やっと今年も仕事納めとなり時間が出来たので、先日行われたWBC世界フライ級タイトルマッチの内藤大輔vs山口真吾の素晴らしい熱戦の余韻からか、久々に古いプロボクシングのビデオを引っ張り出して来て観ていました。
それが76年2月に行われたWBA世界Jミドル級タイトルマッチの柳済斗(韓国)vs輪島功一(日本)の一戦で、前の年に“日本人ボクサーキラー”の柳に7R無残なKO負けを喫し王座から転落した輪島の意地を賭けたリターンマッチです。この試合はまだ世界タイトルマッチなどが15R形式で行われている時代の試合で、最初から柳と輪島が真っ向から打ち合う壮絶な試合になるんですが、試合は最終15Rに今も日本ボクシング史上に刻まれている奇跡のKO劇と言うべき余りにも有名なシーンが登場します。
そのシーンこそが輪島の執念の右フックを顔面に浴びた王者の柳が思わず「ガクッ!」と片膝をつきダウンするシーンで、ここで場内の超満員のお客さん(殆ど男性)がもう総立ち状態で大歓声!辛うじて起き上がった柳ですがヨロヨロとロープにもたれかかり・・そのままガックリと頭を垂れ戦意喪失でノックアウト負け!“炎の男”輪島が執念の世界タイトル奪還なる!の感動的な場面です。
この輪島のパンチで柳が片膝をつく有名なシーンは、これまでにも日本のプロボクシングの名場面特集などでは必ず登場するシーンなので、きっと皆さんもご存知かと思いますが、それにしてもこの時代の輪島をはじめとするボクシングの試合は緊張感と殺気が充満していて、もう今観ていてもゾクゾクしますねー!
でも日本でもお馴染みの選手だった柳済斗って現在はどうしてるんでしょうね?もし健在ならば柳さんには是非とも今も元気な輪島会長と「あの一戦のあの時はこうだった!」的な再会対談とか実現して欲しいですね。
さて、ここからやっと本題です(苦笑)。いよいよ大台の第20回が目前の「熱風!韓国LEGENDS」第18回は、司馬克導演、トニー・リュウこと劉永主演『乾隆香妃風流帳』(77)でいきましょう。
この『乾隆~』も香港&韓国のコラボ作品で、香港側から劉永、関聡、李超俊(本作の武術指導も担当)、そして今年惜しくも亡くなった“女デブゴン”こと沈殿霞らが参加し、韓国側からは伊素蘭(伊の字異なります)、金希嘉、李芸敏が参加し、当然韓国ロケーションを敢行しています。
今回私がレビューに使用したのは北京語版&ワイドスクリーン仕様なのですが、韓国ではこの『乾隆~』は題名も『河南別曲』(73)とされ、導演も韓国側導演がキム・ミョンヨン、香港側導演が許子寶(許の字確認中。また韓国側のデータでは別人表記あり)の共同導演作品となっていて、何故か韓国側のデータでは74年6月に公開となっています。また私が実際に見た『河南別曲』のポスターには大きく「韓・香合作巨篇!」の文字が載っていました。
さて、劉永と言うと日本のファンにはリーさんの香港凱旋第1作『ドラゴン危機一発』(71)のドラ息子役や、劉永が顧汝章に扮した『電光飛龍拳』(74)などが日本で公開されている事もあり、劉永=嘉禾公司明星とのイメージがあるかと思いますが、実際の劉永の明星としての全盛期は劉永がショウ・ブラザースで清の第6代皇帝である乾隆帝を自身の持ちキャラとし、王風導演作品『乾隆皇奇遇記』(76)をはじめ何本もの同名シリーズに主演していた時代となります。
ただこの『乾隆香妃風流帳』は、それらショウ・ブラザース版の“乾隆帝系列”作品とはそのプロダクションのバジェットも全く異なり、全編に渡り70年代の韓国映画特有のチープなセットが多用されているばかりか、劇中の劉永の披露する“皇帝功夫”も迫力不足のユ~ルユル&脱力ファイトにひたすら終始してしまっているのが惜しいですね。
物語的にも杭州を舞台に、乾隆帝が従者の小安子(李超俊)を従えながらの単調なドタバタ劇の果てに、全ての揉め事を収めて見せた乾隆帝が最愛の女性・張桂英を見初め、最後には共に帰途に着くだけのアッサリなお話で、ちょっとこれは観ていて私もキツイ物がありましたねえ(苦笑)。
結局は劉永にとっての明星としての最高のハイライトは、あの『~危機一発』におけるリーさんとの殺気漲る一騎打ちだったのかな、と改めて痛感させられる作品でありました。
私も『~危機一発』に関してはラストのリーさんと韓英傑の決闘よりも、むしろ夜の工場でのリーさんと劉永の対決シーンの方が好きなんですが、この2人の対決シーンではとにかくリーさん独特の見得を切る佇まいというか、闘志漲る表情が素晴らしいんですよ。特にリーさんが激闘の果てに劉永のボディにトドメの鉄拳を叩き込んだ後、そのコブシを握ったままリーさんが見せる何とも悲しげな、それでいて怒りに満ちた表情は『~危機一発』という作品を最も象徴する屈指の名シーンなんです。だって子供の頃はリーさん真似する時って、大体このシーンのリーさんの表情を真似ながら鏡の前で「はあああぁぁ~!」ってやってたもんねえ(苦笑)。
あ、結局はトニー劉永じゃなくてリーさんを絶賛する締めになってしまった「熱風!韓国LEGENDS」でした(苦笑)。