Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

脳出血の治療

2013年09月30日 | 神経
今週も月曜日は間に合いそうにないので、とりあえず、これで逃げておく。

Strokeの今月号に、脳出血の治療について最近発表されたRCTの解説が載っている。

Flaherty ML, Beck J.
Surgery for intracerebral hemorrhage: moving forward or making circles?
Stroke. 2013 Oct;44(10):2953-4. PMID: 23982715.


Hill MD, Muir KW.
INTERACT-2: Should Blood Pressure Be Aggressively Lowered Acutely After Intracerebral Hemorrhage?
Stroke. 2013 Oct;44(10):2951-2. PMID: 23988644.


つまりは、STICH IIとINTERACT-2について。
これを読めば、

・脳出血の急性期管理について、具体的には、血圧管理と手術適応について、この程度しか分かっていない
・やっと最近になって大きなRCTが行われるようになってきた
・まだこの2つのRCTでは結論が出たというにはほど遠い
・今後、この2つの話題について更なる研究結果が発表されそう
・でも、予後に対するインパクトの大きさがどれほどあるか、少し疑問

ということが分かる(感じ取れる)はず。
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ヤブ医者から患者さんを守る

2013年09月27日 | ひとりごと
もう何年も前のこと。
ある夜、ある病棟で、ある科の患者さんが発熱し、血圧が70/30になった。
その科の当直医は、とくに診断的アプローチはせず、抗菌薬とドーパミンを開始した。
血圧の上昇なし。でも昇圧剤の増量はせず。
そして明け方、心停止、コードブルー。
蘇生され、ICU入室。昇圧剤に反応せず、翌日永眠。

朝の申し送りでその患者さんのことを聞いた僕は、温度版を見て愕然とした。
こんなことが許されていいのか。

でも、もう大丈夫。
慈恵では、もうこういうことは起こらない。
患者さんの具合が悪いときは、医者がICUに相談してくる。
もし医者にそうする能がなくても、病棟のナースがそうするように提案する。
もし病棟ナースにすらそうする能がなくても、病院中を回診している夜勤師長がICUに連絡してくる。
そういう習慣/システムはできた。

そんなの当たり前じゃん、うちの病院じゃ絶対に起こらないよ、とおっしゃるあなた。
あなたは恵まれています。自分の幸運を喜びなさい。

ああ、うちの病院でもあるよねー、そういうこと、とおっしゃるあなた。
集中治療の仕事の一つは、ヤブ医者から患者さんを守ることです。
頑張りなさい。

なーんて、上から目線で言ってますけど。
まだ、起こります、慈恵でも。
頑張らねば。
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EGDTに対するRCT

2013年09月24日 | 循環
だめだ、やっぱり火曜日になってしまった。
しかも、メインを書いている時間もない。
あーあ。

Takagi Y, Takahashi J, Yasuda S, et al.; Japanese Coronary Spasm Association.
Prognostic stratification of patients with vasospastic angina: a comprehensive clinical risk score developed by the Japanese coronary spasm association.
J Am Coll Cardiol. 2013 Sep 24;62(13):1144-53. PMID: 23916938.


日本冠攣縮研究会からの報告。冠攣縮患者1429例のレジストリ。冠攣縮の起こしやすさについてのスコアを作成。精度は85%くらい。
ほお。冠攣縮なんて、無いんじゃないのかなんて言われてたのに、とうとうJACCに載るようになった。日本発=間違いと思われがちだけど、最近そうでもない。たこつぼ心筋症とか、間質性肺炎の急性増悪とか、他にもいろいろあるね。

Bateman BT, Bykov K, Choudhry NK, et al.
Type of stress ulcer prophylaxis and risk of nosocomial pneumonia in cardiac surgical patients: cohort study.
BMJ. 2013 Sep 19;347:f5416. PMID: 24052582.


アメリカの約500施設でCABGが施行された21214例のうち、術後にPPIが46.3%、H2ブロッカーが53.7%に投与された。そのうち、PPI群の5.0%、H2B群の4.3%に術後肺炎が発生。プロペンシティスコアで修正した結果、PPIはH2Bに比べ肺炎の発生が1.19倍多かった。1000例あたり8.2例の肺炎が増える計算。
PPIは有害ですよ話がまた増えた。余裕があれば、ジャーナルクラブにしますかね。

Ten Have EC, Nap RE, Tulleken JE.
Quality improvement of interdisciplinary rounds by leadership training based on essential quality indicators of the
Interdisciplinary Rounds Assessment Scale.
Intensive Care Med. 2013 Oct;39(10):1800-7. PMID: 23828025.


ICUで行われるDaily interdisciplinary round(異なる専門の人が参加する毎日のベッドサイド回診、何故か原文ではIDRと省略されている)の質が、トレーニングによって改善するか、についての研究。シミュレーション環境で1日トレーニングを受け、実際の現場でフィードバックを受ける。回診をビデオに撮り、あらかじめ決められた項目に基づいて評価。10人のベテラン集中治療医がコントロール、9人のフェローが介入群、つまりトレーニングを受けた。結果は、トレーニングを受けると、回診の質が改善。
というか、回診の質を評価するというのが面白い。重要な問題について議論したかとか、目標を設定したかとか、若い医者やナースからの意見を求めたかとか、いろいろ。
時間があれば、じっくり読んで考えたいところだが。

Walkden GJ, Verheyden V, Goudie R, et al.
Increased perioperative mortality following aprotinin withdrawal: a real-world analysis of blood management strategies in adult cardiac surgery.
Intensive Care Med. 2013 Oct;39(10):1808-17. PMID: 23863975.


2008年にアプロチニンが使えなくなってからどうなったかについて、before-afterで検討。イギリスのある一つの施設で行われた心臓手術、2008年を境に3年ずつ(3578例と3030例)を比較。プロペンシティスコアでマッチング。後期の方が、出血が多く、緊急の再手術が多く(オッズ比2.1)、AKIの発症も多かった(同1.86)。ハイリスク群(N=1002)では、その影響がより強く、死亡率が後期で2.51倍になった。
アプロチニンの話は以前にもしたけど、さて、どうなることやら。

The ProCESS/ARISE/ProMISe Methodology Writing Committee.
Harmonizing international trials of early goal-directed resuscitation for severe sepsis and septic shock: methodology of ProCESS, ARISE, and ProMISe.
Intensive Care Med. 2013 Aug 20. [Epub ahead of print] PMID: 23958738.


敗血症に対するEGDTについて検討している多施設RCTは3つ(アメリカのProCESS、オーストラリアのARISE、そしてイギリスのProMISe)あって、その3つの研究の結果が出た時に、まとめて評価できるかについて、研究デザインを比較した、という研究。結果は、まとめて評価できそう。
こんな文献もあるんだね。まあ確かにEGDTの多施設RCTは集中治療的にはとても重要な研究だし、それが同時に3つもやっているので、結果をまとめられたらパワーも上がるし、そりゃいいことだけど。
なんか、すごいなー、別世界だなー、と思って。

タイトルにしたけど、メインというほどに書く気も時間もなく。
本日はこれにて。
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リナルド・ベロモ(RB)

2013年09月19日 | ひとりごと
というのは、僕の師匠。
オーストラリアのメルボルンのオースティン病院というところのICUにいます。
まあ、なんと言うか、凄い人ですよ。
頭の良さ、正しいことを指摘する能力、臨床、情熱、人格、その全てにおいて、ちょっと他にはいない人。
この人と知り合えて、本当に良かったと思うし、
逆に自分の限界をまざまざと見せつけられた、という面もあるし。
そうそう、出会ったのはこの人。

そのRBが、こんな文章を今月のIntensive Care Medicineに書いてます。

Bellomo R.
The avoidable death of a boy and the relentless pursuit for evidence.
Intensive Care Med. 2013 Oct;39(10):1847-8. PMID: 23856951.


内容は、読んでください。たった1ページ半だし。
集中治療に対する思い、かな。ちょっと安直だな。

内容とは関係ない話をすると。
テストになると思うんですよ。
ビビッと来るか、来ないか。

ビビッと来る人は、自分の時間を何らかの形で人のために使っている人。
教育だったり、管理だったり、研究だったり、システムの構築だったり、人によって違うだろうけど。
来ない人は、自分の時間の多くを自分のために使っている人。多くの場合、自分がより良い医者になるために時間を使っている(そうじゃない人はこのブログには来ないはず)。
そうだな、年齢で言えば35-40くらいかな。そこに境界線がありそう。

ビビッと来そうな人は、きっと、読むと”自分も頑張ろ”って気持ちになると思うので、特にお薦め。

そうそう。
ちょっとnon-nativeには分かりにくい部分があるので、以下をご参照のこと。

http://franklloyd.blog68.fc2.com/?mode=m&no=156
http://www.moritty.com/Message1.htm

RBをご存じの方々へ。
心配になって、メールしちゃいました。
健康だそうです。
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PCC vs. FFP

2013年09月18日 | 消化器・血液
何か最近、月曜日に間に合わないことが増えてきた。
良くない。良くないぞ。

Grocott MP, Dushianthan A, Hamilton MA, et al.; Optimisation Systematic Review Steering Group.
Perioperative increase in global blood flow to explicit defined goals and outcomes after surgery: a Cochrane
Systematic Review.
Br J Anaesth. 2013 Oct;111(4):535-48. PMID: 23661403.


周術期に補液もしくはinotropeを投与して血流を増やすことにより、手術患者の予後がよくなるかどうかについて検討したRCTのメタアナリシス。コクランちゃん。31研究5292症例が対象。長期死亡率には影響無し(10.8% vs. 8.9%)だが、解析方法によって結果は異なった。腎不全、呼吸不全、創感染には有益だった。入院期間は1.16日減少。
とりあえず、有害ということは無さそうだ、というのが結論。
そーねー。すごく有益ということも無さそうだ、とも言えるような。

Neufeld KJ, Leoutsakos JS, Sieber FE, et al.
Evaluation of two delirium screening tools for detecting post-operative delirium in the elderly.
Br J Anaesth. 2013 Oct;111(4):612-8. PMID: 23657522.


70才以上の全身麻酔による手術を受けた91例を対象に、CAM-ICUとNuDESC(というスコアもあるのね。知りませんでした)のせん妄の診断精度を評価。コントロールはDSM-IV。CAM-ICUの感度は28%、特異度は90%以上。NuDESCも同程度。
自分ではやらないのでよく知らないが、この人はちょっと変だなと思っても(せん妄であっても)、CAM-ICUでは正常となることは珍しくないらしい。それだと、診断基準として価値が無い気がするが。話していても気がつかない程度のせん妄を発見できないと無意味では。まあ、それ以前にCAM-ICUを普通の術後患者に使っていいのか、というのもあるが。

Migliaccio ML, Zagli G, Cianchi G, et al.
Extracorporeal membrane oxygenation in brain-death organ and tissues donors: a single-centre experience.
Br J Anaesth. 2013 Oct;111(4):673-4. PMID: 24027145


文献ではなくレター。ECMO(ほとんどはVA)の使用によって脳死移植のドナーとなることができた5例のケースシリーズ(報告は8例だけど、3例は同意が得られなかった)。1例を除き、脳死になる前にECMOが導入されているけど、1例は脳死判定のための無呼吸試験中に循環不全となりECMOが導入されている。それ以外の症例も、ほとんどは重症頭部外傷や蘇生後の循環不全に対してECMOが導入されていて、それってほとんど脳死だったんじゃないかという気もする。
ドナーになれて良かったね、とはちょっと言いがたい。例えば蘇生後に意識の無い患者さんがある程度の昇圧剤に反応しなくなったら、普通はそこまでじゃないのかな。どっちが良いのか。。。

あ、気がついたらBJAばっかりだ。
面白い、という意味で、麻酔科の雑誌は目が離せない。

さて、メインですが。
つい最近この話をした気もするが、RCTを見つけたので、これにしてみた。
Circulationより。

Sarode R, Milling TJ Jr, Refaai MA, et al.
Efficacy and Safety of a 4-Factor Prothrombin Complex Concentrate in Patients on Vitamin K Antagonists Presenting With Major Bleeding: A Randomized, Plasma-Controlled, Phase IIIb Study.
Circulation. 2013 Sep 10;128(11):1234-43. PMID: 23935011


出血患者に対するワーファリンの拮抗方法としての、PCC(プロトロンビン複合体濃厚液、と訳すのだろうか)とFFP(これは新鮮凍結血漿、当たり前か)の比較。対象は、ワーファリンを飲んでいて、来院時INR>2.0で、出血していて、それが生命に危険を及ぼしているか、ヘモグロビンが2g/dl以上下がるか、輸血を必要とする患者。PCCとFFPの量はプロトコルに基づき投与。Primary outcomeは二つあって、一つは投与24時間後の止血効果、もう一つは投与終了30分後のINRが1.3以下になる頻度。
その結果、
・PCCは98例、FFPは104例に投与。
・消化管出血が多く、脳出血は一割程度。
・投与開始までの時間はPCCが17分、FFPは148分。投与量はPCCが154ml、FFPが813ml。
・投与24時間後の止血効果の判定がexcellentだったのはPCCが44.9%、FFPが43.2%で同等。
・投与終了30分後のINRが1.3以下になった頻度は62.2% vs. 9.6%でPCCの圧勝。
・30日死亡率は同等、血栓症の発生頻度も同等、心不全はFFPでのみ発生。

さて。
Major bleedingに対してPCCとFFPを比較したRCTとしては最初の研究らしい。
予想通り、PCCの方が投与までの時間が短く、投与するのに必要な水分量が少なく、INRがすぐに正常化し、心不全が少なかった。
予想通りでなかったのは、止血効果が同等だったことだろうか。ただし24時間後の時点での判定なので、PCC群の方が早く止血できたかどうかは分からない。でも死亡率も同じなので、PCCがすごく有効だ、とは言いにくい。
まあ、重症の外傷や脳出血は除外されているので、そもそも死亡率は低いのだけどね。

ちょっとイメージと違った。
PCCはFFPより凄いぞー、という結果がRCTでも見られると何となく思っていたので。
知らなかったのだけど、PCCにはプロテインCやSもたくさん入っているんだね。この研究ではいろいろな凝固因子の血中濃度を経時的に測定しているのだけど、PC/PSの濃度もPCC群の方が高い。そういうところも予後に差がつかなかった理由だったりするのだろうか。

Editorialに書いてあるけど、この研究以外にもすでに終わっているRCTが2つあるらしい。
NCT00618098
NCT00803101
どちらも200例程度。ガッツリとした結果は出ないかも。
ついでに言えば、3つとも製薬会社がスポンサーの研究。

うーん。
思ったほどの効果はないのかなー。
保険適応無視して日本でもやろーぜー、とまでは言えないのかなー。

ところで、Phase IIIbって何だ??
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治療選択と文献を読む数と出会い

2013年09月10日 | ひとりごと
先日、”有効かもしれない”治療をするかしないかで、ある科のお医者さんたちと10分くらいディスカッションをした。
何についてかは言わないけど、個人的にはその治療をやらないのが当たり前になっていて、何故自分がそう思っているかも忘れてしまっているくらいの話題だった。
慈恵ICUでは”有効かもしれない”治療についての話題はあまり出ないので、チョー久しぶりのlong discussion(10分だけど)だった。
で、ちょっと考えた。

ただし、
Phase IIIのRCTで有効性が示されていない治療のこととか、
Surrogate markerがどうこうとか、
First do no harmの話とか、
そんな話はつまらないので、やめておきますよ。

”有効かもしれない”治療を選択する人には2パターンあると思う。
一つは、その治療方法についての十分な情報を知識として持っていて、phase IIIで証明されていないことの問題点も理解した上で、自分なりに天秤にかけて、その治療を行うことを選択するパターン。
もう一つは、日本の学会に参加して聞いた話とか、薬屋さんからの情報とか、先輩に教わったからとか、その程度の理由で治療を選択していて、自分で調べたり文献を読んだりはしてないパターン。

この二つの鑑別は簡単。根拠を尋ねれば終了。
頻度も明白。後者が圧倒的に多い、はず。

で、こんな仮想研究を思いついた。
疾患Xに対して治療Yを行うかどうかについてアンケートして、その中から無作為にZ人ずつを選び、1ヶ月で読む文献の数を前向きに調査したらどうなるか。
XとYはありがちなやつで良い。例えば、
X=重症感染症、Y=ガンマグロブリン
X=敗血症性ショック、Y=PMX
X=ARDS、Y=ステロイド、シベレスタット
X=DIC、Y=トロンボモジュリン、AT III
X=脳梗塞、Y=エダラボン
X=SAH、Y=ファスジル
とか。いくらでもあるね。

XとYの組み合わせによっては、Z=10とか20くらいで有意差が出るんじゃないかという気がする。
あ、繰り返しますけど、”有効かもしれない”治療を選択する人すべてが後者とは言ってませんからね。
後者の方が多いだろう、という想像の話。

で、次にこう考えた。
文献をたくさん読んでいる方が、偉いのか?
患者予後を良くすることができるのか?
その根拠は?
うーん。そんな根拠は見たことが無いなー。
じゃあ、自分はなんで文献を読まないといけないと思っているんだろーなー。

あ。
分かった。

1:以前は自分も学会とか商業雑誌から情報を得て臨床をしていた。
2:文献を読んでいる人達に出会った。発言の内容が違った。文献を読むことの重要性を認識した。
3:読んでいると、書いてあることは基本的にどれも同じであることに気がついた。”有効かもしれない程度の根拠で治療を選択してはいけない”。

そっかー。
出会いが僕の治療選択を決めたんだな。

問題は、それが予後改善につながるのかどうか、だね。
いつか、証明はされるのか?
どうやったら証明できる?
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DICとトロンボモジュリン

2013年09月09日 | 消化器・血液
最近、アラフィフになった。
さすがに、当直の回数を減らそうかと思う。
もう、無理は出来ません。

Valerie J Page, E Wesley Ely, Simon Gates, et al.
Effect of intravenous haloperidol on the duration of delirium and coma in critically ill patients (Hope-ICU): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet Respiratory Medicine, Volume 1, Issue 7, Pages 515 - 523, September 2013


人工呼吸を必要とする患者さんに、ハロペリドールを予防的に投与するとせん妄を減らせるか、についてのRCT。一施設、141例、ハロペリドール2.5mgかプラセボを8時間毎に投与。結果は、予防効果無し。
ま、そうだわな。ハロペリドール欠乏がせん妄の原因じゃないもんね。

Alhazzani W, Lim W, Jaeschke RZ, et al.
Heparin thromboprophylaxis in medical-surgical critically ill patients: a systematic review and meta-analysis of randomized trials.
Crit Care Med. 2013 Sep;41(9):2088-98. PMID: 23782973.


ICU患者にヘパリンによるDVT予防は有益か、についてのメタアナリシス。7研究、7226例が対象。プラセボと比較して、ヘパリンの投与はDVT/PEを約半分に減らし、出血は増やさない。低分子ヘパリンは未分画ヘパリンよりも更にDVT/PEを減らす(リスク比0.62)。ただし、症例のほとんどはPROTECT studyから。
出血のリスクが無ければヘパリン皮下注がICUでも原則か?それなら間欠的空気圧迫はどうなるか。以前より情報が増えたけど、まだ7研究しか無いとも言える。もう一声欲しいところ。

Mokhlesi B, Hovda MD, Vekhter B, et al.
Sleep-disordered breathing and postoperative outcomes after elective surgery: analysis of the nationwide inpatient sample.
Chest. 2013 Sep;144(3):903-14. PMID: 23538745.


睡眠時呼吸障害(sleep-disordered breathing:SDB。SASとかのこと)の患者さんには、手術をすると呼吸器/循環器系の合併症がよく起こる。ASAでは術前にスクリーニングをして、必要なら治療することを推奨している。でも、その根拠はどれも小さいもので、更には死亡率とかのハードアウトカムの検討はされていない。
ということで、アメリカの巨大なデータベースを使い、整形外科手術、前立腺手術、腹部手術、心血管手術を受けた約100万症例(!)を対象に、術前に診断されていたSDBが予後に影響するかについて検討。手術の種類によってSDBの影響の程度や方向性は違うけど、だいたいの感じとしては、呼吸器系の合併症(緊急挿管、NPPVの使用、呼吸不全)が多く発生したけど、肺炎や気管切開の必要性や入院日数には大きな影響は無く(場合によってはSDB群の方が良い)、死亡率は低かった。
この話、obesity paradoxとの関係が深い。Obesity paradoxというのは、太っている人の方が生活習慣病などにはかかりやすいけど、同じ病気なら太っている人の方が予後が良い、というもので、いろいろな病態で言われている。今、流行りの話題の一つ。SDBの人は太っている人が多いので、術後早期の気道のトラブルは多いけど、よりハードなアウトカム(気管切開の必要性とか入院日数とか死亡率とか)には影響しないか、もしくは良い。
簡単に言えば、この患者さんはSASがあるから気道には気をつけよー、でも死なないからきっと大丈夫っていう感じ。

さて、本日のメインですが。
この文献、さらっと紹介するだけにしよーと思ったのだけど、中を読んでみると、思った以上に面白かったので、その面白さを伝えるためにメインにすることにした。

Vincent JL, Ramesh MK, Ernest D, et al.
A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Phase 2b Study to Evaluate the Safety and Efficacy of Recombinant Human Soluble Thrombomodulin, ART-123, in Patients With Sepsis and Suspected Disseminated Intravascular Coagulation.
Crit Care Med. 2013 Sep;41(9):2069-2079. PMID: 23979365.


DICを伴う敗血症に対するトロンボモジュリン(TM)の有用性について検討した、phase IIb研究。17カ国、233のICUで行われ、750例が対象。ちなみに筆頭著者は、泣く子も黙るJL Vincent。
その結果、DダイマーやTATなどの凝固線溶マーカーはTM群で低値(ただし二週間後には同じになる)。28日死亡率は、TM群17.8%、プラセボ群21.6%(片側log-rank p値は0.17)。

ここまでの結果は、メーカーのホームページに行けば分かることだし、いろいろなところで宣伝されているので、知っている人も多いはず。だからあっさり紹介してオシマイにしようと思ったのだけどね。
何が面白かったかというと。

まず、100例がenrollされたところで行われたinterim analysisで、思いのほかDICの発生頻度が低かったため(と書いてあるが、死亡率も低いことに驚いたはず)、当初はpower 90%で28日死亡率を評価する研究のつもりだったけど諦めて、片側p値が0.15以下だったら有効な可能性ありと考えて次の研究に進もう、という方針に変更したらしい。
変でしょう?だってKaplan-Meierのp値は0.17(両側p値が0.34)だよ。何ちゃらっていう統計学的な手法で層別化したら、片側p値が0.137になったので、それで次の研究に向かうことになったんだって。
ホームページのスライドを見る限り、単に、事前に決められていたp値を下回ったのでphase IIIに進むことになったという感じだったので、思っていたのと大分違った。

他にもね、ISTHのDICスコアが高い群ではTM群の方が死亡率が高かったり(36% vs. 34%)、死亡率以外のハードアウトカムはまったく同じだったり(例えばhospital-free daysはどちらも7.7日)。

一度読んだだけだし、supplementは見てないし。あまり大きなことは言いません。自分で読んで、評価してね。
ちなみに、この文献のeditorialは以下の文章で終わってます。

Should the development of ART-123 as an adjunctive treatment for sepsis with evidence of DIC be continued? Personally, I do not think it would be wise to do so; but, fortunately, people much smarter and better informed than me will be tasked with making this decision.
(DICを伴う敗血症の治療としてのトロンボモジュリンの有効性の検討を今後も続けるべきだろうか。個人的にはそうするのは賢くないと思う。でも幸運なことに、それを決めるのは、自分よりもずっとスマートで情報を持っている人の仕事。)

よかった。僕もスマートじゃなくて。
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ICUの原風景と宮崎駿監督

2013年09月07日 | ひとりごと
昨日は、こんな日。

ICUの原風景というタイトルの、何て言えばいいんだろう、写真集かな、がお手元に届いている施設もあるのでは。
多分、集中治療医学会の専門医認定施設か、評議員のいる施設に送られたんじゃないかと思う。
松本で3月に行われた集中治療医学会総会の企画で、集中治療関連の古い写真を集めたもの。
うーん。
カンファ中にも関わらず、ドキドキしながら熟読(熟見?)してしまった。
日本のICU(一部海外含む)の黎明期の写真。
人工呼吸器とか、モニターとか、数十年前のICUの状況がよく分かる。

これを見ながら、思い出したことがある。
ちょっと前に、あるセミナーで、ある高名なベテラン医師が、講演時間の半分位を使って、講演の主題とは全然関係のない、自分の医者人生について語ったことがあった。
どうしてこの人はこんな話をしているんだろうと思いながらも、これまたドキドキしながら聞いていた。

そして、宮崎駿監督の引退会見。
ちょーど昨日は仕事が半ドンだったので、さっさと帰宅して、テレビの前で正座して見た(嘘)。
プロデューサーの鈴木さんとは違って、あまり自分の考えていることをはっきり説明する人ではないけど、言いたいことはよく分かった気がした。
とっても残念だけど、納得。

あれ?
相当いろいろ考えた一日だったのだが。
筆が進まない。すらすら書ける人が羨ましいね。

まあ、歴史って大事だなー、ということですよ。
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運動します。

2013年09月04日 | ひとりごと
6月に受けた職場健診の結果がかえってきた。
いつも”経過観察”だった項目が”要医療”になった。
もう諦めるしかない。
子供の頃から嫌いだった、”運動”というものを始めるしかない。
興味がないというのは恐ろしいもので、自宅から徒歩3分のところにジムがあることを調べて初めて知った。
若いにーちゃんの号令とともに、自転車を30分こいだ。
フラフラになり、動けなくなった。
ふと、こういうときは血圧も低いのだろうか、と思い、更衣室にあったNBPで測ってみると、90/60mmHg。
Fluid resuscitationはしていたので、ノルアドの適応か?
いやいや、平均血圧は70mmHgあるから大丈夫。
フラフラになってもこういうことを考えるのは職業病と呼ぶのだろうか。

Wen CP, Wai JP, Tsai MK, et al.
Minimum amount of physical activity for reduced mortality and extended life expectancy: a prospective cohort study.
Lancet. 2011 Oct 1;378(9798):1244-53. PMID: 21846575.


とりあえず、週に90分運動をすればいいらしい。
健康第一。
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絞れないので絞らない-2

2013年09月03日 | その他
さあ、パート2はNEJMとかよりはマイナーな雑誌から。
でもimpact factor的には全然メジャーの範疇の雑誌が多いけど。

Lopez-Olivo MA, Pratt G, Palla SL, et al.
Rasburicase in Tumor Lysis Syndrome of the Adult: A Systematic Review and Meta-analysis.
Am J Kidney Dis. 2013 Sep;62(3):481-92. PMID: 23684124.


成人の腫瘍崩壊症候群に対するラスブリカーゼの有効性についてのメタアナリシス。RCTが4つ、観察研究が17、合計1261例が対象。RCTでは、腫瘍崩壊の発生頻度はコントロール群と同等。観察研究では、93.4%で尿酸が正常化し、7.4%に腫瘍崩壊が発生し、4.4%にAKIが発生。RCTのアウトカムはバラバラで、メタアナリシスはできなかった。
ふーん。
実は、ラスブリカーゼって発売後しばらく全然知らなくて、どこかに講演に呼ばれたときにこの話題が出て、やべ、全然知らねーぞ、と思った記憶がある。でもその後もちゃんと勉強せず、何度か血液内科のお医者さんが使っているのを見たことがあるくらいだったけど、たいしたこと無い薬ってこと?

Parra MW, Zucker L, Johnson ES, et al.
Dabigatran bleed risk with closed head injuries: are we prepared?
J Neurosurg. 2013 May 1. [Epub ahead of print] PMID: 23634730.


アメリカのある外傷センターに4ヶ月の間にやってきた頭部外傷のうち、5例はダビガトラン、15例はワーファリンを飲んでいて、25例はどちらも飲んでいなかった。CTの再検で出血が増悪していたのは、ダビガトランで4/5、ワーファリンでは3/15。死亡例はダビガトランが2/5、ワーファリンはゼロ。
ただこれだけの、小さい観察研究なんですけどね。怖いなーと思って。
この施設では、この結果を受けてプロトコールを作ったんだって。出血していたら全例で透析するらしい。そこまでしないといけないのかなー。今後の研究に要注意。
幸運なことに、まだダビガトラン内服中の脳出血/頭部外傷には出会ったことがない。

Chikata Y, Oto J, Onodera M, Nishimura M.
Humidification performance of humidifying devices for tracheostomized patients with spontaneous breathing: a
bench study.
Respir Care. 2013 Sep;58(9):1442-8. PMID: 23386732.


徳島の西村先生のところからの研究。気管切開中のHME(いわゆる人工鼻)の加湿効果について、in-vitroでいろいろな条件を変えて評価。結論は、気切患者に対するHMEの加湿効果は不十分。
呼吸抵抗になるし、自発呼吸でのHMEはあまり好きではありません。加湿もダメなのね。ふむふむ。

Schaetzel, Shaina MD; Juern, Jeremy MD; Kiehl, Kristen; Xiang, Qun MS, et al.
The effect of suturing on force for dislodgement of tracheostomy tubes: Medial versus lateral sutures.
Journal of Trauma and Acute Care Surgery: September 2013 - Volume 75 - Issue 3 - p 492-495

(何故かMedLineで見つからない)

厚紙で首と気切孔の模型を作り、1:気切チューブだけ、2:普通にひもで固定、3:ひもで固定して気切チューブの両横を縫う、4:ひもで固定して気切チューブの上下を縫う(意味が分からない人は、文献の写真を参照)の4つの状態を作り、”尾”側45度にゆっくり引っ張って、どの固定方法が一番安定か(抜けないか)について検討。PortexとShileyの2つを使用(つまり、4x2の実験)。その結果、チューブの上下を縫うのが一番安定。PortexとShileyでは、プラスチックの固いShileyの勝ち。

まだ瘻孔形成ができていない時期(1週間以内とか、患者さんによっては2週間とか)に気切チューブが抜けてしまって、恐ろしい思いをしたことがある人は、二度と抜けないように縫っているのでは。
慈恵でも縫ってます。ただ、どこを縫うかまでは決まってないので、これを読んで上下が良いことを確認。

まだ気切チューブで怖い思いをしていない方へ。
悪いことは言わないから、縫いなさい。上下ね、上下。
あなたの幸運が続きますように。

パート1と2を見比べると、2の方が明らかにコメントが長い。
やっぱり、impact factorが低い雑誌の方が面白いんだよねー。
コメント
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