超級龍熱

香港功夫映画と共に

熱風!韓国LEGENDS⑩ 黒覆面の拳士が夜の闇に飛翔する!黄仁植主演『黒猫』

2008-11-10 00:18:21 | 熱風!韓国LEGENDS
いや残念です・・原ジャイアンツ、最後は渡辺ライオンズの執念の前に惜敗でしたね。毎回巨人と西武の日本シリーズは最後まで縺れるケースが多いんですが、私は今回のGL決戦を観ていて、今では野球ファンの間で伝説の日本シリーズと言われている83年の藤田ジャイアンツと広岡ライオンズの死闘(この時も第7戦までいき、西武が巨人に勝ち日本一に・・トホホ!)を思い出していました。
それにしても今回の日本シリーズは第1戦から第7戦まで息詰まる接戦ばかりで観ているこちらがグッタリしてしまいました(苦笑)。最後に渡辺ライオンズ、日本一おめでとう!アジア・シリーズも是非頑張って下さい。
そして原監督はこれからWBCという大仕事が控えているのでこちらも楽しみです!!

さて、「熱風!韓国LEGENDS」もいよいよ大台の第10回に突入ですが、今回は日本でもその名を知られた“韓国の猛将”黄仁植が母国の韓国で主演した金時顕導演作品『黒猫』(74)です。この映画は国内では一部で『黒豹』と誤表記されていた時期がありますが『黒猫』が正しい題名です。
で、この『黒猫』のレビューに入る前に、黄仁植と言えば72年に黄楓導演、茅瑛主演『アンジェラ・マオの女活殺拳(韓国題名『黒燕飛手』)』(72)で韓国から香港の嘉禾公司に招かれ、一躍その名を知らしめた武打星だったわけですが、ここで黄仁植が香港映画界に登場する以前の韓国映画&韓国人明星と香港映画界の交流の系譜について駆け足になりますが触れておきたいと思います。
まず当然と言えば当然ですが、香港と韓国の本格的な映画交流を始めたのはランラン・ショウ率いるショウ・ブラザースでした。1958年にショウ・ブラザースと韓国の南韓演芸社との合作として製作された『異国情鴛』(58)は香港から屠光啓、日本から若杉光夫(別名義の華克毅)、そして韓国から全昌根と3人の共同導演、また撮影をこれまた別名義ながら西本正が担当した作品であり、キャストも韓国からキム・ジンギュ、香港からユー・ミンが主演した文字通りの意欲作でした。
その後もショウ・ブラザースは岳楓や厳俊と言った香港の第一級導演の作品に上記のキム・ジンギュや朴魯植と言った韓国明星を主演させたり、あるいは韓国映画の巨匠・申相玉に『観世音』(67)を、崔慶玉に『山河血』(69)などの合作作品等を撮らせたりと様々な港・韓のコラボレーションを展開していきます。
中でもあのアレクサンドル・デュマの小説『鉄仮面』を何夢華がリメイク&アレンジした『鉄頭皇帝』(67)では、韓国から『燕山君』(61)や『暴君燕山』(62)などでその名を知られた“大鐘影帝”申榮均を招き、香港の“影后”李青と共演させ、その重厚でドラマチックな作品展開と共に高い完成度の作品に仕上げました。
余談ですが、申榮均の俳優としての名声を高めた申相玉導演による『燕山君』系列は、稀代の暴君として知られる李氏朝鮮第10代国王である燕山君を描いた作品で、これらの韓国映画伝説の作品群もいずれ当ブログでレビューしていきたいと思っています。
さて港・韓の映画交流に話は戻りますが、韓国人明星に限らず韓国人武打星に関しても南宮勲、ガム・ケイチュー、陳鳳鎮、洪性中と言った武打星が悪役の形ながら多くのショウ・ブラザース作品に出演していきましたし、こうした50年代終盤から70年代序盤に至る韓国武打片の人材が香港映画に続々と進出していく一連の過程の一つの到達点的作品が“韓国アクション映画の父”鄭昌和導演が羅烈主演で撮った『キングボクサー大逆転(韓国題名『鉄人』)』(72)だったわけです。
そして宿命の好敵手ショウ・ブラザースの韓国映画界との精力的なコラボレーションを横目で見ていた嘉禾公司は、それまでショウ・ブラザースで活躍していた南宮勲やガム・ケイチューと言った韓国武打星には決して真似の出来ない本物の武術家(韓国合気道)、そして本物の蹴り技(テコンドー)の達人である1人の武打星を韓国から招聘し『~女活殺拳』に出演させます。そう、それが“韓国の猛将”黄仁植だったのです。
言わばこの黄仁植こそが、本当の意味で韓国合気道の凄みとその真髄を香港映画界に紹介した韓国武打星のパイオニアであったわけで、それを何よりも証明するのがリーさんこと“世紀の闘神”ブルース・リーが生前この黄仁植を「あの黄仁植の蹴り技は見事だ!」と高く評価していて、リーさんは自作『死亡遊戯』に黄仁植と池漢載を招聘する際には自ら2人を食事に招き大いに歓待した事からもそれは明らかなわけです。

さてさて、大変前置きが長くなりましたが、その黄仁植が香港映画界でも映画出演を続けながら、74年に一時的に韓国に戻り主演したのがこの抗日武打片である『黒猫』でした。
韓国では75年1月25日に公開されている本作は、日帝の圧政が吹き荒れる朝鮮を舞台に、朝鮮人でありながら日本人の悪漢・岡本(伊一峰だと思いますが確認中。伊の字異なります)の許で日本の手先となり朝鮮の烈士を次々とその無敵の連続蹴りで打ち倒していくジャンピョ(黄仁植)と、ジャンピョに自分の恩師を殺された武道家リムホー(ガム・ケイチュー)を主人公に展開されます。
既にお分かりのようにこの『黒猫』では、通常我々が予想し得る黄仁植=正義漢、ガム・ケイチュー=悪漢の図式が逆転している配役に注目です。
また本作の題名でもある黒猫ですが、これは劇中でジャンピョが日本人の手先として働きながらも時として黒覆面&黒装束姿で悪辣な日本人を制裁する謎の義賊・黒猫として活躍する事が由来だと思われます。(と言いながら全編韓国語&字幕無しでのレビューであるため完全な物語の把握は困難な事をどうかご留意下さい)
面白いのは映画の途中でガム・ケイチューも黒覆面&黒装束で黒猫(って最初からあの体系でバレバレですが)となり日本人相手に大暴れする展開で、最後は日本家屋内で岡本ら日本人を裏切ったジャンピョと共にリムホーが日本刀を手にした無数の日本人たち相手に凄まじい激闘を展開します。
ここでの黄仁植扮するジャンピョと岡本の一騎打ちでは、黄仁植のド迫力の連続廻し蹴りがこれでもか!と炸裂しますが、最後は岡本の子分(洪性中)の背後からの日本刀の一突きでジャンピョはその場に崩れ落ち絶命します。
そして代わりにリムホーが野外に飛び出ての岡本との死闘の果てに岡本の両目を潰し勝利を得ます。
導演の金時顕と黄仁植はこの『黒猫』の他にも数多くのコンビ作品を撮っていて、それらの韓国時代の黄仁植主演のクンフー映画も今後の「熱風!韓国LEGENDS」で紹介していく予定ですので、どうぞお楽しみに!

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