パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

千尋の冒険って何だったの?

2012-07-07 02:07:43 | Weblog
 対韓国ででゃ従軍慰安婦問題の再燃、対中国(台湾を含む)では尖閣諸島問題が何やら風雲急を告げている。

 MXニュースで、「尖閣諸島を我が国の領土ですと言う勇気を持ちましょう」とかの文句が刷られた東京都のつくったポスターが紹介され,東京都に寄せられた義援金が十数億円に達したそうだが、なんでこんなバカバカしいことになったのかというと、尖閣諸島侵犯事件の「不手際」に端を発している。

 しかし,私は,この件については事件が起きた当初からずっと言い続けているのだけれど、審判した漁船の船長を逮捕してしまったのは,不慣れからくる手違いだったが、アメリカと協議して、逮捕した船長を釈放したのは正しい判断だった。

 中国に対しては「日本国の領土を侵犯したのだから日本の国内法で裁くべきだが、今回は勘弁する」と言えばいいだけ。

 ところが、当時首相になったばかりだった菅直人は、事件の勃発に相当あわてたらしく、中国漁船が日本の海上保安庁の船に体当たりしているビデオをひた隠しに隠した。

 「あんな傍若無人な無法者を釈放した!」と非難されることを恐れたのかもしれないが、「ご覧の通り、傍若無人な無法行為だが、日中の友好関係を重視した。」と言えばいいだけ。

 「ものは言い様」というと、インチキくさいが、世界というのは言葉で成り立っているのだ。

 もし、そうでないとしたら、言葉とは無関係に存在する厳然たる事実が、すなわち真実だということになる。

 でも、そんな事実は存在しないし、存在すると信じても、それは「盲信」にすぎない。

 たとえば、「従軍慰安婦問題」。

 「従軍慰安婦なんて制度は日本軍にはなかった。民間の業者が軍にくっついて動いていただけ。まして、日本軍の将校がやってきて、うら若い乙女を拉致していった、なんてことはあるはずがない」と言うのが,日本の保守派の言い分。

 確かにある女性は、自分が女学生時代に拉致され、5階建ての大きな従軍慰安婦専用船に乗せられ、その一番下に収容された」と言っていたが,慰安婦専用船というものはなかったそうで、これは多分、夢かなにかを事実と思い込んでしまったのだろう。(特に「一番下」というのが、彼女に働いた深層心理を匂わせる。)

 でも、そういう事実は、問題ではない。

 少なくとも,今後はそうなる。

 それで、最近,注目されるのが、クリントン国務長官の発言。

 以前は慰安婦のことを「comfort women」と、かなりグロテスクな表現で言っていたのが、「人権を侵犯された女性」と言い方を変えたそうで、韓国も多分同調するだろう。

 というか、韓国とはもう擦り合わせをすませているのかもしれないが、日本も同調して「解決」を目指すべきだし、解決できるだろう。

 自信をもって,イケシャアシャアと謝るやり方を,イギリスあたりに学ぶべきだ。

 もう先週になってしまったが「千と千尋の神隠し」をテレビでまた見た。

 ただし、前見たときは、両親が豚になってしまってからで、今回は豚になるところあたりから見たので、今や「食うこと」にしか興味がないとすら思える日本人に対する痛烈な批判だと思いながら見ると、湯屋で働いている雇い人たちは、衆愚の典型だし、クモ男のような薬屋の親父は、ニヒルな知識人、もしくは傲慢な職人に思え、また、名前を奪われたために自分の正体を見失うという設定も、「いや、深いなあ」と感心しながら見ていたのだが、そのうち文明批判は影を潜め、豚にされた両親を救おうとする千尋と千尋を応援する異形のモノたちというストーリーになり、醜い豚と化した両親は、救われたのかなんなのかよくわからないまま、でかいつらをふりまく両親として復帰し、いったい千尋の冒険ってなんだったの?と思ったのだった。

 しかし、あの中華料理屋でむさぼり食う、醜い両親の姿を見て「まさに、今の我々そのままではないか!」と気づかないのは、まったく解せない。