: Evidence Published in 2015
Update in Rheumatology: Evidence Published in 2015
Update in Women's Health: Evidence Published in 2015

おお!
集中治療が一番上じゃん!

と単純に喜んで、その数秒後に、なんだアルファベット順じゃんか、と気がついた。。。

まあ、それはいいんですけど。
内容は、敗血症、肺炎、集中治療管理、気管切開について、著者が重要だと思った合計10の文献の紹介。
復習として使うも良し、知らない文献があるかどうかのチェックとして使うも良し。単純にお勉強するも良し。
ご自由にお使いください。
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