Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

集中治療系雑誌のimpact factor 2023

2024年06月25日 | その他
梅雨はほぼありませんが、こちらの季節は今年もちゃんとやって来ました。

・コロナインフレの終了感がいよいよ強くなった
・1位と2位は変わらないが、Crit Careは単独3位から昔のレベルに戻った
・そういう意味でChestの変化のなさは逆にすごい
・JICも残念ながら目立つ雑誌ではなくなり、以前のポジションへ
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ICUにおける血糖コントロールを科学する、浮き沈みしながらの旅

2024年03月24日 | その他
Van den Berghe G, Vanhorebeek I, et al.
Our Scientific Journey through the Ups and Downs of Blood Glucose Control in the ICU.
Am J Respir Crit Care Med. 2024 Mar 1;209(5):497-506. PMID: 37991900.


1990年代に重症患者の血糖についての研究を始め、Intnesive Insulin Therapyが2001年にNJEMに発表されて喝采を浴び、NICE-SUGARでボコボコにされながらも、2023年に多施設RCTをまたNJEMに載せるまでの過程、というか旅を、Van den Berghe先生本人が書いたレビュー。

ほんと、すごいエネルギー。
知り合いにもいるけれど、何かを成し遂げる人はこういう人なんだなー、とつくづく思う。
エネルギーだけでなく、もちろん頭脳も必要だし、さらには周りを納得させる人格も必要。
ただただ尊敬です。
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病院のコーヒーメーカーは病原菌を媒介するか?

2023年12月24日 | その他
毎年恒例のBMJ。今年はこれが楽しかった。

Walker SV, Boschert AL, Wolke M, Wetsch WA.
Bug in a mug: are hospital coffee machines transmitting pathogens?
BMJ. 2023 Dec 18;383:p2564. PMID: 38110232.


院内の17台と医療者の家庭用の8台のコーヒーメーカーから5箇所ずつ培養検体を採取。
緑膿菌やアシネトバクターといった医学的に意義のある菌は家庭用のコーヒーメーカーでは見つからず、病院だけで見つかった。
多剤耐性菌は一つも検出されなかったので、"a general ban on coffee makers doesn’t seem necessary"ということになったけど、研究時点で多剤耐性菌が院内で問題となっていなかったのが大きな理由かもしれない。
実際、この研究結果が発表された以降、"All but one of the coffee machines are still in use—although now being cleansed regularly"という状況になっているそうだ。
みなさん、気をつけましょう。

「ICUでメリークリスマス」というタイトルでChat先生に絵を描いてもらった。

さすがにそれは。。。

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2型DMのICU患者に対するSGLT-2阻害薬

2023年06月19日 | その他
Mårtensson J, Cutuli SL, Osawa EA, et al.
Sodium glucose co-transporter-2 inhibitors in intensive care unit patients with type 2 diabetes: a pilot case control study.
Crit Care. 2023 May 16;27(1):189. PMID: 37194077.


この研究は僕が留学していたオーストラリアのICUで行われていて、Dr. Rinaldo Bellomoの指導で行われたと思われる。
確かに、アイデアも良いし、誰もやっていないし、SGLTは複数の意味でタイムリーな薬。でもそれが、1施設の後ろ向き研究で介入群のNが18しかないのに、Crit Careに掲載される理由になるだろうか。

僕も、リナルドに「こういう研究をやれ」と言われ、前向きや後ろ向きにデータを集め、解析して図表を作り、それでOKが出たら文献の草稿を書いてリナルドの修正を受ける、ということを何度もやった。勝手な想像だが、この文献のfirst authorも同様な立場ではないか。そしてそういう風にして書かれた文献は、多くの場合それなりの雑誌に掲載される。最近、1施設の後ろ向き研究のリジェクトの嵐を自分の周りでよく見ているので、もうこういう研究は載りにくい時代になったのだな、と思っていた。だから今回のはビックリした。
で、思ったこと。リナルドのネームバリューというのも否定はできないけど、「書き方の違い」というのも大きな理由じゃないだろうか。

僕も、研究ネタの提供から原稿を投稿するところまでを若者に指導するというのを、これまで数十人に対してやってきた。指導って、とにかく難しい。モチベーションの維持とか、たくさんハードルはあるのだけど、一番難しいのが英語の執筆、特にディスカッション(何度か書いた話題なので、宜しければこちらから過去ログをご覧ください)。
リナルドに原稿を渡すと真っ赤になって帰ってくる。文章のレベルが違うというか、とにかく別物になる。それと同じことに毎回挑戦するのだけど、全然上手くできない。もちろん英語力の問題もあるけど、それだけじゃない。なんか、絶対的な能力差がある。

僕がこの文献を紹介することにした理由。ディスカッションが素晴らしい。書くべきことが書くべきところに書いてある。
あまり文献を書き慣れていない方へ。方法と結果をまず読んで、自分ならどう書くかを想像してからディスカッションを読んでみてほしい。英語の表現も参考になるけど、それよりも、「何をどこにどう書くか」に注目してみて。
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CVC関連血栓症の超音波による評価

2023年04月12日 | その他
Wu C, Zhang M, Gu W, et al.; Study Group of Central Venous Catheter-related Thrombosis.
Daily point-of-care ultrasound-assessment of central venous catheter-related thrombosis in critically ill patients: a prospective multicenter study.
Intensive Care Med. 2023 Mar 9. Epub ahead of print. PMID: 36892598.


しばらくCVや透析カテが入っている患者さんに造影CTを撮ると、高頻度に血栓が見つかる。そうするとカテの抜去だとか抗凝固だとか、みんなザワつく。
ずっと不思議だった。造影CTをしたから見つかっただけで、つまりは造影CTをしていない患者さんでも高い確率で発生しているはずなのに、造影CTをした時だけ問題視するのは変じゃないのか、と。
でも、PubMedで調べても癌とか長期経静脈栄養とか透析患者の話ばかりでICUの情報はほとんど見つからないし、血栓関連のガイドラインには記載がないか、あったとしても通常の血栓と同様の対応をするとかしか書いてなくて、根拠の無さにいつも困っていた。

この研究はどうしたらいいかという直接の疑問には答えてくれない。でも、発生頻度が高いこと、早ければ1日目からエコーで見つかるくらいの大きさの血栓ができること、抜去するとだいたい縮小すること、などは教えてくれる。
今後の研究に期待。

中国の多施設研究。
以前は中国の研究と言えば、メタ解析か、それ結果見えてるだろという感じの二番煎じのものが多かったけど、もうそんな時代じゃないね。この記事を書いたのが5年前。もう負けているどころか、完全に置いて行かれた。
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白髪

2023年02月14日 | その他
僕のことかな?と思って読んでみたら。

A Piece of My Mind: Gray Hair
Dean A. Seehusen
JAMA. 2023;329(5):369-370. doi:10.1001/jama.2022.24577


僕のことだった。ICUの隅の部屋でぼーっとしていると、たまに質問しに来る人がいる。
みんな、同じこと考えるんだな。

全然違う話なんだけど、
医学以外の英語って、読むのがほんと難しい。
理解度も読む時間も、英語で読む<=Safariの和訳<<DeepLにコピペして読む、だった。DeepLの圧勝。
コピペもCommand押しながらCを2回押すだけだし。

便利だが、いよいよ英語の読解力が落ちていく。。。
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病は気からと言うけれど。

2022年12月21日 | その他
どちらもJAMA Surgeryから。

Writing Group for the CODA Collaborative
Association of Patient Belief About Success of Antibiotics for Appendicitis and Outcomes: A Secondary Analysis of the CODA Randomized Clinical Trial.
JAMA Surg. 2022 Dec 1;157(12):1080-1087. PMID: 36197656.

「虫垂炎を抗菌薬で治療しても無理だろ」と患者さんが思っていると、実際に手術が必要になる確率が高くなる。

Shen MR, Suwanabol PA, Howard RA, et al.
Association Between Loneliness and Postoperative Mortality Among Medicare Beneficiaries.
JAMA Surg. 2022 Nov 16:e224784. Epub ahead of print. PMID: 36383393.

孤独を感じている患者さんは非心臓手術後の死亡率が高い。

「病は気から」は慢性疾患だけでなく、急性疾患でも成立するらしい。
ということは、ICUでも同様かも。典型例は長期在室している(多くは気切された)患者さん。「鬱っぽくってリハビリが進まない」だけでなく、気分や感情が治癒過程に影響している可能性はあるかも。

ちょっとPubMedで調べてみたが、研究はほぼ見つけられなかったけどね。
あ、ということは、良い研究ネタかも?
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女性医師の方がCVも上手い。

2022年11月26日 | その他
Adrian M, Borgquist O, Kröger T, et al.
Mechanical complications after central venous catheterisation in the ultrasound-guided era: a prospective multicentre cohort study.
Br J Anaesth. 2022 Dec;129(6):843-850. PMID: 36280461.


Major mechanical complicationの発生頻度は、Male operator genderのオッズ比が3.33 (p=0.003)。
Limited operator experienceと同じくらい(OR 3.11)。
男どもよ、もっと丁寧にやろうぜ。

医者の男女比較についての過去ログ。
日本における男性外科医と女性外科医の手術経験格差
集中治療医学会の理事会における性別の分布
COVIDが女性による論文投稿に与えた影響
ケースレポートの採用率の性差
集中治療医の性差
女性医師がCPRのリーダーをすると、
集中治療女子
外科医の性別と予後
蘇生チームの性差
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ウェアラブル超音波

2022年11月11日 | その他
Kenny JS, Munding CE, Eibl AM, et al.
Wearable ultrasound and provocative hemodynamics: a view of the future.
Crit Care. 2022 Oct 25;26(1):329. PMID: 36284332.


エコーがどんどんICUに入ってきている。
ついにスマホとプローブだけでできるようになった。
近未来にはそれすら不要になる。

エコーによる診療方針の決定が患者さんに有益なのか。特に循環管理はどうか。
難しい問題はあるけれど、技術の進歩は止められない。
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2型糖尿病患者の血糖コントロール

2022年10月20日 | その他
Poole AP, Finnis ME, Anstey J, et al.; LUCID Study Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group (ANZICS CTG).
The Effect of a Liberal Approach to Glucose Control in Critically Ill Patients with Type 2 Diabetes: A Multicenter, Parallel-Group, Open-Label Randomized Clinical Trial.
Am J Respir Crit Care Med. 2022 Oct 1;206(7):874-882. PMID: 35608484.


ANZICS-CTGのPhase IIb。DM患者では血糖のターゲットが高い方がいいという観察研究がいくつかあり、それを検証するためのphase III RCTの前段階として、低血糖の発生をprimary outcomeとしたRCTをやった。血糖ターゲット:180-252 vs. 108-180 mg/dl、N=419。その結果、低血糖は高いターゲットの方が少なかったが、死亡率が高くなった(29.5% vs. 24.9%, p=0.29)。

興味深い点が複数。
1:ここでも観察研究に基づく仮説が裏切られた。低血糖は悪い、DMでは高血糖でも良い、その両方。残念。
2:ANZICSともなると呼吸とは何の関係もない血糖でAJRCCMに乗りますか。さすがです。
3:Primary outcomeは予定通り、でも死亡率が高くなった、でも有意差はない。さて、ANZICSは次をどうするんだろう。文献内にはphase IIIについての記載は無いように思う。他にも研究はたくさんあって暇では無いから、少なくとも優先はされないんだろうな、きっと。

ベルギーの1施設RCTから始まった血糖論争。21年の時を経て、そろそろ終結かな?
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