功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『シルバーホーク』

2017-04-22 12:19:42 | 女ドラゴン映画
「シルバーホーク」
原題:飛鷹
英題:Silver Hawk
製作:2004年

●表向きは美しきセレブ、裏では悪と戦うシルバーホークとして活躍していた楊紫瓊(ミシェール・ヨー)は、あるとき昔馴染みの刑事・任賢齊(リッチー・レン)と再会する。
2人は共に武術学校で修行した間柄だが、どうやら任賢齊はこちらのことを覚えていない様子。とりあえず楊紫瓊は彼に盗聴器を仕掛け、警察の動向を伺いながら悪党退治に勤しんでいった。
 だが、一方でルーク・ゴス率いる悪の組織が世界征服を目論み、密かに動き出そうとしていた。連中は人工知能を開発した科学者・陳大明を誘拐。本拠地のあるゼンダシティ(日本)に飛び、任賢齊もこれを追った。
続いて、組織は楊紫瓊の叔父であり大手企業の社長・岩城滉一の娘を連れ去り、とある携帯端末の開発を強要する。彼らは人工知能プログラムを応用した洗脳装置を作り、携帯端末を介して人類の支配を目論んでいたのだ。
 これに立ち向かう楊紫瓊であったが、敵はなかなか手強く返り討ちに。その過程で任賢齊に正体がばれてしまい、一時は険悪な関係となってしまう。
だが、陳大明のメッセージを受け取った助手・張卓楠の努力が実り、シルバーホークと警官隊は敵の本拠地に突入する。果たして、再び手を組んだ楊紫瓊と任賢齊は、巨悪を倒すことが出来るのだろうか!?

 本作は楊紫瓊が『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』で世界進出し、ハリウッドへの上陸が目前に迫っていた頃に撮られた作品です。彼女は製作総指揮も兼任しており、『レジェンド/三蔵法師の秘宝』に次ぐ第2弾として製作されました。
『レジェンド』は楊紫瓊が宝探しを繰り広げる『トゥームレイダー』チックな映画でしたが、本作ではアメコミヒーローのムーブメントに便乗。映像派の馬楚成(ジングル・マ)を監督に迎え、スタイリッシュな画作りを追求しています。
 しかし、実際の内容は90年代の作品かと思ってしまうほど古臭く、ありきたりな設定と既視感あふれるストーリーには何の新鮮味もありません。楊紫瓊もかなりの無茶をしており、任賢齊の妹分という役柄は流石に無理がありすぎます(苦笑
一応、馬楚成による白を基調とした画作りはなかなか良い感じで、近未来的な雰囲気を出すことに成功してはいます。ただ、岩城と誘拐事件の結末が描かれなかったりと、そこかしこでストーリーの粗が目に付きました。

 アクションについては、『東京攻略』の薛春[火韋](アイレン・シット)が武術指導を担当し、一定の水準を保っています。が、スタイリッシュな立ち回りに固執した結果、荒々しさや生の迫力が消失。おかげで何とも味気ない物になっているのです。
出演者は全員それなりに動けるし、楊紫瓊がマイケル・ジェイ・ホワイトらと絡むファイトはそこそこ面白いんですが、殺陣がベターというか特徴が無いというか…。個人的には、やたらと凝ったカメラワークにも鬱陶しさを感じてしまいました。
結果として、アメコミヒーローというより日本の特撮番組に近い作りとなり、そのセンスの古さも相まって珍品と化した本作。不思議なのは、どうして楊紫瓊は本作のようなコテコテのB級作品に入れ込んでいたのか?という点です。

 これは完全な想像なのですが、ひょっとしたら楊紫瓊はハリウッド進出前に、“これからやれなくなる事”にチャレンジしたかったのではないでしょうか。確かにハリウッドへ行くのは役者にとって栄誉な事だし、成功すれば更なる高みを目指せます。
その反面、今までのような映画作りは不可能となり、ハリウッドという巨大なシステムに順応する必要がありました。成功したら自分好みの作品が作れるかもしれませんが、少なくとも香港にいた頃と同じことは出来なくなるはずです。
 そこで楊紫瓊は、ハリウッドに本格参戦する前に“これからやれなくなる事”に挑んだのでしょう。おちゃらけた映画の製作総指揮も、ド派手なスーツに身を包んで舞うのも、話題作に便乗するのも、大女優となった今ではやれない事ばかりです。
本作を「楊紫瓊が好き放題やった俺様映画」と評するのは簡単ですし、実際にその通りだと思います。ただ、もしかするとその背景には、未来と過去に揺れる彼女の思いが込められていた…のかもしれませんね。
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『ビリー'S GUN & FIGHT!』

2017-04-11 21:10:15 | マーシャルアーツ映画(中)
「ビリー'S GUN & FIGHT!」
原題:TOUGH AND DEADLY
製作:1995年

●『エクスペンダブルズ』の登場によって、古き良き時代のアクションスターを再評価する機運が高まり、多くの格闘俳優たちが再起を果たしました。ドルフ・ラングレンやゲイリー・ダニエルズは、その恩恵を受けた代表例と言えるでしょう。
90年代に活躍したブラックドラゴンたちもその例に漏れず、最新作の『The Recall』が公開間近となったウェズリー・スナイプス、スコット・アドキンスとの共演作に期待が高まるマイケル・ジェイ・ホワイトなどは、今も元気に活躍しています。
 しかし、彼らと同世代のブラックドラゴンだったビリー・ブランクスは、その潮流に思いっきり乗り遅れてしまいました。エクササイズで一世を風靡し、日本のバラエティ番組に出演したのも遠い昔…ブームが去った今では誰も覚えていません。
今でも母国で俳優活動は続けていますが、最近の出演作はドラマやホラーが中心となっており、アクション映画への出演は実質ゼロ。インストラクターの仕事が忙しいのでしょうが、かつての勇姿を知る身としては一抹の寂しさを感じてしまいます。

 さて本作は、まだビリーの人気が日本でギリギリ保たれていた頃、『ビリー'S KARATE MAN』と共にリリースされた作品です。格闘押しだった『KARATE MAN』に対し、こちらはサスペンス仕立てのアクション映画となっていました。
物語は今回もB級感丸出しで、記憶喪失となった謎の男(ビリー)がロディ・パイパーを巻き込み、ギャングと組んだCIAの裏切り者と戦う!というもの。敵の1人にはリチャード・ノートンが扮しており、なかなか豪華な顔ぶれが揃っています。
しかしストーリーはゴチャゴチャしていて散漫だし、軍の武器庫の警備が手薄すぎたりとツッコミどころが満載。小杉十郎太氏のムチャクチャな日本語吹替えも、今となっては別の意味で笑えました(爆
 一方、アクションはそれなりに勢いがあり、主演のビリーとロディは方々で立ち回りを見せています。注目はやはりビリーVSロディ、そしてVSノートンといったマッチメイクですが、こちらはあまり納得のいく内容ではありません。
VSロディでは演出がコミカル寄りで、対決というよりもドタバタ感が強めでした。VSノートンでは激しい殴り合いが繰り広げられるものの、肝心のノートンはクライマックス前に退場してしまいます。
おかげでラストバトルは強敵不在のまま進行し、どうにも締まりの悪い印象を残してました。ここは中盤で消化してしまったジェームズ・リューか、ノートンを温存してラスボスにして欲しかったなぁ…。
そんなわけで格闘アクションを沢山見たいなら『KARATE MAN』、ビリーと格闘俳優たちとの絡みを楽しむなら本作がオススメ。ただし、2本一緒に見るとどっちがどっちだか解らなくなるので、一気見は禁物です(笑
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『破門組』

2017-04-06 18:38:23 | 日本映画とVシネマ
「破門組」
「破門組 仁義なき戦争」
製作:2015年

●横浜で市原会を率いていた堀田真三は、敵対する山王会系田所組の組長を討つべく、組古参の幹部を差し向けた。だが、銃弾は居合わせた山王会の直参組織・藤堂組の組長に命中し、襲撃は失敗に終わってしまう。
古参幹部は自分の命でケジメを付け、組頭である原田龍二も組を守るために責任を取って、自ら破門される道を選んだ。その際、部下の川本淳市・松田優・木村圭作・宮本大誠が彼に付き従い、ここに“破門組”が結成される事となる。
 しかし藤堂組は一連の事態を利用し、堀田から横浜のシマをすべて奪い取った。九州の侠客・仁支川峰子からのタレコミで真相を知った堀田は、原田に事態の収拾を命じる。かくして、破門組による一大復讐劇が幕を開けるのだった。
田所組組長を拷問して真相を聞き出し、藤堂組の野望を見抜いた原田たちは、藤堂組若頭・大沢樹生と接触する。彼は今回の一件とは無関係だったが、筋の通らない話に思う所があったらしく、それとなく藤堂組組長の予定を流してくれた。
そんな中、原田は古参幹部の娘・中丸シオンと再会するが、彼女は父親の仇が彼であると思い込んでいた。腹部を刺され、それでも一切弁解せずに去っていく原田。そして遂に藤堂組との決戦が始まるも、そこに大沢が立ちはだかる…!

 なんとも魅力的なキャストに惹かれて視聴してみましたが、これがまた痛快な任侠アクションに仕上がっていました。内容は少数精鋭が仇敵を討つというもので、何となく『極道おとこ塾』(そういえばこっちにも松田が出演!)を思い出させます。
ただしルーチンワークの域を出ていなかった『おとこ塾』に対し、本作は敵の思惑やヒロインとの確執を交えることでドラマ面を補強。個性的なキャストを揃え、それなりに趣向を凝らしている点が伺えました。
 その一方で、原田と4人の仲間たちの関係があまり描写されておらず、「破門されてまで一蓮托生するほどの仲なのだろうか?」と思わざるを得ません。
側近だった川本、ひと悶着あった松田はまだ解るものの、木村と宮本については初登場が破門組の結成時なので、どういうった背景があるのか全く掴めないのです。最後まで組に殉じる大沢など、他のキャストの描写については良い感じなんですが…。

 そんなわけでストーリー展開にちょっとした難のある本作ですが、アクションは『武勇伝』『クローズZERO』の辻井啓司が指導しているため、ラストバトルは迫力のファイトが拝めます。
特に松田のタイマン勝負、原田VS大沢のナイフ合戦は最大の見どころで、どちらも軽快かつ伸びやかな立ち回りを披露。残念ながら格闘戦はラストだけで、川本の殺陣が一切無いという問題を抱えていますが、この2大バトルはなかなか見応えがありました。
なお、続編には『バトルロード2』の三元雅芸(!)も出ているらしく、破門組がどのような激闘を繰り広げるのか非常に気になります。こちらについては近い内に視聴できそうなので、いずれ紹介してみたいですね。
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更新履歴(2017年/3月)

2017-04-04 21:55:10 | Weblog
 3月はKSSの映画やVシネマを追って来ましたが、思ったよりもアバンギャルドな作品が多く、その内容には面喰ってしまいました(苦笑)。とはいえ、混沌とした内容や手作り感あふれるアクションからは、どこか怪しげな魅力のような物を感じます。
私としては、今後もこうした作品と出会っていきたいと思っていますが、残念ながら今月は小休止。月ごとの特集はいったんお休みして、久々にテーマ無しのフリーなレビューをお送りする予定です。
しかし小休止といっても、今年は10の特集をお送りする予定なので、こうした期間が設けられるのは1年を通してたった2ヶ月だけ。最近見た注目作などの紹介は、この間にどうにか済ませたいと考えています(汗
もちろん、来月以降も新たな特集を組んでいきますので、それまでどうかお待ち下さい!


03/02 更新履歴(2017年/2月)
03/05 KSS発・格闘セレクション(1)『Bird's Eye バーズ・アイ』
03/12 KSS発・格闘セレクション(2)『闇の天使 DREAM ANGEL』
03/15 KSS発・格闘セレクション(3)『疾風 Basement Fight』
03/20 KSS発・格闘セレクション(4)『無人島物語 BRQ』
03/31 KSS発・格闘セレクション(終)『男たちの遊戯』
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KSS発・格闘セレクション(終)『男たちの遊戯』

2017-03-31 15:08:14 | 日本映画とVシネマ
「男たちの遊戯」
製作:2000年

●刑事の松井哲也は、上層部から捜査の打ち切りを命じられるが、これに反発して単独で敵地に突入。麻薬取引の現場に踏み込むが、追ってきた相棒の飛野悟志が見ている目の前で焼き殺されてしまう。
失意の飛野は刑事を辞め、場末のバーでしがない探偵稼業を始めていた。そんな中、彼のもとに松井の弟・川本淳市が現れる。川本は「仇討ちに協力して欲しい」と告げるも、飛野は復讐の無意味さを解いた。
だが、かつて松井を殺した組織が再び動き出し、台湾マフィアとの提携を画策。同時に飛野の抹殺を目論み、彼は否応なく戦いに巻き込まれていく。仇討ちを目指して突っ走る川本と、覚悟を決めた飛野……今、命を賭けた男たちの遊戯が始まる!

 本作は、『十福星』で洪金寶(サモ・ハン・キンポー)と真っ向から戦い、今も第一線で活躍を続ける松井が初めてメガホンを取った作品です(脚本・製作も兼任、本作での名義は松井哲哉)。
この作品が一風変わっているのは、主演の飛野が手掛けた舞台劇が原作となっている点でしょうか。舞台劇が原作の邦画といえば、かつて『サバイバル自衛隊 SO SOLDIER』というトンデモない代物を紹介した事があり、あまり良い予感はしません(苦笑
ところが、不安を感じて調べてみたところ、なんと本作と『サバイバル~』は同じ会社が製作していたことが判明。同社は多くの舞台公演と映像制作を行っており、本作と『サバイバル~』も同じ経緯で撮影されたようです。
 そんなわけで見事に不安が的中してしまいましたが、ストーリーはそれほど破綻しておらず、思ったよりもスムーズに話が進んでいきます。
場面ごとの繋ぎが荒かったり、ホームドラマのようなコメディパートが邪魔だったりするものの、大した問題ではないと言えるでしょう。ただ、後述のアクションにおける問題点が発生した後、ラストバトルでとんでもない展開が待ち構えていました。
なんと敵の親玉との決戦を映像として描写せず、台詞だけで淡々と説明。その後に『サバイバル~』の別エンディングを彷彿とさせる驚愕のオチが襲いかかってくるのです。冒頭のカットで不穏な感じはしてましたが、まさかこんな着地をするとは…。

 とはいえ、本作はあの松井哲也が監督し、日本有数の格闘スターである川本も参加しているのですから、アクションシーンの質は保障されているはず。『サバイバル~』も肉弾戦だけは見事だったので、本作もその点は大丈夫…ではありませんでした(爆
本作最大の問題は、作中のアクションシーンが全て早送りされているという点です。早回しやコマ落としといった特殊効果ではなく、淡々と早送りされているだけなので、激しい違和感を感じてしまいます(最初はビデオデッキの異常かと思いました)。
 同じアクションシーンの早送りをした作品といえば、バス・ルッテンが出演した『バックラッシュ』があり、出演者の動きの悪さをごまかすために使われていました。しかし本作は、松井や川本という実力者を揃え、殺陣自体も問題は無いように見えます。
それなのに奇妙な早送りが使われ、あまつさえ川本はラストバトルで戦い始めたと思ったら、数分と経たぬうちに撃たれてリタイアするなど、まったくもって演出意図が解りません。一体どうしてこんなことに…う~ん。

 と、そんなわけで今月はKSSのアクション作品を追ってみましたが、終わってみれば見事に色物だらけのラインナップとなってしまいました(笑
しかし、2000年代初頭の邦画アクションは迷走状態にあり、そうした状況を打破するために若い才能が集い、悪戦苦闘した結果がこの作品群だったのかもしれません。やがて一連の作品に関わっていた人々は、それぞれの道を歩んでいく事になります。
『Bird's Eye』の下村勇二と『BRQ』の谷垣健治はアクション監督として大成し、『疾風』の山口祥行は格闘俳優の重鎮に。『闇の天使』の秋本つばさは『バトルロード』で奮闘を見せ、本作のアクション演出に協力していた川澄朋章も、動作設計の第一人者となりました。
低迷期から脱出し、見応えのあるアクション映画を撮れるようになった今日の邦画業界。しかしその背景には、多くのキャストやスタッフによる苦難の歴史があり、その過程で生まれた幾多の作品があった事を、我々は忘れてはならないのです(特集、終わり)
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KSS発・格闘セレクション(4)『無人島物語 BRQ』

2017-03-20 13:07:23 | 日本映画とVシネマ
「無人島物語 BRQ」
製作:2001年

●ある日、30人あまりのレースクィーンたちが無人島に集められた。撮影会という触れ込みだったが、マネージャー同伴不可で島には撮影スタッフすらいない。不穏な空気が立ち込める中、突如として「今から殺し合え」という謎のアナウンスが島中に響き渡った。
高飛車な横須賀まりこは、支給された武器の中から真っ先にマシンガンを奪い取り、その場にいた大勢の女性たちを射殺。辛くも難を逃れた桜庭あつこは、友人の牛川とこを探そうと森の中に分け入っていく。
だが、そこで待ち受けていたのは確執と裏切り、嫉妬と憎悪が渦巻く死闘だった。合流した桜庭たちは、この凄惨な戦いを生き延びることが出来るのだろうか!?

 今月はKSSが製作した格闘アクションを取り上げていますが、なんだかヤバい作品の紹介が続いているような気がします(汗)。今回もどちらかというとこのタイプの作品で、前回の『疾風』も霞むほどの大惨事が展開されていました。
本作は甄子丹(ドニー・イェン)作品で経験を積み、『るろうに剣心』三部作で一般層からも評価を得た谷垣健治の初監督作であり、アクション監督は盟友の下村勇二が担当。脚本と共同監督には、かの千葉誠治が着任しています。
 しかし、本作には谷垣導演らしい茶目っ気や香港映画愛、千葉監督らしいディスカッションのロジックは存在せず、ただひたすら無味乾燥な会話と殺し合いが繰り広げられるのです。
ストーリーの進行もかなり杜撰で、仲間になりそうなキャラが家庭の事情を語った途端に速効で死んだり、なぜ桜庭が牛川を必死になって助けようとするのか理由が語られなかったりと、ハチャメチャな描写が続きます。
何も解決しないラストも含め、どうしてこのような結果になったのか不思議でなりませんが、当時の谷垣導演と千葉監督はまだまだ新進気鋭の身。上から「グラドルやレースクィーンでバトロワっぽいの撮れ!」と無茶振りされたのかもしれません。

 続いてアクションに関してですが、ご覧のように出演者の大半がアクション経験はおろか、映画出演も初めてという方ばかり(主演の桜庭はそこそこ殺陣の経験はあるのですが)。これには流石の下村氏も苦心したことでしょう。
そのためか、本作はほとんどアクションらしいアクションが無く、戦闘シーンも実にあっさりとしています。たまに武器を使ったり小競り合いが起きるものの、どのシークエンスも殺陣と呼ぶには短すぎました。
 本格的な格闘戦が見られるのはラストバトルだけで、意を決した桜庭が横須賀の舎弟コンビ(小林みきブレイク前のインリン…そういえばインリンって今何やってるんでしょうか?)と蹴り合戦を展開します。
続いてポン刀を抜いて迫る横須賀に対し、桜庭は何故か素手でこれを捌き、バトルは素手の勝負に移行。ここで『Bird's Eye』に先駆け、『ドラゴン危機一発'97』のマッハカンフーがそれとなく再現されていました(笑
ラストには桜庭による豪快なかかと落としも炸裂したりと、この辺に関してはそれなりの立ち回りに仕上がっています。とはいえ、個人的にはもうちょっとアクションの量を多くして欲しかったかなぁ…。

 出演者のセクシーな見せ場も少なく、なかなか評価がしづらい一本。しかし本作で組んだ2人の監督は、のちに『隠忍術』シリーズを手掛けることになり、一本立ちした谷垣導演は日本を代表するアクション監督になりました。
また、千葉監督と下村氏は何度もコンビを組み、『忍邪』『AVN/エイリアンVSニンジャ』を筆頭とした無数の忍者映画を撮ります。確かに本作は難のある出来ですが、のちに大成する3名の映画人にとっては、すべての始まりとなった作品…なのかもしれませんね。
さて、いつの間にか混迷の度合いを深め、一筋縄ではいかない作品ばかりをレビューしてきた今回の特集ですが、その旅路もいよいよ次でフィナーレ。次回は、香港から帰って来た男による命懸けの遊戯に迫ります!
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KSS発・格闘セレクション(3)『疾風 Basement Fight』

2017-03-15 12:26:44 | 日本映画とVシネマ
「疾風 Basement Fight」
「疾風 HAYATE Basement Fight」
製作:2003年

●裏社会のフィクサー・菅田俊は、ファイター同士を殺し合わせる闇試合の開催を目論み、多数の格闘家たちを拉致。恋人を菅田に誘拐された松田悟志、松田の友人で借金まみれの吉岡毅志、そして謎の女・大谷允保の3人が集められた。
ここに師匠を菅田の配下によって殺された空手家・松田賢二を加え、脱出不可能なデスマッチが幕を開ける。リーマン風の卑劣漢・高東楓が、賢二の仇敵・新井雄一郎が、大谷のライバル・清水あすかが、功夫使いの佐渡正城が次々と立ちはだかった。
松田たちは賢二を失いながらも、一連の戦いになんとか勝利する。だが、最後に待ち構えていた最強の刺客・山口祥行はとても手強く、3人は徐々に追い詰められていく。果たして、最後に生き残るのはどちらなのだろうか!?

 本作は李小龍(ブルース・リー)へのオマージュに溢れた快作『烈風 ACTION!?』の姉妹編で、内容の8割が格闘シーンというアクション押しの作品となっています。
出演者の多くが『烈風』から引き続き登板しており、こちらでもハードな肉弾戦がこれでもか!と展開。新たに加入したダブル松田や大谷の動きも悪くなく、それぞれに見せ場となるファイトが用意されていました。
 その一方で、ストーリーは凡庸だった『烈風』よりもグレードダウンしていて、正直言って壊滅的です(爆)。ツッコミどころは恐ろしいほど多く、釈然としない描写・説明不足の展開が嵐のように吹き荒れています。
どうして賢二の師匠はデスマッチに参加したのか? 菅田を見た吉岡が口走った意味深な台詞は何を示しているのか? 脱出不可能の空間なのにあっさり逃げ出せそうなのは何故? 回想シーンが前半に集中しすぎでは? …等々、挙げるとキリがありません。
個人的には、主役3人と遅れて合流した賢二がすぐに仇敵と遭遇し、一番早く脱落してしまう展開はどうかと思ってしまいました。いくらなんでも死ぬのが早過ぎるし、こういう因縁の相手との対決もクライマックスに持って来るべきなのでは…?

 とはいえ、先述したように格闘シーンの出来は本当に上質であり、圧巻のファイトが堪能できます。序盤は回想シーンで停滞しまくるストーリーにイライラさせられますが、吉岡VS筋肉トリオの辺りから一気に加速し始めるのです。
そこからは松田VS武術指導兼任の佐渡、ウェポンバトルを交えた大谷VS清水など、多種多様なバトルが続発! 中でも吉岡の動作は相変わらず俊敏で、ラストバトルでは相手の膝に足を掛け、胸→顔へと連続蹴りを放つという妙技を見せてくれました。
 そのラストバトルにおいて、3人を迎え撃つのが元JACの山口祥行です。彼は任侠系の『喧嘩組』シリーズ、時代劇の『新・影の軍団』、そして『新・年少バトルロワイヤル』などで猛威を振るい、その高い技量を披露しています。
本作では3人の攻撃にビクともせず、ノッシノッシと歩み寄る姿はまさにセガールの如し(…って流石にそれは言い過ぎか・笑)。結末はやや腰砕けですが、ラスボスに相応しい堂々たる強さを見せつけていました。
 ソリッドシチュエーションとマーシャルアーツの融合という、『キル・オール!』を先取りしたかのような本作。格闘アクションは文句なしの出来なだけに、つくづくストーリー面の弱さが惜しまれます。
さて、KSS作品をめぐる旅も後半戦に突入。次回は日本有数のアクション監督となった某氏による、記念すべき最初の監督作に迫ります!
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KSS発・格闘セレクション(2)『闇の天使 DREAM ANGEL』

2017-03-12 20:30:45 | 日本映画とVシネマ
「闇の天使 DREAM ANGEL」
製作:2001年

●日中合同による石油プロジェクトが進む中、その計画に携わっていた中国人の女が殺された。犯人の衆議院議員・岡崎二郎は、秘書の西守正樹(『どチンピラ』!)や石油会社の副社長と共謀し、事件の隠ぺいを画策する。
この事態を重く見た両国政府は、事態の収拾を“闇の天使”に依頼。国家間の関係悪化を避けるべく、当事者たちを秘密裏に葬り去る事となった。
 スタント女優の秋本つばさ、キャンギャルの青木理央、そしてカウンセラーのマリアンは、さっそく仕置きに向けて動き出していく。だが、一方で殺害された女の姉・翠玲が現れ、たった1人で仇討ちを強行しようとしていた。
マリアンたちは副社長を自殺に見せかけて始末し、続いて自宅の屋敷に閉じこもった岡崎たちに狙いを定める。ところが、ここに翠玲が介入したことで事態は一変。彼女と合流した“闇の天使”たちは、最後の戦いに挑むが…!?

 さて本作は、大ヒットを記録した『チャーリーズ・エンジェル』の要素を取り入れた作品で、そこにR指定相当の濡れ場を惜しげも無く挿入。さらには必殺仕事人チックなテイストまで加えた、実に欲張りな一品です。
ただし『チャーリーズ~』らしいポイントは、黒を基調とした衣装(終盤にしか着用しない)とタイトル、顔の見えないボスが指令を出すという3点のみ。ちなみに本作のボスは安岡力也が演じていたりします(笑
ストーリーは仕事人シリーズにありそうな勧善懲悪モノで、どことなく同じタイプの『必殺!バトルロード』を彷彿とさせますが、残念ながらそこまでボルテージの高い作品ではありません。
 まず気になるのが、低予算が見え見えの作りです。冒頭で映る上海の街並みがどう見ても横浜だったり、岡崎がクラブを持って出かけた先が打ちっぱなし練習場だったり(ゴルフ場じゃないのかよ!)と、そこかしこでショボさが垣間見えていました。
問題なのは、そんな状況でスケールの大きな話を展開しようとしている点でしょう。登場人物に英語を喋らせ、ワールドワイドな雰囲気を作り出そうとしていますが、そのせいで逆に無理をしている感が強調されてしまっているのです。

 物語についてもルーティンな展開から抜け出せておらず、その内容も非常にスカスカ。例えば、中盤で暗殺の手筈を記した紙を紛失するくだりがあるのですが、これが敵の手に渡ってピンチに陥る…なんて展開に発展せず、何事もなく話が進行していきます。
もっと話を膨らませたり、伏線にする事が出来た部分もあるのに、それを上手く生かせていないのが本作の難点と言えます。ただ、秋本つばさのド派手な立ち回りは見栄えが良く、彼女のアクションこそが本作最大の見どころかもしれません。
 秋本は『必殺!バトルロード』でカポエラ使いを演じており、今回も伸びやかな足技をビシバシと披露。序盤の撮影現場における豪快な殺陣、終盤のザコを相手にした乱戦は実に迫力がありました。
しかし、中盤のマリアンVS翠玲ではカメラワークのせいで本人が演じているのか解り辛く、終盤の“闇の天使”VS西守の総力戦もスッキリしない結末を迎えています。ホントに秋本のアクションだけは良いんだけどなぁ…。
そんなわけで評価に困る本作ですが、次回はそんなモヤモヤを吹き飛ばす快作が登場します。あの李小龍にオマージュを捧げた傑作の姉妹編であり、延々とハードなアクションが炸裂する作品の名とは――詳細は次回にて!
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KSS発・格闘セレクション(1)『Bird's Eye バーズ・アイ』

2017-03-05 21:14:25 | 日本映画とVシネマ
「Bird's Eye バーズ・アイ」
製作:2003年

▼2000年代初頭の日本映画界では、劇場用アニメやジャパニーズ・ホラーの名作が相次いで作られ、暗い世相を吹き飛ばすような活気に溢れていました。
しかし、何故かアクション映画だけは勢いに欠けており、甄子丹(ドニー・イェン)を武術指導に招いた『修羅雪姫』、底抜け格闘ムービーの『マッスルヒート』などが公開されても、全国規模の大ヒットにまで至らない状況が続きます。
 とはいえ、邦画アクションの火を絶やすまいと奮闘した人々の手によって、同ジャンルはなんとか生き続けました。時には小規模な劇場公開作品として、時には低予算のVシネマとして、手を変え品を変えて作られ続けたのです。
東映ビデオは『修羅のみち』系列で格闘任侠路線を極め、ミュージアムは真樹日佐夫の漫画作品を続々と実写化。そして『ミナミの帝王』『静かなるドン』シリーズを手掛けたKSS(KSS FILMS)も、多種多様な作品を携えて参戦します。

 …というわけで、今回の特集は野心的な作品をいくつもリリースし、邦画アクションが下火になっても戦い続けたKSSの作品群に注目してみる事にしましょう。
KSSは90年代の始めにVシネ業界へ参入し、同時にオリジナルアニメやアダルト作品を量産。上記のタイトル以外にも『喧嘩の花道』シリーズ、倉田保昭が主演した『となりの凡人組』三部作など、多くのアクションを製作しました。
時代が変わっても多種多様なスタイルは変わらず、この『Bird's Eye』では当時イケメンヒーローとしてブレイクしていた涼平(その男ゾルダ!)をいち早く起用し、軽快なアクション活劇に仕上げています。

■俳優の涼平とスタントマンの川口力哉(当時の芸名はRIKIYA)は、高校時代からの親友同士。今日もアクションドラマの撮影で軽口を叩きあい、後輩でマネージャーのつぐみから駄目出しを喰らっていた。
ところが、本番中に女子高生の木村茜が現れて撮影はストップ。どうやら何か訳ありらしく、松重豊が率いる謎の一団に追われていた。成り行きから彼女を助けることになった3人は、次々と襲いかかる一団と戦いを繰り広げていく。
 やがて松重の狙いが、木村の父・諏訪太朗の開発したゲーム機(一部のパーツが兵器に転用可能という設定。恐らく当時話題だったプレステ2騒動を反映したものと思われる)にあり、ゲームのプロテクト解除には木村が必要だった事が判明する。
既に諏訪は捕らわれており、ついにはつぐみと木村も敵の手に落ちてしまう。川口はあえて涼平を突き離し、自分だけで敵陣に乗り込むものの、多勢に無勢で追い詰められていった。
もはやこれまでかと思われたその時、颯爽と現れたのは後を追ってきた涼平だった。松重が暴走する中、ここに一大決戦の幕が上がる!

▲本作は後に『相棒』シリーズに参加する近藤一彦の初監督作…とのことですが、最初の一発目から“相棒”を扱った作品を撮っている点については、なかなか興味深いものがありました。
ただ、セリフ回しや演出はさすがに時代を感じさせるし、娘に危害が及ぶのが丸解りなプロテクトを掛けた諏訪の行動、もたついてしまう終盤の展開など、疑問を感じる箇所も存在します。
 ですが、ストーリーは典型的ながらテンポよく進み、最後まで雰囲気は軽快なまま(明確な死者も1人だけ)。そして香港帰りの実力派・下村勇二が指導したアクションは変化に富んでいて、思った以上の迫力に満ちていました。
最初の涼平によるアクションは画面が暗く、吹き替えがバレバレなワイヤーワークで「ダメかなぁ…」と思わせますが、これは川口がスタントをやっている事を明示した演出。その後の立ち回りでは、しっかり腰を据えた肉弾戦が繰り広げられています。
 基本的に戦うのは川口、涼平はそれほど強くないという設定になっており、一部のシーンを除けばファイトスタイルの差別化も上々。ラストバトルでは甄子丹のマッハカンフーがチラっと再現されるなど、ボリュームに関しては悪くありません。
注目すべきは敵の一団で、3人の幹部を清水あすか・府川唯未・島津健太郎という凄いメンバーが演じているのです。清水は鳳龍院心拳を代表する本物の宗師(!)、府川は元女子プロレスラーで、島津も『抜け忍』などで大悪役を演じました。
 そんな面々が相手ですから、主役の2人もボロボロになりながら必死に応戦! 事実上のラスボスとして君臨する清水の暴れっぷりには、一種の清々しさすら感じます(笑
よくよく見れば低予算の作品ですが、見た目以上の面白味はあったと言えるでしょう。さて次回は、一転してセクシーな大人のアクション作品が登場。卑劣な男どもを倒すべく、あの女ドラゴンが現れます!
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更新履歴(2017年/2月)

2017-03-02 12:31:21 | Weblog
 2月はひたすらニコイチ映画漬けの日々でしたが、どうにか最後まで駆け抜けることが出来ました。今回の特集では、流行に食らいつく姿勢や関係者の動向など、様々な視点から考察することでニコイチ映画の新たな面を発見できた気がします。…まぁ、流石にニコイチ特集第2弾は勘弁願いたいですが(苦笑
さて次回の特集ですが、ここまでテーマを香港映画やハリウッドに絞ってきたので、3月は一転して邦画作品をピックアップ! 数ある映画会社の中から、『ミナミの帝王』等を手掛けたKSS(ケイエスエス)製作のアクション作品を集中紹介していきます。
名付けて、<KSS発・格闘セレクション>! これまで当ブログでは『となりの凡人組』などを紹介してきましたが、KSSが製作した格闘アクションはまだまだ存在します。その中から、邦画アクションが不作だった2000年代前半のタイトルを集中紹介していくので、今月もどうかご期待ください!


02/01 更新履歴(2017年/1月)
02/04 恐怖!ニコイチ映画怪進撃(1)『ニンジャ・コマンドー/地獄の戦車軍団』
02/10 恐怖!ニコイチ映画怪進撃(2)『ロボ道士/エルム街のキョンシー』
02/15 恐怖!ニコイチ映画怪進撃(3)『U.S.Catman: Lethal Track』
02/20 恐怖!ニコイチ映画怪進撃(4)『地獄のバトルボーダー/戦場に舞い降りた残虐軍団』
02/26 恐怖!ニコイチ映画怪進撃(終)『Kickboxer from Hell』
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