Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUにおける終末期の倫理コンサルテーション

2025年03月25日 | 終末期医療
Semler LR, Robinson EM, Cremens MC, Romain F.
An End-of-Life Ethics Consult in the ICU: Who Has the Final Say-The Patient or the Family?
Chest. 2025 Mar;167(3):825-830. PMID: 39490970.


膵臓癌の患者さんが呼吸不全でICUに入室。理由は多分肺メタ(その時点でどうかと思うが)。
患者さんの意識がしっかりしている時に、ICUで家族1名と医療者の前でCPRも挿管も拒否した。
しかし意識が悪くなってから、本人の意思を聞いていない家族からfull codeに戻せと言われた。
さあ、どうする?

という仮想症例を提示し、複数のオプションについてディスカッションしている。
結論は、患者の意思を尊重しましょう。そしてその後に何が起こった(仮想だけど)について少しドラマチックに書いてある。
読み物としてちょっと面白い。

あなたな〜ら、ど〜する〜?
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ICUにおける代理意思決定者のための4つの支援介入

2025年03月07日 | 終末期医療
Butler RA, Seaman JB, Felman K, et al.
Randomized Clinical Trial of the Four Supports Intervention for Surrogate Decision-Makers in Intensive Care Units.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 Mar;211(3):370-380. PMID: 39586017.


家族への介入は難しい、ことを示した研究がまた一つ(前回の紹介はこれかな?)。
この文献のeditorialに、介入がnegativeだった理由として、
・more intensive psychological and coping support is needed
・there may have been a ceiling effect for the intervention’s additional support
の記載がある。
1つ目は、仮にそうだとしても、RCTで行われるような介入以上のことを実臨床に導入するのは相当難しいだろうと思うけど、2つ目はちょっとアリかもという気がした。つまりこういう研究に興味を持って参加しようと思う施設は、すでにそれなりの介入を実臨床で実施ているのではないか、という可能性。もしそうなのであれば、「家族介入なんて無効だからやめちゃお」という結論は間違いということになるので、ちょっと安心した。
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代理意思決定者の後悔

2023年03月15日 | 終末期医療
Andersen SK, Butler RA, Chang CH, et al.
Prevalence of long-term decision regret and associated risk factors in a large cohort of ICU surrogate decision makers.
Crit Care. 2023 Feb 16;27(1):61. PMID: 36797793.


Decisions to limit life support prior to patient death may also increase regret.

ディグニティとかオートノミとか言っているけど、
死んじゃった人よりも生きている人の方が大事じゃないのか?
と聞かれると、ちょっと返事に困る、という面はある。
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ICUでのtime-limited trial

2023年02月28日 | 終末期医療
Popovich JJ, Budnick I, Neville TH.
Time-Limited Trials of Intensive Care Unit Care.
JAMA Intern Med. 2023 Feb 13. Epub ahead of print. PMID: 36780155.


70代の膵癌による癌性腹膜炎。入院中に十二指腸潰瘍の出血でショックになった。家族と相談し、止血と48時間のICUケア後に治療方針を再検討することとなりICU入室。最終的に患者さんはホスピスに転院することができるまで回復した。

TLTはICUでfutitleな治療を継続しないようにするために推奨されている印象があるけど(例えばこれとかこれとか)、このケースは、普通なら治療制限を設けて病棟で死亡しそうなケースでもTLTによって回復の機会が得られるかも、というパターン。
ちょっと、なるほどー、と思った。
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英国ICUにおける生命維持療法中止の決定と患者の死亡率の関連

2022年04月29日 | 終末期医療
Maharaj R, Harrison DA, Rowan K.
The Association Between the Decision to Withdraw Life-Sustaining Therapy and Patient Mortality in U.K. ICUs.
Crit Care Med. 2022 Apr 1;50(4):576-585. PMID: 34402458.


イギリスのICUデータベースである ICNARCを使った研究、247施設、約80万例。
ちょっと難しい統計を使っているが、結論は、治療制限をするかしないか微妙な患者さんに治療制限を設定すると、180日死亡率は25.6%高くなる、と。

理由は簡単で、治療制限は生存の見込みがほぼないと医療者が思った患者さんに対して設定されるけど、その予測精度は100%ではないので、治療継続したら生存したかもしれない患者さんが死亡するから。この研究だけでなく過去にも複数の研究で示されているし、この現象は事実でしょう。

でも、もう少し話は複雑なのではないかと思う。
あるICUにおける治療制限の設定頻度が低いと、死ななくてもいい患者さんが生存する代わりに、
・ICU在室日数が延びる
・コストが高くなる
・医療者のストレスが増える
というデメリットがある。

・在室日数が延びると、患者の受け入れができなくなるので病棟の重症患者が増え、ICUに来れなかった患者さんの予後が悪くなり、その患者さんの対応のために他の患者さんの診療の質が低下し、全体の予後が悪化する可能性がある。
・日本ではコストが増えても診療には影響をほとんど与えないけど、例えばオーストラリアのように1つのICUで年間に使える金額が決まっているようなところでは他の患者に悪影響を与える可能性がある。
・医療者のストレスはバーンアウトにつながり、医療の質の低下に関連する。

つまり、治療制限の対象となる患者さんの死亡率が低下する代わりに、その病院全体の医療の質は低下するかもしれない。それがどの程度かは分からないけど、少なくとも、今回の研究の”25%の死亡率低下”という効果は減弱することは、多分、間違いない。

予後予測の精度が今よりも驚くほど高くならない限り、重症患者の治療を継続するべきか治療制限を設定するべきかという、ジレンマというかコンフリクトは続くのでしょう。
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「私の主治医への手紙」は1分で読める簡単な英語で書いてあるけど、とても大事な手紙。

2022年03月12日 | 終末期医療
Kanaris C.
A letter to my doctors.
Intensive Care Med. 2022 Jan;48(1):135. PMID: 34599388.


PICUのDrが書いたもの。
でも、小児だけに当てはまる話じゃない。

何が正しいかは分からない。

「助けられないってどうして言い切れるんだ?」
「患者さんにできる限りのことをしてあげるのが集中治療じゃないのか?」
「あんなに具合が悪かったのに助かった人もいたじゃないか。」
「ベストを尽くさないで悔いは残らないのか?”」

そうかも知れない。

でも、この詩の最後、
”Would You listen to me if I could talk? Or would You do it all again because I couldn’t?
って、
"because you could"
でやれることを全部やったけど亡くなった患者さんにもし言われたら、何て答えればいいんだろう。

この文献の右下に、小さい字でこう書いてある。
ちょっとイマイチな訳だけど、DeepLをそのままコピペ。
「(この手紙は)私たちが積極的な介入に失敗した子どもたちに捧げるものです。私たちが救うことのできなかった子どもたちに。救えるからと言って、必ずしも救わなければならないわけではないことを教えてくれた子どもたちに。この十字架は私たちが背負う最も重いものであり、申し訳なく思っています。」

重い。
重いね。
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ICUで死期が迫った患者親族に対する3ステップの支援戦略は、言うは易く行うは難しだ。

2022年02月14日 | 終末期医療
Kentish-Barnes N, Chevret S, et al.
A three-step support strategy for relatives of patients dying in the intensive care unit: a cluster randomised trial.
Lancet. 2022 Jan 19 Epub ahead of print. PMID: 35065008.


3ステップというのは、治療制限を決定するミーティング、ベッドサイドでの対応、そして死亡後のミーティングのことなのだけど。具体的な内容がTable 2に書いてあるので、DeepLで翻訳してみると。

ステップ1:死の準備(医師と看護師の共同作業)
・患者の死が間近に迫っていることに親族が備える
・親族に質問する機会を与える
・親族が感情や感覚を表現する機会を与える
・親族が患者に話しかけ、別れを告げるように促す
・死亡時の立ち会いについて話し合う
・患者の身体的ケアへの関与の可能性について話し合う
・スピリチュアルな信条やニーズについて話し合う

ステップ2:臨死過程と死の間、病室で(医師と看護師が別々に)。
・親族の感情的なニーズに応える
・積極的な傾聴
・物質的なサポートを提供する(例:椅子、コップの水)
・精神的な修行について話し合う
・患者支援における親族の意義と緩和ケアの考え方について話し合う。
・不明な点を確認し、質問に答える
・親族のコミットメントを強調する

ステップ3:患者さんの死後(医師と看護師の共同作業)
・お悔やみを述べる
・患者のICU滞在と死に関する質問を促し、疑問を解決する。
・行政手続きについては、特定の専門家を案内する。
・後日、ICUチームとの面会を提案する
・共感を示し、感情を表現する機会を親族に与える。

介入群では、これらがほぼ90%以上行われている。
どれも特別なことではないけれど、実際にやろうと思うと、相当大変じゃないだろうか。

日本では、mandatory consultationだけでなくclosed ICUと自分たちを呼んでいるところでも(救命センターのような単科のICUを除き)、家族への説明は主に担当科が行うICUは少なくないのでは。でも、不特定多数の医師が説明すると、それなりの頻度でヤバイ医者はいるし、この文献で言うところの"ICU team"の意義は日本でも相当高いはず。

あとは行動あるのみ。というのは簡単。
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アドバンス・ケア・プランニングの何が問題なのか?

2021年11月02日 | 終末期医療
Morrison RS, Meier DE, Arnold RM.
What's Wrong With Advance Care Planning?
JAMA. 2021 Oct 26;326(16):1575-1576. PMID: 34623373.


この本でも、このWebサイトでも、ACPの重要性は強調されている。
しかし、エビデンスはその有効性を必ずしもサポートしていない。

Rapid responseと同じで薬じゃないから、とりあえずやれば予後改善するでしょ、というものではない、ということか。
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集中治療に対するICUスタッフの"好み"

2021年10月03日 | 終末期医療
Preferenceの和訳って、好み以外にあるのかな。ちょっとニュアンスが違う気がするのだけど。

Anstey MH, Mitchell IA, Corke C, et al.
Intensive care doctors and nurses personal preferences for Intensive Care, as compared to the general population: a discrete choice experiment.
Crit Care. 2021 Aug 10;25(1):287. PMID: 34376239.


オーストラリアの研究。以前、一般の人に行ったのとほぼ同じ内容のアンケートを13のICUのスタッフ(医師233名、ナース747名)に対して行った。
「今、あなたはICUに入院しています。1週間の治療を受けてきましたが良くならず、死亡率が50%、生存したとしても寝たきりになる確率が50%あります。」
みたいな質問。
興味深い結果をまとめると、

・同じ状況を提示された時に、一般人の方がICUスタッフよりも治療中止を選択しやすい。
・ICUスタッフの方が、ICUでの治療期間の延長が治療中止の選択に影響しやすい。
・約30%で、自分が同じ状況になった時に、患者さんに対して行う選択と異なる選択をした(多くは、患者さんなら治療継続するけど自分なら中止する)。
・スタッフの特徴によって選択肢が異なる(女性は治療を中止しやすい、子供がいると継続しやすい)。

一般人よりも治療中止を選ばないけど、治療期間が延びると中止しやすくなる、というのは医学的に正しい判断。最初は未来の予測は難しいけど、時間が経てば経つほど容易になっていくから。この結果を、TLTという概念をICUの医療者は理解しやすい、という風に解釈することは可能では。

自分か患者かどうかで判断が異なる、医療者の背景によって判断が異なるというのは、もし治療中止を科学とするなら(そうあるべきだと思う)、望ましいことではない。そういう意味でもAdvanced Care Planningは大事。

TLTとACP。
日本のICUでも普通に使われる言葉になることを期待。
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終末期の意思決定のパンフレット

2021年08月02日 | 終末期医療
Robin S, Labarriere C, Sechaud G, et al.
Information Pamphlet Given to Relatives During the End-of-Life Decision in the ICU: An Assessor-Blinded, Randomized Controlled Trial.
Chest. 2021 Jun;159(6):2301-2308. PMID: 33549600.


ICUで終末期の意思決定をしなければいけなくなった家族にICU患者の終末期についてのパンフレットを配るかどうかでRCTしたら、配った方がPTSDが減った。

やったことはパンフレットを配っただけだし、Single-center sutdy(同じ病院の3つのICU)だし、5年近くやって94人しかenrollされていないし、evidence levelとしては高くないけれど。
簡単にできるし、害はなさそうだし。
日本語で誰か作って、それを日本中で使ったらどうかな?

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