Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

IVCフィルター

2013年03月25日 | 消化器・血液
やっぱり桜は良いねー。
何なんだろうねー、この感じ。綺麗なものは他にもたくさんあるのに。
クリスマスとかと同じで、世間が騒ぐから自分も騒いじゃうだけ?
なんて考えるのはつまらないから、やめ。

でも、文献は考えながら読みましょう。

Opal SM, Laterre PF, Francois B, et al.; ACCESS Study Group.
Effect of eritoran, an antagonist of MD2-TLR4, on mortality in patients with severe sepsis: the ACCESS randomized trial.
JAMA. 2013 Mar 20;309(11):1154-62. PMID: 23512062.

エンドトキシンのアンタゴニストであるEritoranを重症セプシス患者に投与した多施設RCT。197施設、1961例が対象、primary outcomeは28日死亡率。で結果は、28.1% vs. 26.9%で同じ。
そりゃそうだ、と思っちゃいけません。治療方法の模索は続けないと。ただ、エンドトキシンを相手にしても駄目だろ、という気はしますけどね。

Needham DM, Dinglas VD, Bienvenu OJ, et al.; NIH NHLBI ARDS Network.
One year outcomes in patients with acute lung injury randomised to initial trophic or full enteral feeding: prospective follow-up of EDEN randomised trial.
BMJ. 2013 Mar 19;346:f1532. PMID: 23512759

ARDSに対する経管栄養の投与量は最初の1週間は少なくてもいいよ、を示したEDEN trialの1年フォローアップ。短期予後は同じでも、長期的には筋肉量の低下など、低栄養が悪影響を示すかも、という可能性もあるし、ということで行われた追加検討。結果は、12ヶ月後の生存者の機能予後に差は無し。
ARDSで栄養の投与量が少なくてもいいなら、フルカロリー投与した方がいい病態って、何かあるのだろうか?

今日は、さっさと本題。
何故なら文献が3つもあるから。
JAMA Internal Medicineのオンライン。

ONLINE FIRST
High Variation Between Hospitals in Vena Cava Filter Use for Venous Thromboembolism.
Richard H. White, MD; Estella Marie Geraghty, MD, MS, MPH; Ann Brunson, MS; Susan Murin, MD, MSc; Ted Wun, MD; Fred Spencer, MD; Patrick S. Romano, MD, MPH
JAMA Intern Med. 2013;():1-7. doi:10.1001/jamainternmed.2013.2352.

カルフォルニアの、静脈血栓症(VTE)が年間55例以上入院する263の病院で、大静脈フィルターの挿入頻度を調査。5年間で13万人がVTEで入院、そのうち15%に大静脈フィルターが挿入された。しかし、その頻度は病院によって大きく異なり、0%から39%だった。その違いは、患者背景だけではなく病院のプラクティスの違いが大きく影響していた。

ONLINE FIRST
Indications, Complications, and Management of Inferior Vena Cava Filters. The Experience in 952 Patients at an Academic Hospital With a Level I Trauma Center.
Shayna Sarosiek, MD; Mark Crowther, MD; J. Mark Sloan, MD
JAMA Intern Med. 2013;():1-5. doi:10.1001/jamainternmed.2013.343.

Boston Medical centerで、約8年の間にIVCフィルターが952人に挿入され、そのうち679が抜去可能なテンポラリーのIVCフィルターだった。しかし、実際に抜去されたのは5.8%だけで、13例では抜去を試みたが抜けなかった。多くの例で、抗凝固剤が禁忌でることを理由にテンポラリーIVCフィルターが挿入されたが、25%の症例では、退院時に抗凝固剤が投与されていた。

なんか、”うーん”な感じでしょう?
で、その”うーん”について、viewpointが解説してくれています。

Viewpoint
LESS IS MORE, ONLINE FIRST
The Inferior Vena Cava Filter. How Could a Medical Device Be So Well Accepted Without Any Evidence of Efficacy?
Vinay Prasad, MD; Jason Rho, MD; Adam Cifu, MD
JAMA Intern Med. 2013;():1-3. doi:10.1001/jamainternmed.2013.2725.


まずタイトルがいいね。
どうして有効性についてのエビデンスが全然ないのに医療機器がそんなに受け入れられるのか?
いや、couldだから、受け入れられることが起こりえるのか、くらいか?
IVCフィルターの歴史から、説明してくれます。

・初めて報告されたのは1960年代。半数はIVCが閉塞。
・ステンレス製のIVCフィルターは1973年に報告。
・かの有名なGreenfieldさんが、1981年に156例のケースシリーズを報告。
・1988年には、長期フォローアップも含め469例を報告、そこそこ安全だよ、という内容。
・コントロールはないし、半数はフォローアップできてないにもかかわらず、IVCフィルターの根拠として使用されている。
・ACCP, AHAなど、四つのメジャーな団体がIVCフィルターについてのガイドラインを出している。
・すべてのガイドラインにおいて、VTEがあって抗凝固剤が禁忌の症例では適応とされている。
・それ以外の病態ではガイドラインによって適応が異なる。
・これまで、IVCフィルターについてのRCTは一つしか行われていない。
・PREPIC study、1998年に発表され、2005年に8年フォローアップした結果が追加発表。
・400例のDVT症例がIVCフィルターを入れるかどうかで割り付けられた。
・ただし、抗凝固剤が禁忌の症例は研究から除外されている。
・8年のフォローアップで、PEはフィルター挿入群で少なく(15.2% vs. 6.2%)、DVTは多かった(35.7% vs. 27.5%)。
・もっとも重要な死亡率には差は無し。
・エビデンスが乏しいのにIVCフィルターがFDAに承認され、さらには改良品がどんどん承認されている理由は、似たような医療機器が承認されている場合は、新しい機器の承認も容易だから。
・IVCフィルターは多くの合併症が起こる。 
・挿入時も起こるし、長期的には下大静脈の閉塞が20-30%の頻度で起こる。
・2005年から2010年の間に、IVCフィルターによる重大な合併症の報告がFDAに921例されている。
・RCTが必要なのは明白だが、メーカーにはメリットは無い。
・現状では、IVCフィルターを使用するかどうかの判断はとても難しい。

長々と要約しましたが。
IVCフィルターについては上記で十分として、他にもいろいろ考えることはあるね。
当たり前のように行われていることが、実は全然当たり前じゃなかったりすることとか、
複数のガイドラインが同じことを推奨していたって、その根拠はこの程度だったりすることとか、
日本でも医療機器の承認は同じように根拠が乏しくてもOKだったりすることとか、
医療機器についてはメーカーにちゃんとした根拠を求めても無駄だったりすることとか。

あ、今日の内容は、初めも終わりも、あれを連想させるね、あれを。
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簡単アンケート

2013年03月24日 | ひとりごと
JSEPTICのホームページで、簡単アンケートというのを毎月やっているんですけどね。
集中治療に関連したいろいろなことについて、あなたはどう思いますか/どうしてますかって聞いてます。
2011年の3月に始めたので、これでちょうど2年、いままで25回のアンケートが行われました。

見た事ない方、
とりあえず、タイトルを眺めて、興味ある項目の結果を見てみてくださいよ。
どう、面白いでしょう?
エビデンスなんて言えるものではないけど、日本の集中治療の場においてどんなことが行われているか、が何となく分かるんじゃないかなー。

問題はですねー、
どーも、参加者数がだんだん少なくなってきている感じがするんですよ。



ね?
そんな感じでしょ?
面白いと思うんですけどねー。。。

ということで、みなさん、どんどん参加して下せー。
アンケート実施:毎月10-20日
結果発表:毎月25日頃
っていうスケジュールでやっているので。
よろしくお願いしまっす!
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Daily sedation interruptionの是非

2013年03月18日 | 神経
同じ週に話題が共通する文献が複数出たよシリーズ。

Jabre P, Belpomme V, Azoulay E, et al.
Family presence during cardiopulmonary resuscitation.
N Engl J Med. 2013 Mar 14;368(11):1008-18. PMID: 23484827.

自宅で心停止した患者さんのCPRを、医者を含む救急チームが行うときに、CPRの現場を家族に見せるか見せないか、でRCT。症例毎ではなくチーム毎で無作為化。フランスの15チーム、570症例、primary outcomeは家族の90日後のPTSD発生率。通常群で43%、介入群で79%がCPRの場に同席。介入群の方がPTSDの発生頻度が有意に低く(ITT解析、オッズ比1.7)、蘇生の質には影響しなかった。同席したかしなかったかでも、した方がPTSDの発生は低かった(Per protocol解析、オッズ比1.6)。
さすがフランス、こんなRCTがやれてしまう。
知らなかったのだけど、1990年代にRCTが行われたけど、同席した方が明らかによかったので研究が途中で止まったこともあるのだそうだ。
じゃあ院内心停止ではどうか、についても同じNEJMに議論あり。
ということで、これはジャーナルクラブとします。

Chan PS, Nallamothu BK, Krumholz HM, et al.; American Heart Association Get with the Guidelines–Resuscitation Investigators.
Long-term outcomes in elderly survivors of in-hospital cardiac arrest.
N Engl J Med. 2013 Mar 14;368(11):1019-26. PMID: 23484828.

Get with the Guidelines-Resuscitation registryからの研究。院内心停止後に病院を生存退院した65歳以上の症例6972例を長期フォローアップ。1年後に58.5%が生存。生存率は年齢によって異なり(65-74歳:63.7%、85歳以上:49.7%)、性別や人種でも異なった。特に、意識状態による違いは大きく、ほとんど神経学的後遺症がない群では72.8%、植物状態では10.2%の生存率だった。
さすがアメリカで行われた多施設レジストリ、NEJMに文献出まくり。

Mateen FJ, Niu JW, Gao S, et al.
Causes and outcomes of persistent vegetative state in a chinese versus american referral hospital.
Neurocrit Care. 2013 Apr;18(2):266-70. PMID: 23099847.

北京の大学病院とJohns Hopkins病院とで、10年間に発生した植物状態患者について調査。北京では19例、JHでは17例。症例数が少ないので統計学的には検討されていないが、北京では脳卒中が比較的多く、JHではいろいろな疾患が原因だった。観察期間中、北京の症例の半数は生存していた。
中国のような資源に乏しい国でも植物状態の患者さんはアメリカと同じくらいいるかも、ただし施設数は一施設ずつだけどね、という話。

日本救急医学会 救急医療における終末期医療のあり方に関する委員会.
救急医療における終末期医療に関する提言(ガイドライン)』に対する救急医療従事者の意識の変容-2008年と2012年でどのように変化したのか-
日救急医会誌 2013; 24: 37-50.
救急医学会が、救急専門医に対して2008年(ガイドラインが出て10ヶ月後)と2012年(5年後)に同じアンケートを行った、その結果報告。ガイドラインの認知度、利用率が少し増えた。また、withhold/withdrawに対して賛成する人が少しだけ増えた。
何事も劇的には変わらないな、という印象を受けました。

難しい話は苦手なので、今週のメインは分かりやすいやつで。
SLEAP study(鎮静プロトコールにdaily sedation interruption: DSIを追加したら良いことはあるか?)に対するcorrespondenceがやっとJAMAに掲載されましたよ。

Mehta S, Burry L, Cook D; SLEAP Investigators.
Sedation interruption for mechanically ventilated patients-reply.
JAMA. 2013 Mar 13;309(10):982-3. PMID: 23483164.


質問/問題点の指摘をまとめると、
・鎮静スケールを1時間毎に行うのは大変じゃないか?
・DSIを行わなかった理由の一つが人工呼吸の使用というのはどういう意味か?
・腎傷害があると鎮静剤が体に残るので、効果は異なるかも、腎傷害の有無でsubgroup analysisは行わないのか?
・そもそも鎮静剤を投与することが有害かもしれないので、この研究では二群とも鎮静剤の投与がされすぎたのでは?
・鎮静は患者に快適さと協力性を提供するものなのに、七割以上の症例が物理的に抑制されているというのは、鎮静が浅すぎるか、協力性を示せないほど深すぎるかのどちらかでは?
・鎮静剤の総投与量がDSI群の方が多いというのは何故か?
・モルヒネやフェンタニルが使用されているが、レミフェンタニルの方が良かったのでは?

これらのすべての質問に対して筆者等の答えが載ってます。
まあ、だいたい納得のいく説明。
唯一、説明不足なのは、やっぱり最後から二つ目の問題点。原文をそのままコピペすると、

Regarding higher infusion doses in the daily interruption group, we hypothesize that after restarting the infusions, nurses responded to patients’ perceived pain or discomfort by increasing infusion rates; however we cannot confirm this.

これだけ。
最大の問題点にしては、随分サラッとした返事。
まあ、そうだろうけど。想像した通りだけど。
もうちょっと、ちゃんと説明してくれてもいいんじゃないだろうか。

どちらにしろ、一つのRCTで何かが証明されるわけではないし、問題点があるからその研究は無視、ということでもない。
DSIについて熱心な人がやった一施設研究、問題点のある多施設RCT、そして自分の経験に基づき、各自、ご判断を。
個人的には、DSIは昔も今もマユツバだと思っております。
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ちょっと考えさせられる文献たち

2013年03月11日 | その他
時間的制約もあり、文献4つ紹介して、メインディッシュは無しで。
どれも大きな研究ではなく、何かを証明するわけではないのだけど、ちょっと考えさせられるかも。

Bigatello LM, Amirfarzan H, Haghighi AK, et al.
Effects of routine monitoring of delirium in a surgical/trauma intensive care unit.
J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):876-883. PMID: 23425751.

アメリカのある外科/外傷ICUに48時間以上在室した患者に対し、CAM-ICUでせん妄を評価。二つあるICUチームのうち、一つにはCAM-ICUの結果を教え、もう一つには教えなかった。283例中、35%にせん妄が発症。せん妄の発症から治療介入までの時間は二群間で差はなかったが、せん妄の治療が行われなかった頻度は情報提供された群で低かった(オッズ比0.67)。しかし、せん妄の期間、人工呼吸期間、ICU在室期間に差はなかった。
ここ数年、せん妄がブーム。せん妄の発生が予後に関連するから、が主な理由。でも、せん妄の発生が予後を悪くするということと、せん妄の予防/早期治療が予後を良くするということとは別。
CAM-ICUを使った研究はどんどん増えている印象。この疑問も数年である程度の結論に達するのでは、と期待しております。

Bellomo R, Lipcsey M, Calzavacca P, et al.; RENAL Study Investigators and The ANZICS Clinical Trials Group.
Early acid-base and blood pressure effects of continuous renal replacement therapy intensity in patients with metabolic acidosis.
Intensive Care Med. 2013 Mar;39(3):429-36. PMID: 23306586.

ご存知、RENAL trial(CVVHDFの治療強度、25 vs. 40 ml/kg/hrの比較)のsub-study。RENAL trialの症例に対し、二施設で酸塩基と血圧について詳細な情報を集めた。症例数は115例。治療強度が高い方がアシドーシスの改善が早く、その結果として循環動態の改善も早く起こるのでは、というのが仮説。しかし、pHもBEも、二群間で改善のスピードに差は無し。しかし、CVVHDF開始後の血圧およびノルアドレナリンの使用量は、40ml/kg/hrの群で有意に改善。また、アシドーシスの変化と血圧/ノルアドの変化とに相関関係は認められなかった。
つまり、治療強度が強いと、酸塩基とは関係無しに循環が改善する、という話。だから治療強度が高い方が良い、ということには当然なりません。そもそも二群間で死亡率に差はなく、high intensityは予後を改善しない、というのが結論の研究なのだから。ということは、血圧のより早い上昇が死亡率の低下にはつながらない、ということ。そうそう、あれですよ、あれ。

Wilson ME, Samirat R, Yilmaz M, et al.
Physician staffing models impact the timing of decisions to limit life support in the intensive care unit.
Chest. 2012 Sep 3. doi: 10.1378/chest.12-1173. [Epub ahead of print] PMID: 23187703.

PubMedではEpubだけど、Chestの3月号に出てます。
アメリカのあるICUで、昼だけ集中治療専門医が患者管理を行うシステムから、夜も集中治療専門医がカバーするシステムに変更した。その前後6ヶ月間で亡くなった症例の終末期医療にどんな変化があったかについて検討。症例数は前期85名、後期65名。後期の方が、ICU入室から人工呼吸を中止するまで、ICU入室からDNRとなるまでの日数が2日短くなった。また、すべて有意差は無かったが、死亡時に家族がベッドサイドにいる頻度が増え、家族とのカンファレンスを行うまでの時間、治療制限を決めるまでの時間が短くなり、患者の意思に反して挿管する頻度が減少した。
この結果の説明として、夜間に家族とコミュニケーションをとるのが専門医か研修医かで違いが出たのではないかと推測している。アメリカで流行りの研究テーマ、24/7 intensivist coverageの一つ。じゃあ、そもそも集中治療専門医がいるかどうか、家族とコミュニケーションをとるのが主治医か集中治療専門医か、ではどうなるのだろう?

Maggio M, Corsonello A, Ceda GP, et al.
Proton Pump Inhibitors and Risk of 1-Year Mortality and Rehospitalization in Older Patients Discharged From Acute Care Hospitals.
JAMA Intern Med. 2013 Mar 4:1-6. [Epub ahead of print] PMID: 23460307.

こっちは本当にEpub。
65歳以上の患者が急性期病院から退院するときにPPIを処方されたかどうかで退院後の予後に差があるかについて検討した一施設観察研究。591例、平均年齢80歳。174例にPPIが処方された。処方された群の方が、1年以内の死亡率が1.51倍高く、特に高用量群では2.59倍だった。
PPIはICUで頻繁に処方される薬剤の一つ。ICU退室後、さらには退院時にはどうなるんだろう。そのまま処方され続ける可能性は十分にあるのでは。ストレス潰瘍予防に対し、PPIがH2ブロッカーに比べて本当に有益な薬剤かはまだ未確定、そして短期的/長期的な有害性は示唆されている(肺炎、偽膜性腸炎、骨粗鬆症など)。安直に処方されすぎてないだろうか?

これにて、今週はご勘弁。
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雑誌がどんどん増える

2013年03月09日 | ひとりごと
投稿する人が増えたからなのか、理由は分からないけど、
こんな雑誌が新しく出ますよ、的なメールがよく来る。
ほぼ無視なんだけど、今月は無視できない新雑誌がいくつかあったので、ご紹介。

・Lancet Respiratory Medicine
Lancetのお友達が増えました。NeurologyとかInfectious diseaseとかあったけど、今月から呼吸器も増えた。
要チェックな雑誌がまた増えた、あーあ。

・Journal of Intensive Care
我らが日本集中治療医学会が、新しく英語の雑誌を作るそうです。
どんな雑誌かというと、

「Journal of Intensive Care」はon line open-access journalです。
紙媒体の雑誌はなく、掲載決定された投稿論文はon line上で全世界に速やかに公表され、論文に興味を持つ世界中の読者が論文の全内容を自由に閲覧可能です。さらに、掲載と同時にPubMed, Scopusなどに目録化されるために、これらの医学文献検索システムからも公表論文へのアクセスが可能となります。

だそうです。
数年でImpact factorを取ることが目標とか。

・Case Reports in Critical Care
これはおまけ。
出所とかクオリティとかは不明。
でもまあ、症例報告の発表の場が一つ増えたということで、覚えておいて損はないかも。
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重症患者管理と自動車の運転

2013年03月08日 | ひとりごと
こんなの、思いついた。

目的地に向かって自動車を運転中に、突然視力が非常に弱くなり、まともに運転できなくなり、目的地とは違う方向に走り、迷い、最終的に壁にぶつかって立ち往生。そんな運転手を無事に目的地に連れて行くには何をする必要があるか?

1:まず、車を修理して、目的地に向かう幹線道路まで車を誘導する。
2:でも、目がよく見えないので、幹線道路をちゃんと走れない。だから隣に座って、まっすぐ道を走れるように、ハンドルに手を置いて微調整してあげる必要がある。まっすぐな道でもハンドルをちょこちょこ動かす感じ。
3:目的地に近づいたら幹線道路から降りて、細い道を何度か曲がる必要がある。曲がり角でその都度教えてあげる。
そして目的地に到着。

人は患者さん、
車は体、
幹線道路はICU、
細い道は病棟、
目的地は退院。

まず壊れた車を直し(手術とか抗菌薬投与とか)、幹線道路まで誘導する(初期診療、初期蘇生)。
幹線道路では方向の微調整(ICU管理)。スピードが早いので目が離せない。
細い道では目的地にたどり着くまでいろいろな方向に曲がる(病棟管理)。スピードが遅いので大きな事故は起こりにくいけど、やることはたくさんある。

この話のミソは2つ。
一つは、ICU管理は観察と微調整が主である、ということ。パッと見は地味。
高速道路での運転は退屈だけど、じゃあ目を10秒間つぶっていられる?
ちょっと気を抜いたら対向車線に行っちゃうかもしれないし、運転手が突然変な方向にハンドルを切るかもしれないし(急変)。
見た目は地味だけど、それは異常に対する反応が早いので、外から見たらまっすぐ走っているようにしか見えないから。実はちょこちょこハンドルを動かしている。

もう一つは、運転手はあくまで患者さんであるということ。
医療従事者はその手伝いをしているだけ。
特別な治療をしたから治るわけじゃない。

たまーに、家に絶対に帰りたくない人もいる。
そういう時は、いくら無理にハンドルを切り直そうとしても。。。
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脳出血急性期の血圧管理

2013年03月04日 | 神経
学会も終わり、一段落。
ゆっくりしたいところだけど、文献は待ってくれない。
うーむ。

Jauch EC, Saver JL, Adams HP Jr, et al.; American Heart Association Stroke Council, Council on Cardiovascular Nursing, Council on Peripheral Vascular Disease, and Council on Clinical Cardiology.
Guidelines for the early management of patients with acute ischemic stroke: a guideline for healthcare professionals from the american heart association/american stroke association.
Stroke. 2013 Mar;44(3):870-947. PMID: 23370205.

AHA/ASAからの脳梗塞のガイドライン。4年ぶりのアップデート。
ここ数年、脳梗塞はいろいろな動きがあるので、ちょっと内容も変わっている。
ジャーナルクラブ候補。

Safavi KC, Dharmarajan K, Kim N, et al.
Variation exists in rates of admission to intensive care units for heart failure patients across hospitals in the United States.
Circulation. 2013 Feb 26;127(8):923-9. PMID: 23355624.

アメリカの341の病院に心不全で入院した16万人のうち、ICU的環境に入院したのは10%。しかし、その幅は0%から88%と非常に広い。ICU的環境に入院することが多い病院では、人工呼吸器、NPPV、血管作動薬の使用頻度が低い。死亡率はあまりICUに入院しない病院と同じ(3.4% vs. 3.5%)。
心不全はICUに来ても死亡率は変わらない、という話じゃないよ。病院によって心不全のICU適応が異なり、病院によっては片っ端から心不全はICU、というところもあるけど、そういうところでは所謂ICU的治療は行われない人も入院していて、結果として死亡率に影響ない、ということ。ちゃんと適応は選ぼうね、という、とてもアメリカ的な研究。でも、日本のCCUにもたくさんいるかも?

Banares R, Nevens F, Larsen FS, et al.; on behalf of the RELIEF study group.
Extracorporeal albumin dialysis with the molecular adsorbent recirculating system in acute-on-chronic liver failure: The RELIEF trial.
Hepatology. 2012 Dec 5. [Epub ahead of print] PMID: 23213075.

知る人ぞ知る、MARSのRCT。慢性肝不全の急性増悪に対して、MARSをやる群(N=95)とやらない群(N=94)を比較。粗死亡率に差はなし。MARS群の重症度が高い傾向があったので多変量解析をしてみたら、オッズ比は0.87で、有意差はやっぱりなし。
MARSをご存じない方は、いろいろなところに書いてあるので調べてね。急性肝不全には効かないかもしれないけど、慢性肝不全の急性増悪ならどうか、と期待されている治療法(血液浄化系)。で、RCTやったけどダメだった、という研究。アブストラクトにも、MARSは安全に施行できて有意差は無いものの予後がちょっと良くなった、と書いてあるくらいなので、著者たちは全然諦めてなさそう。

今週のメインディッシュはMARSにしようかと思ったのだけど、なんとなくこっちにしました。今月のStrokeから。

Butcher KS, Jeerakathil T, Hill M, et al.; ICH ADAPT Investigators.
The intracerebral hemorrhage acutely decreasing arterial pressure trial.
Stroke. 2013 Mar;44(3):620-6. PMID: 23391776.


脳出血急性期で、SBP>150mmHgの患者を対象、ターゲットの血圧を180にするか150にするかでRCT。血圧コントロール開始2時間後にperfusion CTを行い、血腫周囲の血流(CBF)を測定し比較。
その結果、
・対象は合計75例、患者背景に差は無し
・2時間後の血圧は140と162mmHg、p<0.001
・血腫周囲のCBFに差は無し
・SBPの変化とCBFに相関関係無し
・血腫の拡大や神経学的予後にも差は無し

さて。
なんでこんな研究やってるの、と思った方。
あなたが思っているよりも、脳出血の血圧管理って分かっていないことが多いのですよ。
急性期に血圧を下げると血腫の拡大が防げるかもしれないけど、脳血流が減少して脳の障害を増やすかも、という懸念もあり、現状ではSBP<180、脳圧が亢進していると思われる場合で165まで、ということになっている。
でも、この推奨の根拠はほとんどないと言って良い状態で、つい最近になってから研究が行われるようになってきた。

今回の研究は、とりあえず、血圧を下げると脳血流は減少するのかについて検討することを目的としていて、だから症例数も少ない。その結果、この程度の降圧なら影響ない、という結論。

だから何、というのはないのですけどね。
もしかしたら、脳出血の急性期に降圧するのは当然だと思っている人もいるかもしれないと思って。

もっと症例数が多くて、予後をアウトカムにした研究もある。
INTERACT2(N=2800)とATACH II(N=1280)というのだけど、両方ともSBP 140と180を比較している。ClinicalTrials.govを見ると、どうもINTERACT2は終わっているらしい。
結果が楽しみですな。
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専門医って何だ?

2013年03月03日 | ひとりごと
ということで(前記)、好印象を持った学会だったのだけど、残念なことも二つあった。
一つはあまりのことで絶句してしまって、書けません。
もう一つは、呆れたけど絶句しなかったので書きます。

あるセッションのディスカッション中、会場から、こんな質問があった。
自分は循環器内科医で、循環器患者の集中治療に興味があって、こうして学会にも参加しているのに、2015年からの制度変更の内容を見ると、循環器内科医は集中治療専門医を取れなくなってしまうのでは、というもの。

専門医って何なのかを考えれば、というか理解すれば、もしくは日本以外のまともな専門医制度のある国を知れば、この発言がいかに間違っているかに気がつくのは簡単だと思う。

普通、あなたは何が専門ですか、と聞かれた時の答えがその人の専門。
医者の場合は専門医。
すっごく当たり前だと思うけど、今の日本では当たり前じゃない。
何故なら、学会にしばらく所属して、書類とか試験とかで基準をクリアすれば、学会が専門医だよと認めてくれるので、自分の専門じゃなくても”専門医”になれちゃうから。

でも、まともな専門医制度がある国では違う。ちゃんとした教育プログラムがあって、数年間の経験を積んで、合格率の低い試験をパスして、やっと専門医になれる。だからその専門医の資格には意味があって、例えば病院は専門医かどうか(つまりは専門医か研修中か)で雇うので、給料もポストも全然違う。

日本も、2015年度からやっとまともな専門医制度になるんだそうだ。
つまり、学会が勝手に専門医を認定できなくなる。
集中治療の場合、救急や麻酔(それはそれで問題なんだけど)の専門医となった上で、ICUでの十分な経験を積んで初めて集中治療専門医になれる。

外国でも、中には複数の専門医を持っている人はいる。
でも、例えば医者と弁護士の免許を両方持っている人もいるし、医者だけどタレントもしている人もいるし、お笑い芸人だけど映画を作る人もいるし。そういうのって、ごく一部の、複数の才能の持った人だけの話。
医者の専門だって、誰でも複数の専門医になれちゃったら、それは専門分化しすぎていて、一つ一つの分野が小さすぎるってことになってしまう。
普通は専門っていったら、一生をかけて切磋琢磨するもの、でしょう?
専門は一つが基本、能力の高い人だけが複数持てる。
僕には無理です。だから今も集中治療専門医だけしか持っていない。

循環器内科のお医者さんへ。
あなたの専門は何ですかと聞かれて、集中治療ですと答える気があるのなら、是非集中治療専門医を取ってください。あなたにもし複数の専門を持つ能力があるのなら、それは素晴らしいことです。でも、普通の人には無理なので、一般論にはできませんよ。
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集中治療医学会総会の感想

2013年03月02日 | ひとりごと
なんか、松本市は大変なことになっていたらしい。
駅にも道路にもそこら中に”学会歓迎”って書いてあるし、
シーズンオフ中の温泉宿はどこも満室になるし、
タクシーは捕まらないし。

学会って、基本的にあまり好きじゃないのだけど、今回の学会は、なんか前向き感があった。

今、日本集中治療医学会、というか日本の集中治療はいろいろな問題を抱えていて、このままだと相当ヤバイと学会も偉い先生もそうでない先生も思っていて、何とかしよう、という姿勢が感じられた気がするんだよね。
危機が迫ると、人って団結するんだなー。

これならきっと大丈夫。
いや、絶対大丈夫。
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