Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

集中治療系雑誌のimpact factor 2023

2024年06月25日 | その他
梅雨はほぼありませんが、こちらの季節は今年もちゃんとやって来ました。

・コロナインフレの終了感がいよいよ強くなった
・1位と2位は変わらないが、Crit Careは単独3位から昔のレベルに戻った
・そういう意味でChestの変化のなさは逆にすごい
・JICも残念ながら目立つ雑誌ではなくなり、以前のポジションへ
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JIPADのCOVIDの疫学データを年度別にまとめてみた。

2024年06月23日 | COVID-19
別の目的で年次レポートを見ていて、ふと気がついた。
COVID患者のBMIの中央値が、25(2020)→25.4(2021)→21.7(2022)と2022年度に急激に正常化している。
株の変化とワクチンの導入で疫学に変化が起こり、肥満が重症化のリスク因子ではなくなったようだ。
これ、常識なのかな、僕だけ知らなかったのかな、と思ってググったりChat先生に聞いたりPubMedでざっと調べたり感染症科医に聞いたりしたけど、ほとんど記載がないし、専門家も知らないと言う。

ほお。
じゃあ疫学を全部比較しちゃおう、と思い、JIPADの年次レポート3年分のCOVID特集のところをChat先生に表にしてもらった。ただし、すぐに間違えるので確認しながらになり、それなりに時間がかかった。だから全部正しいとは言えないので、正確にはそれぞれの年次レポートを確認してください。

2020年度(よく分からない病気で困っていた時期)
2021年度(症例数が多くて日本のICUもちょっとヤバい空気が流れた時期)
2022年度(ワクチン導入で症例数が減少し、治療法も定まってきたので安心し始めた時期)

で、一気に表を載せます。長いけど、結構違って楽しいよ。
(画面キャプチャなので変な矢印があるのはご愛嬌)












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不確かな答え - ICUにおけるPPI

2024年06月22日 | 消化器・血液
元文献は、SUPは消化管出血を減らすが予後は改善しないという、まあ予定通りの結果。
気になったのはそのeditorial。

Brown SM.
Uncertain Answers - Proton-Pump Inhibition in the ICU.
N Engl J Med. 2024 Jun 14. Epub ahead of print. PMID: 38875100.


この最後に、
"I plan to prescribe prophylactic proton-pump inhibitors to patients during mechanical ventilation if they have an APACHE II score of less than 25. For sicker patients, I would probably reserve the use of proton-pump inhibitors for those who are being treated with antiplatelet agents, especially in the presence of therapeutic anticoagulants."

確かに、90日の死亡率のサブグループ解析は、

こんな感じ。
かつ元文献のdiscussionにも、重症患者でのPPIの弊害を示した研究についての記載がある。

ちょっと、直感的に違和感が強いし、この人みたいに「重症患者ではPPIは使わないぞー」とは言いにくい。実際、潰瘍予防効果はこんな感じだし。


そもそもサブグループ解析だし。
消化管出血されたら面倒だし。
普通にPPI使ったらいいのではないかなー。
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重症敗血症におけるβ-ラクタムの持続投与と間欠投与の比較

2024年06月20日 | 感染
これ、やっと終わった。2ヶ月くらい前からずっと準備していて、にも関わらず無駄に緊張し、時間配分も間違えるという散々な結果。
もう忘れます。
で、臨床文献をだんだん読み始めている。
CCR24でたくさん発表されたやつをいくつか読んでみたところ、この2つが気になった。

Dulhunty JM, Brett SJ, De Waele JJ, et al.; BLING III Study Investigators.
Continuous vs Intermittent β-Lactam Antibiotic Infusions in Critically Ill Patients With Sepsis: The BLING III Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38864155.


Abdul-Aziz MH, Hammond NE, Brett SJ, et al.
Prolonged vs Intermittent Infusions of β-Lactam Antibiotics in Adults With Sepsis or Septic Shock: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38864162.


結果はご存知の通りとして。
これまで行われた研究と比べて圧倒的に大きなNの研究で、primary outcomeはnegativeだったのに、この文献内でも、メタ解析でも、editorialでも、さらにはpodcastでも、"prolonged influsionやろーぜ〜!”感になっている。特にpodcastなんか(早回しで聞いているので数字とか怪しいけど)、
Deputy editor:「私のところでも1年半くらい前からprolongedでやっている」
メタ解析の著者:「ある調査では60%の施設がすでにprolongedで投与しているので、残りの40%の診療が変わるといい」
みたいな会話をしている。
いやいや、そこまで言い切るの?
しかも、7000例のRCTでギリ有意差なし、ICUや病院死亡率のp値は.035と0.27。もう少し表現はマイルドにするべきでは?

もう一つ気になるのがprolonged / extendedという言葉。
BLING IIIは持続だし、メタ解析の方でも18研究中17が持続投与。つまり単回投与よりも持続投与が良い、ということをこの2つの研究は示しているのに、なぜかタイトルもpodcast内の会話もprolongedになっている。それはちょっと語弊があるのでは。

この二つの研究から言ってよさそうなことは、「持続投与は単回投与よりも少しだけ有効そう。ただし感染症の治癒効果はそれなりに認められるものの、死亡率的には効果があるとしてもわずかで、NNTで50程度。」
臨床導入してもいいし、しなくてもいい、くらいではないか?
ちなみに、メルぺネムは調整後は8時間でダメになるそうなので、1日3回作り直さないといけません。
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ニューモシスチス肺炎の多施設観察研究2つ

2024年06月14日 | 感染
これのせいでずっとAI関連の文献を優先的に読んでいるので、臨床の文献がどんどん溜まっていく。先日ちょっとだけ読んだ。
それにしても、cariniiがjiroveciiになったときに、PneumoCystisisだからPCPのままで良いよね?という話だったのに、最近はPJPって言うんかい?それじゃつまんないじゃん。

Kamel T, Janssen-Langenstein R, Quelven Q, et al.; PCP-MULTI Study group.
Pneumocystis pneumonia in intensive care: clinical spectrum, prophylaxis patterns, antibiotic treatment delay impact, and role of corticosteroids. A French multicentre prospective cohort study.
Intensive Care Med. 2024 Jun 3. Epub ahead of print. PMID: 38829531.

治療としてステロイドを使うと死亡が早くなる。

Lécuyer R, Issa N, Camou F, et al.; PRONOCYSTIS Study Group.
Characteristics and Prognosis Factors of Pneumocystis jirovecii Pneumonia According to Underlying Disease: A Retrospective Multicenter Study.
Chest. 2024 Jun;165(6):1319-1329. Epub 2024 Jan 11. PMID: 38215935.

多変量では残らなかったけど、単変量ではステロイドの併用の死亡に対するオッズ比は1.61。

いつの間にか(20年くらい前?)、non-HIVのPCPにもステロイドを使うと言う人が出てきた。当初は、「いやいや、ステロイドを飲んでいてPCPになったのに、ステロイドを増やすとか意味不明でしょ」と反論していたのだけど、どんどんそれが当たり前になっていくので、いつからか反論するのをやめた。
確かに、当時のレビューにも、
"In patients without AIDS but with severe pneumocystis pneumonia, a dose of 60 mg or more of prednisone daily resulted in a better outcome than lower doses of prednisone."
と書いてあるのだけど、この参照文献を見るとN=31の観察研究で、さすがにそれは根拠にはならないだろう、と思っていた。

なのでPCPのステロイドは僕的には喉に刺さった小骨のようなもので、そしたら最近読んだ2つの多施設観察研究がどちらも否定的だったので、ちょっと小骨が取れた感じ。でも、N=31の観察研究で始まったプラクティスではあるけれど、Nが数百の観察研究を見せても、きっとステロイドが当たり前だと思っている人の考えは変わらないだろうな。RCTが欲しいところだけど、ICMの文献でも49施設で2年間でやっと158例しか集まっていないので、実施は相当難しそう。

と思ったら、その文献の最後に、
”A definitive answer may come from a recently completed randomized trial, the results of which are pending (NCT02944045)."
って書いてあるじゃないですか。つい小躍りしてしまいました。

と思ってルンルンしながらClinicalTrials.govを見に行ったら、Study Completion (Estimated) は2022-10なのに、Last Update Postedは2020-10-06になっている。
どういうこと?とっくに終わっているはずなのに4年間放置?

残念ながら、これ以上は情報を集められなかった。
なのでここからは推測。Last Updateが2020年なので、COVIDで途中で止まったと考えるのが自然か。この研究もフランスでICMもフランスなので、"recently completed"なのはきっと間違いない。
(ちなみにChestもフランス。どういうこと?)

つまり待つしかない。
小骨が完全に取れて大踊りするのはしばらくお預け。
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腎臓保護のためのアミノ酸静脈内投与(PROTECTION Study)

2024年06月13日 | 腎臓
おお、NEJMにAKIについてのポジティブな文献が出た。しかも著者にR. Bellomoって書いてある。これは読まねば。でも前回のコメント単なる素人発言だったようで、さすがに今回は素人じゃないと思いたいのだけど、ちょっと自信ない。
ちなみに、てっきりANZICS-CTGかと思いこんで読んでいたのだけど、なんか書き方がいつもと違うと思ったら、イタリアでした。

Landoni G, Monaco F, Ti LK, et al.; PROTECTION Study Group.
A Randomized Trial of Intravenous Amino Acids for Kidney Protection.
N Engl J Med. 2024 Jun 12. Epub ahead of print. PMID: 38865168.


確かにAKIの発生は減っている(26.9% vs. 31.7%)。Stage 3は半分になった(1.6% vs. 3.0%)。でもRRTの必要性は有意ではなく(1.4% vs. 1.9%)、その他の指標(MV期間、ICU在室期間、死亡率、尿量、長期の腎機能)には有効そうなシグナルすら見えない。

この研究を分かりやすくまとめると、「予定の心外手術患者に手術開始からICU退室までアミノ酸を大量(プロテアミン4袋/日、モリヘパミン5袋/日)投与すると、一時的にGFRが上昇してクレアチニンがday 2で平均0.05mg/dl下がる(Figure S2)が、いわゆる腎保護効果と呼べるほどではなく、患者予後には影響しない。」

Abstractのconclusionだけ読んだときは、「おお、心外術後管理が変わるのか?」と一瞬ドキドキしたのだけど、そうはならなそう。
ただしCKD stageによって効果は変わらない(Figure S5)ようなので、症例によってはRRTの予防が可能かもしれない。でも、そのためにPN用のアミノ酸製剤を40ml/hrでずっと投与する気になる人はいるのかな?

なんか普通でつまんない評価になってしまった気がする。。。
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再掲:ICON塾でまた話します!(3回目)

2024年06月12日 | ひとりごと
いよいよ来週になったので、再掲。

第15回 ICON塾 のお知らせ 2024年6月18日 17:00-18:00
ICUにおけるAI予測の臨床応用 ~実際にやってみた!~


再掲して宣伝するほどの内容か、というと、自信ないのですけどね。



ぜんっぜん関係ありませんが、昨日、人生初の10バガー達成!
といっても10年以上かかっているからそうは呼ばない気もするけれど。
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