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蛋白尿 漢方薬 1(腎病漢方治療 397報)

2014-06-25 00:15:00 | 漢方市民講座

 

一般の方にも、腎臓内科医にも驚きかも知れませんが「蛋白尿」は、中医学の範疇にはまだ該当する「命名」が無いのです。西洋医学的には、一般的に、蛋白尿が加重(悪化)していく場合には、当初は尿中の分子量6万ほどのアルブミンが出現し、次第に分子量の大きなグロブリンが出てくることが確認されていますが、アルブミン尿、グロブリン尿の生成の基本的なメカニズムは残念ながら完全には解明されていません。糸球体基底膜(GBM)の透過性だけでは説明しきれないものがあるのです。<o:p></o:p>

 

例を挙げれば、血尿を病期の初期とするIgA腎炎では、尿中に多数の赤血球が出現しますが、(だからといって)糸球体係蹄壁のGBMをすり抜ける赤血球細胞を頻回に観察できるかと申しますと、そうではありません。赤血球ほどの大きな細胞がすり抜けるとなれば、蛋白分子などは(素直に考えて)容易にすり抜けて、ボウマン嚢に充ちているか(免疫蛍光法で確認しますが)、尿中にも蛋白が観察されるかと想像しますが蛋白尿の無い血尿のみのIgA腎炎があります。(それでは)赤血球がGBMをすり抜ける過程が観察されるかといえば、頻度は非常に少ないのです。私自身も電子顕微鏡でGBMを通過中の赤血球を確認したのは実験、人体例でも、数例にしか過ぎません。<o:p></o:p>

 

(糸球体係蹄壁には電化依存性とサイズ依存性の二重のバリアーが有ることは西洋医学的に証明されつつありますがまだ不十分です。詳しく説明すればキリがありませんので)、中医学での「蛋白尿」に対する「考え方」をお話します。<o:p></o:p>

 

糸球体腎炎での尿蛋白は「人体の精微物質」であり、「脾の化成」と「腎の収蔵」が関与し、蛋白尿の生成と脾腎両臓の虚損には密接な関係があると考えます。脾虚になり昇清が不能になると、穀気が下流し;(脾失固渋、精微下注)腎虚が封蔵をコントロールできなくなり(腎虚封蔵失司 腎気不固)精微が尿に漏れる(精微下泄)ことが蛋白尿の成因と考えます。この他に、湿毒内蘊、鬱して熱を生み、これが腎気不固をもたらし精気外泄になるとする考え方もあります。<o:p></o:p>

 

熱邪は陽邪であり、其の性質は開泄で、腎が湿熱を受け、燻灼されると腎の統摂が失職し水谷精微は尿に下ると中医学では考えます。<o:p></o:p>

 

気血は脾を来源とし、腎は陰陽の源であり、故に脾腎虚損は常に、気血陰陽に渡り、(正常でない)偏重な病態を惹き起こします。<o:p></o:p>

 

長期に蛋白尿が続くと、精微物質が尿中に失われ、五臓の正常な滋養が出来なくなり、(その結果)脾腎虚損はますます加重され:脾虚は同時に飲食低下或いは不能となり、正常な精微化生が減少、或いは不可能となり、水湿痰濁を生じ、臨床的に低蛋白血症、高脂血症をみることになります。(中医は高脂血症を痰濁として捉えます)<o:p></o:p>

 

さらに水湿の邪が滞留すると、濁陰が臓腑に瀰漫し、臓腑機能を損害し、この結果、循環障害、或いは高窒素血症の遠因ともなり、日増しに病情が加重していくと、収拾がつかない病態へと進展するのです。<o:p></o:p>

 

次回は具体的な生薬を交えて、「蛋白尿 気陰両虚」についてお話しします。<o:p></o:p>

 

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2014625日(水)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 12(大黄の応用)(腎病漢方治療 396報)

2014-06-24 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

大黄の基礎および臨床研究は進んでいます。本稿では腎不全に特化してお話します。内容は中医学表現が多いので難解な印象を受けられるかも知れません。気軽に読み進めてください。「大阪の商人」の如き、実利、実学なのです。机上の空論ではありません。<o:p></o:p>

 

大黄は血分熱毒を清解し、血中の尿素窒素等の窒素産物貯留を降下改善します。(古くは)「神農本草経」に「大黄味苦寒、瘀血血閉を下ろし、癥瘕積聚、留飲宿食を治し、腸胃を清め、古きを排出し新しきに到り、通利水谷、調中化食、五臓を安和する」とあります。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全で湿熱濁毒内蘊と弁証される場合、出現する症候は、胃脘張満、悪心嘔吐、口臭、全身から呼気まで尿臭があり、大便は乾燥し閉結不通、舌質紅、舌苔垢膩、脈弦滑あるいは沈滑などです。<o:p></o:p>

 

かかる時に、大黄を用いれば、苦寒清瀉熱結、濁毒除去に作用し、同時に砂仁 草果仁 蒼朮 藿香の芳香醒脾、化湿辟?(化湿し汚物を除く)を配伍することにより、相互調和がなされ、苦寒傷脾(胃)にならず、また辛燥傷陰の弊も無く、服用後に血清クレアチニン、BUNを比較的迅速に下降させます。臨床症候も、常に随時改善されます。<o:p></o:p>

 

大黄は一般には醋炙大黄(醋で炮制した大黄)を10g15g用いますが、具体的な量の調節は患者の毎日の大便回数を根拠に調節します。患者により程度の異なる腹瀉がありますが、毎日便通が2~3回が宜しく、軟便を基本とします。水様便が続くようになれば大黄の量を減じ、損傷胃気を防止します。<o:p></o:p>

 

中医による慢性腎不全の治療は大多数が泄濁を立論としていますが、さまざまな薬物により、大便、皮膚(汗)中に老廃物質を体外排出させますが、大黄の応用が頻度的には疑いも無く最多です。<o:p></o:p>

 

現代薬理学で実証されているのが、大黄鞣質(タンニン物質)と大黄蒽?アントラキノン)です。大黄鞣質(タンニン物質)は体内の窒素代謝を改善させ、両者は腎糸球体での係蹄壁の通過性にも関与し(詳細は省きます)、蛋白合成には基本的に抑制的に作用し、糸球体細胞の成長増殖に抑制的に作用することを付記します。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全は脾腎両虚が本ですが、若し舌質が淡で、大便溏泄、泄瀉大便溏薄、便通が毎日5回を越すようであれば、脾胃虚寒或いは脾腎陽虚であり、大黄は慎用或いは使用しないほうが良く、不用意に使用し続ければ、脾胃虚寒或いは脾腎両虚の病情を悪化させます。この類の患者に対しては、人参 黄耆 白朮 葛根 山茱萸 何首烏の類の健脾益腎の薬剤を併用すれば、満意(充分に納得のいく)の効果を収めることが出来るのです。<o:p></o:p>

 

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大黄の臨床応用の実例は非常に多く、過去にも多数の報告をいたしました。<o:p></o:p>

 

基本に戻り、教科書的な「要薬 大黄」を再度ご参照ください。<o:p></o:p>

 

要薬 大黄:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121106<o:p></o:p>

 

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2014624日(火)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 11(八大治法 8 補脾腎、瀉湿濁、解毒活血法)(腎病漢方治療 395報)

2014-06-23 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全の病態は多様であり、治法もまた多様であり、本日の講座までに、八大治法の七法、即ち、①芳化湿濁法:方用:平胃化湿湯(へいいかしつとう) ②化湿濁 苦寒瀉熱法:方用 化濁飲(かだくいん) ③活血解毒法:方用 加味活血解毒湯 ④清肺胃利湿熱法:方用 加味甘露飲 清熱利湿分消法:方用 中満分消飲(ちゅうまんぶんしょういん) 益気血補脾腎法方用 帰芍六君湯(きしゃくりっくんとう) 脾腎双補法:方用: 加味参耆地黄湯(かみじんぎじおうとう)をご紹介しました。<o:p></o:p>

 

最終稿として、⑧補脾腎、瀉湿濁、解毒活血法:方用 補脾腎泄濁湯をご紹介します。<o:p></o:p>

 

面倒な中医学用語が並びますがご容赦ください。慢性腎不全は往々にして、脾腎両虚陰陽倶傷湿毒貯留虚実挟雑を示します。臨床症候は、面色蒼白、眩暈、倦怠乏力、気短懶言、唇淡舌淡、腰膝酸軟、腹張嘔悪、口臭、舌淡紫苔黄、脈沈滑或いは沈緩等です。<o:p></o:p>

 

治療には補瀉兼施正邪兼顧、即ち補脾腎、瀉湿濁、解毒活血の補と瀉を合わせ、扶正し邪を留めず、祛邪して正気を傷つけないことが必要です。<o:p></o:p>

 

方用: 補脾腎泄濁湯(ほひじんせつだくとう):人参15g 白朮15g 茯苓15g 莵絲子20g 熟地黄20g 淫羊藿15g 黄連10g 大黄7g 草果仁10g 半夏15g 桃仁15g 紅花15g 丹参20g 赤芍15g 甘草15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

本方は、益気健脾補腎の品と、大黄 黄連 草果仁の泄熱化濁の品、桃仁 紅花 丹参 赤芍の活血の品が配伍され、扶正祛邪 消補兼施となります。補して消を得る、即ち補にして滞ること無く、消は補を得る、即ち泄濁作用が顕著であり、臨床でこの方を頻用して明確な効能を得ることができます。一つに、危を転じ安とし、二つに、病勢の進展を顕著に延緩することが可能であり、高窒素血症期でも、多数の症例で臨床的緩解に導くことが可能なのです。<o:p></o:p>

 

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2014623日(月)


慢性腎不全 漢方薬 10(八大治法 7 脾腎双補法)(腎病漢方治療 394報)

2014-06-22 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

慢性腎不全の一部の患者群に、次のような症候、即ち面色蒼白、腰膝酸痛、下腹部冷痛、腹瀉が止まらない、畏寒肢冷、夜尿頻多、尿の切れが悪く排尿が完全に終わるまでぽたぽたと尿が出る、嘔吐、腹張、顔面及び四肢の浮腫、舌淡胖大にて歯痕がある、苔白滑、脈沈細遅弱などである。これらの症候は、多くは脾陽虚損及び腎陽虚衰によるものです。中医学的には古くから、腎中の命火は脾土の母といわれ、明代の張景岳は次のように認識していました。「命火は釜底(かまどの下)の薪(たきぎ)のようなもので、腎陽が不足すると温化が不能となり、泄瀉 水腫等を起こす。命門火衰は脾の運化も不能にさせ、釜底(かまどの下)の薪(たきぎ)が無ければ、消化(腐熟)も失う。」<o:p></o:p>

 

清代の医家沈金?は、脾腎双補が治療上宜しく、「雑病源流犀?」の中で「脾腎は兼補が宜しい。腎虚には補が宜しく、更に扶脾を当てる、壮脾には養腎を忘れてはならない。」<o:p></o:p>

 

脾と腎の関係は極めて密接であり、先天(腎)と後天(脾)は相互滋生、相互促進の関係にあり、脾腎には協調の保持が必須なのです。<o:p></o:p>

 

「腎は薪(たきぎ)と水の如く、脾は鼎(かなえ)と釜(かまど)の如し」とは脾腎の相互滋生、相互促進の関係の喩えであり、脾の運化作用には必ず腎陽の温煦蒸化を得てこそ、気血精微の生化が可能になり、(付言すれば)腎精も後天の脾の運化精微に滋養されなければなりません。脾腎の正常な相互滋生の生理機能により、生命体には生機と活力が充満するのです。張琪氏の常用方剤は脾腎双補方、加味参耆地黄湯です。<o:p></o:p>

 

方用: 加味参耆地黄湯(かみじんぎじおうとう):黄耆30g 党参20g 白朮20g 当帰20g 遠志15g 何首烏20g 五味子15g 熟地黄20g 莵絲子20g 女貞子20g 山茱萸20g 淫羊藿15g 仙茅15g 枸杞子20g 丹参15g 山楂15g 益母草30g 山薬20g 水煎服用<o:p></o:p>

 

方中、参耆の人参 黄耆 白朮 山薬は益気健脾に、何首烏 淫羊藿 仙茅 莵絲子は補腎陽に働き剛燥に非ず、枸杞子 山茱萸 熟地黄 五味子は腎陰を滋助し、人参 白朮の合用で、脾の運化作用の障害を防止し、温補腎陽を配伍し陰陽を調和させ腎気を助け、腎機能を回復させ、益気補血に働きます。慢性腎不全の病の本質は脾腎両虚にあります。<o:p></o:p>

 

配伍の妙は、丹参 当帰(尾) 益母草 山楂の活血の品です。腎血流量を改善させ、補と消の合用といえます。<o:p></o:p>

 

注意すべきは苦寒大黄の瀉下傷脾です。腎不全においては既に高窒素血症の改善などの要薬ですが、苦寒傷脾を知らずして、漫然と投与した結果、病情が悪化する症例もありますので、適時適用を心がけなくてはいけません。<o:p></o:p>

 

加味参耆地黄湯の臨床例は過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

IgA腎炎:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140110<o:p></o:p>

 

慢性腎不全:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131212<o:p></o:p>

 

糖尿病性腎症:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20140321<o:p></o:p>

 

まだまだ沢山ありますが、消化不良を怖れて、上記の三例にしました。<o:p></o:p>

 

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2014622日(日)<o:p></o:p>

 


慢性腎不全 漢方薬 9(八大治法 6 益気血補脾腎法)(腎病漢方治療 393報)

2014-06-21 00:15:00 | 慢性腎不全 漢方薬

 

益気血補脾腎法の漢字表現は益気血(気血を益し)補脾腎(脾腎を補する)と分割すると理解しやすいでしょう。そもそも補益という漢字があるのです。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の症例に対して、活血泄濁等の治療を行い、クレアチニンや尿素窒素(BUN)が下降し、病情が緩解の兆しを見せた時に、本法を併用するのです。脾虚の症候を主たる症候としている場合に、益気健脾和中の治療を行います。常見される症候は、面色無華、唇淡舌淡、乏力倦怠、不思飲食、脘腹張満、悪心があり嘔吐しそうになる、便秘或いは腹瀉、脈象沈弱、舌苔白膩等であり、多くは貧血を伴い、中医学的な見地からは脾胃機能の虚弱がもたらした症候と捉えます。<o:p></o:p>

 

脾の中医学的生理では、水湿の運化のみならず、水谷精微の運化もつかさどり、平易に言えば、水穀精微から後天の精の本が吸収され、水穀精微の「栄養部分」は営気となり脈内に分布し肺、心を経て血となり、水穀精微の「力」の部分は衛気となり肺の主気作用により全身の脈外に分布します。脾の水湿運化とは、水湿を肺と腎に運ぶ作用を指し、肺、腎は気化作用により水湿を汗液と尿液に変えて体外に排出し、津液の生成、代謝に深く関与するのです。これらは脾の昇清を主る機能によるとされます。勿論、脾の昇清降濁の降濁とは「濁」なるものを腸に降ろす(大便に降ろす)ことを指します。唐容川1846-1897 清代中医学者 中西医?通医義で知られる)の「血症論」で言うように、脾胃は気血生化の源なのです。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全の病機の主要なものの一つが脾胃虚弱であり、水谷精微の正常な運化が損なわれ、気血化生の源が虚弱になれば貧血、乏力等の一連の脾胃虚弱の症候を呈し、脾胃の機能の強弱と慢性腎不全の予後には密接な関係があり、補脾胃と益気血の治療は慢性腎不全治療の中で充分な重要性を持つと考えられます。<o:p></o:p>

 

方用 帰芍六君湯(きしゃくりっくんとう)人参15g 白朮20g 茯苓15g 甘草10g 半夏15g 陳皮10g 白芍15g 当帰15g 水煎服用<o:p></o:p>

 

慢性腎不全で脾胃虚弱に属する症例では、特に脾胃陽虚には六君子湯を使用することが可能ですが、臨床観察からは脾胃陰陽倶傷の症例が多く、発病慢性化の過程で多くは陽損が陰損に及び、この時に温補剛燥の薬剤を使用すると、陰をますます傷することになります。往々にして、五心煩熱、頭痛、咽干、鼻出血、歯肉出血等の症候が出現します。この時に、若し、甘寒益陰の品、即ち陰柔滋膩の性質を持つ品を用いれば、陽気の布化を妨げることもあり、脾胃の運化機能を傷害し、腹張満、便溏嘔逆等の諸症が加重されることになります。これが故に、剛柔の薬剤は皆、使用は制限されます。ところが、気味中和(性質温和)の六君子湯は補益助胃 滋助化源 益気血に最も適しています。但し、人参は甘温、白朮は苦温、半夏は燥に偏する性質を持ち、茯苓の淡滲を配伍しても、まだ燥の嫌いがあり、補気に重きがあり、やや養血にかけるのです。故に当帰 白芍の二薬を加味し、帰芍六君湯としたのです。<o:p></o:p>

 

当帰は補血、養血の要薬であり、潤燥の性質もあり、白芍は酸苦微寒、斂陰養血、柔肝理脾に作用し、当帰 白芍の二薬で六君子湯の偏燥を調済(調和)し、柔肝かつ脾胃の運化を助け、補血養血と補気を重ね合わせた帰芍六君湯腎性貧血に用いれば頗る有効な結果を得られます。<o:p></o:p>

 

帰芍六君湯の臨床応用については、過去の記事をご参照ください。<o:p></o:p>

 

慢性腎不全220報:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131229<o:p></o:p>

 

慢性腎不全221報:http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131230<o:p></o:p>

 

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2014621日(土)<o:p></o:p>