Guinot PG, Evezard C, Nguyen M, et al.; Lactel Study Group.
Treatment of Acute Circulatory Failure Based on Carbon Dioxide-Oxygen (CO2-O2) Derived Indices: The Lactel Randomized Multicenter Study.
Chest. 2025 Apr;167(4):1068-1078. PMID: 39615831.
僕はCO2ギャップやScvO2を臨床で使ったことが(ほぼ)なかった。「そこじゃないだろ」と思っていたので。今でもそう思うけど、その辺はこの文献のeditorialに書いてあるので、違う話をする。
少し極端なことを言えば、乳酸は循環不全によって産生されるものではなし、循環不全の指標でもない。この文献のIntroductionには、
"At the bedside, even though arterial lactate clearance may not always be associated with tissue hypoperfusion, it remains the most commonly used surrogate for hemodynamic resuscitation."
「ベッドサイドでは、動脈乳酸クリアランスが必ずしも組織低灌流と関連するとは限らないとはいえ、血行動態蘇生の代用として最も一般的に用いられている。」
という、ちょっと中途半端な書き方をしている。もしかしたらrevewerから突っ込まれて渋々記載したのかもしれないが、今回の研究の根本となる仮説を自分で半分否定しているところは面白いし、根拠として弱いことを示している。
教科書には、乳酸の産生には2タイプあって的なことが書いてあるが、もう面倒なのでそういう考え方はやめたらどうかと思う。区別はつかないし、きっと両方が同時に起こっているだろうし。それよりも、もっとシンプルに、「乳酸は重症度の指標」、もしくは「乳酸は患者さんの悲鳴の象徴」とでも考えたらどうか。つまり、
循環不全が起こる→末梢などで乳酸が産生される→循環を改善する介入を行う→乳酸が下がる→患者さんにとって良いことが起こる
というのは、高乳酸血症の原因が複数あるので成立せず、本研究を含む過去の介入研究の多くで乳酸は低下していないことから、無理がある。なのでこの考え方はやめて、
患者さんの具合が悪くなる→その指標として乳酸が上がる→なぜ具合が悪いか考えて対応する→患者さんの具合が良くなる→乳酸が下がる
と考えた方が間違いが少なく、無駄な介入をしなくなり、結果的に良いことが起こるのではないか。どちらの考えでも結局は同じことをするのだから一緒じゃないかと反論されるかもしれないが、ベン図が完全に重なっているわけではなく、質的な表現しかできないけど、その重なった部分は大きくない、はず。
とりあえず、高乳酸血症を見たら、循環不全か?と考えるのをやめて、具合が悪いか?と考えるようにしてみないかい?
Treatment of Acute Circulatory Failure Based on Carbon Dioxide-Oxygen (CO2-O2) Derived Indices: The Lactel Randomized Multicenter Study.
Chest. 2025 Apr;167(4):1068-1078. PMID: 39615831.
僕はCO2ギャップやScvO2を臨床で使ったことが(ほぼ)なかった。「そこじゃないだろ」と思っていたので。今でもそう思うけど、その辺はこの文献のeditorialに書いてあるので、違う話をする。
少し極端なことを言えば、乳酸は循環不全によって産生されるものではなし、循環不全の指標でもない。この文献のIntroductionには、
"At the bedside, even though arterial lactate clearance may not always be associated with tissue hypoperfusion, it remains the most commonly used surrogate for hemodynamic resuscitation."
「ベッドサイドでは、動脈乳酸クリアランスが必ずしも組織低灌流と関連するとは限らないとはいえ、血行動態蘇生の代用として最も一般的に用いられている。」
という、ちょっと中途半端な書き方をしている。もしかしたらrevewerから突っ込まれて渋々記載したのかもしれないが、今回の研究の根本となる仮説を自分で半分否定しているところは面白いし、根拠として弱いことを示している。
教科書には、乳酸の産生には2タイプあって的なことが書いてあるが、もう面倒なのでそういう考え方はやめたらどうかと思う。区別はつかないし、きっと両方が同時に起こっているだろうし。それよりも、もっとシンプルに、「乳酸は重症度の指標」、もしくは「乳酸は患者さんの悲鳴の象徴」とでも考えたらどうか。つまり、
循環不全が起こる→末梢などで乳酸が産生される→循環を改善する介入を行う→乳酸が下がる→患者さんにとって良いことが起こる
というのは、高乳酸血症の原因が複数あるので成立せず、本研究を含む過去の介入研究の多くで乳酸は低下していないことから、無理がある。なのでこの考え方はやめて、
患者さんの具合が悪くなる→その指標として乳酸が上がる→なぜ具合が悪いか考えて対応する→患者さんの具合が良くなる→乳酸が下がる
と考えた方が間違いが少なく、無駄な介入をしなくなり、結果的に良いことが起こるのではないか。どちらの考えでも結局は同じことをするのだから一緒じゃないかと反論されるかもしれないが、ベン図が完全に重なっているわけではなく、質的な表現しかできないけど、その重なった部分は大きくない、はず。
とりあえず、高乳酸血症を見たら、循環不全か?と考えるのをやめて、具合が悪いか?と考えるようにしてみないかい?