Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

カテ感染は内頸と鼠径のどっちが多いか

2013年11月28日 | 感染
Timsit JF, Bouadma L, Mimoz O, et al.
Jugular versus Femoral Short-Term Catheterization and Risk of Infection in Intensive Care Unit Patients. Causal Analysis of Two Randomized Trials.
Am J Respir Crit Care Med. 2013 Nov 15;188(10):1232-9. PMID: 24127770.


クロルヘキシジン含有のドレッシング剤の有効性について検討した2つのRCTのデータを使って、CVの挿入部位が内頸か鼠径かでカテ感染の発生頻度が異なるかについて検討。合計2128例。カテーテル関連血流感染(1.0 vs. 1.1件/1000 patient days, p=0.34)も、コロナイゼーション(11.6 vs. 12.9, p=0.80)も同じ。ただし、女性および留置期間が4日以上となると、鼠径の方が多くなる。鼠径では留置期間が長くなるとドレッシングがはがれやすくなる。

鼠径のCVはそんなに悪くないというデータは最近見かけるようになった。例えばこれ

ただし注意が必要なのは、ICU的環境、つまり留置期間が短く、清潔をちゃんと維持できる環境においての結果である、ということ。
長期留置には向きません。勘違いしちゃダメよ。
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周術期の心停止

2013年11月27日 | 循環
Ramachandran SK, Mhyre J, Kheterpal S, et al.; for the American Heart Association’s Get With The Guidelines-Resuscitation Investigators.
Predictors of Survival from Perioperative Cardiopulmonary Arrests: A Retrospective Analysis of 2,524 Events from the Get With The Guidelines-Resuscitation Registry.
Anesthesiology. 2013 Apr 30. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 23838723.


おなじみ、Get With the Guidelinesのデータベースを使って、OP室内および術後24時間以内に発生した心停止について調査。234病院から2524例。
退院時の生存率は31.7%、そのうちVf/VTだと41.8%、心静止でも26.4%と、それほど差がない。退院症例のうち神経学的にインタクトなのは64.0%と高い。

過去の同様な研究では最大で233例だそうなので、ダントツでデカイ。
結果は以前の研究と同様で、普通の院内心停止と比べて予後が明らかに良好。モニタリングががっちりされているし、医者がそばにいることも多いのだから、驚く結果ではない。
他にも、リスク因子とか検討されていたり、アドレナリンの投与や気道確保までの時間が発生場所によってどれくらい違うかとかが書いてある。

疫学的情報として、持っていて損はないのでは、ということでご紹介。
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喘息重責にNPPVは有効か

2013年11月26日 | 呼吸
うってかわって、こちらはたったの3ページ。

Landry A, Foran M, Koyfman A.
Does noninvasive positive-pressure ventilation improve outcomes in severe asthma exacerbations?
Ann Emerg Med. 2013 Dec;62(6):594-6. PMID: 23769808.


メタアナリシス。5つのRCTが見つかった(合計203症例)。死亡率、挿管率、病院滞在日数、治療失敗の頻度、などについて解析、しようとした。
しようとした、というのは、やってみたけど無理だった、という意味。
例えば死亡率について報告している研究は2つあるけど、NPPV群も保存的治療群も死亡例がゼロ。
挿管率も2つの研究で報告しているけど、合計でたったの2人。

COPDに対するNPPVの有効性は、NPPVが一般的になり始めたころに死亡率の改善が(さっさと)示された。症例数の多さ/死亡率の高さ/NPPVのインパクトの大きさが理由なのでしょう。ちなみに、心原性肺水腫に対するNPPVの有効性は、挿管が防げるというのは早期から言われていたけど、死亡率も改善するという結果が出るまでは時間がかかった。死亡率の低さが理由なのかな。

喘息とCOPDはまあ似たような病気なのだからNPPVは有効そうな気がするけど、根拠の大きさは全然違う、ということが確認できました。
それ以上に、知らぬ間にRCTが5つも行われていたことにビックリ。
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文献の調べ方

2013年11月25日 | EBM関連
不思議な文献である。

Wachtel RE, Dexter F.
Difficulties and challenges associated with literature searches in operating room management, complete with recommendations.
Anesth Analg. 2013 Dec;117(6):1460-79. PMID: 24257396.


医者もナースも文献を読まない。調べもしない。調べ方も知らない。これを数多くの参照文献を使って示す。
その後で、じゃあどうやって文献を調べたらいいか、その方法について述べている。
合計20ページ。

とりあえず、根拠に基づいて診療をしていない医療従事者がゴロゴロいるという状況は、古今東西を問わず同じであるということがよくわかった。
日本人は英語が苦手だから、とか、そんなのは理由の一部でしかないんだ。なるほど。
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MCCRC

2013年11月24日 | ひとりごと
行ってきましたよ、昨日。
あ、MCCRCって、Multiprofessional Critical Care Board Review Courseの略ね。

リンクのプログラムを見たら分かるけど、すっごい詰め込み具合。
こりゃ参加者の方々は大変だ。でもだからこそ勉強になるのかもね。
まるまる3日間の講義で、テキスト代含めて4万円って、内容と国際的な相場から考えると随分安いんじゃないの?

僕も二つ担当させていただきました。一つは講義。もう一つは問題集を使ってのディスカッション。
講義の方は、他の人(知らない外国人)が作ったプレゼンテーション資料を修正無しで講義しないといけないので、ただスライドを読むだけだと時間があまっちゃうんじゃないかと思って、すっごい準備した。そしたら、なんとスライドの半分も説明しないで時間切れ。参加された方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。まあでも、後半はちょーつまらない内容だったので、どうせざっとしかやるつもりはなかったのさ。許しておくれ。

問題集の方は、”好きにやってくれ”と言われていたので、好きにやらせていただきました。
僕が勝手に決めたテーマは、”ガイドラインなんか糞食らえ”。
ね?
好き勝手にやったのが想像できるでしょう?

来年もあるらしい。集中治療のことをまとめて勉強するには良い機会かもよ。
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家族の面会時間を長くすると。

2013年11月23日 | ICU・システム
Giannini A, Miccinesi G, Prandi E, et al.; ODIN Study Group.
Partial liberalization of visiting policies and ICU staff: a before-and-after study.
Intensive Care Med. 2013 Dec;39(12):2180-7. PMID: 24013436.


イタリアでは、ICUの面会時間が短く、中央値で1時間しかないらしい。
で、それを8時間以上に延ばそうとしている8つのICUで、実際に面会時間を延ばす前(T0)、延ばしてから半年後(T1)、そして12ヶ月後(T2)に、ICUスタッフが面会時間の延長についてどう思うかと、スタッフの“燃え尽き”度合いを調査した。
その結果、”燃え尽き”度が高度だった人が34.5%(T0)から42.6%(T2)に増え(p=0.001)、特にナースで多かった。面会時間の延長について好意的に答えたのは、医者は81.7%(T0)から87.0%(T2)に増えたけど、ナースは67.7%(T0)から62.7%(T2)に減少した。

そもそも面会時間が1時間しかないICUは日本には少ないだろうし、国が違うから国民性もICUのシステムも違うので、日本だとどうかは分からないのだけど。面会時間を延ばす(もしくはフリーにする)ことが必ずしも全ての面において好ましいとは限らない、ということか。

影響がナースに特に大きい、というのは納得できるかなー。どうかなー。
仕事がしずらくなったりはしても、”燃え尽き”度が増えるというのは、ちょっとビックリだけどなー。

ちなみに慈恵のICUは病院全体と同じで、平日は午後2時から8時の6時間。

さて。どうしましょう?
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心停止蘇生後に低体温は無効?

2013年11月20日 | 循環
おっほっほ。出た出た。
NEJMのon-line publication。

Nielsen N, Wetterslev J, Cronberg T, et al.; the TTM Trial Investigators.
Targeted Temperature Management at 33°C versus 36°C after Cardiac Arrest.
N Engl J Med. 2013 Nov 17. [Epub ahead of print] PMID: 24237006.


ヨーロッパとオーストラリアの36施設で行われた多施設RCT。心原性と思われる心停止で蘇生されたけど覚醒しない950例。最初の心電図は除外基準には無い。ただし、目撃者の無い心静止は除外。割り付けから28時間後まで33℃もしくは36℃でコントロール(33℃群の場合、目標達成に4時間かかるとして、24時間の低体温)、36時間までに37℃へゆっくり復温、そして72時間は37.5℃以下をキープ。その結果、すべての評価項目において両群に差は無し。

ずっと、疑問だった。
何故、他の脳損傷には無効なのに蘇生後だと有効なのか。
12時間(もしくは24時間)だけ体温をちょっと下げて、そんなにすごいことが起こるのか。
何よりも、比較的小さなRCTが二つで、それでどうして”常識”になったのか。
なので、個人的にはすっきりした。

でも、これでケリがつくとはとても思えず。寝た子が起こされた感じになるのかな。
エキスパートと呼ばれる人達がどう反応するか。楽しみだ。

ともあれ、当然のことながらジャーナルクラブ行き。
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経皮的気管切開による死亡

2013年11月19日 | 呼吸
Simon M, Metschke M, Braune SA, et al.
Death after percutaneous dilatational tracheostomy: a systematic review and analysis of risk factors.
Crit Care. 2013 Oct 29;17(5):R258. PMID: 24168826.


Ciagliaが経皮的気管切開(PDT)を報告した1985年以降に発表された、PDTについてのケースシリーズ/観察研究/RCTのシステマティックレビュー。全部で65例のPDTに関連した死亡が報告されていて、それぞれの著者とのコミュニケーションによりさらに3例追加され、さらにはこの研究の著者の施設の3例を合わせた、合計71例について検討。それぞれの著者にコンタクトをとり、実際のPDTの施行件数を調査したところ、死亡率は0.17%だった。31%が手技中、49%は施行後7日以内に発生。死亡原因は、出血38%、気道トラブル30%、気管の穿孔16%、そして気胸が6%だった。

PDTを行うと、600例に1例は気管切開に関連した合併症により死亡する。この数字は多いのか、少ないのか。

でも、”とりあえず気管切開しておこうか”というようなものではない、ことを認識するのは大事。
手技中に出血や気道でバタバタするし、
瘻孔形成前に抜けて入らなくなるし、
感染して首がパンパンに腫れるし、
慢性期に突然出血するし。
そして、600人に1人は死亡する。

そんなこと言ったら挿管したままにしておけばいいのかとか、CVやNGも合併症を起こすじゃないかとか。
思ってないよね?

いつも天秤。
何事も天秤。
慎重に天秤。
です。
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急性膵炎に対する動注療法

2013年11月18日 | 消化器・血液
たりらりらんのこにゃにゃちは(意味は無し)。

もう1ヶ月以上前にePubされているので、知っている人も多いだろうけど。
PDFになったのはつい最近なので。
Critical Careって、そんな雑誌。

Hamada T, Yasunaga H, Nakai Y, et al.
Continuous regional arterial infusion for acute pancreatitis: a propensity score analysis using a nationwide administrative database.
Crit Care. 2013 Oct 2;17(5):R214. PMID: 24088324.


日本のDPCのデータを使って、急性膵炎に対して動注療法を行ったかどうかで予後に違いがあるかどうかを比較。具体的には、2010年7月から2011年9月の間に急性膵炎で入院した21468例のうち、287例が動注療法を受けた(と思われる、アンギオしてタンパク分解酵素阻害薬とカルバペネムが投与されたので)。この患者群と、タンパク分解酵素阻害薬とカルバペネムが静脈投与投与された(と思われる、アンギオしていないので)1307例とをpropensity-matchingして、予後を比較。年齢、性別、意識(JCS)、膵炎の重症度分類、CTの重症度などを使ってmatchingできたのは207例ずつ。その結果、死亡率は同等(7.7% vs. 8.7%, p=0.72)、入院期間、コスト、そして介入を要する感染性膵壊死の頻度はすべて動注群で悪かった。

動注療法ってなんだ、とか、
どんな根拠があるのか、過去の研究はどんなものがあるか、とか、
で、結局は有効なのか無効なのか、とか。
それは各自、読んで考えましょう。

結果がどうこうというより、日本でもこんな研究ができるようになったことが嬉しい。
やっぱ、データベースは偉大です。

もちろん、これで何かが証明されたわけではなく。
DPCの弱点は、詳細な患者背景の情報が手に入らないこと。それを手に入れるには、やはり各施設でデータを取らないといけない。
そんな研究を、JSEPTIC-CTGでは企画中(多施設研究第六弾)。
興味のある方は、是非ご参加を。
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テンプレート、変えてみた。

2013年11月17日 | ひとりごと
ちっと、遅かったぜ。
この調子だと、冬バージョンは3月か?

ま、こういうのは気分で変えないと。
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