Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

献本御礼:RStudioではじめる医療統計 第2版

2024年08月28日 | COVID-19
り、リンクが貼れない。理由不明。新しすぎるからか??

これは古いやつ、第2版が出たので、献本をいただきました。

最近臨床研究を始めた同僚にプレゼントしました。
以下がその感想文。

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この本では序文の通り医療従事者が学会発表や論文作成を行う際に必要となるRStudioの使い方が精選されて解説されている。初心者がRで統計解析をしようと思って検索しても、山のように情報が出てくるもののまず何をしたらよいかが分からず、結局何もできなくなってしまう。しかしこの本では「まず何をするか」が具体的に解説されているので初心者でも先に進めるようになる点が秀逸。ただ前提となる統計知識は必要でそこは他書で補う必要がある。
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ここで宣伝するまでもなく、メッッチャ売れているらしい。
繰り返しになりますが、リンク、間違えないでね。

お詫びに、他の本のリンクも貼っときまーす。


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公共におけるマスク着用が呼吸器症状の自己報告に及ぼす効果

2024年08月13日 | COVID-19
集中治療とは違いますが、以前マスクについては何度か書いたのと、ちょっと気になったのとで、紹介。

Solberg RB, Fretheim A, Elgersma IH, et al.
Personal protective effect of wearing surgical face masks in public spaces on self-reported respiratory symptoms in adults: pragmatic randomised superiority trial.
BMJ. 2024 Jul 24;386:e078918. PMID: 39048132.


5000例弱のRCT。公共の場でマスクをするかどうかで無作為割り付け、14日以内の呼吸器症状を自己申告するかどうかがprimary outcome。結果は、8.9% vs. 12.2%で有意にマスク着用群で少なかったと。

先日、5年ぶりに海外旅行でヨーロッパに行ってきた。誰もマスクしていない。旅行中の日本人と思われる人もしていない。そんな中で我々夫婦は頑なに屋内ではマスクをしていた。それほど奇異な目では見られなかったけど、最初は気持ち的に大変だった。

なのでこの研究結果は我が意を得たりと言いたいところだけど、さすがにちょっと。
まず14日で呼吸器症状が出るような感染を起こすか?この頻度だと、単純計算では平均で年に2-3回は風邪を引くことになる。それはいくら何でも。
そして何よりも、サブ解析でマスクの効果を信じているかどうかで分けているのだけど、信じている群ではオッズ比が0.64、信じていない群では1.66と逆転している。さすがに自己申告は無理があるのでは。実際、COVIDの発生はどちらも21例ずつ(これも自己申告だけど)。

客観性、大事ですね。
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JIPADのCOVIDの疫学データを年度別にまとめてみた。

2024年06月23日 | COVID-19
別の目的で年次レポートを見ていて、ふと気がついた。
COVID患者のBMIの中央値が、25(2020)→25.4(2021)→21.7(2022)と2022年度に急激に正常化している。
株の変化とワクチンの導入で疫学に変化が起こり、肥満が重症化のリスク因子ではなくなったようだ。
これ、常識なのかな、僕だけ知らなかったのかな、と思ってググったりChat先生に聞いたりPubMedでざっと調べたり感染症科医に聞いたりしたけど、ほとんど記載がないし、専門家も知らないと言う。

ほお。
じゃあ疫学を全部比較しちゃおう、と思い、JIPADの年次レポート3年分のCOVID特集のところをChat先生に表にしてもらった。ただし、すぐに間違えるので確認しながらになり、それなりに時間がかかった。だから全部正しいとは言えないので、正確にはそれぞれの年次レポートを確認してください。

2020年度(よく分からない病気で困っていた時期)
2021年度(症例数が多くて日本のICUもちょっとヤバい空気が流れた時期)
2022年度(ワクチン導入で症例数が減少し、治療法も定まってきたので安心し始めた時期)

で、一気に表を載せます。長いけど、結構違って楽しいよ。
(画面キャプチャなので変な矢印があるのはご愛嬌)












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COVIDに対する侵襲的人工呼吸の発生率と地域の重症患者管理能力との関連

2024年02月10日 | COVID-19
Ohbe H, Hashimoto S, Ogura T, et al.Association between regional critical care capacity and the incidence of invasive mechanical ventilation for coronavirus disease 2019: a population-based cohort study.
J Intensive Care. 2024 Jan 30;12(1):6. PMID: 38287432.


集中治療界隈ではダントツの文献発表数を誇るDr.大邉による新しい研究。

表1に全都道府県のICU関連の情報が示されているのだけど、この中に10万人あたりのICUベッド数の欄がある。これを見ると、最小値は新潟と山梨の1.5、最大値は岡山の11.8。なんとほぼ8倍の差がある。

「日本はICUベッド数が少ない」という話はよくあって、以前は僕の作ったこの図がちょいちょい引用されていた。でも、日本が少ないといっても他の国の数分の1程度で、国内の差に比べると全然小さい。重症患者の県外への搬送がたくさん行われているとは思えないので、きっと臨床も全然違うのではなかろうか。

JIPADの仕事で三県とも行ったことあるけど、あまり意識していなかったので、ちょっと驚きました。
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COVID-19肺炎に対するアバタセプト、セニクリビロク、インフリキシマブ

2023年07月16日 | COVID-19
落ち着いてきたこのタイミングで、こんなの出るかー。

O'Halloran JA, Ko ER, Anstrom KJ, et al. ; ACTIV-1 IM Study Group Members.
Abatacept, Cenicriviroc, or Infliximab for Treatment of Adults Hospitalized With COVID-19 Pneumonia:
A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2023 Jul 10 Epub ahead of print. PMID: 37428480.


アバタセプトとインフリキシマブの2剤は結構良さげに見えるが、Nが足りない。
追試が必要だし、すでに有効性が示されている薬剤との比較もしくは併用効果の検討も必要だし。
ちょっと無理がありそうだけど。

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COVIDが重症化した時の治療量ヘパリンの継続投与

2023年06月05日 | COVID-19
非挿管患者にレムデシビルを使っていたけど悪化して挿管になった。レムデシビルはどうする、というのと同じ問題。
病棟患者では治療量ヘパリン、ICUでは予防量。じゃあ治療量のヘパリンが投与されていた病棟患者がICUに来たらどうする?

Bradbury CA, Lawler PR, McVerry BJ, et al.; REMAP-C. A. P. Investigators.
Continuation of therapeutic dose heparin for critically ill patients with COVID-19.
Intensive Care Med. 2023 May 31:1–3. Epub ahead of print. PMID: 37256341.


REMAP-CAPのサブ解析。Nは合計で72。ヘパリンは予防量に減らした方が良さそう。
これで逆の話になったら困ったけど。普通の結果でよかった。

悩むことはない。
重症患者ではレムデシビルもヘパリン治療量も使わない。
過去の治療内容は気にしなくて良い。
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レムデシビルは命を救う。それを学ぶのに3年間も必要だったのか?

2023年02月24日 | COVID-19
というタイトルのeditorial。
Andre C Kalil
Remdesivir saves lives. Were 3 years needed to learn that?
Lancet Respir Med. 2023; (published online Feb 21.)


参照している文献はこちら。
Amstutz A Speich B Mentré F et al.
Effects of remdesivir in patients hospitalised with COVID-19: a systematic review and individual patient data meta-analysis of randomised controlled trials.
Lancet Respir Med. 2023; (published online Feb 21.)

これ自体は、patient data meta-analysisと言っても、結果は今まで通り。入院を要する軽症では有効、呼吸サポートが必要になると無効(有意差はないけど数値的には有害)。
なのになんでこんなタイトルのeditorialなんだろと思ったら。ACTTの共同研究者だった。
気持ちはわかる。さっさと研究やって、2020年の早い時期に有効性を示したのに、WHOなどのガイドラインで取り上げられるまで時間がかかったのだから。

でも勘違いしちゃいけないのは、ACTTですら重症患者では効果なしだった、ということ。
ICUでは使わない薬であることに変わりはない。
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COVID-19パンデミック時の米国医師における過剰死亡率

2023年02月12日 | COVID-19
この話題は久しぶり。

Kiang MV, Carlasare LE, Thadaney Israni S, et al.et al.
Excess Mortality Among US Physicians During the COVID-19 Pandemic.
JAMA Intern Med. 2023 Feb 6. Epub ahead of print. PMID: 36745424.


64歳以下では、医者の超過死亡率はほぼゼロ。

医療者はちゃんと防御すれば大丈夫シリーズ:
手術室とICUスタッフのCOVID感染リスク
医療者と家族のCOVIDによる入院リスク
NYだって、ちゃんとやっていれば感染しない。
PPEをちゃんとすれば医療者は感染しない。
ちゃんとやっていれば医療者は感染しない。

2020年頃は、「ICUに自分の患者を入れたくない」、「ICUスタッフと関わりたくない」と言う医者がいた。
僕は2020年の4月に、「毎日ICUでCOVIDの診療をしている」とバイト先に伝えたら、「当分来るな」と言われ、辞めざるをえなくなった。
緊急時にこそ人間の本性が良くわかると言うが、同じような経験をしたみなさん、そいつらが言ったこと、忘れないようにしましょう。
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COVIDの動脈ラインの寿命は短い。

2023年02月01日 | COVID-19
明けましておめでとうございます。
年末から新しいこと(単なるありがた迷惑と思われているかもしれないが)を始めたりしていたら、気がついたら2月になっていた。
集中治療への興味も文献を読む趣味も継続しているので、そろそろ文献紹介を再開しようかと。たまっている文献を順番に書いていくので、ちょっと古めかも。

Zon RL, Merz LE, Fields KG, et al.
Thrombosis-Related Loss of Arterial Lines in the First Wave of COVID-19 and Non-COVID-19 Intensive Care Unit Patients.
Anesth Analg. 2023 Jan 1;136(1):70-78. PMID: 36219579.


COVID患者のA-lineが血栓でダメになる確率は敗血症・ARDSの患者に比べハザード比で2.19。

臨床的には「そうかも」感じていることでも、ちゃんと結果として見られると、「やっぱりそうか」と思えて嬉しくないですか?
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入院を必要とするCOVID-19患者に対するFavipiravirの投与

2022年12月23日 | COVID-19
あったね、そう言えば、そんな薬。
テレビでもよく耳にしたし、ICUでも使っていた人いるのでは?

Shah PL, Orton CM, Grinsztejn B, et al.; PIONEER trial group.
Favipiravir in patients hospitalised with COVID-19 (PIONEER trial): a multicentre, open-label, phase 3, randomised controlled trial of early intervention versus standard care.
Lancet Respir Med. 2022 Dec 14:S2213-2600(22)00412-X. Epub ahead of print. PMID: 36528039.


昨日紹介した文献のeditorialの2段落目(DeepL)。
「2020年初頭の暗黒時代における曖昧さと、その結果として生じた多様な実践の顕著な例として、私たちの一人はCOVID-19の入院患者を特別に治療する医療チームの感染症コンサルタントをしてた。あるチームでは、入院患者全員にヒドロキシクロロキンを補助的に投与していた。同じフロアで毎日回診しているもう1つのチームでは、逆に1人の患者さんにも投与されなかった。両チームとも、自分たちのやり方を支持する論理的な議論を展開することができたが、同時に、無作為化臨床試験による質の高いデータがないことを認識した上で、それを実行に移した。」

根拠が不確かな状況で自分の臨床を変える、もしくは新しい治療法を自分の臨床に取り入れると、後で無効であることが判明してまた臨床を変えないといけなくなる、最悪の場合はクロロキンのように実は予後を悪化させていたことが判明してしまう。
EBM的には常識のはずなのだけど、実際に経験すると骨身に染みるのでは。
COVIDの不幸中の幸は、それを世界中の多くの医療者が経験したことだと思う。

でも、経験しても学習できない人は、これまた世界中に沢山いそうだけど。
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