Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

ICUへの患者受け入れの選択理由

2019年10月31日 | ICU・システム
Bassford CR, Krucien N, Ryan M, et al.
U.K. Intensivists' Preferences for Patient Admission to ICU: Evidence From a Choice Experiment.
Crit Care Med. 2019 Nov;47(11):1522-1530. PMID: 31385883.


イギリスのICUの医者に架空の二人の患者さんのプロファイルを見せて、どっちがICU入室に適しているかを判断してもらった。
判断の決定因子としてもっとも大きかったのは年齢、次に家族の意向、そして基礎疾患の重症度の順だった。

この3つだと、個人的には、基礎疾患の重症度、年齢、家族の順かなー。
でも病棟や救急からの依頼ってこの逆の順で重要性が判断されている印象もあり、ちょっと違和感を感じることがある。「家族が望んでいるので」ってやつ。
そういう時は仕方ないので一旦ICUに受け入れて、経過を見つつ説明し直したりする。

ICUに来る前にやってくれれば世話がないのだが、難しいのかねー。患者さんの苦痛的にも医療費的にも望ましいと思うのだけど。
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ケースレポートの採用率の性差

2019年10月30日 | その他
Laycock H, Bailey CR.
The influence of first author sex on acceptance rates of submissions to Anaesthesia Cases.
Anaesthesia. 2019 Nov;74(11):1432-1438. PMID: 31373389.


医者の性別による違いシリーズ。
ちなみに過去ログはこんな感じ。

蘇生チームの性差
外科医の性別と予後
集中治療女子
女性医師がCPRのリーダーをすると、
集中治療医の性差

今回の研究は、Anaesthesia Casesという麻酔科系のケースレポート雑誌への採用率が筆頭著者の性別で異なるか、を比較。
結果は予想通り、採用された文献の筆頭著者が女性の割合は42.1%、リジェクトされた文献は34.4%で、採用率は女子の勝ち。
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小脳出血の手術適応

2019年10月29日 | 感染
珍しくJAMAを。

Kuramatsu JB, Biffi A, Gerner ST, et al.
Association of Surgical Hematoma Evacuation vs Conservative Treatment With Functional Outcome in Patients With Cerebellar Intracerebral Hemorrhage.
JAMA. 2019 Oct 8;322(14):1392-1403. PMID: 31593272.


小脳出血の手術適応って、意識が悪くなったら速攻で手術くらいにしか認識していなかった。
とは言っても、血腫が大きいと手術した方がいいかもという、当たり前といえば当たり前だし、バイアスもあやしい結果ではあるけれど。

小脳出血の文献ってあまり読んだことがない。
152例ずつのマッチング研究でJAMAなんだから、きっと研究の数も少ないに違いない。
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RRTの効果がトップの病院を評価

2019年10月28日 | ICU・システム
Dukes K, Bunch JL, Chan PS, et al.
Assessment of Rapid Response Teams at Top-Performing Hospitals for In-Hospital Cardiac Arrest.
JAMA Intern Med. 2019 Jul 29. [Epub ahead of print] PMID: 31355875.


これの続編。
前回はCPRチーム、今回はRRTの評価。

(担当医とか)他の人を気にせずベッドサイドのナースがRRTを呼べる、RRTがナースとコミュニケーションをよくとっているなどがポイント。

前回も思ったけど、良い研究だわ。

それにしても、ICUにしろ病棟にしろ、患者さんの命はそばにいるナース次第ということを、本人たちも周囲もどれくらい認識しているのか。なんとなく、実際のインパクトの大きさと認識の程度には乖離がある気がする。
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消化管出血の危険因子

2019年10月27日 | 消化器・血液
Granholm A, Zeng L, Dionne JC, et al.; GUIDE Group.
Predictors of gastrointestinal bleeding in adult ICU patients: a systematic review and meta-analysis.
Intensive Care Med. 2019 Oct;45(10):1347-1359. PMID: 31489445.


8つの研究のメタ解析。AKI、男性、凝固異常、ショック、慢性肝疾患、人工呼吸が消化管出血の危険因子だった。

消化管出血、ストレス潰瘍と言えば、カナダのCTGをすぐ思い出す。
まず観察研究してリスク因子を検討、それとともにsystematic reviewをして過去の情報を検討、それらを元にRCTを行い、H2Bとサクラルファートを比較した。

最近はPPIなんて薬も出てきて、それをプラセボと比較した研究も行われ、消化管出血は減らすけど予後には影響しないなんて結果が出て、じゃあ患者のリスクに合わせて賢く予防をしようということでリスク因子が検討された。

結果的に、そのリスク因子はCCTGが示したものとほぼ同じ。
30年近くかけて、ぐるっと回っている。

なんか面白い。
そしてちょっとガクッと来た。
EBMというのはこういうものか。
そうかも。
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子供がICUにいる家族に面会すると、

2019年10月26日 | ICU・システム
Laurent A, Leclerc P, Nguyen S, et al.
The effect visiting relatives in the adult ICU has on children.
Intensive Care Med. 2019 Oct;45(10):1490-1492. PMID: 31332461.


自分の家族が管に繋がれているところを子供が見るとトラウマになってしまうんじゃないかとか、触ってはいけないものに触っちゃうんじゃないかとか、うるさいとか、そんな理由で小児の面会を制限しているICUは世界的にも珍しくないらしい。

このレターは、小児の面会についてsystematic reviewを行い、7つ文献を見つけたのそれを紹介している。
簡単に言えば、悪いことはなさそうだ、ということらしい。
ちゃんと説明してあげたりとか、コミュニケーションは大事だけれど。
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小児のPICU入室時の血圧と予後

2019年10月25日 | 循環
Matettore A, Ray S, Harrison DA, et al.
Paediatric intensive care admission blood pressure and risk of death in 30,334 children.
Intensive Care Med. 2019 Oct;45(10):1482-1483. PMID: 31087115.


PIM3(小児の重症度スコア)にはSBPが使用されているし、当然のことながら血圧は予後予測の指標になる。
一般的に予後との関係はUシェイプ(低くても高くても予後が悪い)と思われていたけど、それは本当か、ということを3万例のデータで検証してみたら、もっと複雑な形だったよ、というレター。

こういう研究はICUの疫学的情報として重要だし、今後の予後予測方法を検討するにも意味があるし、Nはデカイし。
にも関わらずレターとは。。。

ICM、どんだけ立派な雑誌になってしまったのか。
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維持輸液のNa濃度

2019年10月24日 | 循環
Van Regenmortel N, Hendrickx S, Roelant E, et al.
154 compared to 54 mmol per liter of sodium in intravenous maintenance fluid therapy for adult patients undergoing major thoracic surgery (TOPMAST): a single-center randomized
controlled double-blind trial.
Intensive Care Med. 2019 Oct;45(10):1422-1432. PMID: 31576437.


おお。
維持輸液についての文献って、ほとんど読んだことがない。Nは70だし、primary outcomeはインアウトバランスだし、結果の評価は難しいけれど。

そもそも維持輸液って何を維持するんだろうって、不思議じゃない?
維持するためには、現状が望ましい状況であるという前提が必要で、その前提は急性期においては全然わからないことで、でもなんとなく急患が来ると、「じゃあメインを細胞外液で80ml/hrで」とかやっている自分に対する疑問。
"What does maintenance fluid maintain?"ってオーストラリア人も言っていたので、僕だけの疑問じゃないようだ。

とりあえず、胸部手術後に生理食塩水を維持輸液として使用するとバランスがプラスに傾きやすそうだ、ということは分かった。
もっと研究がたくさん行われると、嬉しい。

あ、これ多施設の研究ネタとして良いのでは?
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慈恵ICU勉強会 191001, 191008

2019年10月18日 | ICU勉強会
10月1日 CRPとCOPDの抗菌薬(JC-NEJM)
10月8日 ELSO registry


先週と先々週分をまとめて。
ELSO registryって、ちょっと変わったタイトルでしょ?
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積極的な体温管理

2019年10月16日 | 神経
Young PJ, Bailey MJ, Bass F, et al.; REACTOR investigators; ANZICS Clinical Trials Group.
Randomised evaluation of active control of temperature versus ordinary temperature management (REACTOR) trial.
Intensive Care Med. 2019 Oct;45(10):1382-1391. PMID: 31576434.


ANZICS-CTGより、脳損傷患者の発熱を積極的にコントロールすると予後はよくなるか、という多施設研究を行うためのfeasibility study、N=184。結論は、積極的に管理すると熱は下がる。

Feasibilityを見るためにNが180って。。。
どんだけなんだ、ANZICS-CTG。

結果はちょっと面白い。
確かに積極的に体温管理すると普通にやるよりも下がるが、72時間くらい経つとどうせ下がってくるので、差が小さくなる、というもの。
平均値で出すと、そうかも。

もちろん下がらない人もいるし、2、3日だけでも体温コントロールに意味があるかもしれないし。
phase IIIの結果を楽しみにしましょう。
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