さて、五重塔の闘いは4階は“龍殿”へと上がります。この“龍殿”で私たち観客は初めてそのフロアの闘いの最初から李小龍、解元、田俊たち3人の挑戦者が揃った形で塔の番人と対峙する姿を観る事となります。
この“龍殿”では下階の“虎殿”では僅かしか観れなかった3人それぞれの細かいキャラクター設定や微妙な上下関係がハッキリと観客に伝わるよう描かれていて、それもあってか、私は五重塔のファイトシーンではこの“龍殿”が一番好きなフロアです。
“龍殿”を守るは韓国合気道の大家池漢載。嘉禾作品『アンジェラ・マオの女活殺拳』(72)で黄仁植と共に香港の映画ファンに初めて韓国合気道を紹介する機会を得た池漢載は、本作『死亡遊戯』でいよいよ武打巨星李小龍との対決を迎えます。
まずご覧の“武芸者”こと池漢載の初登場シーン。カーテン奥のベッドに寝転がりながら李小龍を迎え討つ韓国合気道金段の余裕綽々な姿が印象に残ります。
この光景は本作『死亡遊戯』において下階は“虎殿”の番人ダン・イノサントの初登場シーンである虎の毛皮の椅子に座りジッと塔の挑戦者を見据える姿と共に実に重要なシーンです。
何故なら李小龍監督が本作『死亡遊戯』で特に入念に描こうと試みた、塔の挑戦者たちが五重塔最上階を目指し塔の各階を突破しようとするも、各階の番人にその都度止められるという、息詰まる緊張感に満ちた対峙シーン。
この各階の番人登場シーンこそ本作『死亡遊戯』の裏テーマである、塔を上がろうとする者とそれを止めようとする者、その闘いにおける個々の順応能力が試される命懸けのデスゲーム、の導入部分として絶対に欠かせないシーンだからです。
またこれは繰り返し語られて来た事柄ながら、ご覧の李小龍、解元、田俊を迎え討った武芸者がカーテン横の柱に備えられた電灯スイッチを押し“龍殿”内の照明が点火する一連の興味深いシークエンスがロバート・クローズ監督『ブルース・リー死亡遊戯』(78)ではバッサリとカットされてしまったのは改めて残念でした。この武芸者による照明点灯シーンを入れれば、この後の武芸者の台詞シーンを口パクにする必要もなかったし、照明の色の変化も李小龍が単独で映るシーンの色彩調整で幾らでも対応出来たでしょう。
そして何よりこの照明点灯シーンを入れるだけで、78版『死亡遊戯』で我々観客が殆ど感情移入出来なかったある意味“アッサリとしたビリー・ロー☓武芸者の闘い”にスリリングな対立概念を生む事が可能だったと思うのです。
さて、これからこのデスゲーム検証コラム「最後的死亡遊戯」は「The Final Game of Death 」での“龍殿”フロアの細かいテイクの相違点検証に加えて、“韓国の猛将”黄仁植の意外にして驚きの登場となります!Let's the death game begin!!
Tさん、画像提供ありがとうございました😊。
Pagoda challengers against Korean hapkido master from The Final Game of Death.