Dr内野のおすすめ文献紹介

集中治療関連の文献紹介が主な趣旨のブログ。
しかし、セミリタイアした人間の文献紹介なんて価値があるのか?

SAHの実臨床におけるクリップとコイルの比較

2019年05月31日 | 神経
Lindgren A, Turner EB, Sillekens T, et al.
Outcome After Clipping and Coiling for Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage in Clinical Practice in Europe, USA, and Australia.
Neurosurgery. 2019 May 1;84(5):1019-1027. PMID: 29846713.


ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの22施設、7600例。14日死亡率は、クリップよりコイルの方が補正後のオッズ比が高かった(1.32)。

観察研究だし、クリップよりもコイルが良いというのが一般常識になった後の話でバイアスかかりまくりだし。
とは言え、有意差付きで逆になるのか、という疑問を呈した研究。

Editorialの最後の文章。
"We should ponder whether the endovascular pendulum has swung too far."

♪振れる〜振れる〜よ、振り子〜は振れる〜♪
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AKIの時の抗菌薬の投与量

2019年05月30日 | 感染
Crass RL, Rodvold KA, Mueller BA, Pai MP.
Renal Dosing of Antibiotics: Are We Jumping the Gun?
Clin Infect Dis. 2018 Sep 13. [Epub ahead of print] PMID: 30219824.


eGFRとかで抗菌薬の投与量の調整ってCKD患者に対して行われた研究をもとに作られているし、AKIって数日で改善することも少なくないし、最初の数日の治療強度って予後に大きく影響するし、それならば、AKIだからって投与量を調整するのは48時間くらい経ってからでいいんじゃないだろうか、という提案。

そだよね。ベータラクタムとか安全域が広いし。
でも薬剤師がすぐ指摘するのよねー。

ちなみに、"jump the gun"というのは、スタートの合図を待たずに先走ることだそうです。お勉強になりました。
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Methodsを読むMethod

2019年05月29日 | 勝手に紹介
いつだったか、自分が執筆に関与していない本が送られてきた。
はて、よく分からないが貰えるものは貰っておこう、と思い、ICUの本棚に置いた。
数日後、某有名医師のブログを読んでいたら、その人のところにも同じ本が送られてきたそうで、
「突然送られてきたが、きっと宣伝しろという意味だと思うので書評を書く」的なことが書いてあって、
ああ、そういうことだったのか!
と納得した。

つい先日、また別の人から本が送られてきた。
パラパラ見ていたら、自分の名前が書いてあってビックリ。
本が出るとは(ほぼ)知らなかったけど、執筆に関与していないとは言いにくいので、今回は紹介することにした。

臨床論文のMethodsを読むMethod 臨床家が知っておきたいPICOと統計解析の基本のキ

論文というのは、Abstract, Introduction, Methods, Results, Discussionに分かれているのはご存知の通り。
あまり論文を読み慣れていない人はみんな、Methodsが一番読むのが難しい、と言う。僕もそうだった。
でも論文を書くときは、Methodsは機械的に書けるので一番簡単だったりする。
ということは、ルールさえ分かってしまえば、Methodsは難しくない。
この本は、そのルールを教えてくれる、と思う。

とは言っても、チョー初心者向けではない。僕も勉強させていただきました。
もっと論文をスラスラ読めるようになりたい、壁を突破したい、と思っている人向け、かな?
いや、分かっていると思い込んでいる人向け、かも。

ん?
ちょっと待てよ?
それで送ってきたのか!
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慈恵ICU勉強会 190521

2019年05月28日 | ICU勉強会
5月21日 間欠的空気圧迫の追加(JC-NEJM)

研究グループが興味深い。Saudi CTGですって。
明らかに質の高いリサーチが世界中で行われるようになってきている。
とても良いことであり、とてもヤバイことである。

若者よ、頑張れ。
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TEGを指標に心外術中の輸血をする。

2019年05月27日 | 循環
Redfern RE, Fleming K, March RL, et al.
Thrombelastography-Directed Transfusion in Cardiac Surgery: Impact on Postoperative Outcomes.
Ann Thorac Surg. 2019 May;107(5):1313-1318. PMID: 30768933.


TEG導入前後のbefore-afterの1施設研究。輸血が減り、再手術が減り、入院日数が短くなった。

これを読んでいて、何年か前のことを思い出した。
術中のGDTについての研究会的なものに呼ばれた時のこと。色々な施設が自分たちのGDTの導入結果を発表していて、
「補液が減って、術後の合併症が減った」
「特に変わらなかった」
「補液が増えて、術後の起立性低血圧が減った」
と、みんなバラバラな内容だった。
それって、つまりは普段の補液が多すぎたり少なすぎたりしているからじゃないのか、ってことはGDTしなくても自分たちの問題を把握したら正常化できるんじゃないか、という疑問を持った。

このTEGの話、それと似てるよね。
この施設、確かにTEG導入後に輸血は減っているけど、例えば血小板なんか78%に使用されていて、それが56%に減ったという結果で、なんかそれって単純に輸血しすぎだったんじゃないの?

自分のやっていることを他の施設とか疫学情報とかと比べて、どうも〇〇しすぎのようだぞと話し合ってプラクティスを変更できれば、道具を使う必要はないのかも。
ただ、話し合おうとしても聞く耳を持たない人も、道具や数字を見せられたら言うことを聞くかもしれないけど。

ということで、こういう研究は信じられない。
TEGやGDTが、全体の平均値は変えずに、患者さん一人一人にとって望ましい対応がされた結果、予後が良くなった、という結果じゃないと。
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Broad-spectrumな昇圧剤の使用

2019年05月26日 | 循環
Chawla LS, Ostermann M, Forni L, Tidmarsh GF.
Broad spectrum vasopressors: a new approach to the initial management of septic shock?
Crit Care. 2019 Apr 16;23(1):124. PMID: 30992045,


タイトルだけ見て面白そうだったから”ジャケ買い”した。
どういう意味かと思ったら、ノルアドやバソプレシンの反応性って人によって違うから、どっちかを始めて効かなかったら次を追加するのではなく、最初から両方使ったらどうだろう、という提案。

悪くないアイデアかもしれない。ショックでしばらく放っておくよりはよっぽどいいかも。
同時、とまではいかないけど、結構すぐにバソプレシンを追加している気はするけどね。最近はいよいよそんな感じ。
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術中低血圧と術後心合併症の関係

2019年05月25日 | 循環
Roshanov PS, Sheth T, Duceppe E, et al.
Relationship between Perioperative Hypotension and Perioperative Cardiovascular Events in Patients with Coronary Artery Disease Undergoing Major Noncardiac Surgery.
Anesthesiology. 2019 May;130(5):756-766. PMID: 30870165.


955例の予定手術。術前に冠動脈CTを施行、その結果と、術中の低血圧と、術後30日以内のAMIもしくは心血管性の死亡の関連について検討。
冠動脈病変の有無と術中低血圧の有無で2×2の4群に分けてみると、当然のことながら冠動脈病変有り+低血圧有りの群が合併症の発生頻度が一番高いけど、冠動脈病変無し+低血圧有りが二番目になるのがポイント。

「この患者さん、術前に冠動脈CTやってて所見がなかったから、ちょっと虚血は考えにくいねー」
なんて言っている奴がいたら、じっと見つめてあげてください。
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Goal-directedにHESと晶質液の術中投与を比較

2019年05月24日 | 感染
Kabon B, Sessler DI, Kurz A; Crystalloid–Colloid Study Team.
Effect of Intraoperative Goal-directed Balanced Crystalloid versus Colloid Administration on Major Postoperative Morbidity: A Randomized Trial.
Anesthesiology. 2019 May;130(5):728-744. PMID: 30882476.


Nが1000を超えたRCT。補液量がHESで少なかった以外、良いことも悪いことも起こらなかった。もちろんHESが腎臓を悪くしたりもしなかった。

なんか、もう飽きた。もうどっちでも良い気がしてきた。
どうせ使わないし。使わなくても困らないし。
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ATS2019

2019年05月23日 | 勝手に紹介
ATS、終わったみたいね。
なんか、今年はJAMAの2つしかメールが来なかった気がする。

Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy. The SCARLET Randomized Clinical Trial
JAMA. Published online May 19, 2019. doi:10.1001/jama.2019.5358


Derivation, Validation, and Potential Treatment Implications of Novel Clinical Phenotypes for Sepsis.
JAMA. Published online May 19, 2019. doi:10.1001/jama.2019.5791


でも、今日のNEJMにもICU関係が2つ出ていたので、一緒に。
タイミング的にこっちもATSじゃないのか、という気もするけど、確認はできていない。

Early Neuromuscular Blockade in the Acute Respiratory Distress Syndrome.
The National Heart, Lung, and Blood Institute PETAL Clinical Trials Network
N Engl J Med 2019;380:1997-2008 | Published Online May 19, 2019


Early Sedation with Dexmedetomidine in Critically Ill Patients.
Y. Shehabi and Others
DOI: 10.1056/NEJMoa1904710 | May 19, 2019


SCARLETもPETALもSPICEも何年か前から待っていたやつらなので、ちょっとルンルン。

ちなみに、JAMAのトボンボモジュリンの文献のEditorialに、JSEPTIC-DICの疫学研究が参照されていて、first authorが驚いていた。いやいや、Nがそれなりに大きい最新の疫学情報だもの。当然ですがな。
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予定術後のAKIと死亡率の関係

2019年05月22日 | 腎臓
Chaudery H, MacDonald N, Ahmad T, et al.; International Surgical Outcomes Study (ISOS) Group.
Acute Kidney Injury and Risk of Death After Elective Surgery: Prospective Analysis of Data From an International Cohort Study.
Anesth Analg. 2019 May;128(5):1022-1029. PMID: 30418232.


ISOSという、27カ国の予定手術の観察研究のデータを使って、AKIの発生率および死亡率との関係について検討。

ちょっと面白かったのは、高齢者においてはeGFRが高いと死亡率も高かったこと。
つまり筋肉量が少なくてGFRを過大評価しているということで、当たり前と言えば当たり前なのだけど、今まで見たことがない気がするなー(忘れているだけかもしれないが)。
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