功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

ステイサム罷り通る(3)『SAFE/セイフ』

2017-06-18 22:58:44 | マーシャルアーツ映画:中(2)
「SAFE/セイフ」
原題:Safe
製作:2012年

●かつては凄腕の刑事、今は賭け格闘の選手として燻っていたジェイソン・ステイサムは、負けるはずの八百長試合で誤って勝利してしまう。
これに激怒した雇い主のロシアンマフィアは、ステイサムの妻を殺した上に“親しくなった人間を片っ端から殺害する”と脅迫。かくして四六時中監視される身となった彼は、浮浪者同然の生活を余儀なくされるのだった。
 一方、一度見た数字を完全に記憶する天才少女のキャサリン・チェンは、ジェームズ・ホン率いるチャイニーズ・マフィアに拘束され、アメリカで帳簿代わりに働くよう強いられていた。
彼女も悲惨な境遇に置かれており、唯一の肉親だった母から引き離されたばかりか、その母も程なくして病死。さらに不幸は続き、とある暗号を記憶させられたキャサリンは、その矢先にロシアンマフィアから襲撃を受けてしまった。
 地下鉄の中を必死で逃げ惑う彼女を目撃したステイサムは、眠っていた正義感を揺り動かしてマフィアを一蹴! そのままキャサリンを連れて逃避行を開始する。
だが、彼女の記憶した暗号は3000万ドルと重要な機密の鍵であり、ロシアンマフィアやチャイニーズ・マフィア、さらには悪徳警官までもが少女を狙っていた。四面楚歌な状況の中、孤独な2人はどこへ向かうのだろうか…?

 従来のハリウッドにおけるアクションスターとステイサムには大きな違いがあります。かつてシルベスター・スタローンやシュワルツェネガーは、その強靭な肉体をスクリーンに刻み付け、有無を言わさぬ迫力でハリウッドを席巻しました。
しかし、そのアクションは力強さが第一とされており、香港映画的なスピーディーで流れるような動作とは縁遠いものでした。のちに格闘特化型のヴァンダムやセガールなどが登場しますが、こちらも香港流のアクションとはスタイルが異なっています。
 香港流に対応できるハリウッドのスターと言えば、マーク・ダカスコスのようなB級どころのスターぐらい。そんな風潮が長らくハリウッドに漂っていましたが、『マトリックス』の大ヒットでアクションシーンに対するグローバル化が進み始めます。
その後、ハリウッドでは香港流の立ち回りが一般化し、アクションスターに要求されるスタイルにも変化が生じ始めました。ステイサムはその流れに順応し、あらゆるシチュエーションに対応できる柔軟さを身に付けたのです。

 本作は、そんなステイサムが全編に渡って無骨な殴り合いを繰り広げる、実に彼らしい作品となっていました。前半は彼とキャサリンがとことん追い込まれ、視聴者の焦燥感を煽る展開がこれでもか!と続きます。
そして地下鉄の一戦でステイサムは完全復活し、ここからは3つの巨悪を相手取った丁々発止のバトルが開幕。それまで好き勝手やっていた連中を容赦なくボコっていくステイサムの姿は、まさに期待した通りの勇猛さに溢れています。
 ところが最終的に2つのマフィアは壊滅せず、健在のまま物語は終了します。いくら凄腕とはいえ、たった一人で戦う主人公が巨大組織を潰すのは極めて困難なのでしょうが…あれだけ非道を尽くした連中が生き延びるラストは釈然としません。
特にステイサムの妻を殺し、彼を追い込んだロシアンマフィアの若頭が死ななかったのにはガッカリ。キャサリンを養子にしたレジー・リー(こちらも凄まじいゲス野郎)も、主人公ではなく後半から登場したアンソン・マウントに瞬殺されていました。
たとえマフィアのボスが無理でも、こういう敵キャラはステイサムが直々にガツンとやって欲しかったんだけどなぁ…(やり過ぎて余計な遺恨を残したくない、という主人公の考えも理解できるのですが)。

 もうひとつの問題がアクションにおける格闘シーンの少なさです。本作はアクションが濃厚なので見過ごされがちですが、銃撃戦がやや多めの比率となっており、あまりステイサムと互角に戦える相手もいません。
また、賭け格闘の選手という役どころにも関わらず、試合を行うステイサムの描写は序盤の僅かなカットのみ。ラストではようやくアンソンという強敵らしい相手が現れるも、両者の対戦は腰砕けな決着を迎えます。
 ちなみに本作でファイト・コレオグラファーを務めたのは、キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』を監督したチャド・スタエルスキーなので、ここはビシッとタイマン勝負で決めて欲しかったですね。
ラストシーンが情緒的ではあるものの、色々と外してしまったポイントのある惜しい作品。私としては、そろそろステイサムがガチなタイマン勝負を決めてる姿を見たいので、次回は夢の対決が実現したアクション大作を紹介したいと思います!
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ステイサム罷り通る(2)『ワイルドカード』

2017-06-16 14:21:15 | マーシャルアーツ映画:上
「ワイルドカード」
「WILD CARD/ワイルドカード」
原題:Wild Card
製作:2015年

●ネバダ州ラスベガス。栄光と挫折が渦巻くこの街で、元兵士のジェイソン・ステイサムは堕落した生活を送っていた。酒とギャンブルに溺れ、嘘を吐き出し、冴えない用心棒として殴り殴られる…そんな日々を彼は繰り返していた。
ある日、彼の前に護衛を依頼したいという青年(マイケル・アンガラノ)が現れる。時を同じくして、ステイサムは元恋人のドミニク・ガルシア=ロリドから「私に乱暴したゲス野郎に復讐したい!」と迫られた。
 嫌な予感を覚えつつも調べてみると、ドミニクに酷い仕打ちをした相手はイタリアンマフィアのボンボン(マイロ・ヴィンティミリア)で、さすがのステイサムも「こりゃヤバい」と困り顔。彼女に断りの電話を入れ、マイケルの御守りへと戻っていく。
だが思い直した彼は、敵が滞在するホテルの一室に直行すると、あっという間にマイロとその護衛を一蹴。合流したドミニクはリベンジを果たし、報復が来る前にラスベガスを後にするのだった。
 その後、マイケルの所に戻ったステイサムは「ベガスを去る前にひと勝負」と、マイロからせしめた金でギャンブルに挑む。するとツキがツキを呼び込み、一夜にして50万ドルもの大金を得た。
しかし、それも一時の栄光でしかなく、最後の勝負で全てを失ってしまう。挙句に逃げるタイミングを失い、地元のマフィア(スタンリー・トゥッチ)に確保されたステイサムは、ほくそ笑むマイロの前に引きずり出された。
どうにかその場は切り抜けたが、マイロが殺しに来るのは確実だ。彼は行きつけの喫茶店で最期の食事を採るが、そこへフラリとマイケルが現れ、ある物を手渡した。果たしてステイサムが辿るのは栄光か、それとも……?

 今回は前回と打って変わって、最強路線を確立した後のステイサム主演作の紹介です。この作品は、ラスベガスを舞台にステイサムが大暴れを演じる大活劇…ではなく、ある男の旅立ちを描いた物語となっていました。
全体的にアクションは控えめになっており、序盤はイケてない主人公が元カノの復讐に振り回され、重い腰を上げるまでの物語を淡々と描いています。
 その後、リベンジのほうはアッサリと片付き、欲をかいた末に一文無しになるステイサム。正体を明かしたマイケルからギャンブル中毒を指摘されるも、彼は踏ん切りをつけることが出来ず、自分を認めようとしません。
しかし自らの死が目前に迫り、マイケルから手を差し伸べられたステイサムは、目の前の現実から逃げずに立ち向かうことを選択します。それは自堕落な過去との決別を意味し、マイケルを救おうとした事で彼自身も救われた瞬間でもあるのです。
 ドンパチ賑やかな物語ではないものの、ハードボイルドな雰囲気が徹底された中々の良作。私としては「ああこりゃ破滅エンドだな…」と覚悟していたので、まさかここまで前向きな終わり方をするとは思いもよりませんでした。
ところで“ギャンブル中毒の主人公がベガスで戦う話”といえば、こんな作品もありましたね。もっとも本作のステイサムは過去に見切りをつけているので、あっちと違って中毒の再発はしないと思われますが…(苦笑

 さて、アクションについても控えめと表記しましたが、個々のシーンはケレン味にあふれていて迫力十分。マイロと接触した際はクレジットカードで額を切り裂き、カジノでは襲いかかる雑魚どもを叩きのめすわと、パワフルな殺陣が炸裂しています。
本作のファイト・コレオグラファーはステイサムと何度も仕事をしている元奎(コリー・ユン)ですが、香港アクションのノリをそのまま持って来た『トランスポーター』と違い、あくまでハリウッドらしい雰囲気を崩さない殺陣が構築されていました。
 ラストのレストラン裏での対決では、銃を所持した5~6人をバターナイフとスプーンで瞬殺! その凄惨かつ鮮やかな立ち回りは、ストーリーの展開とも相まって実に痛快なファイトに仕上がっています。
残念ながらラスボスに相当する相手はいませんが、作品的にはこれぐらいの規模がベストでしょう。とはいえ、ステイサムといえばやっぱり暴れてナンボのアクションスターです。そろそろ彼の本領を発揮した作品を見たいところですが…続きは次回にて!
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ステイサム罷り通る(1)『ザ・ワン』

2017-06-13 22:38:32 | 李連杰(ジェット・リー)
「ザ・ワン」
原題:THE ONE
中文題:最後一強
製作:2001年

●この世界は125の多次元宇宙に分かれており、MVAと呼ばれる機関が均衡を守っていた。だが、MVAの一員だった李連杰(ジェット・リー)は別次元の自分を抹殺し、唯一無二の存在――“ザ・ワン”になろうと企んだ。
1人が死ねば、そのエネルギーは別次元の1人へと流れ込む。その法則を利用した李連杰は自分を殺し続け、恐るべきパワーを身に付けた超人と化していった。
 MVA捜査官のデルロイ・リンドジェイソン・ステイサム(公開当時の日本語表記はステーサム)は、やっとの思いで彼を逮捕するも、刑の執行直前に逃走されてしまう。
一方、最後の1人となった別次元の李連杰は、愛妻のカーラ・グジーノや同僚に囲まれて穏やかに暮らしていた。だが、驚異的な力が発現するようになり、次元を超えて現れた李連杰の猛攻を受ける事となる。
悪の李連杰によって殺人の濡れ衣を着せられ、窮地に陥る最後の李連杰。ステイサムと手を組んだ彼は、カーラを殺した悪の李連杰に決戦を挑むが…。

 突如としてハリウッドのアクション映画戦線に現れ、今ではドウェイン・ジョンソンらと並んで業界をリードする存在となったジェイソン・ステイサム。その活躍は留まるところを知らず、最近では成龍(ジャッキー・チェン)との共演作が控えています。
今月はそんなステイサムの魅力に迫りつつ、あまり当ブログでは紹介してこなかった彼の出演作を一気にレビューしてみましょう。さて、初回となる本日はステイサムがアクションに開眼し、ある重要な人物と出会いを果たした作品の登場です。
 本作は李連杰が『マトリックス・リローデット』のオファーを蹴ってまで出演したSFアクションで、ステイサムは彼と共闘する若き捜査官に扮しています。
ただし、SFといっても内容の8割は現代のロサンゼルスが舞台であり、それらしい雰囲気はあまり感じません。序盤で世界観の説明をしたのに、劇中でも登場人物たちが説明を繰り返す(つまり序盤の説明は不要)など、ストーリー構成も実に大雑把でした。

 また、この手の一人二役アクションにありがちな事ですが、2人の李連杰が絡むカットはアクションである以前に特撮なので、生の迫力に欠けています(ちなみに代役を演じたのは、いずれもベテランの武術指導家である黄凱森・國建勇・林峰)。
その他の格闘シーンもCGでデコレーションされており、立ち回りにおいてもやや難点のある本作。とはいえ、李連杰による堂々とした悪役演技や、別次元のデルロイに礼を言うステイサムなど、それなりにグッとくるシーンはあったと思います。
ところで肝心のステイサムですが、意外にも本作ではアクションらしいアクションをしていません。もっぱら銃を撃つばかりで、格闘戦はなんとデルロイが担当。設定上もそれほど強いわけではなく、今のステイサムからは考えられないような光景が見られます。

 しかし彼は本作でアクションに興味を持ち、動作設計を担当した元奎(コリー・ユエン)と不思議な縁で結ばれる事になるのです。元奎は李連杰と何度もタッグを組み、『リーサル・ウェポン4』でアメリカ進出した李連杰のアクション指導も務めました。
本作の後、フランスに渡ったステイサムはリュック・ベッソン製作の『トランスポーター』に参加。そこで監督兼武術指導を担当したのが、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』でベッソンの目に留まった元奎だったのです。
 そして『トランスポーター』シリーズはステイサムの出世作となり、彼がアクションスターとして本格始動する起爆剤となりました。もし元奎と出会っていなければ、ステイサムの覚醒は無かった…のかもしれませんね。
その後、2人は再び李連杰と共演した『ローグ・アサシン』、間接的な接触となった『エクスペンダブルズ』で再会。続いて骨太なアクション大作でまたも巡りあうワケですが…続きは次回にて!
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更新履歴(2017年/5月)

2017-06-04 14:16:43 | Weblog
 5月はブログ開設10年目ということで、私を香港映画ファンに変えた『天地大乱』とそれに関する諸々について語ってみました。1本の映画に対し、ここまで長い記事を書いたのはこれが初めてかもしれません。
しかし思い入れが強い作品なので、正直言ってまだまだ書き足りません(爆)。本当は作品の不満点やロマンス描写にも触れたかったのですが、これ以上の延長はグダグダになるため、やむなく割愛しました。
 さて、いつの間にか2017年も折り返し地点に差し掛かり、10の特集も6月で前半戦が終了となります。しかし香港映画関連の特集が続いたため、マーシャルアーツ映画関連の企画は一度もやっていませんでした。
そこで今月は<ステイサム罷り通る>と題し、ハリウッド有数のアクションスターであるジェイソン・ステイサムの出演作を集中紹介いたします。
あまり当ブログで取り上げる機会の少ないステイサムですが、彼の作品はどれもクオリティが高く、いつか目を通したいと思っていました。そんなわけでステイサムが撃って殴って蹴りまくる一ヶ月となりますので、皆さんどうぞお楽しみに!


05/01 更新履歴(2017年/4月)
05/05 Once Upon a Time(1)全てを変えた『天地大乱』
05/20 Once Upon a Time(2)物語の軌跡・前編
05/26 Once Upon a Time(3)物語の軌跡・後編
05/29 Once Upon a Time(4)黄飛鴻電影を追い求めて
05/31 Once Upon a Time(終)亜流電影と消えない情熱
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Once Upon a Time(終)亜流電影と消えない情熱

2017-05-31 22:52:33 | 李連杰(ジェット・リー)
 ひょんな事から『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』に魅了された私は、徐克(ツイ・ハーク)が手掛けたワンチャイシリーズの制覇に乗り出しました。
しかし、あくまで私が興味を持ったのはワンチャイというシリーズそのものであり、李連杰(リー・リンチェイ)が主演した他の映画には目もくれなかったと記憶しています。
 その後、私はワンチャイシリーズの本家を制覇すると、今度は亜流作品にまで手を出し始めました。まず最初に見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアン・モンキー』で、こちらは本家と同じ徐克が製作を担当しています。
主演は甄子丹(ドニー・イェン)と干光榮(ユー・ロングァン)で、物語は黄飛鴻の父・黄麒英と義賊・鉄猿が朝廷の悪人と戦う!というもの。ストーリーもさることながら、重力を無視したワイヤーワークも素晴らしく、外伝としては一級品の傑作でした。

 続いて視聴した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 鬼脚』は、反対に徐克が関わっていない完全な亜流作品であり、内容はあまり洗練されているとは言えません。
しかし、主演の元彪(ユン・ピョウ)による立ち回りはとても軽快で、加えて任世官(ニン・シークワン)や元華(ユン・ワー)といった実力派スターが投入されており、アクションに関しては本家にも負けない健闘を見せています。
 そして最後に見た『ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ/烈火風雲』は、久々となる李連杰の黄飛鴻が楽しめる番外編。こちらは李連杰が自身のプロダクションで製作した作品で、あの王晶(バリー・ウォン)がメガホンを取っています。
おかげで本家よりもコメディ描写が多く、残酷なシーンも無駄に充実していますが、アクションシーンについては上々の出来です。ただ、当時の私は劉家輝(ゴードン・リュウ)や徐忠信(アラン・ツィー)については全く知りませんでした(苦笑

 さて、こうして私のワンチャイシリーズに対する情熱は持続していた訳ですが、そんな状況に冷や水を浴びせる事件が起きます。
ひと通りシリーズに目を通した私は、『天地発狂』や『アイアンモンキー・グレート』といった怪しい作品に手を出そうか悩んでいました。するとその時、突如としてレンタルショップに本家スタッフによる新作が続々と入荷されてきたのです。
「まだシリーズは続いていたんだ!」と喜びながらレンタルした私は、その中の1つをワクワクしながら見たんですが…そこに映されていたのはフィルム撮りではない違和感のある画面、淡々と進むストーリー、暗い演出の数々でした。
 実はこの作品は、電視劇(TVドラマ)として製作されたものの再編集版。私が見たのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 八大天王』で、監督は『ブラック・マスク』の李仁港(ダニエル・リー)が担当しています。
李仁港といえば凝った映像に拘る監督として有名ですが、この作品ではビデオ撮影&暗い画面でスローを多用したため、アクションの迫力は本家どころか亜流作品にも及んでいません。
 また、今まで親しんできた日本語吹き替えのキャストが一新されており(『天地風雲』では池田秀一だけギリギリ残ってくれましたが…)、この状況に大変なショックを受けた私は、ワンチャイシリーズに対する熱意を急速に失っていくことになります。
結局、それ以外の再編集版である『理想年代』や『辛亥革命』は見る気になれず、まだチェックしていない亜流作品に対する興味も無くなってしまいました(特に電視劇の再編集版については未だに手を出していません)。
しかし、このまま香港映画に対する情熱を失うかに見えたその時、私を奮い立たせたのは李連杰の先達である2人のドラゴンでした。彼らと出会ったのはまたしてもBS2の映画番組で、その作品は連続して放送されたのです。

 1つは少林寺の名誉を守り、妹の敵を討つために戦う壮絶なアクション大作。もう1つは飄々とした若者が酔いどれ師匠に修行を受け、恐るべき足技の達人と雌雄を決する作品です。
そう、前者は李小龍(ブルース・リー)主演の『燃えよドラゴン』! 後者は成龍(ジャッキー・チェン)主演の『ドランクモンキー 酔拳』! この歴史的傑作と間髪入れずに出会ったことで、再び私の香港映画熱が燃え始めます。
「まだまだ香港映画には凄い作品が沢山ある!」と悟った私は、果てしない香港映画への探求を始め、その途中で日本の空手映画や欧米の格闘映画と遭遇。より深く、より広く知ろうとしました。
 そして今、アクション映画への情熱をブログという形で発信するようになり、いつの間にやら10年が経ってしまいました。その情熱は未だに冷めることはなく、新たなアクション映画との出会いを常に求め続けています。
Once Upon a Time...もはや遠い過去の出来事となりましたが、『天地大乱』の出会いとそれにまつわる悲喜交々は、今でも私の心に思い出としてシッカリと刻まれているのです。
香港映画に対する情熱がいつまで続くかは自分でも解りません。ですが、『天地大乱』から受けた衝撃は私の情熱の原動力として、今も…そしてこれからも燃え続けることでしょう。銀幕を力強く駆け抜けた、あの黄飛鴻のように―――(特集、終わり)
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Once Upon a Time(4)黄飛鴻電影を追い求めて

2017-05-29 16:29:43 | 李連杰(ジェット・リー)
 私の香港映画に対する価値観を大きく変えた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』。特集の冒頭で触れた通り、この作品と出会ったのはテレビの映画番組でした。
その興奮が冷めやらぬ中、番組の予告で再び李連杰(リー・リンチェイ)の主演作が放送されると知らされた私は、狂喜しながら次回を待ちました。しかし、そこで流されたのはシリーズ第3作の『天地争霸』では無かったのです。
舞台は中国ではなくアメリカ。唐突に始まるインディアンの襲撃や、弟子役の人が変わっている点など、『天地大乱』から様変わりした雰囲気に私は戸惑いました。
 それもそのはず、この作品はシリーズ最終作となる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲』であり、監督は徐克(ツィ・ハーク)から洪金寶(サモ・ハン・キンポー)に交代しています。
梁寛役の莫少聰(マックス・モク)は降板し、代わりに『天地争霸』から仲間入りした鬼脚七役の熊欣欣(チョン・シンシン)が登場してますが、そもそも『天地争霸』を見ていない私には理解が追い付きません。
 ストーリーのテンポや演出も変容しており、『天地大乱』と同じノリを期待していた私は「見たかったのはコレじゃない…」と嘆いたのを覚えています(苦笑
今にして思えば『天地風雲』も悪い作品ではないんですが、当時の私にとっては『天地大乱』こそが基準であり、同作への思いはますます強まっていきました。

 かくしてテレビでの李連杰特集は終わり、もどかしい気分を抱えた私は親の勧めでレンタルビデオ店を利用し、そこで『天地大乱』と再会を果たします。
しかも、嬉しいことにレンタルしたビデオは吹き替え版で、担当している声優は池田秀一を始めとした知っている人ばかり。この事が『天地大乱』を、そしてワンチャイシリーズに私が手を出す要因のひとつとなりました。
 当時、ネットが普及したことでワンチャイについて下調べしていた私は、ビデオで第3作となっている『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』が本当の第1作だと知り、まずはこれから見ることにします。
『天地黎明』は低迷していた李連杰がカムバックを果たした作品で、香港では大ヒットを記録。欧米列強の介入によって揺れる中国を舞台に、李連杰演じる黄飛鴻が不当な暴力に立ち向かう姿を描いています。
その内容はかなり深刻で、爽快感を全面に押し出していた『天地大乱』とはタッチがやや違いました。ですが、私は奥深いストーリーと奔放なアクションに感嘆し、次に第3作へ手を出しました。

 続く『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地争霸』は、列強各国に国威を知らしめようとした西太后が「獅子舞大会で連中をビビらせよう!」などと言い出したせいで、北京の武術門派がとばっちりを受けるお話です。
物語はロシアによる暗殺事件、黄飛鴻と十三姨の恋愛模様、先述した鬼脚七の登場などイベントが多く、こちらも見応え十分。ただ、武術指導が元彬(ユン・ブン)に交代しており、アクションのタッチは少々違います。
ワイヤーで豪快に飛ばす元彬の作風は荒々しい面が目立つものの、鬼脚七の変態的な足技パフォーマンスや獅子舞合戦は迫力十分。ただ、やはり獅子舞よりも素手での勝負が見たかったかなぁ…。

 と、ここで問題が持ち上がります。この『天地争霸』で李連杰と徐克はコンビを解消したため、以後は黄飛鴻を趙文卓(ヴィンセント・チャオ)が演じるようになったのです。正直、この主役交代には凄く不安を覚えました。
そんな第4作の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナIV 天地霸王』は、第3作の直接的な続編となっていて、再び始まる獅子舞合戦で死闘が展開されます。
 おなじみのテーマソングもアレンジ版になり、十三姨役の關之琳(ロザムンド・クワン)も降板するなど、この作品は他にも不安要素が山積していました。しかし、私としては及第点の出来だったと思います。
確かにストーリーはグレードダウンしているし、アクションも雑になっているんですが、列強各国のバケモノ獅子舞軍団や、敵の用心棒として登場する周比利(ビリー・チョウ)のインパクトが凄く、特に周比利の馬殴りには痺れました(笑
ところが、第5作の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナV 天地撃攘』は關之琳や弟子たちが復帰するものの、こちらは単なる海賊退治というローカルさ。アクションは悪くないものの、単純すぎるストーリーに不満を覚えたものです…。

 そんなわけで、ここまで本家のワンチャイシリーズを見た思い出を振り返ってみましたが、まだまだ話の種は尽きません。本当なら以後のエピソードも一気に書き切ってしまいたかったのですが、これ以上は長くなりすぎるので一旦区切りたいと思います。
さて次回は、今度こそこれでラスト! ワンチャイシリーズの亜流や番外編との出会い、そしてシリーズに挫折しかけた事件(爆)について余すことなく語り尽くします!
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Once Upon a Time(3)物語の軌跡・後編

2017-05-26 23:54:55 | 李連杰(ジェット・リー)
 さて、前回『ワンチャイ 天地大乱』の物語をかいつまんで取り上げましたが、残すパートは李連杰(リー・リンチェイ)演じる黄飛鴻と、甄子丹(ドニー・イェン)扮する納蘭元述提督の決戦…そしてラストのみとなりました。
しかし今回はその前に、本作の影の主役であり悲劇のキャラクターである納蘭提督に、今一度スポットを当ててみたいと思います。納蘭提督は広東の政府高官で、立ち位置的には『天地黎明』の巖振束に当たります。
 彼は白蓮教への対策に追われるシーンで初登場しますが、戦況はやや押され気味。そんな中、孫文を中心とした革命勢力の動きも活発になり、彼は総督へ会いに英国領事館へ向かいます。
欧米列強による侵攻、次々とテロを引き起こす白蓮教、そして国勢を乱す革命勢力…納蘭提督はこれらの難題に苦慮していました。ところが、総督は革命勢力への応急的な対策として、英国に取り入って助力を仰ごうとするのです。

 劇中の時代設定は下関条約が締結されている事、陸皓東の没年などから推察すると1895年でほぼ間違いないでしょう。私はあまり歴史に詳しくありませんが、当時は西洋諸国との間で何度となく戦争や衝突が起きていました。
三国干渉を経て、列強各国が中国の土地を狙うのも時間の問題……後ろ盾を得ようとする総督の考えも理解できますが、そうした状況を国防の最前線で見ていた納蘭提督は、非常に釈然としない様子で見送っています。
なお余談ですが、総督を演じたのは『天地黎明』で巖振束役だった任世官(ニン・シークァン)で、出番はここだけのゲスト出演。かつて時代に翻弄された彼が、同じ立場の納蘭提督を翻弄する側に回るという配役には、因縁めいたものを感じてしまいます。

 その後、鍛錬する納蘭提督のもとに黄飛鴻が訪れます。一瞥もせずに彼の実力を見抜いた納蘭提督は、おもむろに棍を渡して棒術合戦を挑み、壮絶な打ち合いの末に実力を認めます(その際の賞賛は虚言であった事が後に解りますが)。
心の休まる間のなかった納蘭提督にとって、自分に匹敵する技量の持ち主である黄飛鴻との出会いは、貴重な憩いの時間となったでしょう。その証拠に、彼は子供たちを保護したくてもできないという、自分の辛い身上を吐露していました。
本当ならもっと親睦を深め、国家や人民のために意見を求めたかったと思われます。ですが、時代の流れは彼に安息の機会を与えません。それまで正義のために滅私奉公を続けてきた彼が、修羅へと豹変する事件が起きてしまうのです。

 白蓮教の外国商人襲撃が起き、孫文逮捕のために英国領事館へ踏み込んだ納蘭提督。しかし彼は孫文を僅差で逃し、領事館の捜索も治外法権により中断せざるを得なくなります。あの孫文の同志である陸皓東が、すぐ間近にいたというのに…。
立ちはだかる列強国の壁、それに守られた革命家、そして世相を乱す白蓮教。この時、納蘭提督の前には今まで山積していたすべての障害が立ちはだかっていました。そして、もう少しで果たせた正義を寸前で打ち砕いたのです。
 この事が、納蘭提督の悶々とした感情を爆発させてしまいます。部下に「領事館前の電柱を切り倒せ」と命じた直後の、あの冷たい眼光が全てを物語っているといえるでしょう。
彼はイギリス側の狙いが中国の混乱にあると断じ、白蓮教に領事館を襲撃させると、混乱に乗じて強制捜査を敢行。その目論見に気付いた領事を、部下が見ている目の前で殺害します。
 この時、領事が「あんたの魂胆は読めたぞ!白蓮教に好き勝手させといて…」と言ってますが、納蘭提督にとって最も“好き勝手”しているのは中国を食い物にしている列強国に他ならず、内心は“お前が言うな”と思っていたはずです。
その後に彼が発した「ここは俺たちの国なんだ」という言葉からは、我々には想像もつかないような怨嗟の感情と、積年の思いがひしひしと伝わってきます。

 かくして、信念を踏みにじられた男は正義を暴走させ、強引な手段で陸皓東を追跡。そこに黄飛鴻が立ちはだかり、かつて共に平和を願っていた者同士が戦うという、過酷なシチュエーションへと至ります。
ここから始まる最終決戦は、直前の李連杰VS熊欣欣とは真逆のウェポンバトルとなっており、最初の棒術合戦が伏線となっているのがポイント。肉体的なポテンシャルが全盛期にあった李連杰と甄子丹の動きも凄まじく、技の応酬も驚くほど華麗でした。
 上へ下へと変わる立ち位置、竹を2本ずつ使っての強烈な打ち合いなど、縦横無尽に展開されるバトルは壮絶の一言に尽きます。さらにここで納蘭提督が“布棍”という奥の手を持ち出し、戦いは激しさを増していくのです。
丁々発止の戦いから最後に迎える劇的な決着に至るまで、この一戦はワイヤー古装片というジャンルの頂点といえる名勝負…といっても過言ではないでしょう。

 その後、脱出する船に乗った孫文と十三姨に、すんでのところで間に合わなかった黄飛鴻たちは陸皓東から託されたものを渡します。初見の際は解らなかったのですが、これは中国同盟会の旗として陸皓東が考案した青天白日旗というものです。
現在は使用されていませんが、のちにこれが中華民国の国旗の元となりました。そして国旗とは国家の象徴であり、ひいては国そのものと言えるでしょう。
 つまり黄飛鴻はこの戦いで中国という国家を守り抜き、その意思は国父である孫文へと受け継がれた…本作のラストは、そういうふうに捉えることも出来ます。
そうなると黄飛鴻は中華民国の、納蘭提督は滅びゆく清朝のメタファーにも見えてきます。そして、信じる正義が違っただけで破滅の道を辿った納蘭提督からは、『天地黎明』の巖振束と同じ“時代の流れに逆らえない儚さ”を感じてなりません…。

 さて、この力強いメッセージ性が功を奏し、本作は『天地黎明』に次ぐ大ヒットを記録。李連杰と監督の徐克(ツイ・ハーク)の間ではゴタゴタがあったものの、更なる続編の企画が持ち上がります。
その後もシリーズは続き、多くの亜流作品が生まれることになるのですが、私はそれを時系列順に視聴していったわけではありません。『天地大乱』と出会った私は、次に放送された作品も続けてチェックしましたが、それは『天地争霸』ではなかったのです。
そんなわけで、ちょっと更新ペースがメチャクチャだったこの特集(汗)もいよいよ大詰め。次回『天地大乱』以降の私が出会ったシリーズのあれこれと、その他の香港映画との出会いについて語ります!
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Once Upon a Time(2)物語の軌跡・前編

2017-05-20 23:48:35 | 李連杰(ジェット・リー)
 まず最初に映し出されるのは、「天地乱れ腐敗し切った、この時代に<正義>を貫く一人の男が立ち向かう その名は「黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)」実在の英雄である…」という紹介文。そこから画面は暗転し、提灯で暗がりを照らす少女が現れる。
その小さな姿は異様な集団の中に消え、怪しげな儀式と共に西洋人の排斥が声高に訴えられていく。焼き尽くされる外国製の家財道具や動物、それを見て不気味な薄ら笑いを浮かべる先程の少女…。
しかし、こうした一連の禍々しさを払拭するかのように、勇壮な楽曲とタイトルが画面に叩き付けられる―――“黄飛鴻之二 男兒當自強”と。

 というわけで、少々間が空いてしまいましたが、今回は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』のストーリーをダイジェスト的に紹介しつつ、ぼちぼち考察も絡めながら振り返っていきましょう。
本作は大ヒットを記録した『ワンチャイ/天地黎明』の続編にあたり、黄飛鴻を演じた李連杰(リー・リンチェイ)、十三姨に扮する關之琳(ロザムンド・クワン)はそのまま続投。梁寛は元彪(ユン・ピョウ)から莫少聰(マックス・モク)に交代しています。
監督の徐克(ツィ・ハーク)、武術指導の袁和平(ユエン・ウーピン)といった豪華な面々が名を連ねるオープニングが終わると、広州に移動する機関車の中で黄飛鴻一行による微笑ましいやりとりが始まります。

 医学会のために広州へ到着した彼らは、そこで暗躍する白蓮教と接触。いきなり大立ち回りを演じますが、ここで白蓮教を応援していたはずの群衆がいつの間にか黄飛鴻を支持し、戦いの後に教えを請おうとさえするのです。
初見の際は「調子がいい人たちだなぁ」と思っていましたが、彼らの置かれた状況を読み解くと、これは当然の反応だったことが解ってきます。
 まず広州が映し出された際、最初に描かれたのは到着した黄飛鴻一行ではなく、そこで暮らす住民たちでした。下関条約に反対してデモを行う人もいれば、台湾がどこにあるのか知らず、それよりも日々の暮らしの方が大事な人など、その姿はさまざまです。
この様子から、住民たちの全てが政治に関心を持っているわけではない、という事が解ります。しかし、そうした意識の違う人々の間で一貫していたのが、外国人を優遇する政府に対する不信感でした。

 だからこそ彼らは白蓮教を応援しているのですが、決して全面的に支持していた訳ではありません。劇中、黄飛鴻を泊めた宿屋の主人は白蓮教とトラブルになる事を恐れ、外国語学校の子供を保護するのに反対していました。
また、その子供たちを探す姜大衛(デビッド・チャン)演じる陸皓東に「俺たち面倒な事は御免なんだ」と告げる人もおり、人々にとって白蓮教は不満を代弁してくれる存在であるとともに、近寄りがたい集団であったことが伺えます。
一方、黄飛鴻は中国を代表する高名な武術家で、そのネームバリューは白蓮教よりもはるかに上。先の一戦で黄飛鴻と白蓮教が戦い始めた時、人々が前者の応援をしたのは無理からぬ事だったのです。

 その頃、広州では革命の気運が高まり、甄子丹(ドニー・イェン)扮する納蘭元述提督が孫文の逮捕に乗り出します(この甄子丹に関してもいろいろ考察したい点がありますが、こちらは次回に譲りたいと思います)。
黄飛鴻一行は治安の悪い広州から発とうとするも、白蓮教の襲撃によって焼け出された外国語学校の子供たちを保護。納蘭提督に助けを求めますが、紆余曲折を経てイギリス領事館に身を寄せます。
このあたりから物語は白蓮教と黄飛鴻の全面対決に発展し、アクション的な見所が一気に多くなるのですが、ここで保護された子供たちの存在が重要になってきます。

 作中、白蓮教の襲撃によって傷ついた西洋人を救うべく、再会した孫文・陸皓東・黄飛鴻は懸命の治療に当たります。それを子供たちが見つめるというシーンがあるんですが、このカットがなんとも象徴的で感慨深いものとなっていました。
1人は近代中国の礎を作った人物、もう1人はその活躍を支えた革命家、そして最後の1人は天下に轟く伝説の武術家。そんな中国を象徴する人々の献身を見守るのは、次の世代を担っていく子供たち…。
前作の『天地黎明』では、流れゆく時代の変化を「拳法で銃には勝てない」という言葉で表現していました。その一方で、本作は時代の中で継承される思いを描いており、前作とはまた違ったメッセージを打ち出しているのです。

 やがて白蓮教によって領事館が襲われ、その混乱に乗じて納蘭提督が侵入。子供たちは革命派である陸皓東と別れざるを得なくなり、ここでさよならを言いたくても言えないという、実に切ない別離が描かれています。
その後、この子供たちがどうなったかは解りません。保護を約束した納蘭提督はのちに死ぬため、彼らは混乱した時代の中に放り出されてしまったと思われます。しかし、きっと彼らは陸皓東たちの意思を継ぎ、新たな時代を背負うために生き抜いた事でしょう。

 陸皓東とともに領事館を脱出した黄飛鴻は、ついに白蓮教との決戦に挑みます。ここからのバトルは効果的なワイヤーワークと目まぐるしい殺陣の数々、そして李連杰の堂々たる存在感によって、最高のアクションシーンとなっていました。
一時は物量に押されかけるも、神を盲信する連中には効果てきめんのハッタリでこれを退け、大師である熊欣欣(チョン・シンシン)を引きずり出します。ここでは机や布の祭壇を舞台に、重力無視の壮絶な接戦が展開。こちらも素晴らしい勝負です。
特に李連杰が決める無影脚の凄まじさたるや、ワイヤー古装片の中でも随一の名場面といっても過言ではありません。決着の付け方についても、まるで御仏の手によって罰されたかのような表現となっており、どこか幻想的ですらあります。

 が、本当のクライマックスはここから。なんとか白蓮教を下した黄飛鴻たちは、市場に隠された革命派の名簿を確保しようとしますが、そこに納蘭提督が立ちはだかるのです。
陸皓東は凶弾に倒れ、最後まで革命と孫文の身を案じながら死亡。託された思いを守ろうとする黄飛鴻と、恐るべき武術を秘めた納蘭提督との死力を尽くした戦いが、いま幕を開けます。
まさに本作最大の見どころとなるラストバトルですが、残念ながら今回はここまで。次回は終幕までのストーリーと今回拾えなかった細々としたネタ、そして大幅に割愛してしまった甄子丹演じる納蘭提督についてジックリと迫ります!
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Once Upon a Time(1)全てを変えた『天地大乱』

2017-05-05 23:05:48 | 李連杰(ジェット・リー)
 2000年代初頭、ある映画がBS2(現・BSプレミアム)で放映されました。その作品は、流れるようなアクションとダイナミックな演出に彩られ、ひとりの少年に鮮烈な印象を叩き付けたのです。
映画の題名は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』。当時、李連杰(リー・リンチェイ)すら知らなかった私が一瞬にして魅了された作品で、この出来事が香港映画ファンになる切っ掛けとなりました。
 今月、当ブログは開設10年目を迎えますが、ここまで続けてこられたのも『天地大乱』との出会いがあったからこそ…といっても過言ではありません。
そこで今月は、『天地大乱』とそれについての回顧録、そして関連作品との思い出について振り返っていきたいと思います。

 さて初回となる今日は、私が『天地大乱』と出会うまでの出来事と、なぜ同作にハマってしまったのかについてお話します。
そもそも私が初めて香港映画を見たのは、『天地大乱』よりもずっと前の80年代末期でした。小さいころの事なのでうろ覚えなんですが、確か『サンダーアーム/龍兄虎弟』と『ポリス・ストーリー/香港国際警察』のどちらかだったはずです。
 この2本は成龍(ジャッキー・チェン)が仕掛けた渾身のアクション大作で、テレビ放送で視聴した私は過激なファイトに度肝を抜かれました。
しかし、当時はマンガを描くことに熱中していたため、香港映画に傾倒することはありませんでした。あくまでジャッキーは「アクションスターのひとり」という認識であり、この頃は李小龍(ブルース・リー)や少林寺の存在さえ知らなかったのです。
 また、テレビでやってるジャッキー作品はたまに見ていましたが、放送されるのは80年代末期から製作された現代アクションばかり。そのため、クラシカルな拳シリーズを体験することは無かった…と記憶しています。
こうして現代アクションが中心のジャッキー作品を見続けた私は、そういった作品が香港映画なのだという少々偏った認識を抱くようになり、後にそれが『天地大乱』との出会いに影響を及ぼすことになるのです。

 時は流れて2000年代…中学生になった私は、休日に暇を持て余していました。その際、なんの気なしに点けたテレビで放送していた『ファイナル・ファイター 鉄拳英雄』と遭遇します。
この作品は李連杰の監督主演作ですが、なんとか最後まで見たものの、あまりに面白くないストーリーにガックリ。とりあえず口直しにチャンネルを変えようとしました。
―――その直前、我が目を疑うような光景がブラウン管に映し出されます。
 空中を飛び回る人間!
 異様な風貌の登場人物たち!
 エキゾチックな世界観!
 恐ろしい速度で放たれる蹴り!
それは次回放送する作品の予告であり、そこで紹介されていた映画こそが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』だったのです。
私は直前まで見ていた『鉄拳英雄』との激しい落差と、自分の知る香港映画=ジャッキー作品とは全く違うイメージに、ただただ驚愕するしかありませんでした。

 自らの価値観を揺さぶられ、同時に得体の知れない興奮を覚えた私は、その日から頭の中が『天地大乱』で一杯になってしまいました。そして数日後、私は文頭で述べたように『天地大乱』の衝撃を真正面から受けることになります。
そこには、単にアクションだけを楽しめばよかった(と思っていた)ジャッキー作品のような軽妙さは無く、動乱の時代を描いた重厚なストーリーが展開されていました。
 また、それまで歴史の授業で学ぶ程度だった中国の歴史的な背景、文化や慣習などがビジュアル全体に広がっており、そうした点もこれまで見たジャッキー作品には無かった(気付かなかった)点です。
押し寄せるカルチャーギャップの連続に「これがジャッキー作品と同じ香港映画なの?」と戸惑いつつも、私は濃密なストーリーとアクションに酔いしれました。

 その後、すっかり『天地大乱』に心酔した私は、主人公の黄飛鴻が実在の人物だったという事実、李連杰の吹き替えがガンダムでお馴染みの池田秀一氏だったことを知り、より同作を知りたいという欲求に駆られます。
そう、これが自分にとって、香港映画へ本格的な興味を示す第一歩となったのです。あれから20年近い年月が経ち、アクションムービーに対する興味は増すばかりですが、『天地大乱』と出会わなければそれも始まらなかった―――と言えるでしょう。
しかし『天地大乱』の魅力を語り尽くすには、まだまだ文面が足りません。次回はストーリーをダイジェストで追いながら、より詳細に『天地大乱』を考察してみたいと思います!
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更新履歴(2017年/4月)

2017-05-01 13:24:38 | Weblog
 4月は小休止ということで更新ペースも緩やかでしたが、今月からはまた特集月間に戻ります。その第一弾となる5月は、当ブログが開設されて10年目となる節目の月…それを記念して、従来とは違った特集を組みたいと思っています。
題して、<Once Upon a Time>! 私が香港映画を好きになるきっかけとなった『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』と、それに関連した話題を回顧するという企画です。
今回は連続した作品紹介ではなく、『天地大乱』の思い出や考察をじっくりと語りつつ、その他のシリーズについての悲喜こもごもを振り返っていきたいと考えています。自分でもどんな方向に着地するのかは解りませんが(爆)、どうかご期待ください!


04/04 更新履歴(2017年/3月)
04/06 『破門組』
04/11 『ビリー'S GUN & FIGHT!』
04/22 『シルバーホーク』
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