Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

しばらく休止します。

2014年10月31日 | ひとりごと
文献を読むのが趣味なのは変わらないと思うので、いつか再開はしたいと思います。
ちょっと、いろいろ整理がついたらね。
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集中治療部は人の命を救えるのか?

2014年10月19日 | ひとりごと
アバウトに計算をしてみる。

慈恵のICUには、24時間以上ICUに滞在する成人患者さんが年に約600名、その病院死亡率は約10%だ。この数字は国際的に見ても普通。例えばANZICSのデータを見ても、同程度。

次。
かの有名なPronovostのメタ解析では、high-intensity staffing(closed ICUもしくはmandatory consutltation)の病院死亡率のリスク比は0.71、もっと最近の研究だと0.83。
慈恵ICUはclosed ICUじゃなくてmandatory consultation(ICUに医者がいつもいて、すべての治療方針決定に関与する)なので、high-intensity。ということは、病院死亡率のリスク比は集中治療部がない状況に比べてだいたい0.8になっている、と仮定する。

さて、小学生レベルの計算。
集中治療部があることによって、生きて病院を退院できる人の数は1年あたり、
600 x 10% x (1 / 0.8 - 1) = 15
つまり、月に一人とちょっと。

みんなで毎日カンファレンスして、
毎週勉強会して、M&Mとかグリーフカンファとかして、
感染予防だ、手指衛生だって騒いで、
早期リハビリがんばるぞーってして、
あれもして、これもして、
月に一人。

もちろん、ICUは命を救うだけが仕事じゃない。長期予後の改善にもつながるかもしれないし、QOLを良くするかもしれないし、場合によっては平和に死ねる場所(であるべき)かもしれない。地球よりも重い命が月に1つも救えるなんて素晴らしい、という見方もできる。

ただね、時々、自分たちのしていることが患者さんのためになっているのか、疑問に思えてしまうことがある。
手術の合併症が予後を決めてしまっていたり、ICUに来た時には介入の余地のない重症度だったり、ICU在室中に予防可能とは考えにくい合併症を起こしたりで、無力を感じることも少なくないし。手技に関連した合併症が起こったり、判断を誤ったりして、患者さんに悪影響を与えてしまうこともあるし。
こんな研究もあるくらいだし。

でもね、じゃあ集中治療部なんか無くてもいい、とは思ってないぞ。
ただ、
そんなすごいことはしていないのだから、謙虚であるべきだとは思うのと、ちょっとしたことで月に一人が容易にゼロにもマイナスにもなっててしまう可能性があるのだから、1つ1つのことをちゃんとやることがとっても大事なんだとも思う。
それだけ。

ひとりごとですよ、ひ・と・り・ご・と。
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ICUには都市伝説が一杯

2014年10月12日 | ひとりごと
先日のICUカンファでの出来事。
ある患者さんの話題で、ある科の医師が、
”Afになったのはラシックスで脱水になったからでは?”
と言った。

次の患者さんの時に、ある科の医師が、
”クレアチニンが上昇しているので、尿生化を提出して腎性か腎前性か鑑別したい”
と言った。

その次の患者さんの時に、ある科の医師が、
”乳酸が上昇したから、循環不全があるはずだ”
と言った。

おお!
三連続で都市伝説だ!

みなさん、いい加減にご存知とは思いますが、
・ICUにおけるAfの危険因子についての研究はいくつもあるが、どこにも脱水とは書いてない。
・教科書にはFeNaなどで腎性と腎前性の鑑別をせよと書いてあるが、多くの研究(特に敗血症)で有効性が否定されている。
・乳酸は好気代謝で(も)増加する。

以前は、
”ノルアドを使うと末梢循環が悪くなるのでドーパミンの方が良い”とか、
”少量のドーパミンは腎血流を増やす”とか、
他にもいろいろあったけど、この辺はさすがにもう聞かなくなった。

まだたくさんありそうだ。根は深い。
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ECMOで歩く。

2014年10月10日 | 呼吸
これ関係のレター。

Pruijsten R, van Thiel R, Hool S, et al.
Mobilization of patients on venovenous extracorporeal membrane oxygenation support using an ECMO helmet.
Intensive Care Med. 2014 Oct;40(10):1595-7. PMID: 25112500.


写真つき。
このヘルメット、石膏で手作り。
頭に送脱血管が乗ってます。
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フェニトイン対レベチラセタム

2014年10月09日 | 神経
Radic JA, Chou SH, Du R, et al. Levetiracetam versus phenytoin: a comparison of efficacy of seizure prophylaxis and adverse event risk following acute or subacute subdural hematoma diagnosis.
Neurocrit Care. 2014 Oct;21(2):228-37. PMID: 24549935.


アメリカの後ろ向きの一施設研究。急性もしくは亜急性の慢性硬膜下血腫に対し、痙攣予防を目的としてフェニトイン(124例)もしくはレベチラセタム(164例)が投与された。臨床的もしくは電気的な痙攣の頻度は両群で差はなく、副作用は有意にフェニトイン群で多かった(21.3% vs. 3.7%, p<0.001)。サブグループ解析において、ミッドラインシフトがあった例では電気的な痙攣がレベチラセタム群で多かった。

別に。
だからどうした的研究ですけど。
単純に、新しい薬が嫌いなのさ。

こんなのもある。
とりあえず、頭部外傷における予防投与についてのRCTはなさそうだ。

仮に有効性が同じだとして、副作用の多さが値段の高さとペイするだろうか。
新しい薬が無かった時も困ってなかったけど?

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PPIと間質性腎炎

2014年10月08日 | 消化器・血液
Blank ML, Parkin L, Paul C, et al.
A nationwide nested case-control study indicates an increased risk of acute interstitial nephritis with proton pump inhibitor use.
Kidney Int. 2014 Oct;86(4):837-44. PMID: 24646856.


PPIが処方されたことのある、既往に腎障害のない57万例。現在PPIが投与されている人の間質性腎炎の発生頻度は10万例たり11.98、今は処方されていない人では1.68例。

ぜんっぜん、集中治療とは関係ありません。頻度もチョー低いし。
ただ、PPIが嫌いなだけ。

PPIが消化管出血を増やす?
PPIとH2BとVB12
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エコーガイドの気管切開のRCT

2014年10月07日 | 呼吸
Rudas M, Seppelt I, Herkes R, et al.
Traditional landmark versus ultrasound guided tracheal puncture during percutaneous dilatational tracheostomy in adult intensive care patients: a randomised controlled trial.
Crit Care. 2014 Sep 18;18(5):514. PMID: 25231604.


経皮的気管切開を必要とした50例。普通に解剖学的メルクマールで針を刺すか、エコーガイドで針を刺すかでRCT。最初に刺さった針の正中からのズレを角度で表示すると、平均がエコー群では15度、メルクマール群では35度(p=0.001)。30度以下を一発合格とすると、その率は87% vs. 58%(p=0.028)。

エコーを使わないと30度以上もズレるか、という気もするけど。BMIの平均が30というのが理由か。

まあ、CVと一緒で、ブラインドでもできるけど、エコーを使った方が簡単だよ、ぐらいの結果かな。
でも、実際にやってみると、CVほど簡単じゃない気もする。慣れが必要そう。

ちなみに、RCTは他にもある。まだe-pubだけど。
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抗菌薬のde-escalation

2014年10月06日 | 感染
先週は、ESICM関連のon-line publicationを含め、40くらい文献をダウンロードした。
こりゃ大変だと思っていたら、台風のせいで新幹線に5時間(止まっている時間がね)閉じ込められたので、モーマンタイ。

NEJMとJAMAはジャーナルクラブで扱う予定なので、紹介しません。
そうなると先週出た中でベストな文献はこれだろうか。

Leone M, Bechis C, Baumstarck K, et al.; AZUREA Network Investigators.
De-escalation versus continuation of empirical antimicrobial treatment in severe sepsis: a multicenter non-blinded randomized noninferiority trial.
Intensive Care Med. 2014 Oct;40(10):1399-408. PMID: 25091790.


フランスの9施設、120名の重症敗血症/敗血症性ショック。抗菌薬開始後、培養の結果で抗菌薬の種類を変更(de-escalation群)するか、broadのまま投与し続けるか(continuation群)で比較。Primary outcomeはICU滞在日数。その結果、ICU滞在日数は9日 vs. 8日(p=0.71)で有意差無し、死亡率や耐性菌の出現率などにも差はなく、感染の再発(superinfection)がde-escalation群で多かった(27% vs. 11%, p=0.03)。

新生児を対象とした研究はあったけど、成人では初のRCT。ただ、残念ながら患者群にいろいろ差がある(年齢、SAPS II、カルバペネムの使用頻度)。それに予想よりもprimary outcomeのSDが大きくて、必要な症例数は実際には500例くらい。

でも、これまで複数の観察研究でde-escalationの有用性が言われてきて、初のRCT(しかも多施設)でちょっと悪い結果になったのは事実。それもあってか、editorial2つもついている。さらには、著者らのcorrespondenceまで。

無駄な抗菌薬は使わないようにしつつ、今後の研究に期待。
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後発品知識不足で誤投与?

2014年10月05日 | ひとりごと
数日前のニュース

例として、
”医師が抗生剤の「ロセフィン中止」を先発品名で指示したが、薬剤部から届いた薬剤名は、院内採用薬の後発品「セフトリアキソンアトリウム静注用1g」であり、指示を受けた看護師も実施した看護師も、それがロセフィンの後発品と知らずに投与を続け、主治医が気づいて看護師長に報告、判明した。”
というのが載っていた。

たしかに後発品でも商品名のものはあるけれども。
最近は多くが一般名になっているじゃん。これなんかその典型例だ。
ニュースのタイトルは”後発品で誤投与”となっているけど、ちょっと違うんじゃねーか?

商品名、使うのやめたらいいのに。
いつも一般名で呼んでれば、後発品になっても間違えないのに。

こんにちは。
薬を一般名で呼び隊の隊長をしております、内野と申します。
現在、隊員は1名です。
絶賛募集中です。
入隊ご希望の方は、下記までご連絡を!
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医者の統計の理解度

2014年10月03日 | EBM関連
Martyn C.
Risky business: doctors' understanding of statistics.
BMJ. 2014 Sep 17;349:g5619. PMID: 25230984.


フリーライターのエッセイ。
この文章の前にはこの文献があって、
その前には40年前にNEJMに発表されたこの文献がある。

どちらの文献も、
“If a test to detect a disease whose prevalence is 1/1000 has a false positive rate of 5%, what is the chance that a person found to have a positive result actually has the disease, assuming you know nothing about the person's symptoms or signs?”
(有病率が1000人に1人の疾患を診断する検査の偽陽性率が5%だとすると、その検査が陽性だった人(症状などについての情報は無い)が実際にその病気である確率はいくつか?)
という質問を約60人の医者(医学生含む)に聞いたところ、正解(約2%)した人は1978年は18%、2013年は23%だった。
もっとも多かった答えは95%で、約半数の人がそう答えた。

で、このエッセイはこの話から発展させて、さらに予防医学の理解度が低い、というところまで行く。

さすがに、俺でも分かるぞ、これ。でも、すべての検査や診断において事前確率と感度/特異度を意識しているかと聞かれると、自信はないかなー。
他人の間違いはすぐに気がつくのだけれども。心エコーのIVCみたいに。

それにしても、答えが95%じゃないっていうのは、統計を知らなくてもクイズというものを知っていれば分かりそうな気がするけど。だって1000人に1人という情報を使ってないもん。
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