goo blog サービス終了のお知らせ 

Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUにおける腎代替療法:保存的戦略から制限的戦略へ

2025年02月02日 | 腎臓
Chaïbi K, Dreyfuss D, Gaudry S.
Renal replacement therapy in ICU: from conservative to restrictive strategy.
Crit Care. 2025 Jan 22;29(1):40. PMID: 39838403.


提案の部分をそのままコピペ。
"Given the safety of a conservative RRT initiation strategy, we suggest extending this concept to a new approach (called restrictive RRT strategy) that could potentially solve the hot topic questions of RRT dosing and RRT weaning. This approach would consist in the suspension of RRT after 3 days. At this moment, metabolic abnormalities that mandated RRT initiation would no longer be present and the cause of AKI would be, in most cases, treated (for instance by controlling sepsis or hemorrhage). Then the question would be the same as before the initiation of the first RRT session i.e., does the situation require starting RRT or can it be delayed until a conservative RRT initiation criterion is observed again?"
「 保存的RRT開始戦略の安全性を考慮すると、我々はこの概念を新しいアプローチ(制限的RRT戦略と呼ばれる)に拡張し、RRT投与とRRT離脱という話題の問題を解決できる可能性があることを提案する。このアプローチでは、3日後にRRTを中止する。この時点で、RRT開始を義務づけた代謝異常はもはや存在せず、AKIの原因も、ほとんどの場合、(例えば、敗血症や出血のコントロールによって)治療されているはずである。つまり、RRTを開始する必要がある状況なのか、それとも保守的なRRT開始基準が再び観察されるまで延期できるのか、ということである。」

3日経つと、確かに患者さんの状態は改善していることは多いが、そうとは言えない状況も少なくないし、状態が良くなったら今度は除水を考えたくなるから、この方法が画一的に実施できるかどうかはちょっと疑問。

でも、確かに、と思う部分はある。
早期RRTにしても、早期ECMOにしても、non-renal indicationにしても、過剰な物質の除去や肺保護というメリットが、体外循環という不自然で無茶な行為によるデメリットを上回るか、が問題で、多くの研究でプラマイゼロ、有益でも有害でもないという結果になっている。それなら体外循環の時間自体を短くしたらどうですか?と言われると、ちょっと納得してしまう。

Less is moreが流行の時代。
RRTもドーズではなく時間をlessにしたらどうか、という提案は検討の価値があるのではなかろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

CKRT vs. CRRT③

2024年11月30日 | 腎臓
この文献を見て思い出し、3回目の調査をすることにした。
ちなみに1回目はこちら2回目はこちら

PubMedの検索の仕方は単純。
1つ目:"kidney replacement therapy" [ti] vs. "renal replacement therapy" [ti]
2つ目:"continuous kidney replacement therapy" [ti] vs. "continuous renal replacement therapy" [ti]
3つ目:1つ目から2つ目を引いたもの



分かったこと。
・そもそもRRT関連の文献数が減っている(COVIDインフレ以降も減少が継続)
・KRTの文献数は維持〜少し増加
・そのためKRTの割合が徐々に増加
・しかしcontinuousではCKRTの明らかな増加は見られず、マイナーなまま
・結果的に持続以外のKRTの割合が明らかに増加、2024年ではほぼ3分の1

単純に持続は集中治療で間欠は腎臓内科とすれば、二集団で用語の使い方が変化してきているのかも。
大したことではないけど、あまり良いことでもない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

入院患者の急性腎傷害に対する早期の個別化された推奨

2024年11月10日 | 腎臓
電車の中でこの文献を読んで、30分くらいボーッと考え事をしてしまった。
でも、地味だし、結果はnegativeだし、きっと興味を持つ人は少なそう。抄読会とかにも選ばれないだろうから、気になったこと、考えたことをズラズラ書いてみようかな、と。

Aklilu AM, Menez S, Baker ML, et al.; KAT-AKI Team.
Early, Individualized Recommendations for Hospitalized Patients With Acute Kidney Injury: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2024 Oct 25. Epub ahead of print. PMID: 39454050.


まずAKI alertの効果について。
これはつい最近メタ解析が発表されている。結果を簡単にまとめると、
・13研究、そのうちRCTは6つ。今回の研究は含まれていない。
・AKI alertはAKIについてのカルテ記載を増やし、腎臓内科へのコンサルトを増やし、アラート後のNSAIDの使用を減らすが、
・AKIの進行を遅くするかもしれない、程度の効果で、
・死亡率、病院滞在日数、RRTの必要性などには影響しない。
という残念な結果。

今回の研究全体について。
AKI alertの多くは、自動でAKIを診断してカルテ画面にアラートを表示するだけだけど、今回は、腎臓内科医と薬剤師が平日の日中に専任?になり、アラートが出た1日平均20人のカルテを読んで、AKIの評価、水分出納、カリウム、酸塩基、薬剤の変更について推奨を記載するいう、念の入った介入をしている。にも関わらず、primary outcome(AKIの進行、RRTの必要性、死亡)は19.8% vs. 18.4%と、減るどころか少し増えている。

今回の研究の介入について。
表3にまとまっている。血液検査や尿検査やCXRが増えて、補液や利尿は変わらず、カリウムや酸塩基に関連した介入も変化なく、薬剤の変更や中止などが有意に多く行われた。

無作為化について。
Double blindなので、推奨を書く医師・薬剤師も自分の書いた記載が実際にカルテに載るかは分からない。でもどういう訳か、介入群の方がAKIの一般的な評価と薬剤変更についての記載が有意に多い。正しく盲検化されていたのか疑問。ざっと読んだ限りは本文にも記載なし。一人の患者に対して複数回のアラートが出るので、過去のカルテ見ちゃえばバレそう。それに、「50%の確率で誰も読まない」と思うと、やる気に影響しないのだろうか。そうすると質も?

効果がなかった理由について。
記載されているのは、
・検査してもAKIを良くしない。
・平日の日中のみでは効果が乏しい。
・担当医がカルテをタイミングよく読む必要がある。
・患者さんを実際に診察していない。
・検査の推奨はしやすいし、それを実行するのも簡単だけど、介入を勧めるのは気が引けるし、他の人に言われてもウザい。

ほーら、いろいろ考えてしまうでしょう?
・AKIアラートは無効なのか?
・そもそもアラートは全般的に有効であり得るのか?
・AKI発生後にAKIの予後を変えることは不可能なのか?
・人対人の介入は色々な意味で難しい。それはRRSやtele-ICUも同様。
・無作為化も難しい。
こんなことを考えていると、30分や1時間はすぐに経ってしまう。

もちろん、考えても結論は出ない。


タイトル:「もちろん、考えても結論は出ない。」by chatGPT 4o
なんかいつもと違う。抽象的だわ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

労作性横紋筋融解症の入院患者におけるAKI

2024年10月24日 | 腎臓
地味に面白い。

Sabouri AH, Yurgionas B, Khorasani S, et al.
Acute Kidney Injury in Hospitalized Patients With Exertional Rhabdomyolysis.
JAMA Netw Open. 2024 Aug 1;7(8):e2427464. PMID: 39136944.


労作性横紋筋融解症で入院した200例。そのうちAKIは8.5%で発生。AKI発症の有無で2群に分けて比較して分かったこと:
・褐色尿はAKIの発生と全く関係がない
・入院時のCKもピークのCKもAKIの発生と全く関係がない
・AKI症例は入院時にすでにCrが上昇している

CKの値を比較した箱ヒゲ図が綺麗(Figure 2)。

よく知られていることですが、CKはAKIの原因物質ではないので、CKが上昇した時にはすでに腎傷害は起こっていて、CKが上昇してから”予防”してもほぼ効果はない。でも何もやっていないと誰かがきっと文句言うから、補液だけちょっと多めにしていればOKでは。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

腎臓保護のためのアミノ酸静脈内投与(PROTECTION Study)

2024年06月13日 | 腎臓
おお、NEJMにAKIについてのポジティブな文献が出た。しかも著者にR. Bellomoって書いてある。これは読まねば。でも前回のコメント単なる素人発言だったようで、さすがに今回は素人じゃないと思いたいのだけど、ちょっと自信ない。
ちなみに、てっきりANZICS-CTGかと思いこんで読んでいたのだけど、なんか書き方がいつもと違うと思ったら、イタリアでした。

Landoni G, Monaco F, Ti LK, et al.; PROTECTION Study Group.
A Randomized Trial of Intravenous Amino Acids for Kidney Protection.
N Engl J Med. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38865168.


確かにAKIの発生は減っている(26.9% vs. 31.7%)。Stage 3は半分になった(1.6% vs. 3.0%)。でもRRTの必要性は有意ではなく(1.4% vs. 1.9%)、その他の指標(MV期間、ICU在室期間、死亡率、尿量、長期の腎機能)には有効そうなシグナルすら見えない。

この研究を分かりやすくまとめると、「予定の心外手術患者に手術開始からICU退室までアミノ酸を大量(プロテアミン4袋/日、モリヘパミン5袋/日)投与すると、一時的にGFRが上昇してクレアチニンがday 2で平均0.05mg/dl下がる(Figure S2)が、いわゆる腎保護効果と呼べるほどではなく、患者予後には影響しない。」

Abstractのconclusionだけ読んだときは、「おお、心外術後管理が変わるのか?」と一瞬ドキドキしたのだけど、そうはならなそう。
ただしCKD stageによって効果は変わらない(Figure S5)ようなので、症例によってはRRTの予防が可能かもしれない。でも、そのためにPN用のアミノ酸製剤を40ml/hrでずっと投与する気になる人はいるのかな?

なんか普通でつまんない評価になってしまった気がする。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Septic AKIに対する遺伝子組換えALPの第3相試験

2024年01月24日 | 腎臓
Pickkers P, Angus DC, Bass K, et al.; REVIVAL investigators.
Phase-3 trial of recombinant human alkaline phosphatase for patients with sepsis-associated acute kidney injury (REVIVAL).
Intensive Care Med. 2024 Jan 3. Epub ahead of print. PMID: 38172296.


とても大事なRCTなので、きっといろいろなところで勉強会が開かれるでしょうから、ここでは個人的な感想を徒然に。

・執筆者のメンツがアベンジャーズ。日本のエースもいるし。
・結果がポジティブなPhase IIはJAMA、ネガティブなPhase IIIはICM。Early stoppingだし、仕方ないけど。
・腎臓には良いことが死亡を改善するとは限らない、がここでも。
・とはいえ、もともと血圧が高い人は血圧高めの方がいいかもとか、重炭酸を投与するとRRTが減るかもとか、だんだんAKIに対する介入が増えてきたのは喜ばしい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手術室における酸塩基分析:ベッドサイドでのスチュワート・アプローチ

2023年11月29日 | 腎臓
メジャー雑誌でStewartという単語を久しぶりに見たかも。

Story DA.
Acid-Base Analysis in the Operating Room: A Bedside Stewart Approach.
Anesthesiology. 2023 Dec 1;139(6):860-867. PMID: 37934110.


自治さいたまのカンファでは、もう”アニオンギャップ”という単語は出てこず、普通にStewartを使ってくれるようになった。新しい文献を見かけなくなったのも、それだけ国際的にも普通になった、ということではなかろうか。

この文献にも計算方法が書いてあるけど、リンがないのとアルブミンの単位が違うので、自治さいたまの計算式をお教えします。

①乳酸の正常値(1mEq/L)より大きい分が乳酸アシドーシス。
②[Na+] - [Cl-]を計算、正常値は36mEq/L。この値より小さい分が高Cl性アシドーシス。
③リンは1mg/dlで0.6mEq/L (3.5mg/dlを基準、プラスならアシドーシス)。アルブミンは1g/dlで2.5mEq/L (4g/dlを基準、多くはマイナスになるのでアルカローシス)。

慣れれば1分で、例えば正常血糖性のケトアシとかだったら、一発でケトンの量を暗算できるよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

CrとCys-Cに基づく推定値の間に不一致がある場合は?

2023年10月04日 | 腎臓
Fu EL, Levey AS, Coresh J, et al.
Accuracy of GFR Estimating Equations in Patients with Discordances between Creatinine and Cystatin C-Based Estimations.
J Am Soc Nephrol. 2023 Jul 1;34(7):1241-1251. PMID: 36995139.


大きく乖離した時は平均を取ると結構正しい値になるよ、という研究。
ICUの患者が対象じゃ無いけれど、悪い提案では無いのかも。少なくとも結果は綺麗。

過去ログはこちらから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

CRRTにおける抗凝固薬の選択肢についてのネットワークメタ解析

2023年09月29日 | 腎臓
いろいろあって、気がついたら読んでいない文献のPDFの数が200を超えていた。
最近やっと落ち着いてきたので、ちょっと古めの文献(と言っても数ヶ月前だけど)の紹介がしばらく続くかも。

Zhou Z, Liu C, Yang Y, et al.
Anticoagulation options for continuous renal replacement therapy in critically ill patients: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials.
Crit Care. 2023 Jun 7;27(1):222. PMID: 37287084.


日本でCRRTをしていると、だいたいナファモスタット、時々ヘパリン、とかではないだろうか。
それがいかにマイナーか、とうのが図2を見ると分かる。知らない人にとってはそれだけでも情報になるのでは。さらに、RCTで比較されているCRRTの抗凝固剤って実はたくさんあるんだよ、というのも分かる。

図2(と表1)を見るだけでも価値があるのが紹介理由です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高Na血症治療における自由水の経腸投与と5%ブドウ糖の経静脈投与の比較

2023年08月31日 | 腎臓
手前味噌ですが、自治さいたまのデータを使った文献がアクセプトされました。

Suzuki R, Uchino S, Sasabuchi Y, et al.
Enteral free water vs. parenteral dextrose 5% in water for the treatment of hypernatremia in the intensive care unit: a retrospective cohort study from a mixed ICU.
J Anesth. 2023 Aug 28. Epub ahead of print. PMID: 37638970.


高Naを水で薄めようとする時に、経管に水を入れるか5%グルを静脈投与するかで比較。結論は、どちらもほぼ同程度にNaを薄めるけど、経管だと水の投与量が少なくなりがちなので、治療効果としては経静脈投与の方が高くなる、と。

ICUではすごくよく見かける高Naだけど、介入研究はすごく少なくて、今回の視点での研究はゼロ。
だからとっても楽しい研究だと思うのだけど、思いのほか投稿に苦労した。

運が悪かったとも言えるけど、1施設の後ろ向き研究がどんどん採用されにくくなっているとも言える。
1施設の後ろ向き研究は初期の仮説設定としては今も有益だと思うのですけどね。
時代には逆らえないか。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする