功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ザ・セブン・グランド・マスター(虎豹龍蛇鷹)』

2018-02-18 23:30:16 | カンフー映画:傑作
「ザ・セブン・グランド・マスター」
原題:虎豹龍蛇鷹/虎豹龍蛇鷹絶拳
英題:The 7 Grandmasters
製作:1978年

▼今回も引き続き郭南宏(ジョセフ・クオ)作品の紹介ですが、こちらはコメディ功夫片ではありません。主人公のルックスや明朗な性格も、『酔拳』というよりは『蔡李佛小子』や『洪拳小子』などからの影響を感じます。
作品としては実にオーソドックスな功夫片であり、郭南宏らしいサプライズ展開も用意されていますが、注目すべきは武術指導に元奎(コーリー・ユエン)&袁祥仁(ユエン・チョンヤン)の両名がクレジットされている点です。
この2人は当時の袁家班における中心的存在で、彼らは同年に郭南宏の『ドラゴン太極拳』へ参加したばかり。キャストも一部が共通しており、いわば本作は『ドラゴン太極拳』の姉妹作といっても過言ではありません。

■正義門と呼ばれる道場を主宰し、高名な拳法家でもある龍世家(ジャック・ロン)は人々から慕われていた。彼はある祝祭で看板を授与されるが、そこで何者かに挑戦状?を叩き付けられる。
これを重く見た龍世家は、旅に出て各地の達人たちと戦うことを決意。龍冠武(マーク・ロン)を筆頭とした3人の高弟、娘の燕南希(ナンシー・イェン)を連れ、まずは龍飛(ロン・フェイ)と雌雄を決した。
 が、龍飛は勝負の直後に不審な死を遂げ、残された門下生たちは龍世家を怪しむが…。一方、当の龍世家はさまざまな達人と戦っていたが、そこに奇妙な青年・李藝民(サイモン・リー)が付いて回るようになる。
彼は何度も弟子入りを志願し、ドジを踏んでは突っぱねられ続けた。しかし、卑怯な武器の達人・元奎が放った刺客から龍世家を守ろうとしたことで、ようやく正式に弟子入りを認められるのだった。
 なにかと龍冠武から嫌がらせを受ける李藝民であったが、向上心の強い彼はメキメキと腕を上げ、いつしか高弟たちをも追い抜いていく。そして、弟子を動員した対抗戦に勝利した龍世家は、足かけ二年に及んだ旅を終え、ようやく正義門へと帰郷した。
ところが物語は急転直下の事態を見せる。実は李藝民は父親の仇討ちを誓っており、彼の父親こそ序盤で死んだ龍飛だったのである。李藝民は父殺しの容疑者・龍世家を倒すため、あえて彼に弟子入りして拳法を学んでいたのだ。
「待て、龍飛を殺したのは割って入った別の男だ!」「問答無用!いざ尋常に勝負だ!」 かくして、ここに望まざる師弟対決が始まるのだが…。

▲この作品は李藝民が主人公とされていますが、本格的に彼が登場するのは序盤を過ぎてから。全編に渡ってアクションシーンを牽引するのは龍世家であり、見方を変えれば彼こそが主役と言ってもいいでしょう。
龍世家といえば、台湾功夫片おなじみの顔であり、郭南宏の常連俳優としても知られた存在です。素面ではいかにもチンピラ風のルックス(爆)ですが、老けメイクをすると一転して温和な表情となり、温かみのある師匠役を得意としてきました。
 本作は、そんな彼が初めて師匠役を演じた作品のひとつで(同年の『四兩搏千斤』も師匠役ですが、主人公を導くキャラクターではありません)、郭南宏も彼を猛プッシュしている様子が窺えます。
龍世家自身も、時に厳しく、時に優しい師匠役を好演。アクションスターとしては自分よりも大きい役を演じ、ショウ・ブラザースで活躍してきた李藝民に負けじと、迫真の立ち回りを見せていました。

 アクションの出来も素晴らしく、袁家班タッチのスピーディーなバトルが楽しめます。主役サイド以外では、猿拳の達人を演じた錢月笙(チェン・ユーサン)、対抗戦で龍冠武を完封した馬金谷、多様な武器を操る元奎の動きに目を引かれます。
もちろん、彼らに対抗する李藝民たちの動作もキビキビとしており、大胆かつ流れるようなファイトシーンは『ドラゴン太極拳』にも勝るとも劣りません。不満らしい不満といえば、女ドラゴンの燕南希があまり目立ってない事ぐらいでしょうか。
 ラストの師弟対決では、ちゃんと両者が同じ拳法を使用し、続くVS徐忠信(アラン・ツィー)でもスタイルが統一されています。功夫片の中には、場当たり的な殺陣でお茶を濁すような作品もありますが、本作は殺陣への配慮が行き届いた逸品と断言できます。
ダイナミックなアクションと意外なストーリーで楽しませる台湾功夫片の傑作。『ドラゴン太極拳』が好きな人はもちろん、私のように師匠役の龍世家に安心感が持てる人には、是非ともオススメの作品です!(笑
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『ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻』

2018-02-16 16:17:03 | カンフー映画:佳作
「ドラゴンズ・クロウ 五爪十八翻」
五爪十八翻/龍拳蛇刀
英題:Dragon's Claws
製作:1979年

▼こんにちは、今年から仕事のシフトが変わって夜勤の数が1.5倍になった龍争こ門です(げっそり)。今年から心機一転を誓った矢先の停滞ですが、忙しかったのは去年も同じ。新作のチェックも欠かしていないので、なんとか更新や特集を続けていきたいと思っています。
さて話は変わりますが、ひとくちにカンフー映画と言っても、年代や流行によって様々なタイプが存在します。その中で私がお気に入りを挙げるとするなら、やはり70年代末期~80年代前半にかけて量産されたコメディ功夫片を推したいと思います。
 『神打』で劉家良(ラウ・カーリョン)によって開拓されたコメディ功夫片は、『酔拳』『蛇拳』の大ヒットで数えきれないほどの亜流作品が作られました。私はこの時期の作品が好きで、ちょっと前に関連した特集を組んだ事もあります。
この手の亜流作品は、やんちゃ坊主に酔いどれ師匠のような“お約束”が多々あり、そのクオリティは製作側の判断に左右されます。果たしてギャグで押し切るのか、それともパターンを外すのか、或いはアクションに全てを賭けるのか、それとも…。
本作はそうしたコメディ功夫片の1つで、『少林寺への道』の郭南宏(ジョセフ・クォ)が製作・監督・脚本の三役を担当。ただし、作品としては執行導演を務めた魯俊谷のカラーが強く、功夫アクション尽くしの一篇となっています。

劉家勇は龍形門を率いる劉鶴年の一人息子。今日も熱心な父を横目に怠けていたが、突如として劉鶴年の体調が急変。すぐに道場へと戻るも、そこには恐るべき龍拳の使い手・黄正利(ウォン・チェン・リー)が待っていた。
この男、かつては劉鶴年と同じ龍形門の門弟であり、劉鶴年の妻・元秋(ユン・チウ)とも浅からぬ関係にあったという。黄正利は挑発的な態度を見せて去ったが、直後に現れた小汚い薬売り・白沙力のせいで珍騒動が持ち上がる。
 実は劉鶴年には後ろめたい過去があり、龍形門の跡取り娘であった元秋を手籠めにし、そのまま道場主の座に納まっていたのである。彼は抵抗した元秋によって死に至る拳を受け、今やその命は風前の灯であった。
その後、部下の朱鐵和・陳樓を引き連れて現れた黄正利は、劉鶴年を決闘の末に撃破。冴えない道場主はそのまま死亡し、その証であるメダルも奪われる…のだが、いつの間にかメダルは偽物にすり替わっていた。
 「本物はどこだ!」と迫る黄正利に刃向った劉家勇は、あろうことか父と同じ死に至る拳を受けてしまう。元秋は一門を解散させ、劉家勇の療養と修行の練り直しを行うべく、人里離れたあばら家に居を移した。
しばらくは親子によるマンツーマンの修行が続くが、その間にも黄正利一派は龍形門の門下生を次々と襲撃。動くことの出来ない劉家勇は苛立ちを覚えていたが、友人の韓國材(ハン・クォーツァイ)が妙に強くなっていることに気付く。
 彼が言うには、あの白沙力から拳法を習っているらしい。劉家勇は詫びを入れて弟子入り志願し、彼の身の上を察した白沙力は治療と修行を施していった。いつしか見違えるほど強くなった息子を見た元秋は、伝説の拳士=白沙力の存在を確証する。
その後、修行を完遂した劉家勇は本物のメダルを白沙力から渡される(前半の珍騒動のドサクサですり替えていた)が、敵の追及によって元秋と韓國材が犠牲となっていた。彼は朱鐵和と陳樓を倒し、因縁の黄正利と最後の決戦に臨むが…!?

▲ご覧の様にストーリーはかなり深刻で、主人公と師匠以外の登場人物はほとんど死亡。そこそこ笑えるシーンはあるんですが、話の根幹がまったくコメディ向きではないため、ストレートに楽しめる作品にはなっていません。
白沙力がメダルをすり替えていた件に関しても、黄正利の野望を防ぐという理由は分かるんですが、おかげで何の罪もない門下生たちが犠牲となっています。魯俊谷のコメディ功夫片は出来にムラがあるんですが、本作も例に漏れず…といったところでしょうか。
 とはいえ、李超俊(本作では師父仔名義)によって振り付けられた殺陣は実にアグレッシブで、話の粗を補って余りあるアクションを構築していました。
本作のファイトシーンは役者の長所を引き出すことに特化しており、劉家勇ならキビキビとした拳技を、元秋なら京劇仕込みの軽業を、黄正利なら蹴り技を中心にスタイルを設定。この方針は最初から最後まで徹底しており、アクションへの拘りを感じさせます。
 彼らが絡むバトルは質が高く、単なる小競り合いでも丁々発止の戦いが堪能できます。特にラストバトルでは、黄正利の猛攻に苦戦しつつも、白沙力から学んだ龍拳と元秋に教わった点穴を駆使し、トリッキーな戦法で戦う劉家勇の姿が実に勇ましく見えました。
話については難がありますが、コメディ功夫片の最盛期に作られただけあって、アクションの出来は二重丸。劉家勇&黄正利といえば『洪拳大師』という作品でも組んでいるようなので、コチラもちょっと気になりますね。
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『カンフー・ヨガ』

2018-01-20 20:32:16 | 成龍(ジャッキー・チェン)
「カンフー・ヨガ」
原題:功夫瑜伽/功夫瑜珈/神話2
英題:Kung Fu Yoga
製作:2017年

▼さて本日は久々…というか当ブログ初となるかもしれない、現在公開中の最新作をご紹介しましょう。なお、当ブログの記事は基本的にストーリーを追っていくスタイルなので、思いっきりネタバレをかましています。気になる方はご注意を。
この作品は、成龍(ジャッキー・チェン)が主演・製作総指揮・動作設計を兼ね、いつもの楽しいコミック・カンフーが満載の娯楽作に仕上がっています。タイと中国の合作という事もあり、キャストやスタッフは両国の人員が動員されていました。
 内容はジャッキーお得意の秘宝争奪戦で、『プロジェクト・イーグル』と『ライジング・ドラゴン』を足して2で割ったようなもの。この例えでは何のこっちゃと思われるでしょうが、ホントにそういう話なのだから仕方ありません(爆
しかし懸念すべき事項もあり、お宝探しで監督が唐季禮(スタンリー・トン)とくれば、どうしてもイマイチになった『神話』を思い出してしまいます。全体の雰囲気も個人的には乗れなかった『ライジング~』に近く、最初は期待できなかったのですが…。

■物語は、いきなり『真・三國無双』っぽいCGアニメ(!)でスタート。中国の考古学者であるジャッキーが、古代インドで反乱から落ち延びた軍勢が“秘宝”を持ち去り、崑崙山脈で消えたという伝説を語る場面から始まる。
そこにインドの美人学者(ディシャ・パタニ)が現れ、古ぼけた地図の鑑定を依頼。そこから例の伝説にまつわる“秘宝”の存在が浮上し、ジャッキーは助手の張藝興(レイ)ムチミヤ、そしてディシャとその助手を引き連れて崑崙山脈に向かった。
 トレジャーハンターの李治廷(アーリフ・リー)、掘削技師の曾志偉(エリック・ツァン)の協力により、一行は氷河の中に閉じ込められた秘宝を発見する。しかし、そこにソーヌー・スード率いる謎の一団が現れ、「秘宝を渡せ」と迫ってきた。
争奪戦の末、連中が求めていた“秘宝=シヴァの目”は李治廷が持ち去ってしまい、ジャッキーは大怪我を負うはめに。このままでは秘宝を盗んだ罪に問われかねないため、一行は“シヴァの目”が出品されるドバイのオークションへと急いだ。
 激しい入札合戦の結果、競り負けたソーヌーは力づくで秘宝を奪おうとする。対するジャッキーは高級車を乗り回して追いかけるが、最後にお宝を持ち去ったのはソーヌーではなく、なんとディシャだった。
実は彼女の正体は、秘宝の持ち主である古代インド王族の子孫で、ソーヌーは反乱を起こした一族の末裔だったのだ。“シヴァの目”は世界を征する財宝の鍵であり、改めてジャッキーたちは宝探しを請け負う事となる。
だが、あくどいソーヌーは李治廷たちを人質に取り、自らの指図で宝探しを始めた。やむなくジャッキーは従うが、果たして財宝の正体とは…!?

▲先述の通り、本作はドバイやインドで大々的なロケーションが行われ、巨大なセットでスケールの大きいアクションが展開されています。CGでの装飾も多く、派手さという点ではジャッキー作品でも最大級の規模と言えるでしょう。
しかし本作は、あまりにも映像の情報量が多く、視覚的に休まる暇がありません。映し出されるのは大都市・ドデカい遺跡・煌びやかな宮殿など、とかく絢爛豪華なシチュエーションが続くのです。
どんなに美味い料理でも、一気に食べたら腹を壊してしまう…という例えを『上海13』の項で述べましたが、本作も画作りという点で同じ問題を起こしています。確かにゴージャスな雰囲気は出ているものの、眼が疲れて疲れて…(苦笑
 また、『ライジング・ドラゴン』と同様にセットの作り物っぽさが拭えず、ストーリーも雑な部分が目に付きます(氷河での戦いでは明らかに勝ってたのにいきなり縛られててビックリ・苦笑)。
キャラクターの描写も役割分担ができていなかったりと、他にもツッコミたいことは無数にある本作。とはいえ、ジャッキーの十八番であるコミカルなアクションは堪能できるし、とにかく話を盛り上げようという気概は十分に伝わってきます。

 確かにストーリーや演出は大味です。が、『サンダーアーム』のように女がらみでモタついたり、『プロジェクト・イーグル』のように人があっさり死ぬシーンは一切ありません。
いわば本作はジャッキーによる大掛かりなお祭りであり、観客にスリルと興奮を提供し、スカッと爽快に終われる作品を目指したのです。この目論見は見事に成功し、ハッピーすぎるラストには私も小躍りしたくなってしまいました(笑
 かつて彼は、『ライジング~』でも人死に描写を省き、過去の悲劇を乗り越えるハッピーな作品を目指しています。が、この時は主人公の人物像に感情移入がしづらく、ライバルが洒落にならない外道だったため、試みは達成できませんでした。
同じく秘宝争奪戦モノの『神話』もストーリーに未整理な箇所があり、もしかすると本作は『神話』と『ライジング~』の雪辱戦的な意味合いがあったのかもしれません。

 アクションについても殺伐さとは無縁で、前半ではジャッキーVS李治廷の戯れるような対決、環境を生かしたお得意の立ち回りが楽しめます。
羅禮賢(ブルース・ロー)の指導によるカーチェイスも、例によって高級車を使い潰す豪快なものとなっていますが、そこにライオンと同乗という捻った設定をプラス。あまりカーチェイスが好きではない私も、この工夫のおかげで楽しく見れました。
 最終決戦は派手なギミックこそ無いものの、ラスボスを演じたソーヌーの動きはなかなか悪くなく、ジャッキーと真っ向からタイマン勝負を展開! 主要なキャストも全員で立ち回り、こちらも楽しさを強調した作りとなっています。
常に新しいことへ挑戦し、演技派としても磨きを掛けつつあるジャッキーですが、どんなに変わった役柄を演じようと「観客に楽しんでもらいたい!」という主義は何十年も変わっていません。
本作は、そんな彼の観客に対するサービス精神…ひいてはエンターテイナーっぷりが最も開花した作品と言えます。近年の主演作では『ドラゴン・ブレイド』に次ぐ快作なので、是非とも劇場での視聴をオススメいたします!
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『水滸伝 決戦!白龍城』

2018-01-15 15:33:51 | カンフー映画:珍作
「水滸伝 決戦!白龍城」
「水滸伝 激戦!白龍城」
原題:李逵傅奇/黒旋風李逵
英題:Shui Hwu Legend/Black Whirlwind Li Kui
製作:2000年(1999年説あり)

●時は中国北宋時代の末期。黒旋風の異名で鳴らした豪傑・徐錦江(チョイ・カムコン)は、盗賊退治で賜った報奨金を哀れな未亡人・張[ロ含]に渡した。病弱な母親のため、彼は残った金で人参を買おうとするが、薬屋に安物の野草を掴まされてしまう。
その後、悶着を起こした徐錦江は出奔。江州で張[ロ含]と再会し、彼女の店に身を寄せる事となる。また、牢番の王建軍に気に入られて仕事を工面してもらったり、役人の林威(デビッド・ラム)と友情を築くなど、先行きは順風満帆に見えた。
 そんな中、江州の牢獄に梁山泊の中心人物・馬冠英が連行されてきた。徐錦江は王建軍を通じて彼と知り合うが、一方で純真さゆえに張[ロ含]の女心を理解できず、彼女を深く傷つけてしまう。
この状況に内心ほくそ笑んだのは、最初から張[ロ含]に目を付けていた林威だった。彼は2人の間を巧妙に立ち回り、徐錦江を言いくるめて自分と彼女の結婚を了承させた。だが、張[ロ含]は未だに徐錦江を慕っており、激怒した林威は何度となく暴力を振るった。
 さらに林威は、馬冠英が酔いに任せて書いた詩を謀反の証拠とし、梁山泊に助力を仰いだ王建軍ともども逮捕してしまう。徐錦江も捕縛され、刑場に引きずり出された馬冠英と王建軍の命運もこれまでか…と思われたその時、梁山泊の仲間たちが駆けつけた!
なんとか間に合った徐錦江の加勢もあり、江州からの脱出に成功した梁山泊一同。だが、張[ロ含]を助けに舞い戻った徐錦江の前に、卑劣な林威が立ちはだかる。果たして、決戦の結末は…!?

 本作は歴史小説「水滸伝」をベースにした中国映画ですが、監督を『酔拳』の助監督だった蕭龍が担当し、徐錦江や林威など香港映画系のキャストが名を連ねています。
徐錦江といえば、香港映画ではアクの強いキャラクターに扮することが多く、そのインパクトは唯一無二。憎々しい看守や驚愕のポコチン頭など、ファンキーな役柄を数多く演じてきました。
そんな彼が、本作では粗野だけど義に厚い熱血漢・李逵を好演。ヒロインとのロマンスや斧を使ったアクションなど、いつもの徐錦江らしからぬ堂々としたヒーローっぷりを見せています(李逵の性格設定はややマイルドに改変されているようですが)。
 これだけでも香港映画迷は一見の価値あり!…と言えなくもありませんが、一方でストーリーは華やかさに欠けていました。確かに起承転結こそしっかりしているものの、作りが大人しすぎて面白味が薄まっているのです。
これが香港映画なら勇壮なBGMをバンバン流し、豪快な殺陣が展開され、素っ頓狂なギャグで彩られたでしょう。しかし本作にはそうしたエンタメ成分が不足しており、話が進んでも一向に盛り上がりません。
また、ドラマ面では宋江(馬冠英)や戴宗(王建軍)が単純なミスでピンチに陥るため、梁山泊がとても頼りなさげに見えてしまいます。ただし、こちらは原典に準じた展開のようなので、ここは割り切って受け入れるのが正解なのかもしれません。

 アクションについても先述の通り、規模としてはボチボチ止まり。最後の徐錦江VS林威は落下スタントを交えて頑張っていますが、際立って凄いようなバトルではありません。
中国武術チャンプの王建軍、孫二娘役の高原圭子(現在は染野行雄氏の秘書として活動している模様)は健闘しているものの、それぞれの担当するファイトシーンが短く、やや消化不良な結果に終わっています。
 私としては徐錦江が王建軍と組み、林威と知事役の杜玉明(末期の張徹作品に出演。現在も活躍中の武打星)を相手に2VS2のバトルを挑むかと思っていたので、これにはちょっと肩透かしを食らってしまいました。
作品としては薄味ですが、徐錦江によるヒーロー映画という意外性が大きな一品。ちなみに余談ですが、日本版ビデオは監督の欄にプロデューサーの名前を誤記したり、パッケージを飾っているのが王建軍だったりと、かなりアバウトな作りになっています(苦笑
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『ドーベルマン・コップ』

2018-01-12 14:53:04 | カンフー映画:佳作
「ドーベルマン・コップ」
原題:東方巨龍
英題:Ninjas, Condors 13/Knight Revenger/Ninja Condors
製作:1987年(1988年説あり)

●改めまして、新年明けましておめでとうございます! 去年は連続特集に追われて大忙しでしたが、今年はのんびりマイペース(でも更新はコンスタントに)に戻っていこうと思っています。
さて今年最初の更新は、戌年にちなんで犬にまつわる作品を紹介…したかったのですが、目ぼしい犬関連のタイトルはとっくの昔に紹介済み。なんとかコレクションを漁って出てきたのは本作だけでした(苦笑
 この作品は、台湾ニンジャ映画の代表格・羅鋭(アレクサンダー・ルー)の主演作で、こんな邦題ですが正真正銘のニンジャ映画です。キャストやスタッフも、そのほとんどが過去の羅鋭作品に関わった面々で構成されています。
ストーリーは父親を殺された主人公が暗殺組織に拾われ、足抜けを図って壮絶な死闘を展開するというもの。いわゆる“抜け忍”的な話ですが、よくよく考えると荒唐無稽な台湾ニンジャ映画の中では、最も本来の忍者に近いスタイルの作品なのかもしれません。
 しかし全体的に演出が粗く、人物関係の描き方はとても大雑把です。特に中盤でユージン・トーマスと羅鋭が初めて出会うシーンでは、適当な台詞回しのせいで2人がまったく初対面に見えないという珍事が起きていました。
とはいえ、羅鋭とユージンによるロードムービー的な要素は悪くないし、ストーリーも停滞せずテンポよく進みます。相変わらず血がドバドバ出てくる作風ではありますが、お色気シーンは控え目なのでクドさは感じませんでした。

 そして本作の売りとなるニンジャ・アクションですが、こちらもワイヤーワークや爆破スタントなどで彩られており、ハイテンションな立ち回りが堪能できます(武術指導は暗殺組織のナンバー2にも扮している李海興(アラン・リー)が担当)。
キビキビとした羅鋭の拳技、豪快な蹴りで迫るユージンに加え、組織のボスを演じたジョージ・ニコラスや師匠役の龍世家(ジャック・ロン)も大暴れ! ニンジャ的な立ち回りだけでなく、素面での格闘アクションも充実しています。
 一方、遊園地やスケートリンクでのニンジャ対決は実にシュールでしたが(笑)、クライマックスでは組織のアジトを舞台に銃撃戦が繰り広げられ、銃弾と手裏剣が飛び交う賑やかなアクションが炸裂していました。
最後は羅鋭VSジョージ、ユージンVS李海興の濃い肉弾戦がこれでもかと続き、アクション的にはとても満足のいく内容だったと思います(ただし、このラストバトルではニンジャ的なギミックが一切出てこないので、人によっては物足りなさを感じるかも)。
 全体に漂う安っぽさは払拭できないものの、最後まで一気に見られる勢いに満ちた作品。いまだに羅鋭作品には未開拓の部分がありますが、2018年はそうした未踏の作品にも着目しつつ、円滑なブログ運営を心掛けたいと考えています。
…ところで、主人公の羅鋭はニンジャの殺し者という役どころなんですが、邦題のドーベルマン・コップって誰のことなんでしょうか?(爆
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更新履歴(2017年/12月)

2018-01-11 15:46:37 | Weblog
 新年あけましておめでとうございます!…と言うには随分と時季外れになってしまいましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
私は久々に静かな年末年始を送り、これといって大きなトラブルもなく仕事始めを迎えられました。きちんと英気を養えたので、明日からの更新再開もスムーズにこなせそうです。…まぁ、さすがに12月のような更新ペースは当分無理だと思いますが(爆
 なお2018年の予定ですが、去年の連続特集でやや燃え尽きた感があるため、しばらくは大掛かりな企画から距離を置くつもりです。ただ、いくつか細々とした構想を考えているので、近いうちに発表できるかと思います。
さて、今年から当ブログは11年目を迎えます。これからどうなっていくかは私にも解りませんが、この1年も出来る限り頑張っていくつもりです。それでは最後になりますが…皆さん、どうか今年も功夫電影専科をよろしくお願い致します!


12/06 更新履歴(2017年/11月)
12/07 王羽十選(1)『冷面虎 復讐のドラゴン』
12/09 王羽十選(2)『唐人票客』
12/10 王羽十選(3)『ドラゴンVS不死身の妖婆』
12/12 王羽十選(4)『いれずみドラゴン 嵐の決斗』
12/15 王羽十選(5)『極東黒社会』
12/17 王羽十選(6)『捜査官X』
12/21 王羽十選(7)『獵人』
12/22 王羽十選(8)『驚天動地/秋瑾/大漢英豪』
12/23 王羽十選(9)『獨臂侠大戰獨臂侠』
12/26 王羽十選(終)『ドラゴン修行房』
12/31 【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2017年度)】
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【功夫電影専科:功夫動作片番付!(2017年度)】

2017-12-31 20:51:38 | Weblog
 月日が経つのは早いもので、「ブログ開設10周年だから特集を10回やろう!」と思い立ってから、あっという間に一年が経過してしまいました。どうにか完走できたものの、つくづく無茶なことを考え付いたものだと悔やんでなりません(爆
という訳で嵐の様に過ぎていった10年目の功夫電影専科ですが、今年最後の更新は年末恒例の「功夫動作片番付」で行きたいと思います。この企画は一年間に紹介した作品の中から、面白かったものとトホホだったものを選出するという誰得な催しです。
 しかし、2015年は年間レビュー数が28本だったっため、ベスト10を半分に切り詰めて断行。2016年に至っては更新ペースが荒れに荒れ、史上最低の21本となったため「功夫動作片番付」は中止となってしまいました。
ですが今年は連続特集で喝を入れたため、計57本もの作品を紹介することが出来ました。今回はこの中から選りすぐりの作品をセレクトしていきますが、まずはイマイチだったワースト10から列挙していきましょう。

 【功夫動作片番付(ワースト10)】
第10位『極東黒社会』
第9位『無人島物語 BRQ』
第8位『G・F・G ゴールデン・ファンキー・ガール』
第7位『Expect to Die』
第6位『ロボ道士/エルム街のキョンシー』
第5位『Kickboxer from Hell』
第4位『U.S.Catman: Lethal Track』
第3位『男たちの遊戯』
第2位『ニンジャ・コマンドー/地獄の戦車軍団』
第1位『地獄のバトルボーダー/戦場に舞い降りた残虐軍団』
 …まあ2月に特集を組んだ時点でこうなるだろうとは思っていましたが、見事にランキングの半分がニコイチ映画で占領されています(笑
本当なら全部まとめて1位にしても良かったんですが、『エルム街のキョンシー』はムチャクチャすぎて笑える所もあったし、『Kickboxer from Hell』はアクション部分が割としっかりしていたので、微妙に差が付く結果となりました。
 また、今年は邦画系の特集で尖った作品ばかり紹介していたため、ワースト10にはかなりの数がランクインしています。中でも3位に食い込んだ『男たちの遊戯』は久々の問題作で、大物格闘俳優の使い捨てに加え、壮絶なオチのオマケつきという難敵でした(爆
それ以外では、話作りが不親切だった『G・F・G』や『無人島物語』、スターの使いどころを間違えた『極東黒社会』と『Expect to Die』など、「ここさえ良ければ…」と思ってしまう惜しい作品がチラホラありました。
それにしても2月のニコイチ映画特集、あれは本当に辛かったなぁ…(遠い目)。

 【功夫動作片番付(ベスト10)】
第10位『Falcon Rising』
第9位『絶対王者ボイカ(Boyka: Undisputed IV)』
第8位『ドラゴン修行房』
第7位『ワイルドカード』
第6位『捜査官X』
第5位『驚天動地/秋瑾/大漢英豪』
第4位『李小龍 マイブラザー』
第3位『ベスト・キッド(2010年版)』
第2位『ドラゴン・キングダム』
第1位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』
 さて次はベスト10ですが、今年は10回にわたる特集企画を開催しただけあって、数々の傑作・名作と巡りあう機会が多かったと思います。
ただ、香港映画系の特集は5回、格闘映画系は2回、邦画系は2回という内訳になっているため、ランキングの内容にはやや偏りが生じています。特に邦画系は先述の通りで、残念ながらベスト10には名を連ねていません。
 そんな中で格闘映画からは圧巻のアクションで魅せた『Falcon Rising』と『絶対王者ボイカ』、ステイサムが男を見せた『ワイルドカード』が推参。12月の王羽(ジミー・ウォング)特集からは3本もランクインし、とりわけ『驚天動地』は印象に残りました。
激戦区だったのは4位~2位までの区間で、どの作品も過去のスターに対するリスペクトに溢れ、完成度の高いものばかり。おかげで順位付けはとても難航し、『ドラゴン・キングダム』が僅差(思い入れの度合い)で2位という結果になっています。
 しかし、この2017年のナンバーワン…もといオールタイムベストは、私にとって『天地大乱』しかありません。私の香港映画に対する興味の原点であり、この作品との出会いが無ければ、格闘映画や邦画作品へ目を向けることも無かったでしょう。
このほか、多くの謎とサプライズに満ちた『神州小劍侠』、格闘映画という枠組みでドラマを展開した『Man from Shaolin』、不良アクションの新たな可能性を示した『B-ON』など、気になる作品との出会いも多々ありました。

 この一年は当ブログにとっても、そして私個人にとっても波乱の年でした。ここ数年は小康状態となっていましたが、一連の特集でようやく功夫電影専科は調子を取り戻すことが出来た…のかもしれません。
また、全10回の特集では韓国や東南アジア圏の映画、メジャーな格闘映画スターの作品にはあまり触れてこなかったので、2018年はそうした作品にも着目していきたいと思っています。
さて、やや急ですが今年の更新は今回をもちまして最後となります。コメントやメールの返信は継続しますが、更新の再開は1月中旬を予定しています。それでは皆さん、良いお年を!
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王羽十選(終)『ドラゴン修行房』

2017-12-26 22:09:03 | 王羽(ジミー・ウォング)
「ドラゴン修行房」
原題:虎鶴雙形/少林虎鶴震天下
英題:Tiger & Crane Fists/Savage Killers
製作:1976年

●今日は12月26日。世間では華やかなクリスマスが終わり、大晦日と元旦が間近に迫りつつありますが、当ブログでは相変わらず王羽(ジミー・ウォング)作品一色のまま。季節感ゼロの記事を黙々と更新しています(爆
…なんだか色々と間違っている気がしますが、ここまで来たからには最後まで完走するしかない! というワケで、ついに本日をもってジミー先生特集は最終回となりました。そこで今回はラストに相応しく、彼の代表作のひとつをご紹介いたします。
 時は70年代中盤、李小龍(ブルース・リー)の死去によって功夫片は下火となりました。しかし功夫片そのものは定期的に作られ、『少林虎鶴拳』や『少林寺/怒りの鉄拳』が当時の年間興収ベストテンに食い込んでいます。
中でも劉家良(ラウ・カーリョン)の躍進は著しく、かつてのパートナーだった大導演・張徹(チャン・ツェ)を尻目にヒット作を連発。確かな知識と技量に裏打ちされた名作の数々は、功夫片の在り方を大きく変えていきました。

 特に注目されたのが練功(修行シーン)の描写で、従来の功夫片とは異なった明快な表現、そして有無を言わさぬ説得力に満ちています。劉家良は練功を突き詰め、のちに修行がメインとなる傑作『少林寺三十六房』を作り上げました。
かくして練功は功夫片にとって重要なファクターとなり、張徹も『少林寺列伝』等で対抗。その後、こうした真面目な修行シーンへのアンチテーゼとして『蛇拳』『酔拳』が誕生するのですが、この流行はジミー先生の耳にも当然入っていました。
とはいえ、張徹や劉家良にカンフーの知識で勝てるはずもありません。しかし彼は武術指導と共演に劉家榮(リュー・チャーヨン)、脚本に『少林虎鶴拳』も手掛けた倪匡(ニー・クァン)を迎え入れ、本格的(?)な功夫片を監督するのです。

 さて本作は、仲違いした鶴拳と虎拳の拳士が反目しあいつつ、武術界の制覇を目論む強敵に立ち向かうという王道路線のストーリーとなっています。が、王道を王道で終わらせないのがジミー流。相変わらず今回もツッコミどころ満載の作風となっていました(笑
まず問題となるのがジミー先生のアクションで、今まで勢いだけで立ち回りをこなしていた彼も、本作の複雑な殺陣には相当苦戦したものと思われます(あと武術指導の劉家榮も)
 おかげで劇中のアクションシーンはシリアスなのに和める出来となっていますが、そこはジミー先生のライバル役である劉家榮や、いぶし銀の魅力を見せる陳慧樓(チェン・ウェイロー)が見事にフォローしています。
ただし王道路線のストーリーといっても、主役以外のキャストは引き立て役が基本。劉家榮は最後まで反目したまま死亡し、その恋人だった謝玲玲(ツェ・リンリン)も即効でジミー先生に乗り換えていました(苦笑

 とはいえ、劉家榮は準主役としてしっかり目立っていたし、その他のキャストも個々で熱演を見せています。ラスボスとして立ちはだかる龍飛(ロン・フェイ)についても、その仰々しい存在感はかなりのものでした。
さて、ここで気になってくるのは練功系の功夫片に対し、ジミー先生がどのようなアプローチを試みたのかという点です。本作を監督するにあたり、彼が手本としたのは劉家良の『少林虎鶴拳』だったのではないでしょうか。
 虎鶴雙形という名称、敵の弱点をピンポイントに突く展開などは、同作に関わった劉家榮や倪匡から着想を得たと考えられます。「だが自分は練功について劉家良ほど熟知していない」…そのことを痛感していたジミー先生は、ここで思い切った決断を下しました。
まず修行シーンでは凝った演出を無理に描かず、敵の弱点を突くだけのシンプルな案を採用。敵の弱点も固定された鋲にするなど、徹底的な簡略化を図ります。そして武術の技巧ではなく、いつものアイデア勝負でバトルを征してしまうのです。
 一見すると扱いきれないテーマから目をそらし、自分の得意を押し付けただけに見えるかもしれません。ですが、中途半端に迎合して失敗するよりも、自身のホームグラウンドに引き込んで納得のいく仕事を貫くことにジミー先生は賭けたのでしょう。
これまで練功をメインにした功夫片は数多く作られています。が、練功という要素を自分の色で染め上げ、強引に上書きすることで自らのアプローチとした作品は、他に例がありません。まさに本作はジミー先生だからこそ作れた逸品と言えます。

 天皇巨星・王羽。彼の出演した作品はいかがわしさに満ち、アイデアにあふれ、唯一無二の魅力を誇っています。そのスタイルはバラエティに富み、世界からカルト的な支持を得ていましたが、現在は病床に伏せっているとの事です。
もしジミー先生が退院したとしても、かつてのようにアクションが出来るのか、そもそも日常生活を無事に送れるのかは解りません。しかし、近年も『捜査官X』や『失魂』などで高い評価を得ており、彼のバイタリティーが未だに尽きていないことは明白です。
だからこそ私は信じています。いつの日か銀幕に再臨し、かつてと変わらぬ眼光で後輩たちに睨みをきかせるジミー先生――もとい、天皇巨星・王羽(ジミー・ウォング)の勇姿を!
…2017年を通して始まった10の特集、および王羽十選は今回で終わりますが、きっと彼の伝説は終わらないはずです。ジミー先生の一日も早い回復を祈りつつ、これにて今年最後となる作品紹介の締めにしたいと思います。(特集、終わり)
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王羽十選(9)『獨臂侠大戰獨臂侠』

2017-12-23 17:37:57 | 王羽(ジミー・ウォング)
獨臂侠大戰獨臂侠/獨臂刀大戰獨臂刀
英題:One Arm Chivalry Fights Against One Arm Chivalry/Point the Finger of Death
製作:1977年

●天皇巨星と呼ばれ、良くも悪くも香港の映画界を賑わせてきた王羽(ジミー・ウォング)。彼の役者人生は50年以上に及びますが、“あの傑作”と出会っていなければ今のジミー先生は存在しなかったかもしれません。
その作品こそ、彼を一躍スターダムへと押し上げ、張徹(チャン・ツェ)監督の名を知らしめた『片腕必殺剣(獨臂刀)』です。ジミー先生のスター性と張徹の演出、そして華麗な立ち回りによって『片腕必殺剣』は記録的なヒットを記録しました。
 同作はジミー先生の原点ともいえる作品となり、台湾に渡ってからは功夫片としてリメイクした『片腕ドラゴン』を製作。勝手にシリーズを展開し、2代目獨臂刀の姜大衛(デビッド・チャン)を引っ張り出した珍作『獨臂雙雄』にも出ています。
この当時、ジミー先生は『片腕ドラゴン』の続編となる『片腕カンフー対空とぶギロチン』を監督し、ちょっとした片腕ラッシュ状態となっていました。そしてこの『片腕カンフー~』において、彼はある人物と出会います。

 『片腕カンフー~』は武術指導を香港で活躍していた劉家良(ラウ・カーリョン)に依頼し、無理を押して登板してもらったという事情があります。その見返りなのか定かではありませんが、ジミー先生は劉家班の劉家榮(ラウ・カーウィン)を擁立するのです。
劉家榮は劉家良の実弟で、劉家班の主要メンバーであると同時に監督としての才覚も持ち合わせた、実に器用な人物でした。とはいえ、所属するショウ・ブラザースでは活躍の機会が巡ってこず、必然的に外部の会社で経験を積まざるを得なくなります。
 ジミー先生に劉家榮が預けられたのは、少しでも活躍の場を与えたかった劉家良の采配(或いは劉家榮自身の判断)だったのでしょう。かくして劉家榮はジミー先生と肩を並べ、主演スターとして本格的なキャリアをスタートさせました。
本作はそんな2人が組んでいた時期の作品で、劉家榮はジミー先生と並び立つ“もう1人の獨臂刀”という大抜擢を受けています。ただし作品自体は『片腕必殺剣』と無関係で、『獨臂侠大戰獨臂侠』という微妙なタイトルがそれを暗に示しています。

 物語は、反清復明を掲げる光華會に所属するジミー先生が片腕を失い、仲間殺しの濡れ衣を着せられるというシリアスなもの。この殺害された仲間というのが清朝の内通者で、連中に家族を殺された劉家榮(こちらも片腕剣士)が方々で辻斬りを繰り返します。
同じく内通者の光華會幹部・梁家仁(リャン・カーヤン)が暗躍する中、劉家榮は知らぬ間に生き別れた弟(喜翔)と再会するのですが、光華會を混乱させた遠因となったため、ジミー先生と刃を交えることに……。
 ここに華山派で心強い味方となる王冠雄、全ての黒幕である皇帝・龍飛(ロン・フェイ)も加わり、最後の戦いが幕を開けます。ただし演出にキレがなく、せっかく面白くなりそうな要素が幾つもあるのに、それらが全て消化不良に終わっているのです(爆
ジミー先生はただ強いだけで特徴に乏しく、それ以外のキャラクターも月並みな人物設定に留まっているので、あまり奥行きが感じられません。ロケ地も閑散とした野原や山道ばかりとなっており、それが本作の粗末さをさらに助長させていました。
 しかし、アクションは劉家榮自身が受け持っているため、それなりに趣向を凝らしたファイトが楽しめます。2人の片腕剣士は刀に限らず、素手での戦いも得意なので殺陣のバリエーションもなかなか豊富です。
ラストは武器同士によるジミー先生VS龍飛、素手同士による劉家榮VS梁家仁という異なる特色のバトルが堪能できますが、そこへ至る展開も実に淡泊。本当に素材だけは良いのに、つくづくストーリーの煮え切らなさが惜しまれます。

 ジミー作品らしいツッコミどころはあるものの、彼の魅力が出し切れたとは言い難い作品。やはりここはジミー先生直々にメガホンを取って欲しかったところですが、実は劉家榮とのコラボでその条件を満たした映画が1本だけ存在します。
果たして、彼が手掛けた真骨頂ともいえる作品の実態とは? 次回、長いようであっという間だったこの特集もこれでラスト…今年最後の作品紹介にして、我らが天皇巨星の本領を発揮した快作に迫ります!
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王羽十選(8)『驚天動地/秋瑾/大漢英豪』

2017-12-22 16:12:41 | 王羽(ジミー・ウォング)
驚天動地/秋瑾/大漢英豪
英題:Dragon Fist/Chow Ken/Fury of King boxer
製作:1972年

●清朝末期、中国で革命の父と呼ばれた孫文に賛同し、動乱の時代に散った1人の女傑が存在します。その名は秋瑾――血気盛んな女性革命家で、明治時代の日本に留学して中国同盟会に参加。のちに浙江省での蜂起が失敗し、31歳の若さで処断されました。
彼女の壮絶な生涯は何度も映画化されており、2011年には黄奕(クリスタル・ホアン)主演の歴史アクション『秋瑾 ~競雄女侠~』が公開され、新たな秋瑾像が作られました。
 しかし、それより39年前に秋瑾を題材にした功夫片が、台湾のファースト・フィルム(香港第一影業)で製作されていたのです。本作は主人公の秋瑾を郭小荘が演じ、王羽(ジミー・ウォング)ことジミー先生とダブル主演を飾っています。
監督は台湾映画界の名匠として数々の作品に関わった丁善璽が担当。彼はジミー先生と何度もタッグを組んでおり、後年の主演作である『ジョイ・ウォンの妖女伝説』も監督していますが、今回は冗談抜きのシリアスな作風を徹底していました。

 ストーリーは義和団事件で揺れる中国からスタート。既に革命家として一目置かれていた彼女が日本に留学し、現地の革命勢力と手を結び、上海に渡って中国女報を創刊…といった具合に、おおむね史実通りの物語が進みます。
劇中では当時の世情が反映され、実在の烈士や大臣たちも登場しています。ジミー先生は革命家の徐錫麟を演じていて、本作では郭小荘をバックアップするために捨て身で戦う、相棒のようなキャラクターとなっていました。
 他にも、同じく革命家で闘死する陳伯平に謝興(武術指導も兼任)が、革命を阻む謎の男・劉光漢(劉師培)に安平が、徐錫麟に討たれた政府高官の恩銘に易原が扮しています。
後半からは史実と同じく、一斉蜂起の機を誤った(劇中では易原の思わぬ行動により計画を急きょ変更した?という設定)ジミー先生が、決死の覚悟で政府軍へ挑む展開に。このあたりは完全に彼の独壇場と化しており、獅子奮迅の闘いが見られました。
 革命家たちが辿る最期も事実に即しており、この徹底した忠実さからは丁善璽による気合の入れようが見て取れます。しかし事実と異なる部分もあり、映画的な脚色をされているパートもあります。
例えば、wikiによると秋瑾とは不仲だった夫・王廷鈞(演者は江明)とのロマンスが用意されており、立場や意思の違いで想いがすれ違うという切ないシーンがあります。
また、史実では抵抗する間もなく政府に捕まった秋瑾が、本作のラストでは大立ち回りを披露。逆にカットされた箇所もあり、かの魯迅も目撃したという留学生相手に激情し短刀を机に突き立てたエピソードは割愛されていました(これは見たかったなぁ)。

 さてアクションについてですが、こちらは郭小荘とジミー先生の両方に万遍なく用意されており、テンションの高い殺陣が随所で見られます。動員されたキャストやセットの規模も、従来のファースト・フィルム作品に比べて破格のスケールとなっていました。
憲兵隊との乱戦、連合国軍の用心棒たちとの戦い(ここだけ若干ジミー作品っぽい)も悪くありませんが、注目すべきは主役2人による最終決戦です。どちらの戦いも壮絶極まりないものとなっていますが、特にジミー先生のラストバトルは見応えがあります。
 ジミー先生は学堂の式典で仲間たちと決起し、大勢の護衛に守られた易原を討つべく奮戦! 謝興に加え、実在の革命家・馬宗漢も加勢するんですが、なんとそれを演じているのが山茅(サン・マオ)なのです。
山茅といえば、ジミー先生の舎弟にして彼の主演作の常連俳優。同じ舎弟の龍飛(ロン・フェイ)に比べると、中ボスや噛ませ役を宛がわれることが多い傾向にあります。
 そんな彼が、本作では主人公の味方を演じたばかりか、この一戦では肩を並べて共闘! ともに蜂起の計画を練り、仲間たちが死にゆく中でも必死に戦い、重傷を負ってもなお立ち上がろうとするなど、かなりの熱演を見せているのだから堪りません。
ジミー先生も上へ下へと駆け回り、政府高官なのにやたらと強い易原を倒し、さらに大勢の兵士を相手に戦い続けます。郭小荘が短刀を手に戦うラストバトルも見事なんですが、個人的には12分以上に及ぶジミー先生の大激闘の方が好みでした。

 重厚なストーリーに圧倒され、入魂のアクションに見入ってしまう骨太な傑作。のちに数々の戦争大作を任され、『プロジェクトA』へ参加したのも納得できる丁善璽の代表作…といっても過言ではないでしょう。
とはいえ、ここ数日はジミー先生特集なのに真面目な作品ばかりが続き、ちょっとダレてきてしまいました(爆)。この特集も終わりが近づいてきたので、次回はいつもの彼らしいバラエティに富んだ作品をピックアップいたします!
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