超級龍熱

香港功夫映画と共に

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(11)日中武芸友情開花!「少林寺vs忍者」

2016-01-31 12:43:31 | 作品レビュー
「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第11回は、邵氏公司作品にして劉家良導演作品「少林寺vs忍者」(78)でいきたいと思います。
“洪拳宗師”劉家良が遺した数々の傑作武打片の中で、もし私がそのベスト3を挙げるとしたら「陸阿采與黄飛鴻」(76)、「洪熙官」(77)、そしてこの「少林寺vs忍者」になります。2000年初頭にキングレコードが国内で邵氏公司作品のDVDリリースを開始するまでは、この「少林寺vs忍者」のワーナー版VHSが唯一国内でビデオ化された邵氏公司のクンフー映画でした。
原題の「中華丈夫」を見るまでもなく、本作は新婚の中国人の夫何濤(劉家輝)と日本人の妻弓子(水野結花)の異国間の文化や習慣の違いから起きた夫婦喧嘩が、やがては日本と中国の武道家同士の集団での闘いへと発展していく様を描いています。
まずこの映画のユニークな点は、主人公の何濤と武野三蔵(倉田保昭!)率いる日本人武道家軍団(原田力、八名信夫、角友司郎、竜咲隼人、中崎康貴、大前鈞など) の連続対決を、それぞれ1日に1度ずつ行われる決闘としてジックリと丁寧に描いている事でしょう。
その1日に1度の対決を終えた僅かな時間に、何濤たち中国サイドは明日対戦予定の日本人武道家の得意とする武芸の弱点を懸命に探り、その対策を準備するわけで、その過程で酔拳使いの乞兒としてそれは見事な酔拳を披露しているのが導演の劉家良なわけです。
この「少林寺vs忍者」が制作される以前の香港クンフー映画に登場して来た日本人武道家像は、粗暴で残虐、ただひたすら日本刀や銃を振り回しながら中国人を侮辱し虐げるだけのキャラクターでした。そこには日本の伝統ある武士道精神の欠片も無かった。それは私自身、1人の日本人として実に悲しい事でした。
劉導演はこの「少林寺vs忍者」の撮影が始まる直前、倉田さんにこう言ったそうです。「クラタ、この「中華丈夫」は俺にとって勝負の映画になる。だから絶対に失敗出来ないんだ。俺はそれこそ日本人の喋り方や歩き方もよく知らない。だからこの映画の中の日本人の描写で少しでも変な所があったら必ず言ってくれ。頼むぞ!」
それは黄飛鴻の直系にして“正宗国術”の誇りと共に長年生きて来た劉家良が、自身の威信を懸けた作品で、香港クンフー映画で初めて“正しい日本人武道家の姿”を描く事を日本から来たドラゴンに誓った瞬間でした。
映画の中で連日繰り広げられる何濤vs日本刀、vs空手、vsヌンチャク、vsサイ、vs柔道など闘いはまさに圧倒的な完成度で、それはこの達人たちの闘いを観ている私たち観客を恍惚の世界にグイグイと引き込んでいくほどの見事さです。
こうしてこの日本と中国の誇りと名誉を懸けた闘いは何濤vs三蔵の最終決戦の果てに、“武士道精神の象徴”である日本刀の譲渡という余りにも感動的なエンディングで幕を下ろします。
そして私がこの「少林寺vs忍者」という作品で、どうしても、そして強く言いたい事。それは香港クンフー映画は基本的に“闘い”を描いた作品です。例えどのような理由であれ、その映画の中では人が殺し殺され、命を奪われる場面が映し出されます。主人公が自ら鍛え上げた鉄拳と蹴りを用いて悪である敵と争う際、その“闘い”の結末で一方が命を落とす事はある意味必然である、と私も思っていました。
でもこの「少林寺vs忍者」は違いました。
日中の武道家同士がこれほど壮絶かつ激しく火花を散らし合いながらも、映画の最初から最後まで登場人物が1人も死ななかった。これは素晴らしい事。
これこそが劉家良師父がこの映画で訴えたかった真のメッセージで、武術に秀でた者がその武術を用いる時、それは決して相手を傷つけ、打ち負かすための物ではない。それは例え国や習慣が違えども、お互いが修練した武術を持って凌ぎ合う事で、お互いが敬意を深め、認め合い、最後には固い信頼を築くためにこそ武術はあるのだ、との崇高なメッセージなのです。
最後に、私がこの「少林寺vs忍者」は最後まで人が1人も死なない殆ど唯一のクンフー映画ですね?と倉田さんに問いかけた時、倉田さんは一瞬何とも嬉しそうな笑顔を浮かべると、ただ黙って、そして静かに私に頷いてくれたのでした。そう、合言葉はドラゴォォン!!

「あの「少林寺vs忍者」は僕と日本から何人もの俳優を連れて香港に行き撮影しました。監督の劉さんはこの映画に懸けていましたね。もう気合い十分で、連日激しいアクション・シーンの連続でした。ラストの僕と劉家輝の対決シーンの前に、劉さんが僕のところに来て「クラタ、何か面白い空手の動きとかあるか?」と訊いて来たんで、僕もアイディアを出して2人で考えたのがあの忍者の蟹拳でした。でもこのシーンでも義理の弟の劉家輝は何時も劉さんに怒られてましたね(笑)。でも僕は劉さんに怒られたりとかは一切無かったです。ちょっと前になりますが、あるパ-ティーで劉徳華から「中華丈夫」をリメイクしたいんですなんて言われたんですが、僕が思うにこの映画をいまリメイクしても、あの劉さんや僕らが作り上げた物と同じ作品にはとてもじゃないけど出来ないんじゃないかと思いますね。それだけこの「少林寺vs忍者」の完成度は高いと思うし、僕もこの映画に出演させて貰った事は今でも誇りです」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(10) 人間vs人喰い虎!「武闘拳/猛虎激殺!」

2016-01-29 10:50:12 | 作品レビュー
「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第10回は、山口和彦監督、倉田保昭主演「武闘拳/猛虎激殺!」(76)でいきましょう!
恐らく、数ある倉田さんの劇場公開主演作品の中でも、その企画の衝撃度はマグナム級と言っていい本作ですが、当初この企画は千葉真一にオファーがあったものの、千葉ちゃんが出演を辞退した事で倉田さんに出演が回って来ました。
でもハッキリ言って、千葉ちゃんvs猛獣は「極真拳」シリーズで散々観ていた私としてはここは倉田さんの出番!の方がより嬉しかったのもまた事実でした。
家族を悪辣な悪党たち(石橋雅史や堀田真三)に殺された竜崎鉄次(倉田保昭)は、メキシコで武術の修行を積むと帰国し、アイアンドラゴンなる仮面武道家として活躍しながらも密かに復讐のチャンスを待っていました・・・って監督が山口和彦なので、そこは思い切り無国籍アクション映画バリバリで進行していきます(^_^;)。
その竜崎鉄次の前に立ちはだかる武道家たちも、石橋御大の他にも大塚剛(プロ空手創始者)、原田力、オマケに小林稔侍と曲者ばかりなんですね。
余談ですが、小林稔侍さんは昨年の倉田プロの舞台「ヤングマスター」も観劇に来ていましたね。
で、この「武闘拳/猛虎激殺!」の見せ場は何と言っても映画の後半の獰猛なベンガル虎(「Gメン75」にも出演した猛虎シーザー)が登場する辺りなんですが、まずは千葉ちゃんの実弟の矢吹二朗が果敢にもシーザーと闘うも、これがまた無残にシーザーのランチとなってしまいます(^_^;)。
続く竜崎鉄次は大塚剛との第1ラウンドで敗北を喫するも、敢然と立ち上がり、怨敵である石橋雅史たちが待ち受ける奇厳城と呼ばれる城に乗り込んでいきます。
この映画のクライマックスで奇厳城なる城に主人公が乗り込んでいく、という設定が本作「猛虎激殺!」がリーさんの「死亡遊戯」を意識して制作されたとの所以なんでしょうけど、リーさんの「死亡遊戯」に登場する“虎殿”の虎は只の毛皮で本物の虎じゃないって(^_^;)。
そして大塚剛との再戦で大塚を倒した竜崎鉄次は、いよいよ猛虎シーザーとの決戦に挑みますが、暗い牢獄を舞台に人間対人喰い虎の死闘が延々と映し出される中、実際には戦闘意欲がまるでない(^。^)シーザー相手によくぞ倉田さんはこれだけの迫真の戦闘シーンを演じ切ったと思います。
実はこの「猛虎激殺!」は「Karate vs Tiger」の英題で海外では長きに渡り幻の東映作品と言われ続けていて、私も以前にCSの東映チャンネルで本作が放送された時は狂喜しながら録画したのですが、同時にこのクライマックスの倉田さんvs猛虎シーザーが予想よりも大迫力だった事に思わず息を呑んだのを覚えています。
この「武闘拳/猛虎激殺!」は確かに奇天烈なB級空手アクション映画ではあります。ただそれでも人間vs虎という下手をすれば見世物小屋感覚になりがちな作品において、真剣に、只ひたすら真剣に“人間vs虎”に全力かつ体当たりで挑んだ倉田さんは、武打星として誰よりも輝いていた、と私は断言したいのです。
最後にまたも余談ですが、この「武闘拳/猛虎激殺!」以外で人間vs虎をテーマとした邦画があります。それが“野良犬”と呼ばれた伝説のキックボクサー小林聡主演「名無しの十字架」(12)です。倉田さんの「猛虎激殺!」と比べると娯楽性は足りないものの、格闘技ファンはチェックするだけの値打ちはある佳作です。そう、合言葉はドラゴォォォン!!

「あの「武闘拳/猛虎激殺!」は僕の日本での初主演映画でした。この映画の記者会見がありましてね。シーザーって200キロぐらいある虎と僕の会見なわけですよ(笑)。オープンセットの記者会見で、宣伝の人が「倉田さん、もしシーザーが興奮して暴れたら直ぐに逃げて下さい!」なんて言うわけです(苦笑)。で、そのセットが板で囲ってあって、記者の人たちは2階にいて、僕と初対面のシーザーだけが板のセットの中にいて、記者がカメラのフラッシュ焚くでしょう?そうすると鎖にも繋がれていないシーザーがそのフラッシュに興奮してドンドンと僕に迫って来るわけです!もう僕は直ぐに逃げましたよ!
撮影に入っても1週間ぐらいはとてもじゃないけど近ずけなかったですね。「今日のシーザーは機嫌悪いのかな?」みたいなね。スタッフも「倉田さん、今日はシーザーが機嫌良いから撮りましょう!」って感じで(笑)。シーザーに引っかかれた傷跡がまだ僕の手にありますけど、シーザーにとってはジャレてるつもりだけでしょうけど、軽く遊ぶみたいに手で押されただけで僕らは立ってられないですからね。で、シーザーが機嫌悪くて撮影出来ないって時は人間が3人ぐらい入った虎のヌイグルミ相手に格闘するんですが、横でシーザーがそれ見て笑ってるみたいだったなぁ(苦笑)。いや虎と一緒の40日ぐらいの撮影は本当に神経が疲れましたね」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

私は盲目の元女警官、そして凶悪事件の“目撃者”!楊冪主演「見えない目撃者」公開!

2016-01-29 00:06:42 | 作品レビュー
さてさて、昨日は都内某所でアン・サンホ監督、楊冪&鹿主演の中国犯罪サスペンス映画「見えない目撃者」(15)を試写で観て来ました。
いやこれはまさに犯罪サスペンス映画の秀作でした。女性警察官のシャオシン(楊冪)はミュージシャンの弟と共に自動車事故に遭遇し、自分は失明し、弟は死亡してしまいます。
3年後、シャオシンは警察官を辞め、弟を死なせてしまった自責の念に苦しみながら盲導犬の聡聡と静かに暮らしていましたが、ある雨の夜にシャオシンが乗ったタクシーが運転中に“何か”を撥ねる瞬間を“目撃”します。
タクシーの運転手(朱亜文。怪演!)は「犬を撥ねただけだ」とシャオシンに伝えますが、不審に思ったシャオシンがその場で運転手を問い詰めると、逆にシャオシンを拉致しようと襲いかかって来ます。
何とかその場を逃れたシャオシンですが、警察でルー刑事(王景春)からその運転手こそ続発している女性失踪事件の犯人の可能性が高い事を告げられます。
そんなシャオシンとルー刑事の許にミュージシャンでローラースケート好きの青年リン・チョン(鹿)が現れ「犯人の車はタクシーじゃないぜ。外車さ!」とシャオシンとは異なる証言をした事で、事件はさらに混迷を極めていきます・・・。
タクシー運転手に化け犯罪を繰り返す犯人は、自分の暗い過去と同じ影をシャオシンに見い出し、さらにはリン・チョンに犯行現場を目撃されていた事を知ると、シャオシンとリン・チョンの命を執拗に狙います。
この辺りからの盲目のシャオシンに迫る狂気の犯人と、シャオシンを守ろうとするリン・チョンの息詰まる攻防が展開され、その過程でシャオシンと長年連れ添った聡聡がシャオシンを守ろうと勇敢にも犯人に立ち向かい、無残にもその刃に倒れます。ここは愛犬家の方には目を覆うような悲痛なシーンです。
こうして映画は残虐な犯人に対する観客の怒り、シャオシンの弟を失った後悔と悲しみ、そしてシャオシンがリン・チョンに亡き弟の姿を見出していく微かな希望といった様々な思いが重なり合いながら、夜の別荘を舞台にシャオシンvs犯人の対決の時を迎えるのでした・・・!!
このクライマックスの対決シーンの詳細は敢えてここでは触れませんが、私はそこにあの「復讐の鬼探偵ロングストリート」(71)屈指の名編「波止場の対決」と同様の鮮烈なほどの感動を覚えました!
監督のアン・サンホにとってこの「見えない目撃者」は、自身の代表作「ブラインド」(11)の“中国バージョンアップ版”となりましたが、今回の「見えない目撃者」もアクション監督のクォン・スングも含めて、主要スタッフの殆どが韓国人で構成されている点に注目でしょう。
そして私は比較的暗い結末が多い中国映画で、この「見えない目撃者」が爽やかな感動のエンディングとなっている点も高く評価したいと思います。
ハッキリ言ってこの映画、龍熱のお薦めです。この「見えない目撃者」は4月1日からTOHOシネマズ新宿等で全国順次ロードショー公開との事ですので是非!

こちらが公式サイトです→http://gaga.ne.jp/mokugekisha/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(9) 戦慄の鉄拳婆!「ドラゴンvs不死身の妖婆」

2016-01-26 10:39:16 | 作品レビュー
さてさて、絶好調で連載が続く「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」、その第9回ですが、丁善璽導演、王羽主演「ドラゴンvs不死身の妖婆」(73)でいきましょう。そうです、いよいよ“天皇巨星” vs“和製ドラゴン”のたった1度だけの激突の時が来ました。
で、私がこの「~不死身の妖婆」という香港(台湾)クンフー映画史に大怪作として深く刻まれた作品の存在を初めて知ったのがディック梶原さんが監修した「激突!ドラゴン武術」の中で、倉田さんが「これは姿三四郎みたいな映画です」と紹介していた記事を読んだ時でした。
さらに随分後になって「~妖婆」の海外版の予告編「カンフー・ママ」を観た時に謝金菊扮する鉄拳ババアがジミーの鉄拳を弾き返し、ジミーの運転する車で轢かれても平然としているという余りにも衝撃的な映像を目撃した事で「こ、こりゃ姿三四郎なんてもんじゃないって!完全にホラークンフー映画だって!」とこの「~妖婆」本編を激しく観たくなったのでした。
で、この「~妖婆」ですが、日本軍人の家に生まれ、お手伝い(か何か)の鉄拳ババア(謝金菊)に育てられた3人の兄弟(倉田さん、龍飛、山茅って・・・全然似てないって!)が3兄弟の父親だった軍人を切腹死に追いやった中国人への復讐を誓い、3人を無鉄砲な特訓で鍛え上げると、成人した3兄弟を引き連れ台湾に乗り込んで来ます。もうここまでで十分にメチャクチャな展開です(^_^;)。
さらにこの鉄拳ババアと3兄弟の日本語が完全に壊れていまして、それを聴いているだけでも目眩がして来ます(^_^;)。で、その3兄弟の復讐のターゲットである男性の息子がジミーで、普段はタクシーの運転手をやっております・・・ってここまで来たらもう何でも好きにやっとくれ!(^_^;)。
ちなみにジミー本人によると「俺はこの「英雄本色」の役作りのために実際にタクシーの運転手を何日かやったね。そしたら俺が道を間違えたら、お客が怒りやがってさ!」と逆にお客に怒っていたジミー運転手でした(@_@)。
さて、鉄拳ババア&3兄弟の復讐劇ですが、まずは山茅がジミーに挑むも惨敗(オマケに実生活でもタクシーの運転手にドライバーで頭を突き刺され死亡)、続いて龍飛もジミーの前に倒れ(ついでに実際の龍飛も現在消息不明)、いよいよ最後に残った長男の倉田さんとジミーの一騎打ちが火蓋を切ります!
ここではダブルヌンチャクを手にした倉田さんがそれを振り回してジミーに襲いかかりますが、激闘の果てにジミーは倉田さんを倒します・・・しかしこの映画の本当の恐怖はここから始まるのだ!
そう、まだ最凶無敵の鉄拳ババアが残っていたのである!!倉田さんを倒して鼻歌交じりに自分のタクシーで自宅に帰って来たジミーがボンネットを開けて、それを閉めるとそこに立っていたのが恐怖の鉄拳ババア!
「うわあ!」思わず悲鳴を上げたジミーに3兄弟を殺された鉄拳ババアが襲いかかる!!ここからのまるで50年代のSFホラー映画のノリで展開されるジミーvs鉄拳ババアの死闘は、是非キングさんからリリースされていたDVDでご鑑賞下さい。
最後に私がジミーから直接聞いた倉田さんに関するエピソードを一つ。
ジミー曰く「倉田か。倉田とは丁善璽の映画で共演したな。当時から倉田の蹴りは「ビュッ!」と風が聞こえる、ってくらい早いって評判でな。だから倉田と立ち廻りやる時は気が抜けないんだよ。確か高雄って俳優、この映画に出てる高雄じゃなくて別の高雄が倉田の蹴りを誤って顔面に浴びて顎の骨か何か砕かれたんだよ。倉田は今でもトレーニング続けてて大した奴だよ!」。そう、合言葉はドラゴォォン!

「ああ、ジミーさんとはこの「英雄本色」で1度だけ共演していますね。僕とジミーさんとの対決シーンは面白い話があってね。僕らの闘っているシーンが池と言うかプールみたいな所だっんですが、そこでジミーさんがバランスを崩してプールに落ちちゃったんですよ。そうしたらジミーさん、怒っちゃってねえ。もう「俺はもう帰る!」ってそのまま帰っちゃいました(笑)。でもジミーさんには色々良くして貰いました。
食事に連れて行って貰ったり、当時新築中だった自宅を見せてくれたりね。でも家に行ったのが夜だったんで何も見えなかったけど(笑)。あと僕はジミーさんに素晴らしい指輪を貰ったんです。04年だったか、ジミーさんが来日した時に一緒に食事をしたんですが、その時にその指輪をジミーさんに見せたんですが、ジミーさん、全然覚えてなかったですね(苦笑)」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(8) 問題作品!「麒麟掌」

2016-01-24 12:56:14 | 作品レビュー
「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第8回は唐迪導演、小麒麟主演「麒麟掌」(73)でいきたいと思います。その数ある香港クンフー映画の中でも“問題作品”と言われている作品、それがこの「麒麟掌」です。
では倉田さんも出演しているこの「麒麟掌」の何が“問題”なのか?まず制作会社である星海影業、これが完全に黒社会系会社だった事。さらに幼馴染みの小麒麟が初主演したこの「麒麟掌」のセットを訪問したリーさんが“武術指導”している現場をスタッフが盗み撮りし、その映像をリーさんに無断で本編に挿入した事でリーさんを激怒させた事。そしてそのリーさんを撮影した約20分の映像を制作者の1人である曲興華が持ち逃げ(!)してしまい、その映像が現在も行方不明である事などなど・・・もう数え上げたらキリがありませんねえ(^_^;)。
キャスト的には孟秋&孟海の姉弟、池漢載&黄仁植の韓国コンビ、金霏、魏平澳、アレクサンダー、若き日の成龍や火星など、それなりに充実していますし、中盤の小麒麟vs黄仁植戦なんて逆に異色の顔合わせで中々見られる対決ではないんですが・・・それでも主役の小麒麟のクンフー・アクションがしょっぱい、もうしょっぱ過ぎる!!(@_@)。
この小麒麟は本格的なクンフー・アクションよりも、バック転などのアクロバティックな動きが辛うじて秀でている人で、その小麒麟を主役にクンフー映画を撮る、という企画自体がそもそも相当無理があったと思います。
それでも映画のクライマックスで、この小麒麟相手に延々と一騎打ちを見せなければならなかった倉田さんも本当に大変だったと思いますが、逆に悪役として倉田さんが出演しているからこそ、この「麒麟掌」が1本のクンフー映画として何とか成立したと言っても良いでしょう。(この決闘シーンでA.ブッチャーのテーマ曲「吹けよ風、呼べよ嵐」が流れるのがご愛嬌(^_^))
だって小麒麟vs倉田戦の後の小麒麟vs唐迪戦なんてもう観れたもんじゃないもんねえ(溜息)。って実はこの導演の唐迪こそが小麒麟の耳元で「お前が親友の李小龍を連れて来れば、お前を主役にしてやるよ。グヒヒヒ!」と“悪魔の囁き”をした張本人だったのでした。
ただ散々コキ下ろして来た「麒麟掌」ですが(^_^;)、映画のエンディングでは実に貴重なシーンを観る事が出来ます。それが記者たちの前で孟海にヘッドロックをかけるリーさんの後ろを「スウ・・・!」と倉田さんが一瞬横切る衝撃映像!!
まさに映像で残されている唯一のリーさんと倉田さんの“共演シーン”です!!このシーンだけでもこの「麒麟掌」という作品の存在価値が十分にあると思います(オイオイ?)。余談ですが、この映画でリーさんとの友情まで失いながら初主演を達成した小麒麟ですが、その後に今度は孟飛と共演した「英雄血」(76)で再度主演作品を撮っていました。
最後に以前に私が今は亡き日野康一さんにこの「麒麟掌」が日本で劇場公開が企画されながらも、結局は未公開作品に終わった理由を訊いたところ、日野さんから返って来た答えが「だって制作会社がヤ●ザでしたから!」だった事を書き記しておきたいと思います。そう、合言葉はドラゴォォォン!!

「この「麒麟掌」の主役の小麒麟はブルース・リーの推薦で主演をやったんですけど、当時は俳優としては余り認められてない人でした。それもあって他の俳優もこの映画に出たがらなかったんです。ブルース・リーが武術指導をやった事になっていますが、実際は名前を貸しただけで、記者会見の時に1日やっただけなんです。確か僕もちゃんとギャラ貰っていなかった記憶がありますね。撮影会で僕がリーさんの後ろをス~ッと通ってる?ああ、そういう場面もありましたね(笑)」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(7) 伝説のバトル!「帰って来たドラゴン」(後編)

2016-01-22 17:48:29 | 作品レビュー
「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第7回は「帰って来たドラゴン」、その後編です。銀座の映画館でまるで観る気なしの父(^。^)と並んで席に座った龍熱少年の目の前の大スクリーンには「デンデデデデンデン!デデデン!」の旋律と共に「帰って来た~」のオープニングが始まりました。
「あ、テレビの予告編で聞いたのと同じ曲だ♪」スクリーンに見入っていた私が小躍りすると、直ぐに暴漢(本作の武術指導者、梁少松)たちの襲撃を受けたドラゴン(梁小龍)が怒涛の開脚からの目の覚めるような連続蹴りを暴漢たちに叩き込みます!!「違う、このブルース・リャンって奴のキックは「怒れ!タイガー」のチャーリー・チャンや「危うし!タイガー」のチェン・シンみたいな地味な蹴りじゃないぞ?凄い、凄い廻し蹴りだ!」そう、まだ小学生だった私にもこの梁小龍の驚異的なジャンプ力から放つ連続廻し蹴りが“本物”である事がハッキリと判ったんですね。
それは映画の中盤から登場し、自分が護送するチベットの秘宝を狙って迫る悪漢たちにブラックジャガー(倉田保昭)が叩き込む容赦ない正拳突きと電撃かつ打点の高い足刀蹴りもまた同じで、私は「このドラゴンとジャガーが映画のラストで一騎打ちをするんだ!?うわぁ!どんなクンフーファイトになるんだろう?」とワクワク状態だったのでした。
さらに映画はこのドラゴンとジャガーの火花散る秘宝の争奪戦に、同じく秘宝を狙う女ドラゴンのイーグル(黄韻詩)、そしてドラゴンの子分の韓国才&孟海の凸凹コンビのコミカルテイストが加味されるといった様々な娯楽性もミックスされた本格派のクンフー映画に仕上がっていました。
そして映画のクライマックスで幕を開けるドラゴンvsブラックジャガーの一大決闘!!それは龍熱少年がそれまで最高峰と信じていたリーさんこと李小龍が見せる実際の武術テクニックに裏打ちされたリアルで革新的な“闘いの起承転結”を丁寧に描いたクンフーファイトとは異なり、ドラゴンの連続蹴りを浴びたジャガーが後退するも、迫って来たドラゴンに逆にジャガーが連続の足刀蹴り!ドラゴンがさらに廻し蹴りで応戦するとジャガーが突如走り出し、それをドラゴンが追う!という、ある意味で従来のクンフー映画の闘いのプロセスを完全に無視した新たなる「ハイスパート・クンフー」だったのでした。(ハイスパートとはプロレス用語で、試合の開始から関節の取り合いなどを排除し、いきなりロープに走ったり、バックドロップなどの大技で試合を構成していくスタイル)
ドラゴンとジャガーの闘いは、当時の日本のクンフー映画ファンには初体験の“壁虎功”から、ヌンチャクvsトンファーの闘い、ジャガーが放つ二段投げ、さらに延々と殴り合いド突き合いが展開された果てに、韓国才&孟海のアシストを得たドラゴンの怒りの連続蹴りを浴びたジャガーは息絶え、やっとこの伝説のマラソン・バトルは幕を下ろします。
えっ?結局チベットの秘宝は誰の手に渡ったのか?それは皆さんご自身で今度の「和製ドラゴン祭」での上映か、「帰って来た~」のDVDで確認して頂きたいと思います(^_^)。
最後に監督の呉思遠に触れますが、この「帰って来たドラゴン」、そして梁小龍&倉田保昭コンビが再度激突した「無敵のゴッドファーザー/ドラゴン世界を征く」(74)で、拳技ではなくハイポテンシャルなキッキング・パフォーマンスこそ香港クンフー映画の生き残る道である事を確信した呉思遠は、今度は拳技の王道、蹴り技の劉忠良、さらに神技レベルの蹴り技を誇る黄正利を悪役に迎えた「南拳北腿」(76)シリーズで、自ら作り上げた「ハイスパート・クンフー」の革新的バージョン・アップに成功します。
ただそんな呉思遠も、金童&黄正利が対決する「龍形摩嬌」(80)辺りから作品自体に切れが無くなり、明らかにその監督としての才能が頭打ち状態となります。
そして呉思遠は当ブログでもお馴染みの「ブルース・リー死亡の塔」(81)を監督した前後から監督業からプロデューサー業へと転身した事で、結局のところ自身の最高傑作である「帰って来たドラゴン」を超えるクンフー映画を2度と撮る事無く、呉思遠はその監督人生を終わるのでした。そう、合言葉はドラゴォォォン!!

「当時の香港の観客はブルース・リーと同じようなアクションをやると、直ぐに「それは李小龍の真似だ!」ってブーイングだったんです。だからこの「帰って来たドラゴン」ではブルース・リャンと2人で殴っては蹴り、蹴っては殴り、また走って!みたいな新しいアクションに挑戦したんです。あとヌンチャクをリャンが使うなら、僕はトンファーを日本から取り寄せて使ったりね。でもトンファーは今一つ地味でしたけど(笑)。あとリャンと壁をこう上がっていく“壁虎功”ね。あれって上がるのはいいんだけど、今度下りられなくなっちゃうんですよ(笑)。もうラストのリャンとのファイト・シーンは延々と2人で撮っていた記憶があります。そのせいか、この映画の撮影が終わった後には原因不明の頭痛になったりしましたし、それだけ激しいアクションだったんですね」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(6) ドラゴン凱旋帰国!「帰って来たドラゴン」(前編)

2016-01-21 19:54:31 | 作品レビュー
さてさて、「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第6回は、倉田保昭、栄光の凱旋帰国作品にして最高傑作である呉思遠導演、梁小龍主演「帰って来たドラゴン」(74)、その前編です。
1974年の3月、既に日本は前の年の暮れに公開された李小龍主演「燃えよドラゴン」(73)の空前の大ヒットによって一大“空手映画ブーム”の真っ只中にありました。
小学生だった私こと龍熱少年も、李小龍ことリーさん主演作品は「燃えよドラゴン」を渋谷東急で、「ドラゴン危機一発」(71)を渋谷宝塚でリアルタイム観賞していましたが、そんな龍熱少年がリーさん映画以外の作品で気になる作品がありました。
当時から「ロードショー」や「スクリーン」などの映画雑誌で香港クンフー映画の記事に関しては独壇場だった日野康一さんがそれこそ玉石混淆状態のクンフー映画の中で「この3本だけは別格」と言っていた王羽主演「片腕ドラゴン」(72)、嘉凌主演「地獄から来た女ドラゴン」(72)と並ぶ作品、それこそが「帰って来たドラゴン」だったのです。
ただ、当時テレビでもガンガン!と予告編が流されていた「帰って来たドラゴン」ですが、その予告編で「日本人空手スター倉田保昭、堂々の凱旋帰国第1弾!!」との謳い文句に胸を躍らせていた龍熱少年は、てっきり主役のゴールデンドラゴンこと梁小龍が倉田保昭で、悪役のブラックジャガーが梁小龍だと思っていた事もあり、後日に劇場で「帰って来た~」を観た時に「あれ?倉田って悪役なの?」と唖然とし、この香港&台湾クンフー映画の日本人=悪役という不文律に初めて触れた時の衝撃はちょっと大きかったりしたのでした(^_^;)。
さて、74年の3月21日に日本でロードショー公開が始まった「帰って来たドラゴン」ですが、私はこのロードショー公開にはタッチの差で待ち合わず、慌てて新聞で名画座2本立てに落ちた「帰って来た~」を発見すると「また空手映画か?他の映画にしなさい!」と露骨に嫌がる父の手を引っ張り、嬉々として銀座の映画館に向かったのでした。
私はこの時「帰って来た~」を観た銀座の映画館を「銀座ロキシー」だったと記憶しているのですが定かではありません。それは何故か?実は何故か「帰って来た~」はパンフレットが制作されておらず、劇場名が押されたスタンプ入りのパンフが手許に無いからでした。
そのためこの時、私が「帰って来た~」を銀座で観た時の思い出のグッズは2本立てだったもう1本の映画、そう、マーク・レスター主演「小さな恋のメロディ」(71)のパンフだけなのです。
余談ですが、小学生だった龍熱少年にとってこの少年と少女の初恋を可愛らしく描いた「小さな~」も本当に思い出深い作品で、あのトロッコに乗った主人公2人が夕日の中に消えていく感動的なエンディングは今も忘れられません。
その私の「小さな~」に対する大切な思い出を、以前に某映画雑誌での私との対談で「フン!あんな映画はロリコン映画だ!」と罵倒した某映画監督には「お前なぁ?子供だった俺が観てた映画がロリコン映画なわけねーだろ!?(怒)」と思わずテーブルの下でガチで“怒りの鉄拳”を握ったのも今では懐かしい(?)思い出です(多分)。
さあ、大胆不敵な佇まいと驚異のキック技を持つ主人公ゴールデンドラゴン、ドラゴンに着き従う韓国才&孟海の凸凹コンビ、そのドラゴンの前に立ちはだかる黒の半手袋の最強殺し屋ブラックジャガー、そして彼らに影のように付き纏う謎の美女イーグル(何と黄韻詩)。
彼ら彼女たちが奪い合う莫大な富を生む真珠を最後に手にする者は果たして誰か!?ゴールデンドラゴンvsブラックジャガー!!今も香港クンフー映画史上に燦然と光り輝く壮絶なる伝説のマラソン・バトルの幕が開く!そう、合言葉はドラゴォォォン!!!

以下、第7回「帰って来たドラゴン」後編に続く!!

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

発掘された34年前の激レアTV映像!真田広之が「龍の忍者」と李元覇を語る!!

2016-01-21 03:50:59 | ニュース
実は先ほど何年も前に作成したDVD-R群を整理していたら驚きの映像が出て来ました!これ以前にもチラッと触れたと思いますが、今から34年近く前に「龍の忍者」が劇場公開される直前にテレビの朝のワイドショーに生出演した真田広之が「龍の忍者」について熱く語っている映像です!!
画面の左上に「9:18」と時刻が出ているので間違いなく朝のワイドショーの1コーナーのようで、真田が「龍の忍者」のハイライトシーン映像に乗って延々と同作の見所を語っています。
私が思わず興奮したのは真田が共演の李元覇について「彼はねえ、画面ではこんな感じなんですが、普段は凄くひょうきんなと言うか、その辺は僕と凄く息が合うんですけど(笑)。ロサンゼルスで育って、感覚が凄く鋭い男ですね」なんて語っております。いや~ビックリだなぁ!
恐らく、当時も今も真田が「龍の忍者」や李元覇に関して、ここまで熱く語っている映像って無いんじゃないでしょうか?画質も良好だし♪
その後も真田が悪役の黄正利の弱点や、わざわざ現地までツアーを組んでロケ地にやって来た真田ファンの女性軍団について語っているんですが、これ僅か数分間の映像ながら、改めて、よくぞ30数年の間に渡って我が家で現存していたと我ながらアッパレだと思います(^_^;)。
このDVD-R、他にも成龍初来日時の「TVジョッキー」出演映像(これは以前に当ブログで紹介済み)や、李連杰の95年「ファンタ映画祭」の舞台挨拶&パーティー出席映像も入っていたので、また改めてご紹介したいと思います。
皆さんも古いVHSは時間のある時にDVDに変換する事をお薦めします!!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(5) 女ドラゴンとの死闘!「七對一」

2016-01-19 15:51:27 | 作品レビュー
さてさて、「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第5回は侯錚導演、上官霊鳳&倉田保昭主演「七對一」(73)でいきましょう。
この「七對一」には又題「女英雄飛車奪寶」があるんですが、実は劇中でこの7対1という言葉に重要な意味合いがあり、私としては「七對一」を敢えて支持します。
また倉田さんと上官霊鳳共演作品では、日本劇場公開作品「女ドラゴン!血闘の館」(73)が有名ですが、毎回毎回この映画ではちょっと芸が無いので今回はパスした次第です。
で、この「七對一」ですが、スピーディーかつ切れ味鋭い演出で評価が高かった侯錚導演らしく、冒頭のオープニングからポーリー嬢のアクション!またアクション!の連続で観ていて飽きが来ない展開なんです・・・が!
無数の暴漢に襲われてピンチとなったポーリー嬢を颯爽と助けた倉田さんの職業が何と歌手(!)という事で、劇中のクラブでマイクを手に熱唱する倉田さんが登場だ!!!!ここは観ている側が思わず唖然とする場面で、ある意味では「ねがい花」などで歌手として活躍する以前の貴重な「歌手:倉田保昭」としてのお宝映像でしょうねえ!(^。^)。
物語は莫大な価値を持つダイヤを埋めた指輪を巡る争奪戦なのですが、そこにポーリー嬢の父親を惨殺した犯人捜しを絡め、映画はいよいよ全ての謎が明かされるクライマックスに突入していきます!!
女ドラゴンである自分に迫る6人の敵を倒したポーリー嬢に、不敵な笑みを浮かべながら悠然と歩み寄るドラゴン倉田ですが!?

ポーリー「ああ、貴方がいなかったらあの6人は倒せなかったわ!」
倉田「フフフ!もし相手が7人で、7対1だったらアンタも終わりだな?」
ポーリー「それってどういう意味?」
倉田「つまり・・・この俺がアンタの7人目の敵ってことさ!」
ポーリー「何ですって!?じゃあ貴方もその指輪を狙ってたの?」
倉田「そうさ!この指輪にはスイスの銀行の口座番号が掘り込んであるのさ」
ポーリー「ふん!でも本当の指輪はここよ!それはすり替えた偽物!」
倉田「貴様?父親と同じ目に遭いたくなかったらそれを寄こせ!!」
ポーリー「そう、私の父を殺したのは貴方だったのね!」
倉田「そうさ!頭をカチ割ってやったぜ!ガッハハハハ!」
ポーリー「許さない!この指輪は私、いえインターポールが保護するわ!」
倉田「お前はここでくたばるんだぁ!どあああああ!!」

ここからのポーリー嬢vs倉田さんの死闘は、倉田さんの真っ赤なスポーツカーをポーリー嬢がバイクで追走するというユニークなカーアクションから、湖上でのモーターボートの上での乱闘、さらには湖近くでの素手による壮絶決闘へと移行します。そして激しい闘いの果てにポーリー嬢の指輪を着けた状態での怒りの正拳突き(ってまるでタイガーマスクの悪役レスラーですねえ)の連発で両目を潰され盲目状態となった倉田さんにポーリー嬢の怒涛の連続廻し蹴りからのジャンピングキックが炸裂!!そのまま倉田さんは湖に転落し、哀れ湖上に鮮血と共に浮かび、映画は劇終となります。
余談ですが、この「七對一」の武術指導は梁少松で、助理が梁小龍と李銘文(即:金銘)という何とも豪華な布陣でした。この頃の梁小龍はその不敵な面構えと驚異的なジャンプ力から放つ連続廻し蹴りを持ちながら、まだ覆面で顔を隠した絡み役などに甘んじていたのです。
しかし!直ぐに梁小龍は「必殺ドラゴン!鉄の爪」(72)の南宮勲との“野獣決闘”で注目されると、満を持しての倉田さんとの真っ向共演作品で運命の激突の時を迎えます。そう、次回の「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」は、本連載企画前半のクライマックスとして、倉田保昭、その栄光の日本凱旋帰国作品を異例の前編&後編としてお届けします!!
Call Me Dragon、俺をドラゴンと呼べ!「帰って来たドラゴン」いよいよ次回登場です!!そう、合言葉はドラゴォォォン!!!

「上官霊鳳との共演は僕が一番多いんじゃないかな。でも彼女はメイクの時間が長くってね(笑)。もう3時間ぐらいかかるんですよ。でもいざアクションになると、ちょっとした事では痛いとか言わない根性のある女性でしたね。武術の腕前もそれなりにシッカリしていました。香港の女ドラゴンだと日本ではどうしても茅瑛の方が有名で人気もあるかも知れませんが、確か僕は茅瑛とは1度一緒に食事をした事がありました。ただ当時の香港&台湾での上官霊鳳の人気は本当に凄かったし、やっぱり香港の女ドラゴンと言ったら上官霊鳳でしょうね」(倉田保昭:談)

「七對一」の映像を提供頂いたM.Kさんに感謝します。ありがとうございました。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」(4) 香港武打片版名勝負数え歌!「黒豹」

2016-01-18 13:55:09 | 作品レビュー
さてさて「“和製ドラゴン”倉田保昭、激闘!十五番勝負」第4回は、倉田さんにとって梁小龍と並ぶ好敵手だった“香港のチャールズ・ブロンソン”こと陳星共演作品「黒豹」(73)でいきましょう。まず驚くのが、この70年代序盤の倉田さんと陳星の共演作品の多さです。
例えば「餓虎狂龍」(72)、「猛虎下山」(73)、「虎拳」(73)、そして上官霊鳳も加わった「趕盡殺絕」(73)とザッと数えただけでも5本近くになります。
で、それら作品の殆どがドラマ部分的には多少の味付けが加わったとしても、映画のラストで陳星と倉田さんが延々とガチンコ・ファイトを展開するという良い意味での“最強的ワンパターン決闘”、つまり“香港武打片版名勝負数え歌”が幾度となく繰り広げられていったんですね。
要するに、実際の空手高手だった陳星と倉田さんは俗に言う“手が合う同士”だったんですが、陳星も邵氏公司時代は張徹作品でメインの悪役の脇でチョロチョロしてる端役が多かった人で、私の印象に残っている邵氏時代の陳星は「新獨臂刀」(71)の谷峯の副官、「双侠」(72)の皇太子、そして「拳撃」(72)の強人役ぐらいでしょうか。ただその後に邵氏公司を離脱してからの陳星は一転して口髭を蓄え、鍛え抜かれた上半身と共に“香港のブロンソン”として恒星公司や第一影業で次々と主演作品を連打し、一躍香港クンフー映画のトップ武打星へと駆け上がります。
この「黒豹」もそんな陳星の絶頂期の1本で、オープニングの空港で陳星が突如無実の罪で逮捕されるというショッキングな幕開けが如何にも台湾B級武打片らしくて、私も大好きな映画なんですが、映画のラストでは波止場を舞台に陳星が白のジャケット姿の倉田さんとまたまたガチンコ決闘を見えてくれています。
ただ映画のエンディングでは何時もだったらバッコバコ!に闘った後、壮絶に陳星に殺される倉田さんが珍しく殺されずにグロッキー状態で終わる、のがちょっと私的には新鮮な結末でしたね(^。^)。
これは余談ですが、空手の有段者にして強面の陳星ながら、以前に第一影業作品「少林殺戒」(75)撮影中に金童(古龍)とのプライベート・ファイトで金童に手首を折られた(または打撲)、という事実があります。
これは同作品で武術指導を担当した陳少鵬が証言しているので間違いないでしょう。もう一つ余談ですが、陳星のニックネームである“香港のブロンソン”ですが、これまた以前に中国武術研究家の笠尾恭二先生が私に「あの“香港のブロンソン”ってニックネームは日本では私が最初に命名したんだよ!」と仰っていたのが印象に残っています。
これはそこら辺のいい加減な証言者とは違って、ご自身の著作において多くの資料と共にシッカリとした事実検証を行う事で知られている笠尾先生のお言葉なので、実に貴重な証言でしょう。というわけで、そう、合言葉はドラゴォォン!!

「陳星とは何度も共演しましたねえ。彼は僕が邵氏で初めて出演した「悪客」で楊斯とかと一緒に僕の子分役で出てたんです。この当時の陳星はまだ役者として余り売れてない時でね、何時もブツブツ言ってました(笑)。
それが「蕩冠灘」って映画に主演したらこれが大ヒットしてスターになったんですけど、そうしたらもう人相まで変わっちゃってね。
僕と陳星との立ち廻りでは、監督の「カット!」の声がかかってもまだ2人で闘ってるって感じで、それはもう激しいファイトでしたね」(倉田保昭:談)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする