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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

HFNCによる経口挿管患者の呼吸困難の緩和

2025年04月10日 | 呼吸
Pisani L, Antonelli M.
Nasal High Flow to Modulate Dyspnea in Orally Intubated Weanable Patients.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 Apr;211(4):544-546. PMID: 39847721.


ほえー、知らんかった。
呼吸不全でハーハーしている患者さんにHFNCをつけると結構すぐに「楽になった」と言われることがあるけど、その理由の一つはこれですか。
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市中肺炎における診断の不一致、不確実性、治療の曖昧さ

2024年12月10日 | 呼吸
Jones BE, Chapman AB, Ying J, et al.
Diagnostic Discordance, Uncertainty, and Treatment Ambiguity in Community-Acquired Pneumonia : A National Cohort Study of 115 U.S. Veterans Affairs Hospitals.
Ann Intern Med. 2024 Sep;177(9):1179-1189. PMID: 39102729.


118のアメリカの病院の入院患者約240万人。そのうち13.3%に肺炎の診断がされていた。9.1%は入院時、10%は退院時、そして入院時と退院時の診断の不一致は57%あった。抗菌薬だけでなく、27%に利尿剤、36%にステロイド、10%に利尿剤とステロイドが投与された。入院時と退院時の診断が一致した患者と比べ、入院時に肺炎と診断されなかった群で死亡率が高かった(14.4% vs. 10.6%)。

肺炎なのか心不全なのか、はたまたそれ以外の呼吸不全か。ICUでも頻繁に問題になる。とりあえず抗菌薬は入れよう、ステロイドはどうしよう、BALをするか、するなら気道確保が必要か、心不全の所見は有りそうだ無さそうだ、などなど。今も昔も変わらない臨床問題。プロカルシトニンが出た時に一瞬ザワついたくらいで、明らかなブレークスルーはない。
それ以前に、正しい診断は本当に必要なのか?という問題もある。当然必要だろうと思いそうだけど、診断には誤診の確率が必ず一定の割合で含まれるし、治療をしないことで失うものは治療することで失うもの(コスト、合併症)よりも大きかったりする。この研究でも肺炎とさっさと診断しないと死亡率が上がっている。

カンファで「この呼吸不全の診断は?」という会話を聞くたびに頭の中がグルグルするので、嫌いです。
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No ventilation, no ARDS

2024年09月28日 | 呼吸
IMAGING IN INTENSIVE CARE MEDICINEに自治さいたまの報告が載りましたー。

Okamura G, Nishiyama S, Ono S, Katayama S.
No ventilation, no ARDS: insights from four-dimensional computed tomography as dynamic imaging.
Intensive Care Med. 2024 Sep 23. Epub ahead of print. PMID: 39311900.


動画が綺麗なので、ぜひ見てください。
タイトルも良い。Chat先生に考えてもらった。「こんな内容の報告をする。ちょっとキャッチーなタイトルをいくつか考えて」と聞いたらバッチリ考えてくれた。

それにしても。
少なくとも肺外ARDSにおいては、「換気されない、つまり肺が動かなければ、透過性低下は起こらない」と言われてもふーんと思う程度だけど、画像として見せられると納得してしまう。まさしく百聞は一見にしかず。
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酸素についての文献3つ

2024年07月27日 | 呼吸
Peng L, Qin X, Chen L.
Hyperoxemia may be more beneficial for patients with sepsis.
Crit Care. 2024 Jul 19;28(1):252. PMID: 39030635.

1施設の後ろ向き。敗血症患者ではPaO2>80を維持した方が予後が良かった。

Nielsen FM, Klitgaard TL, Bruun NH, et al.
Lower or higher oxygenation targets in the intensive care unit: an individual patient data meta-analysis.
Intensive Care Med. 2024 Jul 11. Epub ahead of print. PMID: 38990335.

2つのRCTのメタ解析。PaO2ターゲットが8kPaと12kPaで予後に差はなし。

Buell KG, Semler MW, Churpek MM.
Individualized treatment in critical care: the oxygenation paradigm.
Intensive Care Med. 2024 Jul 10. Epub ahead of print. PMID: 38985181.

過去の研究を簡単にサマライズ。
"The ICU–ROX, O2–ICU, HOT–ICU, PILOT, and ICONIC trials found no significant average treatment effect, whereas the Oxygen–ICU and HOT–COVID trials reported better outcomes with a lower oxygenation target and the LOCO2 trial reported better outcomes with a higher oxygenation target."

ご存知の通り、Mega-ROXとUK-ROXが現在進行中。Mega-ROXは4万例、合計すると6万例の巨大RCTになる予定。さて、いつ頃結果が出るのだろうと調べてみると、詳細はわからないものの、Mega-ROXの旧ツイッター情報からは、昨年1月に1万例到達、今年の1月に2万例到達したようなので、単純計算であと1年半、結果が発表されるのは2026年のどこかかな?

結果はどうあれ、集中治療リサーチの歴史に刻まれることは確定。サブ解析も山ほど行われることでしょう。
それまでは、酸素についての現在のプラクティスを大きく変えちゃダメですよ。
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重症患者におけるビデオ喉頭鏡と直接喉頭鏡の比較

2024年01月21日 | 呼吸
Araújo B, Rivera A, Martins S, et al.
Video versus direct laryngoscopy in critically ill patients: an updated systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Crit Care. 2024 Jan 2;28(1):1. PMID: 38167459.


知らんかった。14もRCTがあるのだそうだ。
掲載された雑誌を確認すると、メジャーどころはJAMACCMの2つくらいなので、まあ仕方ない。

それともう一つ。
自治さいたまでは基本的に挿管時には筋弛緩を使わない。僕は使う派だったので、ルーチンで使用しないというのは少し驚いていた。なので、どっちがメジャーなのかなーとずっと思っていたのだけど、表1に14研究の筋弛緩の使用についての記載があることに気がついた。9つがほぼ全例、必要に応じてが1つ、無しが2つ、情報なしが2つ。

どちらが良いかという話ではなく、とりあえず使う方がメジャーである、ということは分かった。
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COVID-19の低酸素患者におけるICU外でのHFNCの安全性と治療成績

2023年12月28日 | 呼吸
Janssen ML, Türk Y, Baart SJ, et al.; Dutch HFNO COVID-19 Study Group.
Safety and Outcome of High-Flow Nasal Oxygen Therapy Outside ICU Setting in Hypoxemic Patients With COVID-19.
Crit Care Med. 2024 Jan 1;52(1):31-43. PMID: 37855812.


オランダの10の病院。HFNCが開始された場所が呼吸器病棟かICUかで比較。挿管率は53% vs. 60%、28日死亡率は8% vs. 13%で、どちらも有意差なし。結論として、「ICU外でのHFNC開始は、ICUの収容能力と医療費を維持することを目的として、他の低酸素性疾患や臨床環境において更に検討されるべきである。」

間違ってはいないと思うけど、少し注意するべき点がある。
・呼吸器病棟であって、一般病棟ならどこでも、という研究ではない。
・病棟開始の群の64%は結局ICUに来ている。
・Propensityマッチングしても、「この患者さんはICUに来た方がいい」という医療者の判断を完全に含めることはできない。

特に3つめは忘れがち。つい先日も若手研究者とこの話をしたばかり。「治療A vs. 治療B」、「治療Aをするかしないか」という観察研究は、必ずこの限界にぶち当たる。もちろん、だからこういう研究をやってはいけないということではないけれど、「アルブミンも肺動脈カテーテルもより多くの人を殺す」という噂が流れた過去は忘れないようにしたい。


タイトル:「アルブミンも肺動脈カテーテルもより多くの人を殺すという噂」
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IPF急性増悪に対するPMX

2023年10月27日 | 呼吸
Awano N, Jo T, Izumo T, Inomata M, et al.
Polymyxin B-immobilised fibre column treatment for acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis patients with mechanical ventilation: a nationwide observational study.
J Intensive Care. 2023 Oct 11;11(1):45. PMID: 37821999.


この話を初めて聞いた時、ヤバイ、流行したらどうしようとドキドキしたのだけど、DPCのデータですら、2016-18年で52例のみ。嫌な予感が外れていて良かった。
そしてこの研究ではIPTWで補正した病院死亡のオッズ比が1.56(P=0.19)。

現状でこれを上回る根拠ってあるのだろうか。
もしないなら、呼吸器内科医に無理言われてももう大丈夫だね。
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3カ国における人工呼吸の使用状況

2023年07月13日 | 呼吸
Jivraj NK, Hill AD, Shieh MS, et al.
Use of Mechanical Ventilation Across 3 Countries.
JAMA Intern Med. 2023 Jun 26 Epub ahead of print. PMID: 37358834.


あまりに驚いたので、結果をDeepLで和訳したものを掲載。
IMVは invasive mechanical ventilationの略。
ーーーーーーーーーー
本研究では、英国におけるIMVによる入院59,873例(年齢中央値61歳、男性59%)、カナダ70,250例(65歳、男性64%)、米国1,614,768例(65歳、男性57%)を対象とした。IMVの人口10万人当たりの年齢標準化率は、カナダ(290人)、米国(614人)に比べ、英国(131人)が最も低かった。年齢で層別化すると、IMVの一人当たりの発生率は、若い患者においては国家間で類似しており、高齢の患者では顕著に異なっていた。80歳以上の患者において、人口10万人当たりのIMV使用率は、カナダ(694人)、イギリス(209人)と比較して、アメリカ(1788人)が最も高かった。併存疾患については、米国でIMVを受けた入院患者の6.3%が認知症と診断されていた(英国では1.4%、カナダでは1.3%)。同様に、米国ではIMVを受ける前に透析に依存していた入院患者は5.6%であった(英国では1.3%、カナダでは0.3%)。
ーーーーーーーーーーー
イギリスに比べてアメリカでは5倍も人工呼吸が行われている。高齢者になるとなんと9倍!

国別の人口あたりのICUベッド数と言えば、で有名な図を再掲。
これは知っていたけど(というかJapanは僕が追加した)、アメリカのICUには軽症の患者さんがたくさんいて、イギリスは人工呼吸が必要な重症患者ばかりかと思っていた。だって重症患者の数って国によってそんなには違わないだろうから。そうなると、人工呼吸の適応そのものが国によってこんなに違うということで、ただただビックリ。

"Supply-induced demand"という言葉がDiscussionにも出てくるけど、これが大きな理由なんだろうと思う。それぞれの国の集中治療医にインタビューしたら、きっと自分たちは普通で他の国がちょっとおかしいって答えそう。実際はICUベッドという供給が人工呼吸の適応という需要に大きく影響している。比較されないと、なかなか気がつけないのでは。

僕が知っているある病院ではECMOの施行件数が多い。ECMOで救われる命は(多分)あるし、施行に慣れるから合併症が少なくなったり予後が良くなったりする(可能性がある)。ちなみにカッコを付けた理由は、RCTで完全に証明されているとは言い難いから。
でもその代わり、何で?という心停止にもeCPRが行われたり、明らかに末期の呼吸不全に対してECMOの適応が議論されたり、ICU側は適応がないと思っても担当科医師に強くECMO導入を求められたりする。つまりECMO症例数が多いことがECMO症例数を更に増やしている。

ICUを増床すると平均滞在日数が延びるというのは有名な話で、人工呼吸にしてもECMOにしても、更にはICU入室にしても、どこかにちょうど良い適応というのがあるのではないかと思うのだけど、それを個人が判断するのは難しい。というか、この研究の結果を見ていると、ほぼ不可能なのではないかと思う。
それって、結構、衝撃的じゃない?
みんな、普通に判断しているし、普通に議論しているけど、本当の正しい適応とは全然違うところで会話しているかもしれないんだから。

この文献を読んで、僕はちょっと怖くなりました。
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救急外来で開始された肺保護換気の効果

2023年03月17日 | 呼吸
Fuller BM, Mohr NM, Ablordeppey E, et al.
The Practice Change and Clinical Impact of Lung-Protective Ventilation Initiated in the Emergency Department: A Secondary Analysis of Individual Patient-Level Data From Prior Clinical Trials and Cohort Studies.
Crit Care Med. 2023 Feb 1;51(2):279-290. PMID: 36374044.


TVが8.2から6.5ml/kgになり、死亡率が35.9%から19.1%に下がった。

肺保護すげー。
ちょっとツマミを回せば、死亡率なんか半分になるのさ。
簡単、簡単。
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早期と後期気管切開または気管切開なしの比較

2023年03月01日 | 呼吸
Villemure-Poliquin N, Lessard Bonaventure P, Costerousse O, et al.
Impact of Early Tracheostomy Versus Late or No Tracheostomy in Nonneurologically Injured Adult Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Med. 2023 Feb 1;51(2):310-318. PMID: 36661455.


また、気切のタイミングについてのメタ解析。
そして今度は、risk ratioは0.91だけど有意差なし。

Figure 3や4のforrest plotを見ていると、早期の方が少し良いんじゃね?と思えてきてしまう。
数千例規模のRCTをすれば有意差が出てもおかしくない雰囲気。

JIPADの年次レポートを見ると、気切までの日数は中央値で9日、75thだと14日なので、4人に1人は2週間以上かかっている。以前は1週間経ったら気切を考えよう、が一般的だった気がするのだけど。
もしかしたら、現状は少し行き過ぎなのかも???
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