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Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

JIPAD年次レポート、2023年度版

2025年04月03日 | データベース・JIPAD
気がついたら出ていた。3/10、つまり学会前に出ていたようだ。
もうJIPAD情弱になってしまった。

最新のレポート(2023年度版)

129施設、1593ベッド、109,652例。
ついに施設数が100、症例数が10万を超えた。パチパチパチー。
2023年度の日本のICUの数は733、ベッド数は7008なので、ベッド数のカバー率は20%を超えたことになる。
もう立派なnational databaseじゃないですか?
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JIPADデータの使い方

2025年01月06日 | データベース・JIPAD
初めてJIPADデータを使って研究する人に、毎回必ず言うことがある。
まとめて書いておけば、次からは「これを読め」と言えば済むので、ここにまとめておく。

・ICUでの手技を除外
入室形式が"ICUの手技"の症例はICU患者としての研究対象には含まない方がいいので、最初に除外する。

・Type of admissionの作り方
JIPADには、入室形式、入室経路、入室区分という、ちょっと似た感じの分類が3つある。このまま研究に使用すると、Table 1もそれを使った多変量解析も変な感じになってしまう。JIPADの収集項目は基本的に僕が決めたのだけど、これは手本となった ANZICS-APDが収集していた項目だからであって、僕のせいじゃない。で、研究するときはどうすれはいいかというと、主に入室経路を用いて分類し、手術室だけは入室区分を使って予定手術と緊急手術に分ける。最終形は、
予定手術、緊急手術、病棟、救急外来、転院直入、その他
になり、いい感じ。

・敗血症は使わない、infectionを使う
主病名コードにある敗血症は他のコードに分類できない感染症が対象となる(カテ感染とかフォーカス不明とか)。なのでそのまま利用してしまうと敗血症が数%しかいなくなり、Table 1が変な感じになる。なので、敗血症は”その他”に分類し、辞書の182ページにある感染症コード表を用いて"Infection"という項目を主病名コードとは別に作成する。

・副病名コードは使用しない
話が長くなるので理由は割愛するが、副病名コードはJIPADでは使用していない。具体的には年次レポートには含まれていないし、入力チェックのためのクエリ制度や不定期チェックでも対象になってない。じゃあ何のためにあるかというと、各施設で統計情報として好きに利用してもらうため。なので研究には使用しない。

・慢性疾患の分類方法
JIPADの慢性疾患は全部で10種類あるのだが、これはAPACHE IIとIIIとSAPS IIを全て算出可能にするため。なので研究で使用するときは少し工夫が必要。
1:白血病/多発性骨髄腫とリンパ腫が分かれているので、これを"hematological malignancy"として一つにまとめる。
2:肝不全は肝硬変がYesであることが前提なので、使用しない。
3:AIDSは症例数が極端に少ないので免疫抑制にまとめる。
最終的に、心不全、呼吸不全、肝硬変、血液悪性腫瘍、癌転移、免疫抑制、維持透析、の7種類にする。

・3.0に気を付ける
JIPADでは2018年度から収集項目が増えた(JIPAD 3.0)。ただしそれらが収集されていないデータを受け付けないようにしたのは2020年度から。なので施設によって時期が異なるが、カテコラミン、HFNC、Plt、Lacは欠損したデータが一定数存在する。対応方法は、これらが重要でない場合は2015年度からの全データを用い、これらが研究のメインになる場合は欠損データを全て削除、ちょっと重要な場合はどちらかを感度分析にする。ただ、症例数が年々増加しているので、数年後には必ず除外するようにしても困らなくなるけど。

・入室時気管切開は再挿管を検討するときに利用
JIPADでは人工呼吸の開始終了日時を入力する。なので終了日時と次の開始日時を比較すれば再挿管が行われたかどうかが分かりそうだけど、気管切開されていれば再挿管にはならない。気管切開施行日があるので、これを利用すればいいのだけど、入室時から気管切開があると再挿管を判断できない。そのため、3.0から入室時気管切開Yes/Noという項目を追加した。なので3.0から再挿管について検討することが可能になっている。

・入院ー入室を使うとモデル精度が向上
これはJIPADデータに限らないが、入院してから入室するまでの日数は予後と強い関連がある。何故なら、救急外来経由の患者よりも病棟に数日入院してからICUに来る症例の方が予後が悪いし、同じ入院患者でも病棟に長期入院してからICUに来る症例は予後が悪いから。

2020年2月からJIPADの研究利用が開始された。2024年11月の段階で73の申請があり、文献化されたものはこんなにある。今後はデータが年に数十万例ずつ増えていって、どこかのタイミングでANZICSを抜くだろうから、研究価値は高まるばかり。
データは利用してなんぼだから、どんどん使ってあげてください。


タイトル:「まとめて書いておけば、次からは"これを読め"と言えば済む」 by Chat-GPT 4o
相変わらず言葉がちゃんと書けないChat先生。英語が正しく書けているところは進歩かも。
あ、それ以前にタイトルと絵が一致していない気もするな。
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日本の請求データから侵襲的人工呼吸を特定する方法

2024年11月24日 | データベース・JIPAD
この文献に対するcorrespondence。

Sakamoto A, Inoue Y.
The method to identify invasive mechanical ventilation with Japanese claim data.
J Intensive Care. 2024 Nov 12;12(1):48. PMID: 39529189.


DPCの手技コードの使い方について指摘している。
こうなってくるとDPCのデータを集めたことも使ったこともない人間には全然わからない。

研究を目的としていない大きなデータベースが研究に利用可能だったり、open databaseを公表して誰でも研究目的に使える様にしたりするのはどちらも意義があることで、実際たくさんの研究が発表されている。でも、個人的にはそういうデータよりも自分が知っているデータを使う方が好き。JIPADとかIHER-Jとか。それぞれの項目がどう定義されていたり、実際にどう収集されていたりといったことを理解できているから。
特にJIPADのデータは利用価値が高い。自治さいたまだけでもCritical Careに二本採用されていて、まだ確定していないけど、更に上の雑誌ももうすぐ採用されそう。

まあこれは好みの話で、みんな違ってみんな良い、のですけどね。
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IRADの25年にわたる観察と心臓血管学への影響

2024年09月22日 | データベース・JIPAD
IRADとは、 International Registry of Acute Aortic Dissectionのこと。

Trimarchi S, Mandigers TJ, Bissacco D, et al.
Twenty-five years of observations from the International Registry of Acute Aortic Dissection (IRAD) and its impact on the cardiovascular scientific community.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2023 Jul 13. Epub ahead of print. PMID: 37453718.


IARDのデータベースを利用した研究は97あり、各国の19のガイドラインに69研究が参照されていた、と。
結論:「IRADは、急性大動脈解離患者の予後を改善するために、観察、信頼できる知識、研究課題を提供する重要な役割を担ってきたし、現在も担っている。」

つい先日、僕がいた部屋の外から、「JIPADなんて全然興味ない、だって病院が得するだけでしょ?」という会話が聞こえてきた。全然イラっとしたりはせず、こういう人にどうやってデータベースの意義を理解してもらったらいいのだろう、と冷静に考え出した自分に少し驚いた。

毎年、今くらいの時期に集中治療医学会から認定施設向けに調査が行われる。そのうち20項目くらいは患者情報(症例数、治療内容、重症度スコアなど)を提供しないといけない。今年も先週、部長から依頼されたのだけど、JIPADのアプリにはこれを一気に示す機能がついていて、数クリックで数字が全部出る。1分もかからない。JIPADに参加していなくて自前でデータベースを作っていない施設ではそれなりに手間をかけているのだろうと想像すると、簡便さにちょっと笑ってしまった。

JIPADのデータを用いた研究は、すでにこれだけ発表されている。これ以外にも40以上の研究が進行中。参加施設は基本的に自由にデータを利用できる(直近で約30万例)。

自分の施設で研究をやろうと思った時でも、JIPADがあると患者背景や治療内容や重症度スコアや予後は収集する必要がない。部門システムからデータを出力して加工したら、JIPADと合わせれば簡単に数千例のデータを使った研究になる。

自治さいたまでやっている、ICU患者のデータベース作成とそれを使った予後予測を自治本院でも導入しようとしているのだけど、本院はまだJIPADが本格稼働していないので、部門システムから抽出される情報だけだとどうしても限界がある。例えば患者情報が乏しい。病名とか既往歴とか入室経路とか。人がこれらの情報なしに部門システムの経過表を見ても病態は理解できないことから容易に予測される通り、AIによる予測も当然限界がある。

これだけじゃ足りないかなー。
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JIPADと集中治療室管理料の関係

2024年08月17日 | データベース・JIPAD
時々質問されるのですが、その度に調べるので、ここでまとめておきます。

まず、特定集中治療室管理料の基本はこちら。ここの注1に、
「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関に入院している患者であって、急性血液浄化(腹膜透析を除く。)又は体外式心肺補助(ECMO)を必要とするものにあっては25日、臓器移植を行っ たものにあっては30日)を限度として、それぞれ所定点数を算定する。」
の記載があります。

で、「別に厚生労働大臣が定める施設基準」というのがこちら
第2 特定集中治療室管理料の、
7 特定集中治療室管理料の「注1」に掲げる算定上限日数に係る施設基準の、
(2) 当該治療室に入院する患者について、関連学会と連携の上、適切な管理等を行っていること。

で、「関連学会と連携の上」というのがこちら
問94:「関連学会と連携」とは、具体的にはどのようなことを指すのか。
(答)日本集中治療医学会のデータベースであるJIPAD(Japanese Intensive care Patient Database)に症例を登録し、治療方針の決定及び集中治療管理を行っていることを指す。

で、「JIPADに症例を登録」の定義がこちら
1. 直近の年次レポートにデータが利用され、施設名が掲載された施設
2. さらに直近6ヶ月の間にデータをアップロードし、、、JIPADワーキンググループが2ヶ月毎に評価し、今後の年次レポートに使用可能な症例数が概ね200症例を超えて登録

ぜいぜい。
バラバラのところに書いてあるから、加算って分かりにくい。。。
でもこれからは「これを読め」で済むぞ。
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集中治療におけるレジストリを組み込こんだ研究の妥当性と持続可能性

2024年07月16日 | データベース・JIPAD
Salluh JIF, Amado F, Pilcher D, Hashmi M.
The relevance and sustainability of registry-embedded research for critical care.
J Crit Care. 2024 Aug;82:154765. PMID: 38492521.


データベースの意義について人に何度話したか分からない。でも、それを聴いて「じゃあやろう」と思う人はごく僅か。それは仕方ない、人間だもの。
JIPADに参加していないけど独自のデータベースを作成している施設は限られるだろうから、参加施設数から推測するとだいだい日本のICUの四分の三はデータベースを持っていないことになる。普段からデータベースを使用している者からすると信じられない数字。

ちなみにこの文章はこの研究のeditorial。
エチオピアの人も" ICU registries are invaluable tools"と気がついているようだ。
あなたはまだですか?
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JIAPDの年次レポートの最新版

2024年04月02日 | データベース・JIPAD
辞める話をした翌日というのがちょっと変ですが、最新のレポート(2022年度版)が発表されました。
95施設、約75000例。もう立派なデータベースじゃないですか。

「登録症例数は、2019 年 5 月に 10 万例に、2021 年 4 月に 20 万例に、2022 年 9 月に 30 万例に、2023 年 10月に 40 万例に到達した。」
つまり、最初の10万例に到達するのに約4年、次が2年、次が1年半、次が1年。なんかすごい。そして嬉しい。
試しに、Chat先生に、「症例数が二次関数で増えていると仮定すると、100万例に到達するのはいつ?」と聞いたら、「2028年6月と予測されます」ですって。あと4年かー。

今年は「JIPAD関連論文」という欄ができた(半分より下のところ)。もう文献が20くらいある。

あと4年で100万例に到達し、文献もたくさん作られているデータベース。まだ参加していないあなた、それで大丈夫??
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BlendedICUデータセットの紹介

2024年02月26日 | データベース・JIPAD
昨年末、ダウンロードしたけど読んでいない文献が200を超えてしまい、年末年始で読むぞー、と頑張ったけど15くらい残ってしまった。この連休でその残りを読んでいたら、その中にヤバイやつがあったのに気がついた。

Oliver M, Allyn J, Carencotte R, et al.
Introducing the BlendedICU dataset, the first harmonized, international intensive care dataset.
J Biomed Inform. 2023 Oct;146:104502. PMID: 37769828.


AmsterdamUMCdb, eICU, HiRID, and MIMIC-IVをまとめて、30万例以上、158項目のデータベースを作成。しかも、4つのデータベースと同様、登録すれば誰でも利用できるようになっている。それだけじゃなくて、生データとは別に、1時間ごとに集約してmissing valueもimputationして、異常なデータを除いた、つまりはクリーニングの終了しているデータも提供されるらしい。
ただし、4つのデータベース全てに登録してデータを取得し、かつpythonのコードを自分で動かさないといけないので、ハードルはちょっと高いけれど。

Githubはこちら
頑張ってみようと思う人は是非。
利用者が増えれば作成者もバージョンアップしてくれるだろうし。


タイトル:Introducing the BlendedICU dataset, the first harmonized, international intensive care dataset
ちょっとカッコいい。でも相変わらず英語のスペルは苦手なChatさん。

ちなみに、このデータベース、ICUでよく使う113の薬剤がリストアップされているのだけど、そのうちオピオイドは、fentanyl, morphine, hydromorphone, sufentanilで、remifentanilはありません。
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MOVER:公開手術室データベース

2024年01月19日 | データベース・JIPAD
今年初の投稿。
気がついたら20日経っていた。英語では"20 days into the year"と言うのだそうだ。知らんかった。

Samad M, Angel M, Rinehart J, et al.
Medical Informatics Operating Room Vitals and Events Repository (MOVER): a public-access operating room database.
JAMIA Open. 2023 Oct 17;6(4):ooad084. PMID: 37860605.


ICUには6つくらいあるけれど、OP室のデータとしては初の、フリーに利用可能なデータベース、だそうだ。
83,468例の手術。少なくとも一部は波形データ(心電図、A-line、SpO2)もあるらしい。

これはいろいろできそうじゃないかな?
興味のある方、利用してみては?
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日本の多施設ICUにおける肺動脈カテーテル使用の特徴と死亡率との関連

2023年10月29日 | データベース・JIPAD
JIPADのデータを利用した自治さいたまICUの研究がまたCritcal Careにアクセプトされましたー!
いえーい!

Open access
Published: 28 October 2023
Characteristics of pulmonary artery catheter use in multicenter ICUs in Japan and the association with mortality: a multicenter cohort study using the Japanese Intensive care PAtient Database
Kentaro Fukano, Yusuke Iizuka, Seiya Nishiyama, Koichi Yoshinaga, Shigehiko Uchino, Yusuke Sasabuchi & Masamitsu Sanui


PAカテって、20年以上前は敗血症性ショックとかARDSにビシバシ使ってたんだよね。
いつのまにか、随分変わった。

ちなみに英文校正はChatGPTにやっていただきました。もう英文校正は業者に頼まなくてもOK(な雑誌はある、少なくとも)。
After the manuscript was written by the lead author and reviewed and revised by the coauthors, English language proofreading was conducted using ChatGPT®.

みんなも、JIPADのデータを使ってメジャー雑誌にどんどんアクセプトされちゃおーぜー。
おっとその前に、そもそもJIPADに参加しないといけないけどね。
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